~~前回までのあらすじ~~
カオス・アリーナの一件から少しした後。
対魔忍に復帰したアサギとさくらは、幼なじみ
であり恩人でもある歩夢の家で共に暮らしながら
対魔忍、仮面ライダーとして戦っていた。
そんなある日、アサギの元に彼女の率いる
伊賀の対魔忍、八津九郎から手紙が届く。
その内容は、彼の妹、八津紫が死んだはずの
ノマドの魔界医、桐生佐馬斗の調査をしている事。
その裏に何かあると感じていた九郎が、万が一の
為にアサギ達に紫のサポートを頼む物だった。
その手紙による連絡を受けた3人は、紫を
サポートするために彼女と桐生が居ると思われる
東京キングダムへと潜入し調査を開始。
程なくして、彼らは妖魔から紫が捕まっている事
を知る。
同時に、ノマドの首魁ブラックの側近である
女魔界騎士が桐生に囚われている事を知り、
歩夢達は計画を立てた後、桐生が身を寄せている
ノマドの敵対組織、龍門のビルへと潜入。
そこで捕えられていた女性達を助けるの
だった。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、もう、大丈夫です」
助けた女性達を見回すライダー。既に女性達は
泣き止んでいた。
「それで、実は聞きたい事があるんです。
対魔忍、八津紫、魔界騎士。これらの単語に
どなたか聞き覚えはありませんか?」
歩夢、ライダーは周囲の女性たちにそう
問いかけた。すると……。
「あっ。そう、言えば。男達が言ってました。
対魔忍の女が捕まったから、もしかしたら
俺たちもヤれるかもな、とか何とか」
「……紫ちゃんか」
「どうするのア、ライダー」
アユ兄、と危うく呼びかけ、さくらは咄嗟に
ライダーと呼ぶ。
「……。その女性が捕まっている場所
とかは分かりませんか?」
「いいえ。流石にそこまでは……」
「そうですか」
と、会話をしていたとき、アサギは壁に
張られていたビルの見取り図を見て、
違和感を覚えた。
「……。ライダー、ちょっと良いかしら」
アサギが彼を呼び、近づくライダー。
「どうかしたの?」
「この見取り図を見て。それと、階数の数も」
「……。これが、何か?」
「おかしいの。外から見たときの縦列の窓の数
とビルの見取り図の回数の数が一致しないわ」
「それって……。見取り図への、偽造工作か」
そう言うと、見取り図を引っぺがして
手に取るライダー。
「仮にこれらの地図が敵の手に渡った
としても、表記されて居なければその
空白の場所を見つけるのは難しい」
「そして、そんな場所ならば……」
「重要人物を隠したりするのには
もってこい、か」
アサギの言葉の先を読み、呟くライダー。
そして、彼は考え始めた。
彼らの目的は、紫の救出と桐生の始末。
しかしここには数名、どこからか
拉致されてきたと思われる女性達も居る。
彼女達をここに残して行く事は出来ない。
歩夢が護ると決心したからだ。
そして……。
「アサギ、さくらちゃん。二人は忍者
プレイヤーと一緒に女性達を連れて、
あの廃ビルまで撤退して。僕は紫ちゃんを
救助した後、可能であれば桐生を倒して
そっちと合流する」
「そんなっ!?ライダー、私達だって!」
「ここは妖魔の巣窟だ」
驚き、声を上げるさくらを制するライダー。
「あの廃ビルにこの人達だけを残すのは
危険だ。誰かが護らないと。けど、
あのビルはガシャットのプレイヤー
発生圏内の外側だ。プレイヤーを護衛
としておくことが出来ない」
「で、でもっ!」
尚も食い下がろうとするさくら。その時。
『ポンッ』
ライダーが優しくさくらの頭を撫でた。
「大丈夫、必ず、紫ちゃんを連れて
合流するから。だから二人は、この人達
をお願い」
「……分かったわ。さくら」
「うん。……絶対、無事に帰ってきてね」
「うん、約束だ」
その後、アサギとさくらは忍者プレイヤー
達と共に女性達を連れてビルから脱出
していった。
それを見送ったライダーは……。
「さて。……行くか」
静かに、行動を開始した。
そして、その極秘の空白地帯では……。
「んっ!?んぶっ!?」
「おらおら!もっとちゃんと舐めろ!
この淫乱魔界騎士め!」
ピンク色のロングヘアに、褐色の肌の
女魔界騎士、イングリッドが多数の
オークたちから凌辱を受けていた。
薄汚いそれに、前後を貫かれているイングリッド。
『クソッ!クソクソッ!こんな、こんなぁ……』
純潔をいともたやすく、桐生と妖魔たちに
奪われ、誇り高き騎士であった彼女は今、
慰み者にされていた。
現実とは残酷である。
それを今まさに、身をもって味わっていた
イングリッド。
そして、その彼女の閉じられた瞳から、
一滴の涙のしずくがしたたり落ちる。
『ピチャンッ』
その雫に込められた、イングリッドの悲しみ、
絶望。
彼女とて、妖魔であり、人でなかろうと、
その心は、人と何ら変わりない。
犯される事に、喜びなど微塵も感じては
居ないのだ。
その苦しみ、悲しみ、絶望。それらが
込められた涙が今、まさに地に落ちた
しかし、今この世界には、そんな闇を払う、
その絶望から誰かを救い出す戦士が、
騎士が存在している。
『キメワザ!』
突如、勇ましき電子音性が響き渡り、
妖魔たちは動きを止め周囲を見回す。
と、その時。
『ハリケーンクリティカルストライク!』
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
唐突に、影の中から仮面ライダーが
双剣と共に飛び出してきた。
それも、数十人の忍者プレイヤーを
伴って。
そして……。
『ズバババババババッ!!!』
ライダーを先頭に、濁流の如く妖魔たちに
襲い掛かった彼らは、瞬時に妖魔を
一匹残らず切り殺した。
粒子となって消滅する妖魔たち。そして、
必殺技の発動によって召喚された
プレイヤーたちも、ガシャットの中へと
戻っていった。
そして、ライダーは両手の小太刀を、
キンッと音を立てながらしまい、
イングリッドと対面する。
「お、お前は、仮面、ライダー」
後ろ手の状態で縛られていたイングリッドは、
顔だけを動かし、ライダーを見上げる。
数秒、間を置いたライダーはゆっくりと
イングリッドに歩み寄る。
「っ!?」
イングリッドは、息をのみ体を縛る
ロープから抜け出そうとするが、
これまで休みなく犯され、桐生特製の
媚薬を多量に投与されている彼女には、
もうそんな力は残っていなかった。
そして、そうこうしている内に、
ライダーが彼女の眼前に立った。
今の彼女とライダーなら、ライダーが
片手で彼女の首をへし折る事も可能だろう。
イングリッドの中で、その未来の光景が
チラつく。
そして、ライダーは彼女の前で膝をつくと、
動けない彼女に向って右手を伸ばした。
『助かったと思ったが、もう、これまでか。
……ブラック様』
再び、彼女の目から涙が溢れそうになる。
しかし、彼女の予想は良い意味で裏切られた。
『スッ』
仮面ライダーは、イングリッドの背中に
手を回すと、優しく彼女を抱き起した。
「え?」
それだけで、イングリッドは呆けた声と
表情をしてしまう。
彼女を起こし、座らせたライダーは彼女の
背後に回ると、手を拘束していたパーツを
強引に引きちぎった。
そして、彼女の拘束を解除すると、
ライダーは立ち上がり、2、3歩ほど
彼女から距離をとった。
「お、お前。なぜ」
そして、イングリッドは体を拘束していた
拘束具を脱ぎ去ると、立ち上がってライダー
と向き直り、そう問いかけた。
「なぜだ。私はノマドの、ブラック様の
騎士イングリッド。貴様にとって
敵となる存在だ。なのに、なぜ助けた。
まさか、知らなかったとでもいうつもりか?」
「……知ってはいました。ノマドの女
魔界騎士が捕らえられている、と。そして
先ほど、オークが君を魔界騎士と
呼んでいるのも聞きました」
「ッ。ならばなぜ。……捕らえて
情報でも吐かせるつもりか?」
「そんなつもりは、無いよ」
「ならば、ならば何故だっ!」
イングリッドには、歩夢の目的が
分からなかった。
「……確かに僕と君は、敵同士だ。
それでも……」
歩夢の決意は、仮面ライダーの目覚めた
決意は変わらない。
絶望の淵にある者を救う。だから……。
「君が泣いているのを、見てしまったから」
「ッ!?たった、それだけで?」
傍から見れば、今のライダーの行動は甘い
と言えるだろう。敵を助けるなど、
時には異常と思える行動だ。だが、
それでも……。
「それだけ、か。でも、僕には『それだけ』で
十分だ。もし、僕の前で誰かが泣いていたら、
僕はその人に手を差し出す」
彼は、イングリッドを前にしても毅然とした
態度を崩さない。いや、崩す道理などない。
そこに、嘘や偽りなど無いのだから。
誰かの涙をぬぐう為に戦う。それが
仮面ライダーの決意なのだから。
「涙にくれる誰かの絶望を破壊する。
それが、『仮面ライダー』だから」
毅然とした態度と、覚悟を乗せたその言葉
は、イングリッドの中に響く。そして
彼女は、仮面ライダーの中に、ライダー、
騎士の名に恥じない騎士道に通ずる
考えがある事を理解した。
「……仮面ライダー。頼みがある。
今の私だけでは、ここから脱出
する事は出来ない。本来敵である
お前に頼むは筋違いだが……。
頼む、力を貸してほしい」
そう言って、頭を下げるイングリッド。
対し、ライダーは……。
「分かりました。その代わりこちらから
も頼みがあります」
頷き、彼も頼み事を語る。
「桐生佐馬斗に捕らえられた女性対魔忍、
紫ちゃんの救出を手伝ってほしい。
可能であれば、桐生佐馬斗の始末も。
少なくとも、ここから脱出するまでは
君の命を保証する事を約束する」
「……。わかった」
頭を上げ、頷くイングリッド。
「私も、元々奴を始末するために派遣
された。異論はない」
その答えにライダーも静かに頷くと、彼は
左手で小太刀を抜き取り、ひっくり返して
柄の部分をイングリッドに差し出した。
「これを。この小太刀には対魔剣と
同じ力があります。妖魔には、
有効な武器になるはずです」
「なぜ、これを私に?」
「一時的とは言え、共闘するわけですから。
信頼の証、と言うのも変ですが。
それと、これを」
そう言ってライダーは腰元に
折りたたまれていた簡易な、貫頭衣
の衣服を彼女に渡した。
「さすがに裸のまま、と言う訳には
いかないでしょうし」
「すまない」
その後、青い貫頭衣に身を包んだ
イングリッドは、ライダーから
借り受けた小太刀を手に、ライダーの
方へと視線を移す。
『『コクンッ』』
二人は無言で頷きあうと、部屋を出て
通路を移動し始めた。
一方、そのころ紫は……。
恐怖に怯えていた。
彼女は、桐生の生存を確かめ、生きていれば
倒すために派遣された。そして紫は
桐生を発見し、倒そうとした。しかし
九郎の読み通り、桐生生存の情報は桐生
自身が紫をおびき寄せるために流した、
言わば彼女を罠に誘い込むための餌だった。
そして桐生は紫との対決の中で、媚薬効果を
持たせた血液を利用して紫の戦闘能力を
奪うと、妖魔と合体したことで得た
触手を使って紫を凌辱した。
そして今、紫の前には鋸を持った男が
立っていた。
紫の忍法は、脳と心臓を同時に傷つけない
限り死ぬことは無い、と言う不完全だが
『不死身』を可能にしていた。
しかし、それは時に残酷な現実となる。
死なないのなら、好きなだけ体を
壊せる人形のような物。
そう、死なない、と言う事はそれだけ
多く苦痛を与えられる、と言う事だ。
今、鋸を片手に男が四肢を拘束されている
紫へと一歩一歩近づいてくる。
「いやっ!いやぁっ!」
いくら体をねじっても、拘束からは
逃れられない。
下種な笑みを浮かべながら、男は
紫に近づく。
彼女は、現実から目を背けるように
固く目をつむる。
しかし現実はその程度で変わったりは
しない。
四肢を切り裂こうと男の足音が近づいてくる。
紫の瞳から、涙が溢れだす。
「へへへ~。さぁてと。まずはどこを
ぶった切ってやろうかなぁ~~」
男は、彼女の体を舐めまわすに見つめ、
舌なめずりする。
だが……。
『ドッ!!』
「うっ!!」
次の瞬間、紫の耳に男のうめき声が
聞こえてきた。
「な、何?」
恐る恐る、目を開く紫。そして、彼女は
息をのんだ。
何故なら、今まさに自分の体を鋸で切断
しようとしていた男の胸から、小太刀が
生えているのだから。
しかし、それは小太刀が生えているの
ではない。背後から貫いたのだ。
『ズッ』
男から小太刀が抜かれ……。
『ドッ』
その体が倒れ伏した時、紫は男の
背後に、一人の人物がいたことに気づいた。
その人物、ライダーは男を一瞥すると
小太刀についた血を振って払い、背中の
パーツにしまう。
「え?なっ?」
その現状に、紫は思考が追いついて
居なかった。やがて、ライダーが
静かに彼女に近づく。
「な、何!?何をする気なの?」
先ほどまでの恐怖がぶり返す。
いやいやするように首を左右に振る
紫。すると、ライダーが静かに歩みを
止めた。
「怯えないでください。僕は、
八津紫さん。あなたを助けに来た
者です」
「え?」
ライダーはできるだけ優しく語り掛ける。
そして、彼女はその言葉に疑問符を
浮かべた。
「あなたのお兄さん、八津九郎さんは
今任務で手が離せなかったため、同じ
伊賀の対魔忍である井河アサギへと
手紙を送りました。嫌な予感がする、
君を助けてほしい。と。そして、僕
とアサギ、そしてさくらちゃんの3人は
君を救出するために、ここまで来ました」
「え?!アサギ様と、さくらが!?二人は、
今どこに!?」
「二人は今、先に発見した女性たちと安全な
場所へ向かっています。僕は、あなたの
救出のために潜入を続けていて、ここへ」
「……。あなたは、一体?」
「僕は、仮面ライダー。
絶望を破壊する者です。
そして……」
そう呟くと、ライダーはドライバーへと
手をかけた。
『ガッチョーン。ガッシューン』
ドライバーを閉じ、ガシャットを
抜いた歩夢は、変身を解除する。
「これが僕、橘歩夢です。あなたを、
助けに来ました」
そう、笑みを浮かべる歩夢。
「あ、あぁ……」
そして、紫は絶望の中に『光』を
見出した。
英雄と言う名の光を。
その後、歩夢は紫の拘束を解除すると
紫は地面にへたり込んでしまう。
「大丈夫ですか?」
「あっ」
その時、へたり込んだ紫に手を差し出す歩夢。
それに呆けた声を出してしまう紫。
彼女は歩夢を見上げる。
歩夢は慈愛に満ちた優しい笑みを浮かべていた。
そして、紫はその手にすがるように、右手を
伸ばしつかむ。
歩夢は掴んだ手をやさしく引いて紫を
立たせる。
今、二人はすぐそばで対面していた。
紫の瞳には、歩夢しか映っていなかった。
「あ、ありがとう、ございます」
「どういたしまして。もう、大丈夫だから」
そう言って、歩夢は笑みを浮かべる。
『カァァァァァッ』
そして紫は、その笑みの前に顔を赤くするの
だった。
その後、歩夢はイングリッドに渡したのと
同じ貫頭衣を彼女に与えた。
そして、彼女が貫頭衣を着るのを確認
したライダーは、扉の方へと視線を
向けた。
「もう良いですよ」
「え?」
紫は、ライダーの呼びかけが誰に対して
なのか、理解できなかった。すると……。
『キィッ』
音がして扉が開き、イングリッドが
入ってきた。
「ッ!?彼女は……!?」
突然の事で驚き、構える紫。しかし
歩夢がそれを制した。
「彼女は、魔族の女性ですが、訳あって
ここに捕らえられていました。
それを救出した為、今はなし崩し的に
行動を共にしています」
「ッ。しかし、魔族など……」
そう言って、イングリッドを睨みつける紫。
対してイングリッドも彼女を睨み返す。
まさに一色触発の状態だったが……。
二人の間に立つ歩夢。
「お互い、相手にいい気分を持っていない
のは分かります。しかし、今は桐生の討伐、
ないしは脱出を急ぐべきです。
敵の敵は味方、とまでは言いませんが、
お願いです。今だけは、目の前の事に
集中しましょう」
彼の説得の言葉に、紫の方から視線を
そらし、イングリッドも息をついた。
「分かりました。それで、橘さん、
でしたよね。この後は?」
「僕がここに来た理由は、紫さんの
救出と、桐生の抹殺。ただし、
最優先は君の救出だ。それで、今後の
方針だけど、僕は脱出を推奨する。
二人は、その、あんな事があった後だ。
はっきり言って、戦いは避けたい」
「私は、ここへ桐生を倒すために来た。
おめおめと引き下がる事は出来ない」
「それは、私もです」
歩夢の提案に、反対するイングリッドと紫。
「……。この人数で、最悪の場合このビルや
周囲に居る妖魔、悪人、そして桐生を
相手にすることになる。君たち二人が
万全とも思えない。それでも?」
「あぁ、それでもだ」
「奴には借りがありますから」
二人、イングリッドと紫はこの時ばかりは
全くの同意見だった。
桐生と叩き潰すという目的で、一致
していたのだ。
それを見た歩夢は……。
「分かりました。ただし、もし本当に
二人の身に危険が迫った場合には、
あなた達を気絶させて抱えてでも、
ここから撤退します。それだけは
譲れません。僕には、二人をここから
脱出させる責任がありますから」
「「……。分かった(分かりました)」」
渋々、と言った感じで二人は頷くのだった。
そして……。
「それで、この後はどうする?」
「とりあえず。……ぶしつけな質問ですが
二人の武器の特徴、桐生について
知っている事を教えてください」
「はぁ。私の得物は大きな両手斧です。
破壊力には自信があります」
「私のは、切った対象を燃やし尽くす
ショートソードだ」
紫、イングリッドの順で歩夢の問いかけに
答える二人。
「対象を燃やし尽くす、か。桐生については?」
「奴は、妖魔と自らを融合させていた。
また、奴は他人の体を乗っ取る事で
致命傷から逃れる事もできる」
「それと、私との戦いでは私の斧で
体を切り裂いても1分ほどで元通りに
再生していました」
「……。回復と、肉体の吸収。
有効な戦法を考えれば、奴が他人の体を
乗っ取る前に、再生能力を上回る
破壊力で一気に滅ぼすしかない、か」
彼は考える。戦法を。桐生を倒す術を。
理想的な状況を。
ただたんに力だけですべてをねじ伏せる事は
不可能だ。ゆえに、戦略を考える。
そして、歩夢はイングリッドに目を向ける。
「おそらく、作戦の要はあなたとあなたの
ショートソードになると思います」
「……。そう思う根拠は何だ?」
「僕のライダーシステムには、今現在、
炎を操る力がありません。だが桐生を
完全に消滅させるには、炎をもって
奴の細胞を滅却する必要があります。
しかし僕と紫さんには、その力が無い」
「だから私に賭ける、か」
「はい」
歩夢は、曇りのない眼でイングリッドの
言葉を肯定する。
そして、歩夢は部屋の出口を見つめながら、
再びガシャットを握りしめ、眼前の
高さで掲げる。
『ハリケーンニンジャ!』
「……変身」
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
ゲーマドライバーのレバーを
開き、ディスプレイが空間に投影され、
それが後退して歩夢の体と重なる。
『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ~!』
そして、歩夢は仮面ライダーへと変身する。
「……。これが、お前の力か」
「そうです。これが、仮面ライダーです」
後ろから声をかけるイングリッドに、
ライダーは背を向け肩越しに振り返り
ながら答えた。
「行きましょう」
そして、何の因果か3人は行動を共に
する事になった。
3人はライダーを先頭に、通路を移動する。
今の彼らの目的は、奪われたイングリッドと
紫の武器を回収する事だ。
そして、武器を探す道中……。
「おい!あの魔界騎士が逃げ出したぞっ!」
「対魔忍の女もだ!クソッ!どこ
行きやがった!?」
「いいから探せ!見つけないと桐生の
野郎に殺されるぞ!」
通路を行きかう悪人と妖魔たち。
そして、それらがどこかへと
走り去ると……。
『パカッ』
天井の通風孔が開き、そこから逆さまの
状態で頭を出すライダー。
「……。もう大丈夫だ」
ライダーが周囲を見回し安全を確認
すると、通風孔の中から通路へ降り、
更に紫とイングリッドが続いて降りてくる。
「すでに、二人が逃げたことはバレている
みていですね」
「急ぐぞ。武器を早く見つけたい」
そう言って、3人は駆け出す。しかし……。
『ダダダッ!』
「ッ!前方から足跡複数、接近
してきます!」
ライダーの耳が、こちらに迫る足音に
気づく。
3人は咄嗟に引き返そうとするが……。
『ダダダッ!』
「ッ!?こっちからも!?」
最後尾だった紫が、逆方向から来る足音に
気づいて足を止める。
挟まれてしまう3人。その時。
「ッ!こっちだ!」
そして周囲を見回していたイングリッドが
扉を見つけ、二人に声をかける。
3人はすぐさまその扉の中へと入り、扉を
閉める。
そのまま、息を殺す3人。しかし……。
「ん?おい、この中は確認したのか?」
不意に、扉の外から男の声が聞こえ、3人の
緊張感が一気に高まる。
素早く周囲を見回す3人。そこは、倉庫のような
部屋だった。イングリッドは、素早く物陰に
隠れる。そして、ライダーは……。
「こっちへ……!」
「あっ……!」
紫の腕を引き、大きなロッカーの中に二人して
入った。
直後。
『キィ』
扉が開いて、銃を持った男が入ってきた。
ライダーは、無言のまま隙間から外の様子
を注視していた。
一方、紫はライダーと向かい合い、彼に
抱きしめられる格好になっていた。
ライダーの腕が、優しく紫の背中と
腰に回されている。
『わ、私、今、抱きしめられて』
ライダーは外を警戒していたが、紫は
それどころではなかった。
桐生によって植え付けられた媚薬の
効果は今も続いていた。
目の前にある、ライダーのスーツに
体を密着させている紫。
胸を、彼の胸部に押し付ける形となっている為、
彼女のおっぱいは形を変え、ひしゃげていた。
それだけでドキドキと、彼女の心臓が
大音量で鳴り響く。
目の前の、ライダーの顔を見上げる紫。
そして、彼女の視線に気づいたのかライダー
は視線を彼女の方に向ける。
「大丈夫。必ず僕が護るから」
静かに、優しく、しかし透き通る声が
紫の耳に届く。
「ッ!」
『キュンッ!』
それだけで、紫の中で心がときめく。
彼女は、彼に光を見出していた。
あの時、鋸の男に襲われそうになり、
彼に助けられた時と同じように。
鮮烈に輝く、『光』を。
世の言葉に、『吊り橋効果』と言う物がある。
それは、極度の緊張状況で男女が出会う事で、
通常以上に相手を意識する。と言う事だ。
紫は、今まさにその吊り橋効果と対面していた。
絶望の中で彼女を照らした光。
それは、一人の戦士、一人の男だった。
絶望の闇を切り裂き、彼女を照らす光と
彼女を救う為に差し出された手。
差し出された手は、暖かく。
その笑みは、優しく。
姿を変えた今の手は、力強く。
その声は、静かに、しかし変わらない
優しさで。
その彼に、紫は『光』を見出していた。
太陽のように、暖かく自分を見守り
照らす光を。
その時だった。
「おい何やってる!早くいくぞ!」
「ちっ!?わかってるよっるせぇな!」
外から男たちの怒号が聞こえてきて、
一瞬ビクつく紫。
しかし、男たちは部屋を出てドアを乱暴に
閉じて出て行った。
数秒、二人は息を殺していたが……。
「……。もう、大丈夫かな?」
静かにドアを開けて、二人して外に出る
ライダーと紫。
そして、彼らが出てくるとイングリッドも
物陰から出てきた。
その時。
「ん?」
イングリッドは、物陰で何か光った気がして、
その何かへと歩み寄り、とった。
「これは……。おい、対魔忍」
「ッ。何よ」
突然声をかけられ、少し驚きながら
振り返る紫。
「もしや、お前の武器と言うのはこれか?」
そう言って、イングリッドが物陰から
引っ張り出したのは、紫の武器の
両刃斧だった。
「あっ!それは私のっ!まさかこんな所に
あるなんて……」
驚きながらも、斧を受け取る紫。
「と言う事は、もしかしてあなたの
ショートソードも、ここに?」
「そうかもしれないな。探すぞ」
ライダーの疑問にイングリッドが答え、
3人は手分けして彼女のダークフレイム
を捜索する。
そして、偶然にもライダーとイングリッドが
並んで棚を調べていた時。
「なぜ、貴様は私さえも助ける」
互いに手を動かしながら、イングリッドが
彼に問いかける。
「お前の目的はあの対魔忍の救出だった
はずだ。なぜ、私まで」
「……僕たちは敵同士だ。今は利害の一致
から共闘しているだけ。ここを出れば
敵同士だ。……だけど。僕は見てしまった
から。君の涙を。だから見過ごせなかった。
……そして、涙を見た瞬間。思った。
『君を助けたい』と。それだけだ」
それは、彼を真の英雄、真の仮面ライダー
へと至らせる決意。
「君を助けたいと思った。
それが、君を助けたたった一つの理由だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
僕は僕の戦う理由に従っているだけだよ」
誰かを助けたいと願う決意。
ありふれているようで、決して簡単では
無いその決意。
誰かを守るために、闇に立ち向かう決意。
誰かを守るために、強敵と戦う決意。
どれだけ闇が深くとも。敵が強大でも。
立ち向かい、涙にくれる誰かに
手をさし伸ばす。
その決意が、彼を『仮面ライダー』と言う
英雄へと昇華させる。
「……」
イングリッドは、歩夢の決意の言葉を
黙ったまま聞いていた。
その時。
「あっ!ねぇちょっとこれじゃない!」
部屋の隅を調べていた紫の声が聞こえ、
二人は彼女の元へと駆け寄る。
紫が持っていたのは……。
「あぁ。間違いない。私の剣だ」
イングリッドの剣、魔剣ダークフレイムだった。
そして、二人は装備を取り戻した。
「……これで、装備は整った。
行こう、桐生を倒すために」
『『コクンッ』』
ライダーの言葉に、二人がうなずく。
そして……。
『ドゴォォォンッ!』
ライダーの脚力で、倉庫の扉を
蹴り壊す。
すると、ゾロゾロと妖魔と悪人たちが
集まってくる。
妖魔と悪人たちは倉庫を包囲し警戒する。
銃を持つ男たちは、引き金に指をかけ、
相手が飛び出してくるのを待つ。
次の瞬間。
『『『『ドドドドッ!』』』』
倉庫の闇の中から飛来した光の手裏剣に
撃たれ、銃を持った男たちが倒れる。
男と妖魔たちがそちらに気を取られた
次の瞬間。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
影の中から両刃斧を手にした
紫が飛び出してきて、オークを
切り裂く。
「おぉぉぉぉぉぉっ!」
更にイングリッドが現れ、悪人たちを
次々と切り捨てていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
二人だけではない。忍者プレイヤー
とライダーも妖魔と悪人たちを次々と
切り捨てていく。
そして、粗方を片付けると3人と
プレイヤーたちは走り出した。
すでに装備は整った。隠れながら進む
必要は無い。
出会う敵全てを切り捨てながら進む。
「桐生!どこだっ!?」
オークを切り捨てながら周囲を見回す
イングリッド。
その時、彼らの正面に重厚な扉が
現れた。
「はぁっ!」
それを、まるでバターでも切り分ける
かのように紫が切り裂き、3人と
プレイヤーが突入する。
そして、中には数十と言う数のオークと
悪人。三つの頭の、ケルベロスのような
化け物。そして……。
「まさか、こんなにも早く救出が来る
とはな」
それらの後ろに守られた白衣姿で眼鏡を
かけた男。『桐生 佐馬斗』。
「お前、何者だ」
桐生はライダーを睨みつけ、
問いかける。
ライダーは……。
「……仮面ライダー。今日、お前を、
お前たちを倒す者の一人だ」
静かに答えながら双剣を構えるライダー。
紫も斧を握る手に力を籠め、
イングリッドもダークフレイムを
両手で握りしめる。
プレイヤーたちも小太刀を手に、構える。
そして……。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ライダーの雄叫びがゴングとなり、
双方がぶつかり合う。
闇の魔界医、桐生佐馬斗を討つ為の
戦いが今まさに、幕開けた。
果たして、勝つのはライダーたちか?
それとも桐生か?
それは誰にもわからない。
第2話 END
って事で次回は桐生との決戦です。
紫は……。吊り橋効果で歩夢に惹かれ始めました。
なので、多分、彼女も歩夢のハーレム入り、
確定かな~?
と言うか今更ながらにこれ、ハーレムタグが
入ってなかったな~。
って事で次回をお楽しみに!
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