――夢を見ていた。
それはとてもはちゃめちゃで、滅茶苦茶な、若かりし日々の記憶で。
若気の至りなんて言葉で片付けるには少々おイタを重ね過ぎた、苦くて甘い、物語。
自分の周りに突然現れた五人の女の子と俺とで綴ったストーリーは、倫理も論理も破綻させながら、どんどんと間違った方に流れていって。
それでも、その過程で何かを拾い集めながら、未完成だった俺という人間を、少しずつ今の俺へと昇華していった。
愛とか、憎とか、おおよそ存在し得るありとあらゆる感情をないまぜにしながら突き進んだ物語は、最後の最後に至るまで予想の付かない展開の連続で。
泣いたり、笑ったり、でもやっぱり泣いたりを繰り返しながら、めいっぱいの時間を使い込んで、どうにか全員が妥協できるような、一つの結末を見出した。
――なんて、そう上手くはいかなかった。
当たり前のような延長戦。続き続ける小さな戦い。高校だけで終わるかに見えた俺たちの関係は、なぜだかその後もずっとずっと絶えることなく継続していって。
だけど、最後は。
火種になった俺自身が我を押し通すことで、ようやくの終戦を迎えることになった。
多くの涙と多くの笑顔をこの目で見てきて、その末に出した結論だった。
正直、未だに誰もが支持してくれているかどうかは分からない。当然のように最初は一悶着二悶着あって、鎮火までに要した時間は計り知れない。
でも、結局、全てはエゴで回っているのだ。
どうしたいとか、誰といたいとか、どういう気持ちでありたいとか。それを決めるのは、全て自分の役割なのだ。
だから俺は、己に素直に、正直に。
ありのままの自分が望むままに、一つの答えを提示した。
「――風太郎」
聞き慣れた声が耳元からして、微睡みから現実へと回帰する。声の主の方を見れば、そこには華美なドレスで着飾った誰かさんがいて。ついでに言えば、俺も俺でここ一番という感じの一張羅で。
「どうしてちょっと泣いてるの?」
「さあ、なんでかな。眠っていたから、そのせいかもしれない」
まさか、夢の内容までは言えない。もし後悔しているなんて思われたら癪だから。
俺は、満足している。今の結果に、これ以上なく。
彼女はいかにも歩き辛そうな格好で、それでも器用に俺の一歩前に飛び出して。俺の左手をしっかり握りしめてから。
「じゃあ、お先ね。後は、舞台の上で」
そう言い残して、一足先に待機部屋から去って行く。
俺はその後ろ姿を最後の最後まで見送って、とうとうこの部屋から誰もいなくなってようやく、さっきの言葉に返事をした。
一言で、過去から抜け出していくように。
昨日の俺を、置き去りにしていくように。
「ああ、今行く」