その日の朝の目覚めは、絹を裂いたような叫び声を少年が発したことで皆に訪れた。
「……それではこれより、家族会議を始めようと思う」
重苦しい声を絞り出しながら宣言するのは一家の大黒柱である聖賢者ユウト。彼の「聖賢」が持つ知識の中にもこの状況をうまく終息させる手段はありはしない。
「議題は……」
そう言って、今この場にはいないユーリの代わりに動かなくなったユーリ人形を抱き締めているユーフォリアへと視線を向ける。なお、家族(予定)のミューギィも今この場にはいない。まだ家族ではないことと、ユーフォリアとの間に発生する化学反応を読みきれなかったこと、ユーリを精神的ショックから立ち直らせること、そういった諸々の理由の中でも最も大きいのは、今この状態で
「今朝、目を覚ましたらユーリがユーフィーに襲われていた件について、だ」
朝にユーリの悲鳴を聞いて隣の部屋への扉を開けると、そこにはユーリの上に跨ったユーフォリアが秘部をユーリの逸物と結合させていたのだ。破瓜の血とユーリの精が混じった混合液が飛び散り、秘部から垂れている淫靡な様は、けれど両親にとっては関係なく、ただひたすらに止めさせるだけの代物でしかなかったが。
「とりあえず、ユーフィー。ユーリに手を出すのはやめておこうな?」
最初はやんわりと、けれど
「
「うっ……」
まさかすぎる言及。けれど性的な知識が遮断されている現状、あの行為が姉弟・兄妹で許されない理由が彼女にはわからない。そして何よりも、両親がしているのに、という言葉は当の両親にはインパクトがあったようだ。
「ユーフィー。ユーリが叫んでた。 あれじゃ、ユーリはしたくなかったのに、ユーフィーが無理強いしたようにしか見えない。ちゃんとユーリに許可を取らないと」
「ママ……」
そしてこういう時に頼りになるのは母親。姉弟・兄妹でしていることを責めるのではなく、叫ばれるようなことをしたから怒られているのだと認識させればそれでいい。あとは人生経験を知らないところで積んでいたユーリがどうにかして断ってくれるだろうと。
「でも、ユーリのあそこ。窮屈そうだったし。……パパとママが前にベッドの上で話していたことを思い出して何か悪い病気なんじゃないかって。だから、あの時にパパとママがしてたことをって……」
ユーフォリアのいう話の内容とは大人のお医者さんごっこである。そんなところまで見られる失態をこの夫婦は犯していたのである。もはやユウトは死に体。娘に自分たちの性行為を見られて平然としていられるほど天然ではなかった。普段から契約している永遠神剣には見られているくせに。
なので頼りになるのは
「大丈夫。ユーリは病気じゃない」
「そう、なんですか?」
「ん。だから安心していい」
アセリアの無表情ながらも絶対の安心感を誇る声で言われて、良かったとこぼすユーフォリア。その表情からは本当に心の底からユーリのことを思っているようで、これまで口にされてきた「ユーフォリアやべえ」の片鱗すらない。二人には疑うつもりはないし、今もそれを信じているが、だが本当に? という疑念が湧き出てこないわけでもなかった。
「ユーリ。許してくれるかなぁ……」
「ユーフィーがちゃんと謝れば許してくれる。ユーリもそのあたり頑固な子じゃないから」
「そう、ですよね。……ユーリとは一生一緒だもん。こんなことで避けられるようになったら嫌だもんね」
(あ……これか。ユーリが言っていたのは)
けれどそれも、どろりと、一瞬だけ目を覆った、純粋なまでのユーリを求める感情が形を成した濁りを見てその考えが間違っていたことを、父親の方は認めた。
「ユーリに謝ってこないと……!」
ユーフォリアは、ユーリが出かけたことを知らない。だから、そのままユーリを探しに行こうとして
「今、ユーリはミューと一緒に出かけてる」
「ミュー……? 誰ですか、それ?」
「ユーリの嫁候補」
そこで初めて、ユーリに嫁候補がいることを知った。
俯く。表情が伺えないことがこれほどの恐怖だったのかとユウトは初めて知った。そんなユーフォリアの様子を眺めて、彼女が何を言い出すのかによっては全力で止めないといけないと決意した。
「ユ、ユーフィ……」
言葉にしようとする。まずは落ち着かせないことには話にならないと。だからまずはなだめようと、言葉を紡ごうとしたところで
たった一言。なんでもないはずの笑い声によって紡ぐはずだった言葉を止められた。
「ママも冗談上手くなったんですね。ユーリにそんな相手いませんよ。だってユーリはあたしとずうっと一緒にいるんですもん」
場の空気が一瞬でユーフォリア一色に染まったことをユウトは理解する。これはやべえ、マジやべえ、うちの娘マジでやばくない? と多少性格的には合わないような発言すらしてしまいそうになる程、恐ろしかった。
「冗談じゃない、ぞ?」
けれどアセリアは気にしない。気づいていないと言ってもいいかもしれない。
「あはっ」
もう一度笑いをこぼして、ユーフォリアは俯いていた顔を上げて、貼り付けたような笑顔で両親を見る。
「ちょっと今からユーリのこと探してきますね」
「お、おう……いってらっしゃい……」
「遅くならないようにな」
止められない。止めないと昼ドラの危機に発展するとわかっていても今のユウトにはユーフォリアが恐ろしすぎて止められない。飛び出して『出雲』からドゥームジャッジメントで飛んでいったユーフォリアを見送って、それを見たのか時深や旅団の面々がやってきたところに一言。
「……俺は、無力だ」
一方その頃、肝心のユーリはというと
ーーー室内に甘い声が響き渡る。
ピンクの光に照らされた室内で、幼い男女が交わり合う。どう考えてもこの交わり合うことを目的とした施設を利用できないような見た目の二人が。発情した雌の匂いが充満する室内にて少年が女体を貪り、少女もそれを受け入れることであらゆる全てが混じりゆく。少年ーーーユーリは少女ーーーミューギィを、ただただ苦痛から逃れるように、忌むべき記憶を消失するために、我を忘れて犯していた。
ことの発端は今朝のこと。ユーリがユーフォリアに襲われた後にまで戻る。
あの後、ミューギィに連れられて外に出て。デートをしている最中に発見したのがラブホテル。ミューギィは特別その存在の意味を理解していたわけではなかったが、それでも持ち前の本能が「今のユーリにはまずいものだから」と離れようとして、そしてユーリからの頼みに押し切られてこの部屋にまでたどり着いた。
ユーリが求めたことは至極単純。己の初体験の恐怖を上書きしたいということ。そのためにミューギィに相手をしてもらうことに罪悪感がなかったわけではなかったが、ミューギィ自身がそれを良しとしたことで甘えている現状だった。
お互いがお互いを求めるように名前を呼んでは唇を重ねる。最初は何もかもよくわからずに戸惑い、流されるばかりであったミューギィも、今では自分から求めている。お互いの体内に巡る「星辰」の血中粒子が、それを己の半身だと認めて、補うように、同化するように、最も適した形へと二人の体を順応させていく。ミューギィはユーリを受け入れることにのみ特化した肉体へと変貌し、ユーリもまた己の半身をミューギィの内側に納めることだけに特化した形へと変化させる。
すでに裸身にはミューギィが誰のものか示すように幾度か射精された痕が見える。結合している秘部からも同様に。そしてミューギィの瞳にはすでに光がない。痛みには耐えられても快楽には耐えきれない。そして、快楽を与える人物が結婚したいと思えるような人物である以上、そもそも耐える必要もない。無駄にお節介な「星辰」が排卵も強制させて、すでに受精まで済ませていることなど知らない二人は、今もなお体力が尽きるまで交わり合う。
「ユー、リ……っ……!」
ミューギィが快楽を浴びながら名前を呼ぶ。愛する人物のためになることができて、ユーリが嫌がっていたことから苦痛であると思っていたことが悦楽へと置きかわり、我慢など一切する必要のないそれを懇願の色を乗せた潤んだ瞳と情欲に満ちた言葉で請う。
返事は、肉棒を動かすことで行われる。ユーリも未だ満足していない。もはや事ここに至ってはユーフォリアに襲われた経験の上書きなんて理由はない。ただただこの快楽に未だ耽っていたいと願うからこその本能による行動。けれど、お互いにとってはそれだけでよかった。
饗宴は、未だ終わりを告げることはない。
祝Rー18起動。代わりにちょっと短い。
童貞は奪えたけど子供は出来なかったユーフィーちゃん「……」