※この作品はR-18です。

星の巡り主   作:ぴんころ

1 / 24
エターナル歴25年目

 聖賢者ユウト。

 

 永遠神剣シリーズ第一章『永遠のアセリア』という作品の主人公が、永遠神剣第二位「聖賢」と契約したことで至った、エターナルとしての姿。妻である、永遠神剣第三位「永遠」の契約者となりエターナルに至った永遠のアセリア。そして妻との間に第一子であり、生まれながらのエターナルという他に類を見ない存在である悠久のユーフォリアという少女を設けている。妻、娘、共に永遠神剣シリーズと称されるゲームにおいて章の名前を冠しているにも関わらず一人だけそんなことがなかったり。その両者の持つ永遠神剣の秘密の影響で「家庭内では肩身が狭いのではないか」などと言われることもあるが。

 

 それでも、彼が主人公としてあった「永遠のアセリア」という作品の完成度と、そして彼の戦闘時の声によって根強い人気のある存在でもある。

 

 そして、今となっては俺の父親という立ち位置に当たる存在だ。

 

「まさかこんなことになるなんてなー」

 

 そんなことを呟いて、父さんたちが戻ってくるまで部屋から出るなと厳命されているので逆らって外に出る、なんてことはせずに、椅子を動かして、その上に乗って窓の外を見る。そこには

 

「うおおおおっ!」

 

 剣……永遠神剣第二位「聖賢」を構えてミニオン、あるいは彼らにとって馴染み深い呼び方ではスピリットと呼ばれる永遠神剣の使い手としては最弱レベルの存在をまとめて切り裂く我が父……聖賢者ユウトの姿と

 

「はああああっ!」

 

 その背中を守るようにしてミニオンを切り裂く母……永遠のアセリアの姿が見えた。

 

「おー」

 

 その姿を見ていれば我が両親のことながら勇ましいという感想しか湧いてこない。いつか俺たちもあんなことをできるようになるんだろうかと思うと今からすでにワクワクしてくる。魔法陣を展開してそこから彼の言葉を借りるなら一条の光が音速を超えて突き進み、ミニオンたちをマナの霧に変えていった。向かってくるミニオンへの対処を妻であるアセリアに任せて魔法陣を展開していた様は、お互いの間に信頼関係があるからこそできる光景だと戦いに疎い俺でもわかる。

 

 すでにミニオンの残りは少なく、そしてそれでも気を緩めずに確実にそれらを倒していく我が両親。それを呆っと眺めていると、くいくいっと服の裾を引っ張られる感じがした。そちらに目を向けると蒼穹のような髪と黒目がちの瞳をこちらに向けて、身内贔屓を抜いても十年分程度見た目が成長したなら誰もが放ってはおかなくなるであろう美貌を、「私、不満です」と見ただけでわかるほどにむくれさせた見た目四歳程度の我が姉、悠久のユーフォリアがそこにはいた。

 

「もー、ユーリばっかり見ててずるいよー」

 

「わかってるってユーフィー。変われっていうんでしょ」

 

 椅子から降りて入れ替わりながらも見た目通りの精神年齢を発揮しているユーフィーに視線を向ける。実際の年齢で言えばすでに俺たちは成人しているようなもの。けれど、俺とユーフィーは長い年月をかけて自分の見た目の年齢を引き上げていく。エターナルは概念情報を書き換えることで己の肉体を成長させるが、俺たちに関してはそれを当たり前のように行えるために、気がつけば成長していた、という普通の人間のようなことをエターナルの時間換算でやっている。

 

 そして、それに伴ってかユーフィーの精神年齢は見た目相応だった。

 

「いつも言ってるけど『お姉ちゃん』でしょー」

 

「双子なんだからどっちが兄姉でどっちが弟妹でもいいじゃん」

 

 双子。俺とユーフィーは双子で、どちらが兄か、あるいは姉かはわからない。でも正直なことを言うなら毎晩のようにセックスしている両親なのだからまた気がつけば弟、あるいは妹ができる可能性はそこまで低くないと考えている。なのでそこまで俺は気にしていないのだが、性に関する知識を遠ざけられているユーフィーはそんなことを思い浮かばないらしい。

 

「パパとママすごいねー」

 

「まあ、父さんたちだしね」

 

 ユーフィーの視線は固定されている。けれどそれに意識の全てを奪われるわけでもなく、俺にも声をかけてきて同意を求めてきた。一応、今の俺も見た目的にはユーフィーと同じで五歳程度なので椅子がないと外が見えないのだが、そんなことにすら思い至らない我が姉の姿に苦笑しながらも、いずれは俺たちも行うことになる戦闘を目に焼き付けようと、もう一つ椅子を持ってきてそれに乗って両親の勇姿を見続けている。

 

「はぁー……すごいなぁ」

 

「うん。パパもママも全く怪我してないもん」

 

「俺もあんな風に戦ってみたいなぁ……」

 

「えー、ユーリには無理だよー」

 

 思ってもないことを呟いたところ、すぐにユーフィーに否定される。血の繋がった双子だからか、ユーフィーは俺に対してだけは敬語なんて使わない。そんなユーフィーに何をバカなことを言ってるの、と言うような視線を向けられる。いや、確かに理由はわかっている。でも、男の子に生まれたからには物語の勇者のように戦ってみたいという願望を抱く程度のことは許されるのではないだろうか。俺の覚えている限りではどうやら生前の俺はそういう特撮や小説などの現実には存在しない主人公のような存在に憧れがあったのだ。

 

「だって……」

 

 ユーフィーが巨大な槍剣を呼び出す。彼女と契約している永遠神剣、第三位「悠久」だ。彼女と生まれた時から共にある永遠神剣。生まれながらのエターナルであることを証明するための一品。両親、そして双子のユーフィーの三人が持つ永遠神剣は、神剣の名に違わぬ「剣」としての役割を果たすもの。けれど俺のそれに関しては。

 

「ユーリの永遠神剣って剣の形してないでしょ?」

 

 そう、そうなのだ。

 

 俺にも生まれながらに持っている永遠神剣はある。けれどもそれを呼び出すことはどうしようもなく不可能。体内に意識を向ける。イメージとしては己の心臓から送り出され、そして戻ってくる血流。それに伴い俺の肉体に力が張ってくる。それはユーフィーが永遠神剣を呼び出したのと同じように、俺の永遠神剣も稼働し始めたことの証左。

 

 これこそが俺の永遠神剣。名前を星辰。位は第三位。心(・)臓(・)、(・)並(・)び(・)に(・)そ(・)こ(・)か(・)ら(・)送(・)り(・)出(・)さ(・)れ(・)る(・)血(・)流(・)と(・)融(・)合(・)し(・)て(・)い(・)る(・)永遠神剣である。

 

 そう、今の俺は。

 

 心臓型永遠神剣。永遠神剣第三位「星辰」の担い手。エターナル”星の巡航者”ユーリ。

 

 そんな、名前なのである。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 永遠神剣シリーズ。それはXuseという会社から始まったシリーズであり、第一章である『永遠のアセリア』、第二章である『聖なるかな』と続いたが原作の脚本がいなくなったために続かなくなり、発売からかなりの年月が経ったところで原作の著作権が脚本の人に移ったために第三章『悠久のユーフォリア』の開発が始まった。そんな、結構長いこと続いている十八禁のゲームである。

 

 シリーズで続いているくせに設定変更があって一位が存在しなかったり存在したり、エターナルと呼ばれる上位存在は通常の神剣使いでは敵わないと言われてるくせに原作に登場するプレイアブルキャラの中で一番位階の低い永遠神剣の持ち主がエターナル相手に勝利できるレベルの存在になったり。テキスト面や設定面では、探そうと思えばおそらくは粗をかなりの数見つけられるであろうシリーズ。

 

 けれどそれでも十八禁の「紙芝居」と揶揄されるような形式とは違う、プレイヤーが考えて戦闘を行うゲームであり、難度が高いことでも知られているそれは、かなりの人気を誇っていた。

 

 でも、だからと言ってこの世界に関する知識を持つ身としてはこの世界に転生したいか、といわれると疑問はある。少なくとも俺はこんな「空間を切り裂く」「時を遡る」なんてチート能力を持った連中がポンポン存在している世界に生まれ変わりたいとは思わなかった。

 

 俺がこの世界に生まれ落ちて最初に見たのは、特徴的な髪型の父親と俺を抱く日本人にはありえないであろう髪色の母親の姿、そして隣でギャン泣きしている姉。生まれた後の最初の行動としては泣くのが正しいのだろうけれど、その姿に見覚えがありすぎた俺は、当時はまだ今のように俺の意識がこの肉体に定着しきっていなかったこともあって赤子としての精神が体を支配してギャン泣きしていたにも関わらず、一瞬この肉体に影響を及ぼすレベルで動揺していた。具体的には泣くのが止まるレベル。

 

 今の時間軸としてはユーフィーが産まれたてであることから「サードデスティネーション」が終わってから「永遠のアセリア、アセリアルートエピローグ」が始まるまで、ということは予想がつく。確かあのタイミングで戦いから二百年。そして俺とユーフィーが産まれてから二十五年が経っているが、未だに彼らをエターナルへと導いた倉橋時深と出会ったこともなければ、父さんがユーフィーに「時深おばさん」と呼ぶように教え込んでいる姿を目撃したこともない。だから、もうちょっと後の時間なのだろうけど。

 

 それからしばらくすれば俺たちもエターナルとして戦場に出ることになるのだろう。

 

 幼少時代の時点で、カタログスペックだけでもチート能力が設定されている連中と戦うことが決定しているエターナルとかいう生まれはクソすぎる。

 

 だからと言ってこの世界で一般人として産まれても、それはそれで常に世界ごと殺されるかもしれないという恐怖に怯えないといけないのでクソだ。

 

 結論、この世界はクソすぎる。

 

「どうすっかねえ……」

 

 そうこの世を嘆いたのが五年前。どうにかして戦場から逃げ出したいけれど、逃げ出しても結局この世は地獄であることに変わりない。進めば(わかりやすい)地獄、引けば(潜在的な)地獄。こんなふざけた世界で生きていくのが嫌になることも多いが、だからと言って自死を選べるほどに俺は強いわけでもない。結果、色々と限界になって両親がいない隙に一度逃げ出した。

 

 その時に見たのだ。美しい、地球では絶対に見られなかったであろう光景を。

 

 思ったのだ、それを見て。こんな光景を見られるのであれば転生したことにも意味はあったのでは、と。

 

 そう思えばこそ、俺のやりたいことは決まった。どうせクソなら、せめて良い部分だけ見ていたいと。だからとりあえずエターナルとの戦いからは逃げる方向性で旅をしようと。もっと大きくなってから出ないと両親から探し回られて面倒なことになるだろうが。

 

 旅をして綺麗な景色を見てこよう、と決めた。

 

 旅をするために必要となるであろう、ミニオンあるいは神剣使い。それらには負けない程度の実力を身につけることは必須だろうが、逆に言えばエターナルとなったことにより得た食事などをしなくても良い体があるためにそれだけあれば十分。俺の永遠神剣の特性上、殴ればだいたいどうにかなるので、敵をいかにして殴り飛ばすかだけを考えてきた五年。そろそろ近場ぐらいであれば問題ないだろうか。

 

 五年前には任務で両親──とは言っても母さんは怪我があったので実質父さん一人だったが──が出ないといけない事態になっていたので、俺たちもその時ついて行った世界での出来事だったのだが、今回に関しては俺たちの家がある世界でのこと。慣れ親しんだ近場を、未だ見たことのない部分を求めて旅(散歩)するだけのことだが、それはそれで子供のお遊びとして見られるから、近い将来本当の意味での旅をする時にも同じ言葉を使えば騙されてくれて多少は時間を稼げるだろう。

 

 ガチャリとドアノブが回される音がする。父さんたちが帰ってきたのだろう。椅子を戻し終えて、父さんたちが部屋に入るのと同時に外に飛び出せるように、走り出すための用意をする。

 

「ただい──」

 

「おかえり! 二人とも! ちょっと散歩行ってくるね!」

 

「ま……?」

 

 外に飛び出す。エターナルとして生まれたことによって、無意識に戦闘を行うための肉体として成長を続ける肉体を、今己が引き出せる力の全てを持って。

 

 ──そう、今から俺の一日だけの旅路が始まる。

 

 帰ってきた後に怒られることになるのは未来のための投資だと割り切って。何度も繰り返していればおそらくは子供特有の遊びたい盛りだと思ってくれるはずだから……!




原作はこれまでのように「聖なるかな」ではなく「永遠神剣シリーズ」だ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。