※この作品はR-18です。

寄合荘での生活   作:ウル・ウルス

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執筆意欲はあるけど、納得のいく文が書けないので、暖めてた設定を使って解消することにしました
更新速度は亀々更新になると思います


新居

「お兄ちゃん、荷造り終わりました」

 

一階から引っ越しの準備を終えた義妹たちの声が聞こえる。

 

「二人とも先に出といてくれるか」

 

雲一つない快晴の朝。新しい旅立ちには最高のシチュエーションだが、

 

「父さん……」

 

誰に言うでもなく俺、漆嶋猛(うるしじまたける)は呟く。

今までと何ら変わらない義父(ちち)の部屋。

変わったのはこの部屋の主がもう帰って来ないと言う事くらいだ。

 

「3度目か……」

 

俺が家族を失うのはこれで3回だ。

 

1度目は実の両親。

二人とも俺が小学生に入る前に交通事故で亡くなった。

その日は俺の誕生日で強い雨の降る日だった。

両親は俺へのプレゼントを買うために車を出していたが、積み込み重量を大幅にオーバーしたトラックがカーブを曲がれずに横転。

二人はそれに巻き込まれた。

潰された車の中から出てきたひしゃげたプレゼントを抱き抱えながら、何でと何度も繰り返しながら泣き叫んだ事は今でも鮮明に覚えている。

 

2度目は俺が引き取られた孤児院でできた可愛い弟分。

一人になった俺を引き取ってくれる親戚はおらず、最終的に俺は孤児院に引き取られた。

しかし、その孤児院はとある男が慈善事業で経営していたのだが、実態は宣伝組と不要組に分けられていた。

宣伝組はその男のイメージアップに使える才能を持った子供が割り当てられ、優遇されていた。

一方、才能のない不要組は宣伝組や職員のストレス発散や暇潰しに虐げられ、地獄を味会わされていた。

 

俺は不要組だったが、その理不尽に納得できず何度も突っ掛かては返り討ちにあってボコボコにされていた。

だから俺は不要組の中でも最底辺に位置付けられ、必要以上に虐待を受けた。

まぁ俺の事はどうでもいいんだ。

けど、そんな俺を不要組の連中はヒーローみたいに慕ってくれていた。

そこで俺たちは本当の家族のような絆で結ばれていた。

しかし、ある時その内の一人が殴られた時の打ち所が悪くて息を引き取った。

 

ぶちギレた俺は弟分を殺した職員や弟の死を笑った宣伝組たちを殴り殺した。

それでも納得できず、こんなの孤児院を作った男にまで怒りの矛先を向けた。

 

その男は有名な財閥の当主で、世界的にも有名な企業をいくつも所持していた。

しかし、裏では政治家との癒着、違法薬物や武器の売買など探ればいくらでも黒い部分が出てくる男だった

俺はその男の不正の証拠を公開した。

 

その結果、男は自殺。会社も芋づる式に倒産して日本どころか世界の経済まで傾き、失業者も大勢出た。

男は自業自得だが、関係の無い善良な人々まで苦しめる結果になってしまい、自分のしたことに追い詰められている時にそっと手を差し伸べてくれたのが義父の漆嶋龍哉(うるしじまりゅうや)だ。

 

この人は両親が生きている時から家族ぐるみの付き合いがあった人だ。

父さんは俺を保護してくれた時、お前は悪い事はしていないと言って抱き締めて、養子として迎え入れてくれた。

 

それから俺は幼なじみである漆嶋翠(うるしじまみどり)の兄として、漆嶋龍哉の息子として新しい家族、新しい幸せを手に入れた。

 

だが、3度目。

その父が殉職した。

彼は警察や公安、SATや自衛隊ですら手に負えないレベルの案件を解決するENDと呼ばれる部隊に所属しいた。

日本の最後の要とまで呼ばれるENDの職務は熾烈を極め、殉職率は8割を越える。

そんなENDの中でも優秀な成績を修め、豪快な性格も相まって殺しても殺せない男といった感じだった父だが、あまりにもあっさりと命を落とした。

 

いや、分かってはいた。人は脆く、死は等しく訪れるものだ。

今までの人生でそんな事イヤというほど理解していた。

だが、家族といる幸せが、温かさがその事実から目を背けさせた。

 

それだけに俺が受けたショックは計り知れなかった。

しかし、実の父を失って俺以上の悲しみを感じているはずの翠がそんな様子を微塵も見せない笑顔で励まし続けてくれたお陰でとりあえずは立ち直れた。

 

だが、父の面影が濃く残るこの家で生活を続けるのは辛いと皆が思っていたため、この家を出て新しい場所で暮らすことになった。

 

「父さん……また戻ってくるから」

 

家具などはそのままにしている。運び出すのも必要最低限の物だけに留めている。

それはいつかこの現実を受け入れるくらいに成長してからこの家に戻ってくるつもりだからだ。

それでもここに戻ってくるのは当分先になるだろう。

最後に父の部屋を目に焼き付け、扉をそっと閉じる。そして、廊下の軋む音と共に思い出を噛み締め、玄関に向かう。

 

「2人ともお待たせ」

 

玄関で荷物を持って待っていた2人の妹たちと合流して家を後にする。

誰も振り返らなかったし、涙も流さなかった。

でも、どうしても暗い空気になってしまう。

 

「悪いな葵、あの家の維持費を出して貰うことになって」

 

簡単に残しておくといっても防犯や清掃はしておく必要があるので、その人件費を妹の葵が負担してくれることになったのだ。

 

「気にしないで下さい。私のモノは全てお兄さまの物なんですから。むしろ、お兄さまが私を使ってくだって嬉しいくらいなんですから」

 

二人目の妹の漆嶋葵(うるしじまあおい)も漆嶋龍哉の実の娘ではない。

葵の実の父親は、例の孤児院を作った男だ。

どうやって突き止めたのかは詳しくは知らないが、ごく稀に俺に人生を滅茶苦茶にされた人が俺を怨んで殺しに来ることがあった。

葵もその内の一人だった。

なに不自由無い順風満帆の生活から一転。

マスコミや野次馬に追われる日々。

葵の立場からしたら俺を怨むのは当然と言えるだろう。

 

まぁそれは失敗に終ったんだが、その後色々あって俺への贖罪に一生を費やすと言い出した。

それでどうしていいか分からず、とりあえず父さんに相談すると、父さんは葵も養子に迎え入れた。

そうして葵は俺の義妹になったわけだが、本気で贖罪のために一生を費やすつもりらしい。

 

「なぁ、葵は今どれくらい貯金有るんだ?」

「お兄さまとお姉さまを一生養えるくらいには貯まってますよ♪」

 

興味本意で聞いてみると、予想以上の回答が帰ってきた。

葵は以前から個人で投資などをしており、かなりの資産を持っていたし、今も続けて着々と資産を増やしているらしい。

 

「もっと私のお金を使ってくださって良いんですよ」

「妹のヒモになる気はないぞ。それに、できれば普通の生活をしたいしな」

「お兄ちゃんが一番普通から遠い事している気がするんですが……」

 

葵の提案を一蹴すると翠にツッコミを入れられた。

確かに俺のやってる事は普通と対極にある事だが、だからこそ普通を意識してしまうのだ。

 

「ま、まぁ、葵は良くしてくれてるしから気にすることはないぞ」

 

実際悪いのは葵の父親であって葵ではないのなだから、そこまで背負い込む必要はないぞと励ます。

 

「本当ですか?私はお姉さまに比べて女としても劣ってますし、普段している事も些細なことばかりですし……」

「葵は自分を卑下し過ぎだぞ」

「あう」

 

葵のコツンと頭を叩くと、可愛らしい悲鳴を漏らす。

実際葵は翠と比べても遜色無い美少女だし、俺たちのために必要以上に尽くしてくれている。

だが、負い目からか自分を軽く見る癖があるのがたまに傷だ。

 

「少なくとも俺は葵が妹になってくれただけで嬉しいよ」

「お兄さま」

 

頭を撫でながら本心を言うと、葵はパアッと満面の笑みを咲かせる。

やはり葵には笑顔の方が似合う。

 

「それでは、私にできる範囲で頑張らさせて頂きます♪」

 

そう言うが早いか、葵は俺の腕に抱き付き、一般的な女の子よりたわわに実った柔らかい胸を押し付けてくる。

香水などの人工的な匂いでなく、女の子から匂う甘い匂いが鼻孔を擽る。

 

「頑張ってくれるのは良いんだが、これじゃ歩きにくいだろ」

 

ただでさえ美少女二人を連れて歩いてるのに、こんなことをされては周囲からの妬みの視線が痛い。

 

「嫌でしたでしょうか?」

「嫌じゃないけど」

 

正直、葵の嬉しそうな顔を見れるなら別に嫉妬の視線などどうでもいいのだが、できれば目立つ事はしたくないんだがな……

 

「なら私も♪」

「ちょっ!?翠まで」

 

俺が満更でもない返事をすると、翠もいたずらっ子の笑みを浮かべて葵と反対の腕に抱き付つく。

左右から妹にサンドイッチにされて、歩きにくいことこの上ない。

しかも、周りからは呪詛の声まで聞こえて来た。

 

妹ズが俺に針の筵(むしろ)を歩けと言うなら、歩いてやるのも兄の務め。

俺は覚悟を決め、ついでにこの状況を新居まで堪能することにした。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

「見えてきましたよ」

「は?」

 

両手に花状態で歩くこと一時間。

翠が指差す建物を見て俺は口元を引くつかせる。

そこにあったのはマンションなどではなく、趣を感じさせる立派なお屋敷がそびえ立っていた。

 

「……まさかあそこか?」

「はい、あそこです」

 

俺がその屋敷を指差し確認をとると、肯定が帰ってきてしまう。

 

「ちょっと待て!いったいいくら使った!?」

 

あんな屋敷、数千万で済むかすら怪しい。

父さんの遺産はあるにはあるが、ENDは仕事内容とは裏腹に公務員の安月給なため、そこまでではない。

翠もそんな遺産を家を買うために使うわけもない。

となると葵の貯金だが、俺が使わないようにしている以上はこんな事に使うはずがない。

 

「あ、大丈夫です。元々お屋敷だったところを改装して、シェアハウスとして使ってるものですから」

「そうだとしても、こんな高そうな所じゃなくて良かったろ」

 

こんな豪邸だ、賃金も一般的なマンションよりはるかに高いだろう。

俺も不定期でバイトをしているし、やろうと思えば金はいくらでも増やせる。

だが、俺のバイトは表沙汰にできない系統のものなので、できれば使いたくない。

 

「大丈夫です。ちょっと訳有りで賃金はかなり安くで済みますから♪」

 

そう言って二人は俺の腕を引いて寄合荘(よりあいそう)と書かれた看板がかかっている表門を開ける。

すると、

 

「「猛お兄ちゃん!!」」

 

俺が入ってくるのを待ち構えてたかのようなタイミングで二人の美少女が飛び出してくる。

俺は慌てて二人を受け止めるが、バランスを崩してしまい後頭部から地面に倒れ込む。

 

「いてて……」

 

後頭部の痛みに耐えながら飛び付いてきた二人の美少女を見ると、二人は俺の胸に子猫のように頬擦りしている。

 

一人は俺と同い年くらい、俺の事をお兄ちゃんと言ってもおかしくない。いや、十分おかしいんだが年齢的にはおかしくない。

 

だが、もう一人は明かに俺より年上だ。

 

そして俺は年上で俺のことを猛お兄ちゃんなんて呼ぶ奴を数人だけ知っている。

 

「しろ……お前真白(ましろ)か!?」

 

俺は孤児院に居たときの家族の名前を口に出すと、正解だよ、と言うように満面の笑みを浮かべ、さらに強く抱きついてくる。

 

「そうだよ……猛お兄ちゃん」

 

感極まったように目元を潤ませているしろは俺が知っているときより成長している。

 

「貧乳だった私もお兄ちゃんのためならここまでおっぱいを大きくできるのだ!」

「少しは恥じらえ!」

「あう☆」

 

自慢げにおっぱいを強調してくるしろに軽くツッコミを入れてやると嬉しそうに舌を出す。

体は成長したがこういうところは変わってないらしい。

 

「猛お兄ちゃん!私は!?」

 

白だけにかまっているともう一人の女の子が期待の籠った眼差しで見つめてくる。

 

「紫織(しおり)は全然成長してないな」

「んなっ!?ちょっと~久々の再開なんだからお世辞でも成長したって言ってよ!!」

 

ぷんぷんと擬音を立てながら俺を事をポカポカと殴ってくる。

こんな仕草をするからさらに幼く見えるのに。

とは言え、数年ぶりの再会だ。

俺は二人を強く抱き締める。

 

二人の名前は愛澤真白(あいざわましろ)と月影紫織(つきかげしおり)。

二人とも孤児院時代の大切な家族だ。

 

「二人ともどうしてここに?」

 

 

孤児院時代の家族は他の施設に引き取られたり、養子になったりとでバラバラになってしまった。

そんな家族が二人も揃って新しい住居にいる。

再開は嬉しいのだが、突然すぎて頭がついてこない。

 

「ふっふっふ、実はこの寄合荘の管理人は私なのだ!」

「私は真白お姉ちゃんに養ってもらってるの」

 

ドヤッ、と胸を張る白と少し恥ずかしそうに言う紫織。

なるほど、二人がここにいる理由は分かった。

しかし、こんなこと偶然起こるわけがない。

チラッと妹ズを見ると、二人はイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべている。

どうやら妹ズは二人がここにいる事を知った上で俺に黙ったていたようだ。

 

妹ズには後で礼をしなくちゃな、と考えつつも再開を喜ぶ。

ここに住んでいるということは、これからは毎日会えるということなのだから嬉しくないわけがない。

 

「ちょっと真白さん!これはどういう事ですか!?」

 

真白たちと思いで話に興じていると横から憤りが混じった声が割り込んでくる。

 

「あ、紅葉(くれは)ちゃん。この前話してた新しい同居人が来たんだよ」

「ええ、それは聞いてました。ですが……男が来るなんて一言も言ってなかったですよね!」

「だって言ったらみんな反対するでしょ」

「当たり前です!」

 

突然の事にどうして良いか分からず話を聞いていると、しろに不平を言っている女性に見覚えがあることに気が付いた。

その女性はなんと俺と同じ学園に通っていて、しかも同じクラスの秋風紅葉さんだった。

 

「男の入居なんて絶対に認めませんから!」

「そこをなんとか」

「絶対にダメです!!」

 

しろはあの手この手で紅葉さんを説得しているが、取り付く島もないといった様子だ。

 

「なあここの管理人てしろだろ。何で紅葉さんに許可もらう必要があるんだ?」

「えーと、この寄合荘を所有してるのは実は紅葉ちゃんで、真白お姉ちゃんは代理で管理人をしてるだけなんだよ」

 

気になって紫織に話を聞いてみると意外な事実を教えてくれる。

そういえば、紅葉さんは学園でも有名な男嫌いだった。

それで俺の入居を反対しているのかと思ったが、どうやらそれも違ったらしい。

 

「なんの騒ぎですか?」

「五月蝿い~」

 

玄関で大騒ぎしていたため他の住居人も集まってくるが、そのほとんどが俺を見て表情を曇らせる。

もちろん程度の差はあったが、明らかに歓迎されていない雰囲気だ。

紫織の話ではここに住んでいる人は全員が未成年の女性で、色々な事情で男を毛嫌いしているそうだ。

流石にこの事は妹ズも知らなかったようで、どうして良いか分からずに立ち竦んでいる。 

 

「だからもう契約もしてるし、別館に住んでもらうだけだから!」

「それなら……家の近い人って事になるのかな?」

「それでも私は納得できません!」

「どうでもいい~私はさっさと堕天エンジェルやりたいからこれで~」

 

しろの案に渋々納得する住人もいれば、紅葉さんのように断固として認めない住人もいる。

というか、気だるそうに部屋に戻っていったあの子、どう見ても小学生なのにエロゲのタイトル言ってたぞ。

と、軽く現実逃避しながらしろの説得を見守る。

 

「男なんて理性の無い獣です!そんな危険な生物と同じ敷地のなかにいるなんて我慢できません!」

 

紅葉さんの言葉から気軽に触れてはいけない何かを感じた。

恐らく何か大変な事件があったのだろう。

そう考えると少し申し訳ない気持ちになる。

 

「もう契約もしてるし、猛お兄ちゃんなら紅葉ちゃんの心配しているような事にはならないよ」

 

しろのこの言葉が決め手となり、紅葉さんは仕方なく俺の入居を認めてくれた。

 

 

「なにか変なことをしたらすぐに追い出しますから」

 

紅葉さんは最後にそう言って家の中に入ってしまう。 

どうやら俺の新生活は前途多難らしい。

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