※この作品はR-18です。

対魔忍アサギ~~風の騎士・風魔~~   作:ユウキ003

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今回は前半がバトル。後半はほぼ会話シーンのみ。
Hなシーンは次回第3話を期待して下さい!


第2話 選ぶ道

~~前回までのあらすじ~~

人と妖魔が存在し、不干渉のルールの下に共存する

近未来の日本。しかし現在そのルールも半ば形骸化し、

悪人と妖魔が結託した組織や企業が跋扈していた。

そして、そんな企業と戦う戦士達が居た。『対魔忍』である。

そんな中、対魔忍の一人である『井河アサギ』は

組織、『ノマド』に捕らえられてしまう。

アサギの妹である『井河さくら』はアサギの救出に

向かうが、彼女も捕らえられてしまう。

しかし、そんな敵の施設を突如として謎の

集団が襲撃。さくらを救出したのは、かつて

二人の幼なじみであり、一度は忍の里を追放された

『橘歩夢』という男が率いる集団だった。

アサギも救出した直後、アサギの宿敵『朧』と

その部下に包囲される3人。しかし歩夢は

自らが開発した力で『仮面ライダー』に

変身するのだった。

 

 

今、双剣を構えたライダーが二人を守るように

立ち、目の前の魑魅魍魎の群れを睨み付けている。

次の瞬間。

「……ッ!」

『バッ!』

仮面ライダーが一気に踏み込み、瞬く間に

妖魔の群れの眼前に飛び込んだ。

今の彼の脚力は、一気に78メートルもの

跳躍を可能とし、速力で言えば、100メートルを

1.3秒で駆け抜ける。一瞬で間合いを詰める事など、

造作も無いのだ。

「ッ!?」

驚くオーク。しかしそれ以上の事など

出来なかった。

『ザンッ!!』

仮面ライダーの小太刀がその首を切り飛ばした

からだ。

そこから更に、数人の妖魔の首を飛ばしていく。

「ウガァァァァァッ!」

その時、仮面ライダー目がけて一匹の

オークが手にした棍棒を振り下ろそうとしたが……。

『『『ドドドドッ!』』』

「グ、ガッ……」

その体を、忍者プレイヤーが小太刀を振り放った

くさび形エネルギーの雨が穿ち、オークの体が

床の上に倒れる。

そして、その死骸の上に立った仮面ライダーが、

オーク達を睨み付ける。オーク達は、ライダーの

殺気と実力に気圧され、後退る。だが……。

『『『『ザザザザンッ』』』』

「グォォッ!?」

その隙を逃さず、背後から忍者プレイヤーが

襲いかかり、うなじや手足、時には背中を

一直線に切り裂く。

「何をしている!こんな奴らにッ!」

ギリッと歯を食いしばりながら叫ぶ朧。

 

しかしオーク達はライダーとその配下

である忍者プレイヤーに翻弄されていた。

手裏剣や楔形エネルギーが牽制し、

プレイヤーの61トンものパンチ力が

妖魔の体をいとも容易く貫き、71トンも

あるキック力が、妖魔の体を踏み砕く。

彼らは、仮面ライダーに従う配下だ。

しかしそのスペックは、並の対魔忍を

軽く超える物だ。故に、格闘技のいろはも

知らず、集団戦闘になれないオークたちなど、

彼らにとっては人型をした豚に過ぎない。

 

瞬く間に数を減らしていくオーク達。

と、そこに今度は銃火器で武装した人間の

警備隊が突入してくるが……。

『『『ボボボボンッ』』』

すぐさま忍者プレイヤーがその集団めがけて

煙幕弾を投げつけ視界を奪う。

『『『『『シュルルルッ!ドドドドドッ!』』』』』

そして、煙で動けない所へさらに光の手裏剣の

斉射がされ、瞬く間に倒してしまう。

そんな中、一体のプレイヤーが朧を狙うが……。

「こんな、こんな事でぇぇぇぇぇっ!」

繰り出される小太刀の一撃を避けた朧は

すぐさま忍者プレイヤーの頭を掴み、首を

逆方向へとへし折った。

 

青い粒子となって消滅するプレイヤー。

それを睨み付けた直後、視線を上げる朧。

しかしその頃には、彼女の側には

沢木恭介だった者以外、誰も居なかった。

「ッ!?きょ、恭介!」

彼の姿を見て、前に出ようとしたアサギ。

しかしその手をさくらが掴んで止め、

ライダーも彼女の前に右手を翳し、それを止める。

「ダメ、ダメだよ。お姉ちゃん、沢木お兄は、もう……」

「え?」

何がダメなのか?アサギはそう、彼女の問いかけようと

した。

「う、ウゥ、ウゥゥ」

その時、沢木が突然苦しみだした。

 

そして、その体は異形のそれへと、変化してしまった。

「きょ、恭、介?」

変化した彼の姿に、愕然となるアサギ。

「く、クハハハハハッ!どうだいアサギ!お前の

 彼氏がもっといい男になった感想は!」

負け惜しみのように、高笑いを浮かべる朧。

その言葉に、アサギはギリッと歯を食いしばる。

「朧ォォォォッ!貴様ァァァァァッ!」

そして、アサギは朧を睨み付け、その目から

涙を流しながら叫ぶ。

彼女の叫びに、ライダーは開いていた手を

握りしめ、震わせる。

 

しかし、彼には決意があった。

 

二人を守り切る、決意が。

 

一歩、前に出る仮面ライダー。彼は

小太刀を両手に握りしめ、構える。

「……全員、手を出すな」

そう言うと、今にも斬りかかりそうだった

忍者プレイヤー達が僅かに構えを解く。

「……アサギ、ごめん」

そして、静かに仮面ライダーは言葉を紡ぐ。

「僕には、彼を元の人間に戻す方法が

 分からない。もし、僕に彼を救える方法が

 あるとすれば、それは、殺す事で妖魔となった

 その束縛から、解放する事だけだ」

「ッ!!!」

アサギの表情が強ばり、肩をふるわせる。

「……許して貰おうとは、思わない。

 それでも、僕はッ!」

次の瞬間、仮面ライダーが前に出た。

 

「ウゥッ、ウォォォォォッ!!!」

獣のような叫びと共に、沢木だった者、

妖魔は体中から触手を伸ばし、ライダーを

捕らえようとする。

迫る触手。

『ザンッ!ザンッ!』

しかし、ライダーはその触手を避け、

小太刀で切り裂く。

「はぁっ!」

切り裂きながら突撃するライダー。

妖魔はそれを切り裂こうと腕を

振り下ろす。

『ガキィィィンッ!』

しかしそれを小太刀で防ぎ、逸らせた

ライダーは膝蹴りを妖魔の腹部にたたき込んだ。

呻き、後退る妖魔にライダーも距離を取り、

楔形エネルギーを連射して次々と触手を

破壊していく。

そして、再び距離を詰めるライダー。

「ウォォォォォッ!」

妖魔も、残った爪を振るいライダーの小太刀を

受け止める。

火花を散らしながら、つばぜり合いをする

二人。その時。

「ウ、ウゥ、アサ、ギ」

「ッ!?」

ライダーの耳にしか聞こえない小声で、妖魔から、

沢木から声が聞こえた。

『この人、まさかまだ人間の意識を!?』

そう思い、一旦離れようとするライダー。

しかしなぜか妖魔は離れようとしない。

「君、は、誰、だ」

消えそうな声で問いかける沢木。

「……。仮面ライダー。彼女たちを、

 アサギとさくらちゃんを守る者だ」

二人は静かに、周囲に悟られないように

言葉を交わす。

「そう、か。なら、聞いて、くれ。

 僕の意識は、もうじき、消える。

 その前に、話して、おく。

 ウォォォォォッ!」

「ハァッ!」

互いに、剣戟を繰り返しながらも言葉を交わす。

 

「―――――」

「ッ!?」

そして、沢木の口から語られたのは衝撃の

事実だった。

「頼む。これが、僕の、願いだ。

 僕の、代わりに、彼女を、守って、くれ。

 この世界、から。彼女を狙う、

 全て、から。僕の、代わり、に。

 彼女に、幸せを。そして、最後の、

 伝言を、頼む」

かすれる声で、沢木はアサギへの伝言を伝える。

「……確かに、受け取った」

「そ、うか。ぐっ!?う、ウォォ……!」

次第に、沢木の中で意識が消えていく。

「……約束する。僕が、アサギを守る」

「あり、が、トウ。……ウォォォォォォッ!!」

その言葉を最後に、沢木の意思は消え、

妖魔となった彼だけが残った。

 

振り下ろされる爪を回避し、ライダーは

後ろへと飛ぶ。

両者が睨み合う。が、ライダーはすぐさま

ドライバーのガシャットを抜いた。

 

『ガッシューン』

そして、それを、すぐさま左腰にあるスロット

へと差し込んだ。

 

『ガシャット!』

続けて、スロットにあるボタンを押し込む

ライダー。

 

『キメワザ!』

 

電子音声に併せ、両手の小太刀を握りしめる

ライダー。すると、小太刀にエネルギーが

凝縮されていく。

そして、ライダーは再びボタンを

押し込んだ。

 

『ハリケーンクリティカルストライク!』

 

「ハァァッ!」

 

小太刀を回転させ、発生したエネルギーの

渦が二つ、沢木だった者に向かっていき、

それを飲み込んだ。

そして、それが壁際に叩き付けられた

次の瞬間。

『ドォォォォォンッ!!!』

エネルギーと共に妖魔は爆発四散してしまった。

 

「恭、介」

爆発した場所を見つめながら、膝から崩れ落ちるアサギ。

その時。

「おのれアサギィィィィィィッ!!」

腕に装備した手甲から、3本の爪を展開した朧が

アサギに襲いかかった。

『『ギギィィィィンッ!』』

しかしそれを、アサギの前に回り込んだライダーの

小太刀が受け止め、押し返した。

距離を取る朧に対し、仮面ライダーが

踏み込もうとした時。

「待って、歩夢」

立ち上がったアサギが、それを制止した。

「お願い。そいつだけは、私に殺らせて。

 恭介の、仇を……!」

ギンッと朧を睨み付ける彼女の瞳は

憎悪に駆られていた。

しかし、ライダーは何も言わずに構えを

解くと、背中に小太刀を戻した。

そして彼がパチンと指を鳴らすと、

どこからか現れたプレイヤーの

一人がアサギの側に跪き、何かを掲げた。

 

それは、対魔忍が使う刀、対魔剣だった。

「……以前、朧に襲われた対魔忍の遺品だと思う。

 施設内で保管されていたのを、発見した」

「……ありがたく、使わせて貰うわ」

そう言うと、アサギは鞘と柄を掴み、一気に

刀を引き抜くと鞘を投げ捨てた。

そして、プレイヤー、ライダー、さくらが

アサギ・朧と距離を取る。

二人はそれぞれの得物を構え、動かない。

静寂がアリーナの中を支配する。

 

と、その時。

「うぉぉぉぉっ!」

先に動いたのは朧だった。

繰り出されるアサギの一刀を回避し、

背後を取った朧の一撃。それを

更に回避するアサギ。互いに背を向けた

状況から、二人は振り返る。

「死ね!アサギッ!」

そして、朧の方が一瞬早く、右手の手甲を

繰り出した。

 

その爪がアサギの体を貫いた、かに見えた。

 

しかし爪が捉えていたのは、アサギの残像だった。

 

次の瞬間、アサギのカウンターの一刀が

朧の胸を貫いた。

 

「結果は見えていた。対魔剣は妖魔を殺す

 ためのもの。

 その妖魔に魂を売り渡して手に入れた不老不死

 など所詮は仮初め。それも分からず過信

 していたお前の動きは、既に鈍っていた」

「ば、バカなっ……!」

 

そして、その言葉を最後に朧は崩れ落ちるように、

その場に倒れ動かなくなった。

 

再び、静寂がアリーナの中を支配する。

さくらとライダーがアサギに歩み寄った、

その時。

『パチパチパチ』

「いやはや、見事な戦いであったぞアサギィ」

どこからともなく、男の声と拍手が聞こえてきた。

それに対し考えるよりも早く背中の小太刀を

抜き取るライダーと周囲を警戒するプレイヤー。

 

その時、まるで空間からにじみ出るかのように

コウモリにも似た翼を広げた人間が、いや、

吸血鬼の男が現れた。

「長い年月を生きてきたが、今日は随分と

 面白い物を見させて貰ったぁ」

彼女たちの前に降り立つ男、『エドウィン・ブラック』。

「貴様はっ!?何者だ!?」

アサギとさくらを守りながら叫ぶように

問いかけるライダー。

「我が名はエドウィン・ブラック。ノマドの

 創始者にして、ヴァンパイアの一人である」

「ッ!?全機、コンディションレッド!

 警戒度最大っ!」

ライダーが叫ぶと、忍者プレイヤー達が

素早い動きでブラックを包囲し、今にも

飛びかからんばかりの殺気を滲ませる。

「ふふっ、これで私を包囲したつもりか?

まぁ、良い」

プレイヤー達に包囲されても笑みを浮かべる

ブラック。そして彼はアサギに視線を

向けた。

「対魔忍アサギ、君に問おう。

我々の陣営に入らぬか?」

その言葉に、アサギの頭に血が上る。

「私が承知すると思うのか!?」

「一度殺して妖魔として迎えるのは容易いが?」

 

咄嗟に剣を構えるアサギ。しかし、彼女の前に

ライダーが立つ。

「だったら、僕を倒してからにしてもらう」

そう言うと、ライダーは新たなガシャットを

取り出した。

 

『ドラゴナイトハンター!Z!』

 

取り出したのは、龍のレリーフを持つ金色のガシャット

だった。

それ、ドラゴナイトハンターZガシャットを

起動すると、背後の画面から小さなドラゴンの

ような物体、『ハンターゲーマ』が出現しライダー

の周囲を飛び回る。

 

『ガッチョーン』

 

そして、一旦はドライバーを閉じるライダー。

「変化、五の巻」

そう呟くと、ライダーはドライバーに

二つ目のガシャットを装填した。

 

『ガシャット!ガッチャーン!』

 

そのまま再びドライバーを開くライダー。

 

『レベルア~ップ!マキマキ!竜巻!

 ハリケーンニンジャ~!アガッチャ!

 ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナ~イト!

 ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!Z!』

 

そして、電子音声に合わせてハンターゲーマが

分離し、ライダーの各部と合体する。

 

そしてライダーは、『ハンターニンジャゲーマー・

レベル5フルドラゴン』となった。

 

「ほう?まだ上があるか。面白い」

笑みを浮かべるブラックに、ライダーは

両腕の武器を構える。

正に、一色触発の状態だ。

ライダーはすり足のように近づきながら、

息を吐き出し、隙をうかがう。

 

だが……。

「ふふ、ふっはっはっはっ!そう構えるな

 人間よ!」

突如として高笑いを浮かべるブラックに、

ライダーもアサギもさくらも、皆怪訝な

表情を浮かべた。

「我ら吸血鬼にとって、時間とは悠久

 なる物だ。今お前達と事を構える気は

私には無い」

「……」

しかし、ライダーはブラックの言葉を

信じず、構えを解かない。

「ふっ。まぁ良い。……私はしばらく日本を

 離れる。またいつか、アサギ、お前に

 出会える事を楽しみにしているぞ」

「ッ!?待て!」

アサギの制止も空しく、ブラックは闇に

溶けるように消えていった。

 

と、その時。

『ドゴォォォンッ!ドォォォンッ!』

どこからか連鎖的に爆音が響き渡り、

アリーナの床を揺らす。

「ッ!?不味い!破壊工作の威力が予想より

大きかったみたいだ!アサギ!さくらちゃん!

 ここを脱出するよ!掴まって!」

ライダーは、忍者プレイヤー達を一旦退却

させると、ハンターニンジャゲーマーのまま

背中の翼を巨大化させて浮かび上がり、二人に

手を差し出した。

咄嗟にそれを掴むアサギとさくら。

 

そしてライダーは、二人を連れてカオスアリーナの

天井を突き破り、無事二人を連れて脱出

する事に成功するのだった。

 

ライダーはそのまま、夜の空を飛び続け、

東京郊外にある雑木林の中に止めてあった

車のすぐ側へ着陸した。

 

『ガッチョーン。ガッシューン』

 

そして、ライダーはドライバーを閉じ、

二本のガシャットを抜き取る事で変身を解除した。

 

そうする事で、ライダーは橘 歩夢へと戻った。

「ふぅ」

額に汗を浮かべながらも、息をつく歩夢。

そんな彼に対し、アサギとさくらは何と

声を掛けて良いのか、迷っていた。

3人の中で真っ先に口を開いたのは、歩夢だった。

「こうして、3人で会うのはもう10年ぶりに

 なるんだよね」

「え、えぇ。そうね」

柔和な笑みを浮かべる歩夢に、戸惑いながらも

肯定するアサギ。

「本当は、色々話したい事もあるんだけど……。

 ここに止まるのは危険だ」

そう言って、彼は真剣な表情を浮かべた。

「すぐに移動しよう。実は千葉の一角に

 僕が作ったセーフハウスがある。そこへ

 行こう」

「……」

彼の提案に、アサギは最初どうしようか

迷ったが……。

「お姉ちゃん。私達の家、もしかしたら

 彼奴らにバレてるんじゃ……」

さくらの、もしもを考えた提案がきっかけ

となった。

「確かに、私達の家はもうノマドの連中に

 知られている可能性がある、か。

 分かったわ。それじゃ歩夢、お願い」

「わかった。じゃあ、車に乗って」

 

その後、車は歩夢が運転し、雑木林を出て、

東京を抜け、千葉の山岳地帯へと向かった。

 

時間はすでに真夜中だ。そして、空が

白み始めた午前4時半頃。

「ん、むにゃ」

後ろの席ではさくらが眠ってしまっていた。

それを助手席から見ていたアサギだったが、

無理も無いと思い彼女を起こそうとは

しなかった。

しかし、今のアサギも恭介の死や何やらが

あったせいで心に余裕が無く、歩夢が

脂汗を浮かべ、指先が僅かに

震えている事に気づかなかった。

 

やがて、車は僅かに舗装された程度の

道を越えて、山岳地帯にある一軒の

コテージのような場所へとやってきた。

「着いたよ。ここだ」

「そう。ほらさくら。起きなさい」

「ん、ふぁ、ぁ。あ!わ、私

 寝ちゃってた!?」

姉に起こされたことで、ようやく自分が

寝ていたことに気づいたさくら。

「うん。ここまでくれば、もう

 大丈夫だと思うよ。とにかく、まずは 

 家の中へ」

 

促されるまま、車を降りた二人は歩夢に

続いて中に入る。

コテージや別荘、と言う言葉が似合いそうな

家の明かりを付けた。

「ここって……」

中を見ながら呟くさくら。

「二人とも、悪いけどこっちへ」

中を見回している二人だったが、歩夢に

促され、二人は一つの部屋へと入る。

 

そこは、窓が無い執務室のような場所だった。

壁は一面が本棚だった。

「二人とも、悪いけどここに立って」

そう言われ、言われるがまま、本棚の

一部の前に立つ二人。すると、本の偽造

されていたスキャナーが起動し二人の

体をスキャンした。

「あ、歩夢!?これは……!」

「驚かせたのならごめん。二人には

 悪いけど、立体映像用のデータを

 取らせて貰った」

「り、立体映像?」

驚くアサギに説明する歩夢。更に首をかしげる

さくら。

「このコテージには、いくつもの投影装置が

 設置されているんだ。そして、それを

 使って映像をコテージ内部に映し出し、例え

 監視されていたとしても怪しまれない

 ようにするためにね。このコテージは

 あくまでもダミー」

そう言うと、一冊の本を取り出す歩夢。

しかし、開かれたそれは本に偽造された

何かの端末だった。端末には数字の

ボタンがあり、八桁の数字を打ち込む

歩夢。

『ッ、今の数字って』

その数字にアサギが何かを感じていた時、

不意に音を立てて本棚が動き、エレベーター

の入り口が現れた。

「す、すっごい!」

驚き、目を輝かせるさくら。

「本当のセーフハウスは地下にあるんだ。

 さぁ、乗って」

促されるまま、エレベーターに乗った

3人。そして、歩夢は更にエレベーター内の

端末に12桁の数字を打ち込むと、それは

音を立てて下方へと降下していった。

「……随分厳重なのね」

「敵が、敵だからね。用心するに越したことは

 無いよ」

アサギの言葉に応える歩夢。

 

そうこうしている内に、エレベーターは到着する。

扉が開くと、そこには白い壁の通路が

続いていた。

「こっちへ」

たどり着いた部屋は、歩夢の私室だった。

PCを立ち上げ、何かを操作すると、

仕舞っていたドライバーとガシャットを

取り出し、何かの機器に接続した。

 

「ごめん、お待たせ。それじゃ、えっ、と……」

しかし、アサギ達の方に振り返った

直後、倒れそうになる歩夢。

「歩夢!?」

咄嗟に彼を抱き留めるアサギ。

「ど、どうしたの歩夢!?まさか怪我でも……!」

「い、いや。大丈夫。肉体的な、疲労のせい、だよ」

そう言いながら、彼は黄金のガシャット、ドラゴナイト

ハンターZガシャットを見つめる。

「あの黄金の方は、まだ調整段階だった、んだ。

 それを無理に使ったから、体に負荷が、

 掛かったんだ」

そう教える歩夢を、アサギはベッドの上に

座らせた。

その時、彼女の腕も僅かに震えた。

「無理も無いわ。いろいろ合ったもの」

どうやら、アサギもかなり疲労を感じて

いたようだ。

「ごめん、二人とも。悪いけど会話は

 明日、いや、今日になるのか?

 とりあえず、まずは休もう。

 システムコマンド、マスターAI起動」

すると、歩夢は部屋の隅にあったカメラ

の方を向き喋った。

『お呼びですか?マスター』

するとカメラ横のスピーカーから

中性的な電子音声が聞こえてきた。

「井河アサギおよび井河さくらを

 一時的にマスター登録。以後、彼女

 たちの命令を受理するように」

『了解しました』

 

「あ、アユ兄。今のは?」

「このセーフハウスの監視や防衛設備を

 統括しているマスターAIだよ。

 あれは命令権を登録した人物、

 マスター以外の命令は聞かないから。

 今の二人なら命令権があるから、

 分からない事があったら聞いて。

 それと、ごめん、僕、そろ、そろ……。

 意識、が……」

それだけ言い残して、歩夢は意識を

手放し、ベッドに倒れるようにして

眠ってしまった。

 

「ど、どうしよっかお姉ちゃん」

「とりあえず、私達も休みましょう」

どうすれば良いのか迷っていたさくらの

言葉に提案するアサギ。

そして彼女はカメラの方に視線を向けた。

「ねぇ、ちょっと」

『はい、お呼びでしょうか?アサギ様』

「私達も休みたいの。使える部屋って

 あるかしら?」

『それでしたら、この部屋を出て左へ。

 すぐ隣に一人部屋がいくつか並んで

 ありますが、二人部屋を希望され

 ますか?』

「いいえ、一人部屋で結構よ。部屋を

 出て左ね?」

言われるがまま、部屋を出て左に向かう二人。

数歩歩いた隣には扉が有り、それが一定間隔で

続いていた。

中を覗けば、そこには清潔感のある白を基調

とした部屋が広がっていた。

「おぉ~!ホテルみたい!」

「そうね。……さくらはここを。私は

 もう一個隣を使わせて貰うわ。

 歩夢の事とかは、3人が起きた後でね」

「うん、お休みお姉ちゃん」

そして、二人はそれぞれの部屋に入ると

すぐさまベッドに倒れるようにして体を

預けた。

 

だが、アサギだけは……。

「……。恭、介」

亡き恋人を思い、一人だけ涙を流すのだった。

 

 

それから、約6時間後。

もうすぐお昼になろうと言う時、アサギとさくらは

目が覚めた。

彼女たちは、それぞれの部屋に併設されていた

シャワールームで汗を流した。

そして、歩夢も二人に1時間ほど遅れて

目を覚ました。

「……う、う~ん。……アイ。居る?」

『お呼びですか?歩夢様』

AI、アイと名付けているAIを呼び出す歩夢。

「うん。今の時間は?それと、アサギと

 さくらちゃんは?」

『現在の時刻は午前12時17分です。

 アサギ様とさくら様は左隣の一人部屋

 で休憩なさった後、今より1時間程前に

 起床されました』

「二人とも、起きてるのか。ありがとう」

そう言うと、歩夢もベッドから起き上がり

シャワーで汗を流した。

そして新しい服に着替えた歩夢は

部屋を出て隣の、二人の部屋へと

向かった。

「アサギ~、さくらちゃ~ん。

 起きてる~?」

二つの部屋のドアを叩き、中に呼びかける。

数秒して、中からバスローブ姿の

二人が出て来た。

「おはよ~」

「おはよう歩夢。もう大丈夫なの?」

さくら、アサギの順で挨拶をし、

アサギは彼の事を気遣った。

「うん、ちょっとした過労だから。

 一眠りもすればね。ッ!」

と、会話をしていた時、何気なく視線を

下に向ける歩夢。そして彼は、二人の

バスローブの隙間から見えるその

豊満な胸に、すぐさま顔を真っ赤にして

回れ右してしまった。

「?歩夢、どうしたの?」

「ごごご、ごめん!部屋にはバスローブしか

 無かったよね!すぐにAIに何か服を

 用意させるよ!ここには色々置いてあるから!

 ちょ、ちょっと待ってて!」

 

その後、保管してあった服を貸してから、3人は

歩夢が作った昼食を食べた。

食後に3人で揃ってお茶を飲んでいた時。

「あの。歩夢、いろいろ合って聞きそびれて

 いたけど、説明して欲しい事がたくさんあるの。

 質問、良いかしら?」

と、まずアサギが口を開いた。

「そうだね。それじゃあ、僕が里を出た、いや、

 追放された後の事から話そうか。

 ……二人も知っての通り、僕は対魔忍として下の下。

 底辺の力しか無かった。だから対魔忍になる

 素質無しの烙印を押され、里を追放。

 一般の人の家の養子となり、二人とは

 幼なじみでも無い、赤の他人になった」

「えぇ、そこまでは私たちも分かるわ。

 ……よく、覚えているわ」

そう言って、悲しそうな表情を浮かべるアサギ。

「結局、泣き別れになっちゃったもんね」

さくらも、あの日の悲しい別れを思い出し、

俯く。

「そう、だね。……けれど、僕は知っていた。

 女性の対魔忍が生きたまま妖魔に掴まる事が、

 何を意味しているのかを」

歩夢は、真剣な表情で話し始めた。

「だから考えてしまった。もし二人が

 成長して、立派な対魔忍になって、その

 もしもが起こってしまったら。そう思うと、

 僕の中にやるせなさが芽生えた。

 ……だから、僕は色んな事を学んだんだ。

 主にシステムエンジニアリングやエネルギー

 工学、機械工学なんかをね。そして、高校生の

 時、ゲームアプリを開発して、それ売り出して

 金を稼いだ。その後、高校を卒業してゲームメーカーに

就職、自分のスキルを磨いた後、起業。

色んなゲームやら電子機器、OSなんかの

開発に力を入れたんだ。『Dコーポレーション』

って、知ってる?」

「あ、聞いたことある。最近急成長してる

 メーカーって。……え?って言うかまさか

 それの創設者って!?」

「うん、僕なんだよ」

と言うと、アサギとさくらは心底驚いたような

表情をしていた。

「と言っても、起業した段階で僕は社員に

 過ぎなかった。トップは僕が雇った社長でね。

 どこに敵が居るか分からない以上、

 目立ちたくは無かったから。それが、

 4年ほど前の事だった。会社の経営が 

 軌道に乗り、僕の元に莫大な資産が

 舞い込んだ。そして僕は起業した時から

 コツコツ設計開発していた武器の

 開発を本格的に開始したんだ」

「そこまでして、アユ兄ちゃんは……」

 

「うん。僕は二人を守りたかった。

 そのためだけに僕は、ここまで来た」

 

優しい表情で呟かれたその言葉に、

二人は頬を赤く染めた。

 

彼は、二人を守る。たったそれだけの

目的の為に知識を蓄え、物を作り、売り、

金を稼ぎ、企業を立ち上げ、武器を作り、

現に二人の救出に現れた。

簡単な道のりでは無いのは誰でも分かる。

しかし、それが逆に、歩夢の二人に対する

思いの強さを示していた。

 

やがて、頭をかぶり振ったアサギは

話題を変えようとした。

「それで、歩夢。あなたが使ったあれは?」

「あれは、『マスクドライダーシステム』の

 試作1号機だよ」

「マスクド、ライダーシステム?」

「そう。……僕が持つ知識の全てを使って

 開発した、装着型コンバットスーツ、

 とでも言えば良いかな。軍にも、似たような

 装備があるけど、もっと強く、速く、

 同時に携帯性を突き詰めて行ったんだ。

そして、システムの第1世代機、ゲーマドライバー

とガシャットの開発に成功したんだ」

「それが、あの時に変わった?」

「うん。仮面ライダーだよ」

「あ、じゃあアユ兄ちゃんが連れてたあの

 一つ目お化けは?」

「あれは忍者プレイヤー。ライダーの

 補佐をする、まぁロボット、と言うより

 疑似生命かな。ハリケーンニンジャガシャット

 から一定範囲に出現し、攻撃などの 

 物理干渉も可能な仲間。必要に応じて

 展開と収納が可能なんだ。戦闘力は、

 ライダーに少し劣る位だから、仲間としては

 頼もしい限りなんだけどね」

 

「……歩夢、あなたはこれからどうするの?」

「僕は、二人を守るよ。これからも」

アサギの問いかけに、歩夢は何ら躊躇う事

無く決意の籠もった表情で頷いた。

 

「そのための開発をこれからも続ける。

 ……あの吸血鬼、エドウィン・ブラックや、

 二人を脅かす全てから二人を守る。

 この命を賭けても」

 

それは、主君に忠誠を誓う騎士の

ようであった。

守るべき人の為に、その命さえ

惜しまない程の決意が、彼にはあった。

 

「それに、これはあの人の、沢木恭介さん

 からの願いでもあるから」

「ッ!?どういうこと!?恭介の願いって!?」

「……アサギ。落ち着いて聞いて欲しい。

 僕と妖魔が戦っていた時、まだ沢木さんの

 精神が残っていたんだ」

「ッ!?」

歩夢から教えられた事に驚き息をのむアサギ。

「沢木さんは、意識が消えかける中で、アサギを、

 君を狙う全てから守って欲しいと、僕に

 そう頼んできたんだよ。自分の代わりに、彼女を

 幸せにして上げて欲しい、と」

「ッ!恭介……!」

その言葉を聞いた瞬間、アサギの瞳から

大粒の涙が流れ落ちる。

 

「それと、恭介さんから伝言を預かっているんだ。

 『僕は、君と出会った事に後悔はしていない。

  こんな最期になってしまったことに悔いは

  残るけど、僕は幸せだった。だからアサギ

  には、次の幸せがある事を願っているよ』と」

「ッ!!恭介、恭介!うぅ、うぅぅぅ!

 あぁぁぁぁぁっ!」

彼の、恭介の思いを聞いたアサギは、机に

突っ伏し、喉が張り裂けんばかりに泣いた。

さくらも、そんな姉の背中を優しく撫で、

歩夢も彼を救えなかった自分自身への

怒り。そして、ノマドやブラックへの

激しい怒りを燃やすのだった。

 

そして、30分ほどして落ち着くアサギ。

「ごめんなさい、取り乱してしまって」

「仕方ないよ。事が、事だから」

そう言いつつも、歩夢は掌をギュッと

握りしめ、『あのこと』を知らせようと

決意した。

 

「実は、沢木さんはもう一つ、僕に教えてくれた

 事があったんだ」

「え?」

と、疑問符を漏らすアサギ。

 

そして、歩夢は語った。今回の事件の原因の存在を。

それを知った時、アサギとさくらは、表情を歪ませ

爪が皮膚を突き破らんばかりに、固く拳を

握りしめるのだった。

 

 

数日後。夜。

どことも知れぬ森の中に、一軒家があった。

そこにやってきたアサギ。そこには一人の

老人がいた。アサギとさくらの祖父にして、

対魔忍を統べる統領。しかしその男には

もう一つ、名があった。

『裏切り者』という名が。

この老人は、朧暗殺の為にアサギの情報を

流し、恭介を差し出した。と言う事実。

それは消えかけていた恭介から歩夢へ

渡った情報だった。

「対魔忍伊賀忍者統領として、

 あなたを処罰します」

「私を殺せば、政府を敵に回す事に 

 なるぞ?」

脅しとも取れる言葉。だが……。

 

『ズバッ!』

「ぐあぁぁっ!」

闇の中から現れた仮面ライダーが、

老人の体を切り裂いた。

「ば、バカなっ!?」

「……政府は、お前に裏切り者の烙印を

 押し、僕にお前の抹殺を依頼した」

振り返り、ライダーを睨み付ける老人。

しかしライダーはその老人を、仮面の下から

見つめるだけだった。

老人、裏切り者は血を流し、息絶えた。

外からさくらもやってきた。

しばし、沈黙が場を支配する。

 

キンッ、と言う音を立て小太刀を仕舞うライダー。

「……終わったね」

静かに呟くさくら。

「いいえ。これは、始まりよ」

そう言うと、アサギは老人の側に歩み寄り、

静かにその瞳を閉じる。

「私は、対魔忍に復帰するわ」

「……」

「お姉ちゃん」

アサギの言葉に、無言のライダーと

心配そうな表情を浮かべるさくら。

 

『ガッチョーン。ガッシューン』

「あの人は、沢木さんはアサギの幸せを

 望んでいた。それでも?」

歩夢は、変身を解除しながら問いかける。

「恭介は、それを望んでくれた。でも、

 あの人を失った今、私にはこれしか

 進める道は無い。……戦う事しか」

「……分かった」

ただ一言、歩夢は頷くと外へ出た。

しばし躊躇ってから、それに続くさくら。

 

「恭介……」

そして一人残されたアサギは、彼の名を

呟くのだった。

 

 

~~~

カオスアリーナでの一件から既に

一ヶ月が過ぎた。

 

夜の東京を、ビルの上から見下ろす人影があった。

対魔忍のスーツに身を包んだ、アサギとさくらだ。

そこへ。

『ザッ!ザザザッ!』

「……お待たせ」

数十人の忍者プレイヤーを連れたライダーが

現れ、二人の後ろに着地した。

「大丈夫よ。それより、良かったの?

 あなただって、あなた自身の人生を

 歩むことが出来たはずよ。あなたは……」

「そうだね。僕は対魔忍から追放された身だ」

アサギの言葉に頷きながら、ライダーは

前へと進み、二人と並ぶ。

 

「それでも、僕は二人を守ると誓った。

 沢木さんに、アサギを守ると約束した。

 だから、僕も戦う。仮面ライダーとして」

その言葉と共に彼は二人の顔を交互に見つめる。

 

「そう」

とだけ頷き、アサギは何も言わない。

「アユ兄ちゃんって、昔から頑固な所

 あったよね~」

「そ、そうかな?」

笑みを踏んださくらの言葉に首をかしげるライダー。

それを見ていたアサギもまた、笑みを浮かべるが、

彼女がその表情を引き締めた途端、二人も

表情を引き締めた。

「さぁ、行きましょう」

 

そう言うと、アサギはビルから飛び降りる。

さくらもそれに続き、ライダーもビルの

縁から飛び降り、無数の忍者プレイヤーも

それに続く。

 

対魔忍。それは妖魔と戦う者たち。

しかし、ある日を境に彼らと共に戦う

者が現れた。

 

全ては、大切な人を守る為。

絶望から誰かを救う為。

 

仮面ライダーは、悪辣なる存在を、絶望を、

決して許しはしない。

 

     第2話 END

 




前書きに書いたとおり、次回はHシーンをメインに
書いていきます。
レイプ要素は100%排除した純愛系で行きます。
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