※この作品はR-18です。

五等分の〇〇   作:なるせいぶき

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まにまにりぽーと⑤

 スクリーンに映し出される映像を、じーっと眺めていた。

 ストーリーラインというか、物語のジャンルを大雑把に分類するのなら、所謂ラブコメってやつに該当するのだろう。

 余命幾ばくもない女の子がいて、その子を好いている男の子がいて、そこにある葛藤なりなんなりを描いた作品。原作の小説がずいぶん売れているらしく、タイトル自体は俺でも耳にしたことがあった。

 似たような題材を扱った作品はごまんとあるので一山いくらの出来だと勝手に思っていたが、なかなかどうして良く作られている。そのせいか、俺らしくもなく画面に見入っていた。

 ……が。

 物語がクライマックスを迎えるあたりから、横の客のすすり泣きがどうしても邪魔をして気もそぞろになってしまった。

 残念なことに、その横の客というのが俺のツレだという事実もあって、ついつい視線をそちらに向けざるを得なくなる。

 そこにはハンカチで顔を押さえる少女がいて、暗い館内でも分かるくらいに泣き腫らした目で、食い入るように物語の続きを追いかけていた。

 なんだか見てはいけないものを見た気分になって、悟られないようにそっと視線を逸らす。どうせ後から感想を聞かれるのだろうし、俺もちゃんと結末を目に焼き付けないと。

 

 

 

「バイト先の店員さんに感謝です」

「悪いな、俺まで厄介になっちまって」

「いえいえ、元から二枚あったので、ちょうど良いタイミングでした」

 

 少し前に譲ってもらったのだという映画のチケットが役に立った。こいつは人好きのする奴だから、バイト先でも気に入られているのだろう。

 しかし、ペアチケットを渡すってのはつまりそういうことだから、その店員とやらにはいくらか同情してやらねばならないかもしれない。真意を汲んでもらえずかわいそうに。

 

「面白かったですね」

「期待してたよりはな」

 

 見入ってしまったことをそのままに伝えるのはどうにも気恥ずかしく、だから迂遠な表現方法に頼ることになる。まるで成長が見られないが、もともと俺なんてこんなもんだ。

 

「でも上杉さん、泣いてる女の子のことをじろじろ見るのはマナー違反ですよ」

「気になるもんは仕方ないだろ。あんだけぴーぴー泣いてんだから」

「なっ」

 

 ぴーぴーは余計だったらしい。四葉は何かを訴えたそうに唇をこっちに突き出しているのでおそらく今の間に減点がなされているのだろう。そういや聞いていなかったが、ポイントがゼロを下回った場合は何が起きるのだろうか。

 

「別に減るもんでもないしいいだろ。お前らの泣き顔はもう飽きるほど見た」

「それ、なかなかの問題発言ですね」

「しゃーないだろ。お前ら気づいた時には泣いてんだし」

 

 そもそも俺が泣かせているわけでもないし。たまたま居合わせる状況が多いってだけで、そこに俺が関与してはいない。……ちょっと関わっているかもしれないけれど、関与していないということにする。

 

「そこでさっとハンカチを手渡す心配りがあれば、上杉さんも一人前なんですけど」

「なんだ。その俺がまだ半人前みたいな言い方は」

「……人混みに巻き込まれたときにさりげなく手を貸してくれる優しさなんかがあれば、上杉さんも一人前なんですけど」

「それはもうさりげなくねえだろ」

 

 映画館の近くは今出てきた人間とこれから入っていく人間とで混雑していて、気を抜いたらはぐれてしまう可能性もあった。通信機器があるとはいえど、離れてしまうのが面倒だというのに違いはないから、出来ることなら傍にいた方が望ましいが。

 

「……はぁ」

「幸せが逃げちゃいますよ」

「やって来たこともないからセーフだ。……ほら、袖でも握ってろ」

「……変化球」

「なんだその感想」

 

 そう言いながらも、ちゃっかり袖は掴まれてるし。

 

「これで一人前になれたか?」

「まだ四分の三ってところですかね」

 

 袖はお役御免で、何事もなく手を取られる。どうせ最後はこう収まるのだから最初からそうしておけよってことか。

 

「五分の一人前の奴に言われてもって感じだ」

 

 向こうの三倍以上俺の完成度の方が高い。どんぐりの背比べ感もあるが、勝敗と優劣ははっきりさせておくに越したことはないだろう。

 

「私も、上杉さんが思ってるよりは成長してますよ?」

 

 で、今度は腕を持っていかれた。大分耐性をつけたつもりではいたものの、周囲の視線は相変わらず痛い。

 

「どうだかな」

「どうでしょうね」

 

 意味もなく笑って、その場を後にする。

 彼女たちの成長なんてハナから知っていることではあったから、否定する気も起きやしなかった。

 

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