次の日の朝
今日は専用機持ちと箒は他の生徒とは別行動だ。
そして千冬に連れて来られたのは、ビーチから少し離れた岩場だった。
鈴音「織斑先生。箒は専用機を持って居ませんけど」
皆は唯一専用機を持っていない箒がこの場に居ることが疑問だったようだ。
千冬「ああ、それは 「ちぃぃぃちゃぁぁん!!」」
千冬が説明しようとしたとき、どこからか千冬を呼ぶ声が響いてきた。
簪「あ………あれ」
簪が崖の方を指差す。そこには崖を滑り降りてくる束の姿が
ダンッ
シャル「飛んだ!?」
束は兎の如くジャンプし、千冬の元にダイブした。
束「やぁやぁちーちゃん会いたかったよ!さぁハグハグしよ!愛を確かめ ぶへっ!」
千冬に抱き付こうとした束を、千冬のアイアンクローが阻む。
千冬「……うるさいぞ束」
束「あはは。相変わらず容赦ないアイアンクローだね」
束は千冬にアイアンクローをされているにも関わらず、いまだへらへらしていた。
束「よっと!」
束は千冬のアイアンクローから抜け出し、若干隠れている箒の元へと来た。
束「やぁ!」
箒「ど、どうも」
箒は姉の余りの醜態に頭が痛くなった。
束「久し振りだね!こうして会うのは何年振りかな?大きくなったね箒ちゃん。特におっぱい がっ!」ガンッ
箒「……殴りますよ」
箒の手にはどこから出したのか木刀が握られていた。
束「殴ってから言った~。酷い!酷いよ箒ちゃん!ねぇそう思うでしょゆーちゃん!」
束は箒から方向を変えて悠に抱き付いた。
悠「そりゃ久し振りに会って上司のセクハラ見たいな事をすれば誰だって嫌ですよ」
束「え~セクハラって~例えばこんなのとか~❤」
モニュッ
束はニコニコと笑いながら悠の胸を揉んだ。
悠「ちょ///(何してくれとんじゃこの兎は!?)」
ガシッ
千冬「おい束。私の悠に何をしているんだ~?」ギリギリ
束「いたたた!ちーちゃん、束さんの頭が砕けちゃうよ!」
悠の胸を堪能していた束の頭を、千冬が後ろから鷲掴みにし、かなり本気で力を入れる。
流石の束も千冬の力を込めたアイアンクローは痛かったようで、バタバタと手足を動かした。
千冬「はぁ。束、自己紹介しろ。生徒が困っているだろう」
束「えぇ~めんどくさいからやだな~」
悠(千冬姉と束姉を見てるとたまに母子を見てるように思えるな)
勿論千冬姉がお母さんで、束姉が娘。
千冬「つべこべ言わず自己紹介しろ」
束「ちぇ~。私が天才の束さんだよ~終わり」
束は短く挨拶をすると、これで良いでしょっと言うような顔で千冬を見る。
千冬「もう少し真面目に挨拶出来んのか?」
束「束さんはいつでも大真面目だよ~」
悠(どこが真面目何だろ?いつもと変わらない気がするんだけど)
いつもと変わらずニコニコしている束に、悠は呆れ半分で見ている。
束「それで~今日は箒ちゃんにプレゼントを持って来たんだよ~」
箒「プレゼント?」
そう、今日は箒の誕生日なのだ。勿論私も箒にプレゼントを用意している。依然箒等とショッピングしたときに密かに買っておいたのだ。え?何を買ったかって?それは後からのお楽しみ。
束「さぁ空をご覧あれ!」
キーーン
束の言うように全員空を見上げる。すると、同時に空気を切るようなキーーン と言う音が聞こえてきた。
そして
ズドォォォォォン
一夏「うわっ!」
セシリア「きゃあぁぁぁ!」
空から人参が降ってきて、凄い音を響かせながら地面に突き刺さった。
シャル「に、人参?」
鈴音「何で人参が空から?」
悠(皆デカさとかメカである事とかには何も言わないんだ)
全員空から降ってきて人参に驚かざるを得なかった。
箒「姉さん、これは」
束「むっふっふ~。黒に並び立つ者、そして現代ISの全スペックを上回る束さんが手掛けた最高の機体。その名も第四世代型IS『紅椿』(あかつばき)」
プシュー
人参が縦に割れて、中から煙と共に赤いISが姿を現した。
束の言葉に本日何度目かの驚愕する。
ラウラ「第四世代とは……」
鈴音「世界でも第三世代が出来たばかりなのに」
と、皆が驚く中
束「じゃあ箒ちゃんこっち来て。『初期化』(フィッティング)と『最適化』(パーソナライズ)をパパッと終わらせちゃうから」
箒「はい」
箒は束に言われて『紅椿』に乗る。
カタカタ
束は『初期化』と『最適化』をするために機械を操作し始めた。
シャル「は、早い」
簪「……まさに………天才」
他の面々も束の操作の早さに目を奪われていた。この中で誰よりもISを弄っている簪が天才と言う程だ。恐らく他の誰も束に勝てる者は居ないだろう。
束「はい出来上がり!流石束さん、早いね~。さてと、後は『最適化』が自動でしてくれるから1、2分待っててね」
箒「はい」
束は箒の方を一段落させると悠の元へとやって来た。
束「じゃあゆーちゃんの『黒猫』も調整しておこうか?」
悠「ありがとう。じゃあお願いしようかな」
束「うんうん。バッチリカメ……調整しておくからね」
おいこら今カメラって言いそうになったろ。
悠「束姉。取り合えず返して」
束「ちょ、何でそんな無表情で束さんを見るのさゆーちゃん。束さんは決してゆーちゃんの裸を撮りたいとか、寝顔が見たいとかそんな事は無いんだよ!カメラなら既にゆーちゃんの部屋に取り付けて有るし」
誰かー!この人捕まえてー!おまわりさーん!
ヒュッ
ザクッ
悠と束がコントをしていると、束の後ろから普通よりも大きな刀が飛んできて、束の横の地面に突き刺さった。
箒「……姉さん。『最適化』が終わりましたよ」
束「ちょ、箒ちゃん!?これ『紅椿』の主力武装だよ!当たったら死んじゃうよ!」
箒が投げたのは『紅椿』の主力武装の一つ『雨月』だ。生身の人間が当たっていたら、まず間違いなく死んで居るだろう。
束「も~箒ちゃんはせっかちだな~。じゃあテストしてみようか。箒ちゃん、飛んでみて」
ドシュンッ
箒は束に言われた通りに空に飛び立った。
ラウラ「早い!?」
簪「これが……第四世代の加速」
箒が飛び立つと風が巻き起こり、一気に箒の姿が小さくなった。
悠(スゲーな。スピードなら『黒猫』とためはれるかな?)
束「まずは『雨月』から試してみようか」
箒『はい』
キュンキュン
箒が『雨月』で突きを行うと、幾つものレーザーを放出し、雲に無数の穴を開けた。
束「次はこれを『空裂』(からわれ)で打ち落としてね~」
束がまたも機械を操作すると、次は束の横に大きなミサイルランチャーが出現し、幾つものミサイルを発射した。
箒『はぁ!』
ドドドドン
箒はミサイルに向かって『空裂』を振り抜くと、『空裂』の刃からエネルギー刃が放たれ、ミサイルを全て爆発させた。
箒(これは、この『紅椿』が有れば戦える!)
箒は歓喜していた。ずっと悠の隣で肩を並べて戦いたいと、悠を守りたいと思っていた。しかし、実際は専用機を持っていない自分はいつも悠を見ている事しか出来なかった。だがやっと、やっと自分は悠の隣に立てる。その気持ちが箒の心を満たしていた。いつもは落ち着いている箒の心を踊らせる程に………。
ダッダッダッ
とそこへ
真耶「織斑先生ー!」
真耶が豊満な胸を揺らしながら走ってきた。
真耶「大変です!織斑先生!」
少し息を切らしながら真耶は千冬に話し掛ける。
千冬「どうしました山田先生」
真耶「今学園の方からこれが」
真耶は千冬に端末を渡す。
千冬「っ!?これは!」
千冬は端末を見るなり血相を変えた。
端末に書かれていたのは
『特務任務A。現時刻より対策を開始されたし』
真耶「どうやらハワイ沖で試験運用のテストを行っているアメリカの軍用ISが突如暴走したそうです」
千冬「分かった。詳細は後で聞こう。他の教員にもこれを伝えてください」
真耶「はい!」
千冬と真耶はそれぞれ話し合うと、真耶は旅館の方へと引き返していった。
千冬「全員聞け!現時刻を持って全教員は特務任務に当たる!よって、各自旅館に戻り、連絡が有るまで自室で待機とする!」
ザワザワと騒がしくなるも、生徒は次々に旅館へと戻っていく。
千冬「それと、専用機持ちは全員集合しろ」
悠(来たか。『銀の福音』。何としても一回目のコンタクトで決着を着けてやる!)
悠は決めていた。自分が原作に介入したことにより束は学園にもどこにも危害を加えていない。ならば誰が『銀の福音』を暴走させたのか。それは間違いなく研崎の組織だ。だとすると原作の知識は当てにならない、だからこそ一回の戦闘で『銀の福音』を倒し、何事もなく幕を閉じる。と
束「ゆーちゃんゆーちゃん。やっぱり来たね」
束は悠に近づき、周りには聞こえない小さな声で話す。
どうやら束は今回研崎等の組織が何か仕掛けてくると読んでいたようだ。
悠「見たいだね。でも、私がきっと何とかしてみせるよ」
束「………ゆーちゃん。無理は禁物だよ」
束はニコニコしながらも、悠の事を心配しているようだ。
悠「うん。ありがとう束姉」
私は、いつも影から見守ってくれる束姉に感謝した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
悠達専用機持ちは千冬に集められ旅館の一室に居た。一室には機材が沢山置かれていた。
千冬「ではこれよりブリーフィングを始める。注意しておくが、今から話すことは国家の機密事項だ。二十四時間監視されたくなければ口外はするな」
代表候補生等は事の重大さが分かっているようで、気を引き締めている。
千冬「………ブリーフィングを再開する。今から二時間前、ハワイ沖で試験稼働を行っていたアメリカの第三世代型IS『銀の福音』が制御下を離れ暴走、監視空域から離脱したという報告があった」
カタカタ
千冬が言い終わるのと同時に真耶が機械を操作し、中央のモニターに太平洋と思われる地図が映し出された。
千冬「米軍機の追跡の結果『銀の福音』はこの近海を通さすると判明した。……遺憾(いかん)では有るが学園の上層部から我々だけで対処に当たるようにと命令が有った」
事の次第を知り、緊張が走る。
一夏「あのちふ、織斑先生。何でアメリカのISを俺達だけで対処しなきゃいけないんですか?」
一夏はまだハッキリと事の重大さが分かって居ないのか、いつもと変わらない表情で千冬に質問する。
千冬「学園の保有する戦力は一国に相当する。故に各国から助勢の依頼が来ることも有る。学園の特記事項にも書いてあっただろう」
そう、学園の戦力は下手な国よりも強い。それと言うのも『ブリュンヒルデ』の千冬を初めとした元国家代表候補生の真耶等、学園の教員は全員元国家代表や代表候補生なのだ。それに加えて『打鉄』に『ラファール・リヴァイヴ』とISも複数揃っており、まさに国家として戦争出来る程なのだ。
千冬「続けるぞ。我々教員は空域並びに海域を封鎖する。よって『銀の福音』はお前達に撃墜してもらうことになる」
千冬「そして、『銀の福音』は今も超音速飛行を続けている。アプローチは一回が限界だ。故に一回のアプローチで撃墜しなければならない」
千冬の言葉で全員一斉に一夏の方に視線が向く。
一夏「お、俺?」
鈴音「そりゃあんたの『零落白夜』しか無いでしょ」
そう。どの機体も強いが、一撃必殺となると相手のシールドエネルギーに直接ダメージを与えれる『白式』の『零落白夜』以外に無い。
一夏「ちょ、ちょっと待てよ!一撃必殺って言うなら悠の『黒猫』の武装だってそれらしいの有るだろ!スピードも有るし、悠の方が適任じゃないか?」
あ~~。な~るほど。確かに『グングニル』を使えばそれも有りうるな~。でも相手はあの『銀の福音』だし、一撃でってなるとな~。
悠「なら、私か一夏二人で撃墜すれば良いんじゃない?『黒猫』のスピードなら『銀の福音』にも劣らないと思うし、一夏はエネルギーの節約の為に誰かに運んでもらえば。そしたら、私、一夏、一夏を運ぶ誰かの三人で作戦に当たれば、それが最善の策だと思うけど」
千冬「ふむ。そうだな」
セシリア「でしたらわたくしが一夏さんを運びますわ。本国から高機動パッケージ『ストライクガンナー』が送られて居ますわ。これが有れば『銀の福音』と同等、いえそれ以上のスピードが出せる筈ですわ」
千冬「よし、では作戦はオルコットに 「ちょーと待ったー!」」
千冬が言い終わる前に束の声が遮った。
束「よっと」ヒョコ
束は天井の板を一枚外して、天井裏から降りてきた。
悠(………思うんだけど、どうやったら物音をたてずに天井裏に隠れてられるんだろ。束姉って実は忍者の子孫?)
天井の板をつけ直している束を見て、悠は真面目にそう思った。
千冬「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。出ていけ」
束「え~束さんは関係者だよ~。何たって束さんはゆーちゃんの初めてを貰い、ゆーちゃんをお嫁さんにするつもりだからね~❤」
悠(何を勝手に決めてんだ?この兎)
悠は一度ちゃんと「お話」をしようと束に思ったが、それよりも更に恐ろしい事を考えている者が他に居た。
千冬「ほ~束。それは私に向けての挑戦状か?ならば受けて立つぞ。おい真耶、『打鉄』を持ってこい」
目をマジにして、本気で決闘をしようとしている『ブリュンヒルデ』がそこに居た。
千冬「悠の初めてを貰うだと………。悠の全ては私の物だ!悠の処女も、悠の愛も、全て私が貰う!貴様何ぞにはやらん!いや、誰にもやらん!勿論、悠が16になれば結婚する」
うおぉぉぉぉぉぉぉい!!本人の同意無しで何勝手に話し進めてんの?私は私だけの物だよ!誰にもあげないよ!後、千冬姉………もう隠す気無いよね。
◇◇◇◇◇◇◇◇少々お待ちください◇◇◇◇◇◇◇
千冬「ゴホン。済まない。少し取り乱してしまった」
あれから数分、何とか千冬の暴走を専用機持ち全員で抑え、やっとブリーフィングを再開した。
束「いや~束さんもはしゃぎ過ぎたね。それよりも、ちーちゃんちーちゃん、もっと良い作戦が私の頭の中にナウ・プリンティング!」
千冬「……言ってみろ」
束「むっふっふ~。ここは断然『紅椿』の出番何だよ」
千冬「………何だと?」
その場に居た全員が不思議そうな顔をする。
束「『紅椿』のスピードは『銀の福音』を上回ってる。更に!」
カタカタ
束は自信の機械を操作する。
ピッ
中にモニターが出る。
そこには『展開装甲』の文字が映し出された。
一夏「『展開装甲』?」
聞き慣れない名前に、全員困惑する。
束「『展開装甲』って言うのわね。攻防そして機動性を即時に入れ換えられる万能装備の事何だよ」
一夏「へ~」
束「あ、いっくんの『白式』にも『展開装甲』が装備されてるよ」
束は事も無げにさらっと凄いことを言う。
一夏「あ、そうなんです………うえぇぇぇ!?」
一夏も余りにさらっと言われたので、気付くのにワンテンポ遅れた。
悠「………『雪片弐型』」
束「おー!流石ゆーちゃん。すぐに気付くとは、やっぱり束さんのお嫁さんはゆーちゃんだけだよ~❤」
悠「くっ!(駄目だ!私が話しに入ると話が進まない!)」
ガシッ
悠にジリジリと近寄る束を、千冬の手が束の頭を掴み止める。
千冬「オルコット。その高機動パッケージを使えるようにするまでにどれくらい掛かる」
セシリア「はい。およそ20分も有れば」
束「『紅椿』なら4分で使えるよ」
束の言葉にセシリアは何も言えなくなる。それはそうだ。自分よりも数倍早く出来るなら、そっちを選ぶ。当たり前の事だ。
千冬「……では作戦遂行に当たるメンバーは如月、織斑、篠ノ之以上だ」
箒(やっと、やっと悠と一緒に戦える!もう足手まといじゃない。私が悠を守る!)
箒の心は満たされていた。今まで遠く感じた悠を今はすぐ近くに感じる。それだけで箒は嬉しかった。
千冬「『銀の福音』撃墜にあたって作戦は、二重の囮で行く」
一夏「二重の囮?」
千冬「ああ、まず篠ノ之が『銀の福音』の注意を引き付け、更に悠が『銀の福音』を攻撃し、織斑から完璧に注意を反らす。そこへ織斑が『白式』で『零落白夜』を放つ」
一夏「織斑先生。囮って俺じゃダメなんですか?」
一夏は女だけを危ない囮にしたく無くて自分が囮になろうと千冬に理由を聞く。
千冬「囮には『銀の福音』の攻撃を避けきる早さが必要だ。よって二人にやって貰う。やれるか?」
悠・箒「「はい!」」
二人は同時に答える。
千冬「作戦結構は12時。選ばれなかった者も各自準備しておけ!解散!」
しかしこの時、既に闇は動き出していた。