第1章第2話から派生したストーリーとなっています。
~~これは、あり得たかも知れないIFの物語~~
時は、歩夢が恭介だった妖魔と戦う、その時まで
巻戻る。
そして、これはそこから分岐した世界線の物語。
今、救出されたアサギとさくら、仮面ライダー
の前に妖魔と化した恭介が立っていた。
しかし……。
「アサギ」
静かに、アサギの前に立っていたライダーが
彼女の方へ振り返る事無く、声を掛ける。
「もしかしたら、僕なら沢木さんを救える
かもしれない」
「ッ!!」
アサギはその言葉に一瞬、目を見開く。
そして彼女が視線を上げれば、そこには
仮面ライダーの背中がある。
「可能性は、未知数だ。出来るかは、
分からない。それでも、僕は……」
そう言いかけた時。
『ガシッ』
アサギは、縋るようにライダーの右手を
両手で握りしめた。
「お願い、歩夢。お願い、恭介を、
助けて」
その目に涙を浮かべ、必死に懇願するアサギ。
その涙が、溢れ、地に落ちる。
その姿に、仮面ライダーは静かに
首を縦に振る。
自分が大切だと思う彼女の、その思い人。
そして、アサギの涙。
例えそれが、無謀な賭けだとしても。
仮面ライダーは、諦めない。
「うん。助けるよ。絶対に!」
そして、仮面ライダーは駆け出した。
「ウ、ウォォォォッ!!」
妖魔は、いや、恭介が体中から触手を
仮面ライダー目がけて放つ。
「『ガシャコンキースラッシャー』!」
仮面ライダーは、己が武器の名前を叫ぶ。
すると、彼の側に、剣、銃、斧が一体と
なった武器、ガシャコンキースラッシャーが
回転するように現れ、彼の手に収まった。
そして、彼はスラッシャーの中央にある
ボタンを押す。
『ズキュキュキューン!』
GUN、と書かれた黄色いボタンを
押すライダー。
「はっ!」
『ドンドンッ!』
そして、ライダーが引き金を引くと
スラッシャーから光弾が放たれ、触手を
次々と撃ち抜いていく。
そして、仮面ライダーは全ての触手を
撃ち落とすと、懐から白い、厚みのある
ガシャットを取り出し、起動する。
『ドクターマイティダブルエックス!』
「沢木さん、あなたの運命を、
変えてみせます!はぁっ!」
白いガシャット、『ドクターマイティ
XXガシャット』をスラッシャーの
スロットへと突き刺すライダー。
『ダブルガシャット!』
「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ライダーは、スラッシャーの刀身を
青白く輝かせながら走る。
触手をくぐり抜け、恭介へと迫る。
「ウォォォォッ!」
爪を振り上げる恭介。しかし……。
「はぁっ!」
『ズザザザザッ!』
「ウッ!?」
振り下ろされる前に、ライダーが
スライディングで懐に滑り込んだ。
『ジャギッ!』
スラッシャーの銃口が恭介の腹部に
突き付けられた。
そして……。
『キメワザ!ドクターマイティ
クリティカルフィニッシュ!』
『チュドォォォォンッ!』
青白い閃光が銃口から溢れ出し、
沢木の体を覆ったかと思うと、
二人は爆煙に包まれた。
一瞬、アサギとさくらが息を飲む。
だが、直後。
『シュタッ!』
煙の中から人影が現れ二人の側に着地した。
それは、気絶し、人間の姿に戻った沢木を
背負った仮面ライダーだった。
「ッ!歩夢!恭介!」
二人の名を呼び駆け寄るアサギ。
そして……。
「う、うぅ。アサ、ギ?」
僅かに目を開く恭介。
「えぇ!えぇ!そうよ!私よ!
恭介、分かる?」
その目に涙を浮かべ、元に戻った
恭介を見て喜ぶアサギ。
しかし、そこで恭介の意識は一旦途絶えて
しまうのだった。
そして、恭介が再び覚醒した時。
「う、うぅ。ここ、は……」
目覚めた恭介。しかし彼の視線の先には
知らない天井が広がっていた。
そして彼は周囲を見回し、自分がベッドに
眠っていて、点滴を打たれて居る事など
が分かった。そして……。
「すぅ、すぅ」
ベッドのすぐ側に置かれた背もたれ付きの
椅子に座ったまま眠っていたアサギが居た。
「あ、アサギ。アサギ」
恭介は、だるい体を起こし、アサギに
向かって手を伸ばした。そして、膝の上
に置かれていた手に、自分の手を重ねた。
すると……。
「ん、んん……」
彼女の瞼が震え、目を開いた。そして……。
「はっ!?きょ、恭介!目が覚めたの!?」
すぐに彼に気づいて、アサギは驚いた。
「あぁ。今、目が覚めたんだ。それより、
アサギ、ここは……」
と、問いかけようとした物の……。
『バッ!ギュッ!』
アサギはそれを遮るように恭介を
抱きしめた。
「あ、アサギ?」
これに戸惑う恭介だったが……。
「う、うぅ、良かった。本当に、
良かった。戻ってきて、くれて……」
アサギは、彼に抱きつき首元に手を
回しながら嗚咽を漏らす。
それを聞き、恭介も……。
「ただいま、アサギ」
「お帰りなさい、恭介」
二人は、そんな言葉を交わすのだった。
数十分後、ようやく落ち着いたアサギは
歩夢とさくらを呼びに行った。
「お加減はどうですか?沢木さん」
「あぁ、大丈夫です。特に問題は
ありません。……えっと」
自己紹介がまだであった為、恭介は
言葉を詰まらせた。
「あ、自己紹介がまだでしたね。
僕は橘歩夢と言います。アサギと
さくらちゃんの幼なじみです」
「二人の?あっ。あの、それでここは
一体?」
「そうですね。では、まず順番に説明を」
その後、恭介は自分の身に起こった事を
話し、逆にアサギ達は恭介を人間に戻した後、
朧を倒し、エドウィン・ブラックと
出会いつつ、カオス・アリーナを爆破して
脱出。歩夢のセーフハウスへやってきた事。
恭介が3日眠っていた事を話した。
「3日も僕は眠っていたんですね」
「はい。一応、こちらでもバイタルは
確認していましたが、現状問題は
ありませんから、安心して下さい」
「そうですか」
と、頷いたものの、恭介には聞きたい事が
あった。
しかし問題が問題であるが故に、恭介は
聞きづらかった。
しかし、それを察する歩夢。
「沢木さん。実は、酷な事を言ってしまい
ますが、あなたは完全に人間に戻った
訳ではありません」
「……。やはり、そうですか」
「恭介、驚かないのね」
静かに頷く恭介に、問いかけるアサギ。
「やっぱり自分の体の事だからね。
それで、橘さん。僕は、どうなって居る
んですか?まさか、また妖魔になる、
と言う事は?」
と、不安気味に問う恭介。
しかし歩夢は笑みを浮かべた。
「ご心配には及びません。確かに、完全に
人間に戻れた訳ではありません。が、
だからと言って妖魔になる可能性は
低いんです」
そう言うと、歩夢は懐からドクターマイティ
XXガシャットを取り出した。
「それは?」
「これは、沢木さんを人間に戻す時に
使った物です。……とあるルートで、
最近ノマドが人間の妖魔化に関する
研究をしていると情報を掴んだので、
念のためにと、開発していた物です。
これは、妖魔の力に犯された人間の
体、もっと言えば細胞や体組織を浄化し
人間のそれに戻す為の物です。効果は、
今の沢木さん自身で証明されています」
「そうですか」
と、聞かされ安堵する恭介。
「良かったね、沢木お兄」
さくらも、その事実に笑みを浮かべる。
「歩夢。その、恭介は、人間に戻れるの?」
そして、アサギはその問いかけをした。
「……今のこのガシャットの効果では、
精々肉体の5割の浄化とそれをある程度
維持し、妖魔の力の侵攻を抑えるのが
限界だね。ただ、これはまだ未完成品
なんだ。研究を続けていれば、いずれは
可能になるかもしれない。
時間は掛かるけど、不可能じゃない。
って事だけは言えるよ」
つまり、歩夢の治療を受けていれば、恭介が
妖魔になる事は無い。
その意味に安堵し息をつくアサギだった。
そして、歩夢、恭介、アサギ、さくらの
4人の共同生活が始まった。
アサギ達はノマドやその他の組織に目を
付けられている可能性から。
恭介は、いざと言う時歩夢の治療を
即座に受けられる為に。
そして、それから既に2週間ほど経過した。
さくらは千葉の高校へ転校。アサギと恭介も
近くの市場で仕事を貰い、歩夢も在宅勤務へと
移っていた。
しかし……。
「ごちそうさま」
先に食事を食べ終えた恭介は、アサギに声を
掛ける事無く、地下へと行ってしまった。
アサギは、そんな彼に何かを言おうとしたが、
直後に口を紡いでしまった。
そんな二人の様子を見ていた歩夢とさくら。
「何だか、お姉ちゃんと沢木お兄、元気
無いね」
「うん。そうだね」
さくらの言葉に頷く歩夢。
ちなみに、今の二人は既に告白し合い、
相思相愛の仲になっていたが、二人が
あの様子であった為、報告の機会を
逃して居たのだった。
そして、そんなある日の夜。
『コンコンッ』
「ん?は~い」
夜の地下セーフハウス。歩夢が自室で
パソコンに向かい研究をしていると、
扉がノックされた。
「橘さん。恭介です。今って大丈夫
ですか?」
「えぇ、どうぞ」
「失礼します」
と、歩夢が促すと中へ入る恭介。
彼は、歩夢の近くの椅子に腰を下ろした。
「それで、どうかしましたか?」
「はい。実は、橘さんに折り入って相談が
あるんです」
しばし間を置き、彼は……。
「僕を、仮面ライダーにする事は可能
ですか?」
その言葉と表情に、歩夢は驚かない。
恭介の決意は、彼と何ら変わらないからだ。
「アサギを、守る為ですか?」
「はい」
歩夢の言葉に、恭介は迷うこと無く頷く。
「今回、僕がノマドに捕まったばっかりに、
アサギを酷い目に遭わせてしまったんです。
もう二度と、アサギをあんな目に
遭わせたくない。そう思うと、いても
立ってもいられなくて」
「そうですか。……しかし、酷な話でしょうが
今の沢木さんでは、仮面ライダーになる事は
無理なんです」
「え!?どうして!?」
「……ライダーになるためには、特殊な力を
体内に投与し、適合しなければなりません。
しかし、この力と沢木さんの妖魔の力は、
とても相性が悪いんです。そのため……」
「そ、そう、ですか」
歩夢の説明に項垂れる恭介。
しかし……。
「……。方法が、無い訳ではありません」
項垂れる彼を見て、歩夢が呟くと恭介は
視線を上げる。
「ほ、本当ですか!?一体、その方法とは!?」
「……。沢木さん。今の沢木さんは、
言わば半人半妖。現在はドクターマイティ
の力で人間としての意識と姿を保ちつつ、
妖魔の力の侵攻を抑えています。
……しかし、妖魔の力は常人など遙かに
超える物。つまり、外部からの刺激で
妖魔の力を活性化させ、一時的に肉体を
変化させるのです」
「つまり、妖魔の力を、引き出す、と?」
歩夢は、無言で沢木の言葉に頷くと、
パソコンを操作し、画面の一つを
映し出した。
「これは?」
それを見て首をかしげる恭介。
「これは、『ネオアマゾンズドライバー』。
僕の変身する仮面ライダーのドライバー
とは、別のベクトルから創り出した
試作品です。しかし、これを使いこなす
には人間を止める、と言って言い程の
生体改造が必要でした。対照的に、
ゲーマドライバーのライダーは
それに比べてまだ簡易な適合手術を
行うだけだったので、こっちの
ドライバーは開発を凍結していた
んですが……」
「半人半妖の僕にはぴったり、と言う
訳だね」
「ですが、これは同時に危険を伴います。
妖魔の力を刺激する、と言う事は沢木
さんの体の中で妖魔の力が強まると言う
事。幸い、ドクターマイティがあるので
僕が近くに居ればそれを押しとどめる事が
可能です。しかし、そうでなければ……。
沢木さんが、完全に妖魔化する可能性が
あります。もし、そうなれば
沢木さんは……」
「本当の怪物になり、アサギや、君を
傷付けてしまうかもしれない、
と言う事か」
「はい。……沢木さん。あなたは、一般人
です。僕も、さくらちゃんも、そして
恐らくアサギも。あなたに戦う事を
求めている訳ではありません。
……それでも、力を求めますか?」
「……」
歩夢の言葉に、しばし黙り込む恭介。
しかし……。
「はい」
彼は、決意の籠もった瞳で真っ直ぐ歩夢を
見つめながら頷いた。
「もし、完全に妖魔となったら、恐らく
僕の手ではどうしようも無い。
そうなれば、僕は、アサギを守る
為に、あなたを……」
「構いません。もし僕が、アサギに
牙を剥くような事があれば……。
橘さん。貴方の手で、僕を殺して
下さい」
「……。分かりました。僕も、出来る限り
このドライバーの性能を底上げし、
沢木さんにあったチューンを施します。
……ですが、どうか生きることを
諦めないで下さい。もし、またあなたを
失ったら、アサギは……」
「分かっています。それでも、お願いします」
「……。最善を、尽くします」
その後、恭介は歩夢の部屋を後にした。
しかし、二人は知らなかった。
アサギが、その会話を聞いていたことを。
それから数日後。
恭介の、彼の方からアサギをデートへ
誘い、二人は千葉のとある街へと
出かけていた。
今はとあるアクセサリーショップを
覗いていたのだが……。
「これなんかアサギに似合うんじゃ
ないかな?」
「そ、そう、かしら」
アサギの方は、どこかよそよそしい
感じだった。
そして……。
「ねぇ、さくらちゃん」
「ん~?何、アユ兄」
「これって、大丈夫なのかな?」
アサギと恭介のデートを離れた所から
見守っているさくらと歩夢。
「これって、ストーキングじゃ?」
「何言ってるのアユ兄。大体、今の
お姉ちゃん達を心配しているのは
アユ兄も同じでしょ?」
「……。それは、まぁ、ね」
さくらの言葉に頷く歩夢。
ここ最近、アサギと恭介の二人(特に
アサギの方が)はどこか余所余所しく、
今回のデートを誘われた時、さくらは
偶々近くに居て聞いていたが、アサギ
はどこか戸惑っている様子だった。
それを気にして、さくらは歩夢と
共にこっそりと二人の後を付けていた
のだった。
「やっぱり、お姉ちゃんは気にしてる
んだと思う。沢木お兄の事。
自分のせいで、って」
「……。本来、その罪はノマドにある。
沢木さんを人質にして、奴らは
アサギを……」
言いかけ、歩夢の手に力が籠もる。
その時、隣に居たさくらが、そっと
歩夢の手に自分の手を重ねた。
「ありがとう、アユ兄。アユ兄は、
前からそうだったね。優しくて、
私達の為に、色々してくれて。
私達の為に、戦って、怒ってくれて。
……ありがと、アユ兄」
「さくらちゃん」
歩夢は、静かにさくらの手を握り返した。
そんな中で、彼は……。
『僕は今、さくらちゃんの為なら、命すら
賭けて戦える気がする。
……沢木さん、あなたも、そうなん
ですか?』
と、一人そんな事を考えていたのだった。
その後も……。アサギと恭介はデートを
続けた。そして気がつけば、夜。
二人は人気の無い、夜の海浜公園に居た。
「アサギ、今日のデートは、楽しかった?」
「え、えぇ。楽しかったわよ?」
肯定するアサギ。しかし、やはりどこか
余所余所しい。
それを見て、僅かに押し黙る恭介。
しかし、彼は懐から何かを取り出すと、
彼女の前に跪いた。
「アサギ、僕は改めて君に、僕の想いを
告げる」
そう言うと、彼は取り出した小箱を開いた。
「僕と、結婚して下さい」
その箱の中身は、銀色に輝く結婚指輪が
収められていた。
しかし、それを見たアサギは……。
「……ダメよ」
そう呟いて、彼から目を背けるように、
彼に背を向けた。
「ダメよ、ダメよ、恭介。私は、あなたと
結婚なんて、出来ない」
体を震わせながら、そう呟くアサギ。
今の彼女は、必死に嗚咽を堪えていた。
「それは、今の僕が、半分妖魔だから?」
「違うっ!」
静かに呟かれた言葉に、アサギは
振り返り、目尻に涙を溜めながら否定する。
「恭介の事は大好きよ!愛してる!
でも、でも、私のせいで、恭介は……!」
彼女は、責任を感じていた。
自分と恭介が出会わなければ……。
恋に落ちなければ……。
沢木が妖魔になる事など無かった。
今でも普通に暮していたはずだ、と。
「私なんかと居たから、恭介は
あんな事に……!
ごめん、なさい。ごめんなさい」
そして、アサギは堪えきれなくなった
嗚咽を漏らしながら、その場に膝を突いた。
「アサギ」
恭介は、崩れ落ちそうになっていた
アサギを抱きしめ、自らの想いを、
伝えようとした。
しかし、それに水を差す物が居た。
「へっへっへっ、見つけたぞ。
対魔忍アサギ」
不意に、暗がりから下卑た声が聞こえた。
アサギは咄嗟に恭介を庇いながら声の
した方を警戒する。
すると、その暗がりの中からオークが、
ざっと見積もっても100匹以上現れ、
二人を半円状に囲んだ。
「貴様等、何のようだ!」
恭介を庇いながら、出来るだけ強気な
態度を取るアサギ。
「はっ!知れたこと!ノマドの
エドウィン・ブラックがテメェを
欲しがってるって聞いたんでな!
とっ捕まえてノマドに取り入る
のさ!」
リーダー格と思われるオークが
得意げに語ると、じりじりと周囲の
オークが包囲の輪を縮めてくる。
今のアサギは、対魔剣を持っていない。
この状況は不味い。そう考えていた。
その時。
『グッ』
彼女の後ろの恭介が、アサギの肩に手を置き、
そのまま腕を引きアサギを後ろへと下げた。
「ッ!?恭介、何を!」
「アサギ。……君は逃げろ。僕が時間を
稼ぐから」
「ッ!?ダメッ!」
しかし、恭介はアサギの制止の声も聞かず、
彼女を後ろへ押しのけると正面の
オークに向かって言った。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
叫び、拳を振り上げ向かっていく恭介。
しかし、オークといえど能力差は並ではない。
まして今の恭介は、ドクターマイティの力で
妖魔としての力を押さえ込んでいる。
つまり、能力的には普通の人間と大差無い。
「はっ!邪魔だぁっ!」
先頭のオークが、手にしていた棍棒を
振り上げる。
「ダメッ!恭介ぇぇぇぇっ!」
このままでは恭介が……!
そんな思いと共に叫ぶアサギ。
と、その時。
『ハリケーンクリティカルストライク!』
「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
横合いから、エネルギーを纏った跳び蹴り、
ライダーキックを繰り出し、恭介に向かって
棍棒を振り上げていたオークを蹴り飛ばし
現れる仮面ライダー。
オークを蹴っ飛ばしたライダーは、
恭介を抱えてアサギの元まで下がった。
更に……。
「お姉、沢木お兄!」
対魔忍スーツに身を包んださくらと
それに従うように忍者プレイヤーが
現れた。
「歩夢!それにさくらまで!?
どうして!?」
「ごめん!ちょっと心配だったから
二人の後付けてた!
お説教は後で聞くから、これを!」
驚くアサギに説明したさくらは、
腰元に携えていたアサギの対魔剣
を渡した。
「お姉はお兄を守ってて!アユ兄!」
「うん!はぁぁっ!」
頷き、仮面ライダーはさくらと共に
オークの群れと戦闘を開始した。
それを見ているアサギ。その時。
「アサギ、大丈夫?」
彼女の顔をのぞき込む恭介。
そして、彼の顔を見た事でアサギは、
さっきまでの恭介の行動を思い出す。
「どうして……?」
「え?」
突然の言葉に、呆けた返事をする恭介。
「なんで、何で逃げなかったの!?
私の、私のせいで恭介は辛い目に
あったのに、何で!?」
そして、アサギはその目に涙を浮かべながら
彼の胸を叩く。
アサギは、思って居た。
自分なんかが恭介と出会わなければ、
恭介は妖魔になり苦しむ事も
無かった。
自分では恭介を幸せに出来ない。
だから、この思いを、恋を、
『実らせるべきでは無い』。
そう、考えていた。
しかし、恭介は違った。
「アサギ」
彼は、彼女の名を呼びながらアサギを
優しく抱きしめた。
それだけで、アサギは目尻に涙を溜める。
「僕は、君と出会った事に後悔なんて
してない。アサギとの日々は、幸せだった。
その気持ちに、嘘は無い。
そして……。僕は何度でも言う」
静かに抱擁を緩め、彼はアサギと
向かい合う。
「井河アサギさん。僕は、あなたを
愛しています」
「ッ、ッ!!」
その言葉だけで、アサギの頬を涙が伝う。
そして、恭介はアサギを守るように
オーク達を睨み付ける。
「今の僕は、非力だ。だから、
変わってみせる。
そして、乗りこなしてみせる。
僕の中にある、妖魔の力を」
自らの右手を見つめ、ギュッと拳を
握りしめる恭介。そして……。
「仮面ライダーッ!!!」
彼は声を張り上げる。
呼ばれ、一旦オークと距離を
取り、彼と向き合うライダー。
「僕に、力を下さい!愛する人を、
守る為の力を!」
その声には、彼の思いが込められていた。
アサギを守ると決めた決意。
そのために、自分の中の妖魔と
戦う覚悟。
それを見た仮面ライダーは……。
「……」
彼は、どこからかネオアマゾンズ
ドライバーを取り出し、それを
見つめる。やがて……。
「……これを」
それを、恭介に差し出した。
ネオアマゾンズドライバーと、
インジェクターを受け取る恭介。
ライダーは、ドライバーを渡すと
戦闘へと戻っていった。
「恭、介」
彼の名を呼ぶアサギ。
「アサギ。僕は戦うよ。自分の中の
妖魔と、そして、君を害そうと
する全てから、君を守る。
今度こそ……!」
そう言うと、彼はドライバーを
腰に巻く。
そして、彼は左側面を向くスロットに、
左手に持ったインジェクターを突き刺し、
上に傾けると、インジェクターを押し込んだ。
『NE・O』
電子音声と共に、ゴポゴポと泡立つような
音が響く。
そこへ、プレイヤーの壁を突破した
数人のオークが襲いかかってくる。
「ッ!恭介!」
咄嗟に叫ぶアサギ。
しかし、恭介は恐れない。退かない。
いや、退くわけには行かない。
なぜなら後ろに、愛し守るべき
彼女がいるのだから。
「彼女に手を出す者は、僕が、
倒す!」
そして、恭介はその目を赤く光らせ
ながら、オーク共を睨み付ける。
そして……。
「う゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」
野太い、獣のような咆哮が夜の公園に
響き渡る。
そして……。
「ア゛マ゛ソ゛ン゛!!!」
『ブワッ!!!』
彼の叫びに呼応するように、次の瞬間
彼の体から、熱波が拭きだし、襲い
かかって来たオークを逆に吹き飛ばした。
突然の熱波に顔を腕で覆うアサギ。
幾ばくかして、熱波の並が収まった時、
彼女は恭介の方を向き、驚いた。
そこに立っていたのは、恭介
では無かった。
青い体。体の上を走る、赤い模様。
その体を覆うように、手足と胴体に
付けられた、銀色の鎧。
頭部も、まるで本来の顔を鋼鉄の
仮面で隠しているようだった。
そう、それはまるで、内なる獣の力を
人の技術で押さえ込んでいるかの
ように見える。
「な、何だテメェは!」
異形となった恭介を前に驚く
オーク達。
そんな中で、恭介、いや、
『第2の仮面ライダー』は
一歩一歩、妖魔へと向かっていく。
「僕は、僕は、人間でも、妖魔でも無い。
今の僕は……。
『仮面ライダー』だっ!!」
叫び、次の瞬間、新たな仮面ライダー、
『アマゾンネオ』は駆け出した。
「はあっ!!!」
地を駆け抜け、疾走し、そしてアマゾンネオ
はオークに一匹に飛びかかり、腕を
振り抜いた。
『ズバッ!』
「ギャァァァァァッ!!」
次の瞬間、アマゾンネオの腕の刃、
アームカッターがオークの体を切り裂き、
刃は血に濡れる。
更に、その場で回し蹴りを放つ
アマゾンネオ。ふくらはぎに
装備されているフットカッターが
オークの胴体を横一文字に切り裂いた。
その時、ネオの背後からオーク数体が
飛びかかる。
だが……。
「はぁっ!」
『ズバズバッ!!』
それを仮面ライダーが切り裂いた。
そして仮面ライダーはネオの後ろに
着地した。
背中合わせのアマゾンネオと仮面ライダー。
「沢木さん。あなたは……」
「大丈夫です。僕の意識は、
魂は消えていません。
僕は乗りこなして見せます。
この力を……!」
「……。なら、一緒に戦いましょう。
僕達の、守りたい人を守る為に!」
「はいっ!」
彼らはうなずき合い、仮面ライダーは
双剣を構える。そしてアマゾンネオも。
「守る。守り抜いて見せる!
彼女を、アサギを!」
アマゾンネオは叫び、左手で
インジェクターを押し込む。
『BLADE LOADING』
すると、電子音声が響き渡り、
アマゾンネオの右腕前腕部のパーツが
開き、中から刀身が現れた。
形作られたピストルグリップを
握り、構えるアマゾンネオ。
そして……。
「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
次の瞬間、二人の騎士が駆け出した。
「はぁっ!」
仮面ライダーが、双剣でオークの首を
切り飛ばしていく。
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
オークの群れの中を駆け抜けながら、
右腕のブレードですれ違い様に体を
切り裂いていくアマゾンネオ。
「ぐあぁっ!」
「な、なんなんだあいつら!
あんなのが居るなんて聞いてねぇ!」
「お、俺は降りるぞ!」
そして、二人の仮面ライダーの力の前に
オーク達の統制は乱れ始めた。
元々、アサギを手に入れノマドに取り入ろう
とした一匹のオークが声を掛けただけの、
言わば烏合の衆。
結束も、覚悟も、何も持たないオーク共が、
仮面ライダーの力を目にして、なお戦える
訳がなかった。
オーク達は我先にと逃げていく。
「お、おいっ!お前等逃げるなっ!」
リーダー格のオークが叫ぶが、既に
50匹以上のオークが倒された今、
リーダーのオークの信頼など無い。
そして……。
「後は貴様だけだ」
そう言って、仮面ライダーとアマゾンネオが
並んで立ち、リーダーのオークと相対する。
「ク、ソォォォォォッ!!」
リーダーのオークは、手にしていた巨大な
斧を片手に二人へ向かっていく。
だが、覚悟も力も、仮面ライダーに劣る
オークに、勝機など無い。
『ガッシューン。ガシャット!』
ドライバーからガシャットを抜き、キメワザ
スロットホルダーへと突き刺すライダー。
『キメワザ!』
彼が一度目のボタンを押すと、アマゾンネオ
もドライバーのスロットに左手を掛け、
それを上下に往復するように動かす。
そして、ライダーもホルダーのボタンを
もう一度押し込む。
『ハリケーンクリティカルストライク!』
『AMAZON・STRIKE』
二つのドライバーから電子音声が
響き渡る。
「「はぁぁぁぁぁっ!!」」
ライダーとアマゾンネオが、オークに
向かって走り出した。
「「はぁっ!!」」
二人は同じタイミングで空へと飛び、
そして、必殺技を……。
『ダブルライダーキック』を放つ。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」
二人の突き出された剛脚に、オークは
咄嗟に斧を構え盾にする。
ダブルキックが、斧に命中する。
「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
叫び、力を込めるライダーとアマゾンネオ。
そして、一瞬の均衡のあと……。
『バキィィィィィィンッ!!』
甲高い音と共に斧が砕け、二人の
キックがオークの体を貫いた。
『ドゴォォォォォンッ!!!』
二人の背後で爆煙が上がる中、
二人は着地し、腰を落としていた
姿勢から立ち上がり、振り返る。
それぞれの視線の先には、愛する人が
居た。
仮面ライダーには、さくらが。
アマゾンネオには、アサギが。
二人は、それぞれの愛する人の元へと
歩み寄る。
変身を解除する二人。
「終わったね、アユ兄」
「うん、これでもう大丈夫だ。
そして、二人も」
歩夢に声を掛けるさくら。彼は、
頷きながらもアサギと恭介の方へ
視線を向けた。
そして、二人は……。
「恭介」
「アサギ。僕は、何度でも言うよ。僕は
君と出会った事に、後悔なんてしてない。
そして、僕は君を守りたい。だから
これから僕は、仮面ライダーとして、
愛する君を守る。だから……」
そう言うと、恭介はもう一度彼女の前で
跪き、指輪の箱を取り出した。
「僕と、結婚して下さい」
その言葉に、アサギは……。
「はい。『喜んで』」
その目に、大粒の涙を浮かべながら
頷くのだった。
そして、数年後。
とある場所で、歩夢と恭介は純白の
スーツに身を包んでいた。
「いやぁ、それにしても、さくらちゃん
は発想が奇抜だねぇ」
「はい。まさか、こんな事になるなんて。
我が妻ながら、奇想天外と言うか、
何と言うか」
さくらの『計画』について驚いている
恭介と歩夢。
と、そこへ。
「失礼します」
スタッフらしき女性が入ってきた。
「お二人とも、『新郎』の出番ですよ」
「はい、今行きます。それじゃあ、
歩夢さん」
「はい。行きましょう」
そして、二人は部屋を出た。
そう、ここは教会。二人は、聖堂で
それぞれの『愛する人』を待っていた。
そして……。
『ギィッ』
後ろで音がして振り返る二人。
開かれた扉の奥から現れたのは、
純白のウェディングドレスを
身に纏ったアサギとさくら。
やがて、二人はそれぞれの愛する
男の隣に並ぶ。
4人が揃うと、彼らの前にいた
神父が、4人に問いかける。
4人は、神父の誓いの言葉に
頷いていく。
お互いの相手と、指輪を交換する4人。
「それでは、双方。誓いの口づけを」
その言葉を聞き、歩夢はさくらを。
恭介はアサギを。
それぞれ抱きしめながら、熱い口づけを
交わす。
そして、今日この日、4人はダブルデート
ならぬ、ダブル結婚式を挙げるのだった。
それから数時間後、夜。
「ってぇ!何で初夜の夜に任務が
あるのぉも~!」
とあるビルの屋上でぷんすか、と言う
感じのさくら。
「しょ、しょうが無いよさくらちゃん。
緊急の任務みたいだし……」
「そうは言うけど、私的には
ホテルの部屋でアユ兄とイチャイチャ
したかったもん!ベッドにダ~イブで
アユ兄とエッチしたかったもん!」
「ちょっ!?さくらちゃんそれは!」
隣にアサギと恭介がいるとあって、
Hしたい、などと言う発言に
顔を赤くする歩夢。
「あらあら。さくらったら」
それを聞いて笑みを浮かべるアサギ。
しかし……。
「って言うか、お姉たちもそうでしょ!
私知ってるんだからね!毎晩の
ように部屋で汗だくになるまで
エッチしてるの!」
「ふぇっ!?な、何でさくら知ってるの!?」
突然のカミングアウトに顔を赤くするアサギ。
やがて、わーわーと姉妹の口喧嘩を
聞いていた歩夢と恭介は顔を見合わせ、
苦笑を浮かべた。
「まぁまぁ、ここで喧嘩してても
始まらないよ、二人とも」
「そうだね。さっさと終わらせて帰ろう」
と、言って互いの妻をなだめる歩夢と恭介。
そして二人が落ち着くと、歩夢と恭介は
それぞれのドライバーを取り出し、
装着した。
『ハリケーンニンジャ!』
「変身」
ガシャットを起動し、呟く歩夢。
『NE・O』
「アマゾンッ!」
インジェクターを突き刺し、
叫ぶ恭介。
『ブワッ!』
彼の体から熱波が吹き出す。
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ~!』
歩夢と恭介は、互いに仮面ライダー
へと変身する。
そして、二人はそれぞれの妻の手を取る。
「……行こう。僕達の運命は、
僕達が切り開くんだ」
仮面ライダーの言葉に、アサギ、さくら、
アマゾンネオが頷く。
そして、4人はそれぞれの愛する人と
手を繋ぎ、夜の街へと飛び込んでいく。
ここは魔都、東京。魑魅魍魎が跋扈する
闇の街。
しかし、4人は恐れない。恐れる必要など無い。
愛すべき人が、隣に居て、共に戦うの
だから。
どんな闇を持ってしても、彼ら4人の
絆を断ち切る事は出来ない。
どんなに醜悪な闇が、彼女達を
汚そうとしても、仮面ライダーは
決してそれを許さない。
守ると誓った意思と共に、今日も
二人のライダーは、愛する人と
共に、悪しき敵を討つ。
恭介生存IF END
アマゾンネオの見た目とかベルトの機能が、何だか
アマゾンという力を機械で押さえ込んでいる、
と言う見た目に思ったので、恭介の中の
妖魔の力を抑えつつ使う、と言う意味でアマゾンネオ
にしてみました。
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