立冬を過ぎて迎えるはじめてのオフの日。
放射冷却による朝の冷え込みが強くなり、布団がますます恋しくなる季節であるが、指揮官は非常に上機嫌だった。
その理由は単純明快。
今日はベルファストと二人きりでお出かけする予定だからだ。
(この時をどれほど待ち侘びたことか……)
かのアークロイヤルは駆逐艦を見守る際、鼻から血が噴き出すほど気合が入っているとよく言われるが、今日の指揮官もそれに匹敵する意気込みっぷりである。
というのも、今まで何度も誘ってはやんわりとお断りされてきたからだ。
これにはベルファストが普段担当している役職にも関係がある。
エディンバラ級二番艦である彼女は、ロイヤルが誇るメイド隊を総括する「メイド長」であり、その仕事ぶりはまさに万能。
メイド隊のメンバーには、力仕事のケント、掃除のシェフィールド、身辺警護のシリアス、お菓子作りのサフォーク、紅茶のエディンバラ等と、一芸ならばメイド長を上回る人材がこれでもかと揃っている。
だがベルファストは、その全てを高水準でこなせてしまう。
数値で表すなら、九割以上の出来だろう。
──メイドたるもの、見返りを求めず全身全霊で奉仕するべし。
という見解を示したのはシェフィ―ルドであるが、これを本当に体現できてしまう完璧ぶりこそ、ベルファストがメイド長たる所以である。
しかし、あまりに聡明なのが災いして、ベルファストはほとんど自己を表に出さない。
強いて言うならば、主人がまだ自覚していないことすらも察知して、敢えてすぐには答えを教えず、焦らしては困り顔を楽しむ程度の茶目っ気は見せる。
しかしそれも、指揮官の思考力と問題解決能力を鍛えるという目的あってこそである。
一介のメイドとしての線引きがあまりにも固すぎて、決してそれを破ろうとしない。
「ご主人様からのお誘いは身に余る光栄ではありますが、ベルファストにはメイド長としての責務、およびご主人様がご不在の際でも業務を滞りなく進めるという、秘書艦としての責任がございます。何卒ご容赦下さいませ」
この一点張りである。
指揮官は心配だった。
徹底してメイドであり続けることを、ベルファストは恐らくストレスに感じたりはしない。艦船である彼女は人間のように幼少期を経て育ったのではなく、生まれた時から「瀟洒な従者」としての完成系であり、そう造られたのだと彼女も自認しているからだ。
しかし一人の女性としてはどうなのか。
メイドの枷を外して、ありのまま過ごす時間があってもいいのではないか────ついでにそれが自分とイチャコラする時間になれば一挙両得というもの。
両得の部分は完全に自分の都合だが、思い立った
元メイド総括のニューカッスルに相談を持ちかけると、メイド隊全員の助力もあって、とうとうベルファストに休暇日を設けることができた。
なおこの際、指揮官は綺麗な目的のみを打ち明けたものの、内に秘めた我欲をほぼ全員に看破されている。
ばれていないと思ってるのは当人だけだろう。実に幸せ者である。
仕上げに自身のオフ日を、ベルファストの休暇日に当てれば作戦成功。
どう見ても職権乱用であった。
「……メイドとしてはご主人様を窘めるべきですが、主や皆様の御心遣いを無下にするわけには参りませんね。不肖ベルファスト、ご主人様とのお買い物に一日同伴させて頂きます」
外堀を完全に埋めることで、ようやくベルファストは折れてくれた。
メイドとしての一面以外をようやく拝める絶好機、男として浮かれずにはいられない。
そういう経緯もあってか、指揮官は普段以上に身なりを整えて、気力十分のまま待ち合わせ場所へと向かったのだが──
「お早いご到着でございますね、ご主人様」
舞い上がる木の葉も、秋空に浮かぶ雲も、そして行き交う人々さえも制止して見えた。
待ち合わせ時刻の十分前に到着した指揮官よりも早く着いていたベルファストだが、驚くべきところはそこではない。
着任以来、初めて拝む私服姿だった。
普段の彼女の格好といえば、クラシックなメイド服に、破砕した鎖の垂れたチョーカー、重桜の五航戦・瑞鶴の一刀ですら受け止めてしまうほど頑強なガントレットが特徴的である。しかし今のベルファストは、それらメイドとしてのエッセンスを一切排除した秋のコーデであった。
真紅のベレー帽とお揃いの色をした大判ストールを羽織り、肩を大胆に露出したベージュのセーターに黒のタイトスカートを身に着け、腰には濃茶のベルトと白紐が巻いてある。太ももから脚まで艶めかしい黒タイツに覆われ、下にはシックなハイヒールを履いている。また、ベルファストから見て左側の頭部にはチョコレート色のリボンが結ばれていて、それが絹のような白髪に映えて一層際立っている。耳に付けられた金のイヤリングは、揺れるたびに光を反射し、存在感を放っていた。
「おぉ……」
感嘆の声を漏らした指揮官だが、後の言葉が何も続かない。
口が開いたまま数秒固まっていた。
本当は、息つく暇も無いほど誉め言葉を
だが、これほどの美しい造形を前にしては、どんな飾った言葉も陳腐でしかない。
ようやく捻りだした一言も、
「……すげぇ似合ってる」
に留まり、指揮官は己の語彙力の無さを恥じていた。
「勿体ないお言葉でございます」
一瞬、薄青の瞳を大きく開いた後、ベルファストはそう答えていつも通りのお辞儀をした。
「ごめん、折角の私服なのに気の利いたこと何も言えなくて」
「あら、ご主人様はお気づきではないのですね」
「な、何を?」
「ご主人様は本気で感銘を受けたときほど、口が回らなくなるのです。先程の表情だけで、ベルファストの服装をお気に召して頂けたと十分に伝わっております」
「うわっ……それマジか」
恥ずかしさの余り天を仰ぐ指揮官。
このメイド長は、あとどれほど自覚していない部分を知っているのだろう。
そう考えるとますます顔から火が出そうになる。
「それでは参りましょう。時間は有限でございます」
「お、おう」
順調な滑り出しとはいかなかったが、雰囲気も和んだところで二人揃って歩み始めた。
指揮官は新鮮な気分であった。
勿論ベルファストの私服姿が美麗であるのも一つだが、何より並んで歩くのが楽しい。
普段の彼女であれば、従者の立場を弁え、常に三歩後ろを歩んでいるところだろう。
かといって、メイド気質が完全に抜けるわけでもなく。
「ストップストップ、俺が荷物持つからいいんだってば」
買い物中、率先して荷物を持とうとするベルファストを手で制止する。
「しかしメイドとして、ご主人様のお荷物を持つのは当然のことでございます」
「ベル、今日はそういうのを抜きにして、楽に振る舞ってほしいんだよ」
指揮官はベルファストに向き合って言う。
「俺の我が儘に付き合わせといてなんだけどさ、こんな時ぐらいベルにはメイドじゃなくて一人の女性としてメイドの枷を外して欲しいというか」
「女性として、でございますか」
「もっとはっきり言うと……その、デートの時ぐらい俺が引っ張っていきたいな、と」
思い切ってそう告げる。
決して男らしくはないが、勇気を出した発言だ。
控え目な印象の男から飛び出した意外な宣言に、さしものベルファストといえど驚きを顕わにする。
「お手を煩わせることになりますが……」
「むしろ歓迎さ。それでベルがもっと素のままでいられるなら、いくらでも」
胸を拳で叩いて見せる。
「……そうですね。仰る通り、指揮官としての……いいえ、男性としてのメンツを立てるのも大事でございますね。それでは半分お預けしてもよろしいですか」
「あ、そこは譲らないのね」
「ご主人様に荷物持ちを全て押し付けては、メイド長の名折れですから」
「成程、お互いに尊重しないとな」
ふと、左腕に何かが絡みつく感触がした。
ベルファストは突然、指揮官の脇に手を通すと身体を密着させるように寄せてきた。
露出した肩が近くにあるので、思わずどぎまぎしてしまう。
「それではエスコートをお願いしますね、ご主人様」
「はは……参ったな」
結局はベルファストに先手を取られてしまい、指揮官は苦笑いしつつも、衣服越しに触れ合う温もりを心地よく感じていた。
「悪いなベル、俺の部屋まで付き添わせてしまって」
日が西に傾いたころ、二人は買い物を終え指揮官の自室へと戻っていた。
「当然の勤めです。それにしても、ご主人様のお部屋に給仕以外の御用で二人きりになるのは、なんだか不思議な感覚が致しますね」
「確かに。今日はいつもの主従関係じゃなくて……その、デートだからな」
「はい、所謂お部屋デートでございます」
(うっ……ちっとは動じてくれるかと思ったのに、さらりと返された)
恥じらう顔を拝むはずが、かえってこちらが恥ずかしがる表情ばかりを見せてしまい、指揮官は少し負けたような気分に陥る。
そんな主人の様子を見透かしたかのように、ベルファストは買い物袋の中から長方形の箱を一つ取り出し、指揮官からもパッケージが見えるよう手に持った。
「それ……ポッキー?」
「はい。本日は11月11日、ポッキーの日でございます」
「あっそういえば……ん? わざわざそれを言うってことは」
「察しが早くて助かります、ご主人様」
箱から飛び出した銀の袋に切り込みを入れ、チョコレートに覆われたスティックを一本取り出すと、教鞭のように扱い指揮官の方へと指す。
「世間では『ポッキーゲーム』と呼ぶとお聞きしました。いかがですか、このベルファストと勝負するというのは」
「ベルおまっ……」
意味を分かって誘っているのか、そう続けようとした指揮官。
しかし、口元を手で押さえ、悪戯っぽい目で見つめてくるベルファストの反応で確信する。
(こいつ、からかうつもり満々だな)
裏を返せば指揮官の要望通り、ベルファストが本来持っている素の性格、すなわちお茶目な部分を前面に出し始めたともいえる──いきなり大胆過ぎる提案だが。
「よし……やってやろうじゃないの」
指揮官はこれをある種の挑戦と受け取った。
確かに、ベルファストの伸び伸びとした一面が見たいと思っていたのは事実。
だからといって、終始手玉に取られて主導権を明け渡したい訳ではない。
調子に乗らせてたまるか、と指揮官は闘志を剥き出しにする。
「ルールはシンプルにいくぞ。互いに目を閉じてスタート、ポッキー折ったら負け、口離しても負け、目を開けても負け! 三本勝負のうち二本先取で勝利! どうだ‼」
「ご主人様の意のままに。ですが、一つだけ確認してもよろしいですか」
「何だ」
「お互いの唇が触れてしまった場合は……どのような判定になるのでしょうか」
「はっ!? そ、それは」
引き分けという考えが頭を過ぎったが、それでは勝敗が付かない可能性もある。
「……後に触れた方の負けということで」
数秒間を置いて、指揮官はそう答えた。
先か後かで悩んだが、先にすると居待ちによる膠着状態が発生すると考えたため、積極性を促す意味でも後の方を選んだのである。
どちらが先に触れたか曖昧なときは、ポッキーの長さで判別を付ける。
キスを受けた側の方には、より長いポッキーが唇に残っているはずだ。
「ふふっ、かしこまりました」
「そ、そうやって余裕ぶってられるのも今のうちだかんな」
「ではお手柔らかにお願いします、ご主人様」
ベルファストは手に持っていたポッキーを咥えると、目を固くつぶって顎を差し出す。
心なしか、頬が少し朱に染まっているようにも見える。
年頃の乙女を思わせる初々しい仕草に、思わず身体の熱が上がる指揮官。
(いや、これは罠だ。動揺を誘ってるんだ)
寒気で肌が赤くなっているのを上手く利用しているに違いない、と指揮官は考えた。
(早くも心理戦を仕掛けてくるとは……さすがメイド長、あくどいな)
その手には乗らないぞ、と内心で盛り上がりつつも、初手の作戦は決まっていた。
ずばり先手必勝である。
ベルファストより一口が大きいのを生かし、先に進んでさっさとキスをしてしまう戦法だ。見立て通りなら、二口も嚙り付けば半分の位置に達するはずである。
「……タイマーを三秒後にセットした。鳴ったらスタートで」
指揮官が端を咥え、携帯画面をタップする。
緊張が走る中、間もなく開始の合図を告げるアラームが部屋中に響いた。
(よっしゃ先制攻撃を……を?)
意気込んで齧ろうとした指揮官だが、何ということだろう。
次の瞬間にはひゅるりとポッキーが口から抜け出しており、勢い余った指揮官はそのまま先端を齧って折ってしまった。
「まずはベルファストの一勝、でございますね」
指揮官が大きく嚙り付こうとした瞬間、隙を突いたベルファストはポッキーを吸い込んで自身の口に手繰り寄せ、意図的に折れやすくなるよう仕向けたのだ。
「嘘だろ、そんなストローで吸うみたいな芸当ありかよ……」
「ご主人様の示したルールの通り、きちんと口を離さずに行いましたので」
にっこり微笑むベルファストの顔には、何か問題でも? とはっきり書かれていた。
てっきりギリギリを攻めてくると思わせての変化球。
しかしこれも、指揮官の気負いぶりから合理的に行動を予測しているのである。
「……さすが、俺の感情の機微を知り尽くしてるだけはある」
「そのようなことを仰られるのは、メイド冥利に尽きるというものです」
「ぐぬぬ」
今更ながら相手が悪すぎる、と指揮官は思った。
下手をしなくても、ベルファストは指揮官以上に指揮官自身のことを把握している。
(さっきはがっつきすぎて唇のホールドが緩んでいたのが敗因だった……今度はそうは行かないぞ。カウンターを狙ってやる)
指揮官の言うカウンターとは、敢えてベルファストに先に食べ進ませ、一口の射程範囲内に入ったところで一気にキスを狙う作戦である。
「次も同じ手が通用すると」
思うなよ、と言い終わる前にベルファストはまた目を閉じて顎を突き出していた。
しかし口にはまだポッキーが咥えられていない。
「……それは一体何のジェスチャー」
「折角ですので、ご主人様の方から咥えさせて頂けないかと……過分な申し出とは存じますが」
「はぐっ」
精神的揺さぶりをかけつつ、欲求を満たそうとする強欲ぶり。
こちらが断らないと知ってのおねだりである。
「そ、それくらい、お安い御用だ」
などと強がってはいるが、指揮官の指は小刻みに震えていた。
主に羞恥と緊張による精神的負荷から振戦を起こしている。
もう一方の手で震えを抑えながら、慎重にベルファストの口へと運んだ。
「あむ……」
薄紅の唇に先端が乗る。妙に生々しい光景である。
糸が張ったようにポッキーがぴんと立つ。無事に咥えられたようだ。
「ふふっ、視線が熱いですよご主人様……」
「な、何を~ッ」
急ぎ反対側を口に入れ、再びタイマーを押す。
今度こそ勝つ──決意を込めて挑む第二ラウンド。
しかし、またしても指揮官の思うような試合展開ではなかった。
(……動かない?)
目を閉じているため、漠然とした気配しか分からないのだが、居待ちを決めた指揮官と同じように、ベルファストも動かない。
先に唇が触れた方の勝利、というルールがありながら、まさかの膠着状態。
(動かないってのは一体……?)
先程ベルファストがやった芸当を指揮官が返してくると予想しているのか。
いや、そこまで器用な男ではないのは向こうも承知してるはず。
(つまり同じカウンター狙い……まるで居合の立ち合いだ)
しかし、何時までもこのままというわけにはいかない。
今、指揮官とベルファストの顔の距離はおおよそ十三か十四センチ。
その上、五感のうち視覚をふさいでいるため、研ぎ澄まされた嗅覚がベルファストのフェロモンを探知してしまう。
繊細な白髪から漂う甘い香りは、長引くほど指揮官の意識を散漫にする。
そして、長時間の姿勢維持にとうとう悲鳴を上げたのは──指揮官の首筋であった。
一瞬攣ったような電撃が走り、痛みから思わず緊張の糸が揺らぐ。
当然その機を逃すベルファストではなかった。
──さくさくさくさくさくさくさくさく。
(え、ちょ早)
──ちゅっ。
小刻みながら驚異的速度で口内に運んでいくと、最後は優しく口唇を重ねる。
「私の勝利、でございますね」
そう告げるベルファストの表情は、やはり意地悪であった。
まんまと術中に嵌り、唇まで奪われ、指揮官は完全な敗北を喫したのだ。
「うがぁぁぁぁぁ」と呻き声をあげ、悔し気に睨んでも既に面目は丸潰れである。
「い、一本も取れずに負けてしまうなんて……不覚……」
「顔をお上げください、ご主人様」
「何だよ勝者の余裕かこんちく……」
指揮官の目に留まったのは、一本のポッキーであった。
本来三本目の勝負に使われるはずだったそれを、ベルファストが持っている。
今更それがどうした、そう思っていた指揮官だったが。
「んしょ……少々お菓子の強度が心もとないのが気がかりではありますが」
刺した。
谷間にポッキーを刺した。
大胆に開かれた胸元の中にすっぽり収まっている。
まるで突き立てられた剣だ。
「え……」
指揮官は状況を飲み込めずにいた。
口ではなく、胸。
それには勿論仰天しているが、何より勝負が付いたのに続行する意図が掴めない。
「ここからは、ベルファストが敷く追加ルールでございます」
手の甲で豊かな双房を寄せつつ、ポッキーが折れないよう絶妙な力加減をしながら、ベルファストが続けて言う。
「ご主人様は今から、手を一切使わずにこれをお召し上がり下さいませ。見事折れずに完食出来たならご主人様の勝ち、というのはいかがでしょう」
「……」
「お受け致しますか?」
「……やる」
頭が追いつかないまま挑戦の意思を示してしまったのは、乳房の魔性に魅入られたからか。
はたまた最後に残った意地か。
差し出された谷間を上から覗き込む体勢へと移り、食べやすい位置を調節する。
指揮官から見た光景は、実に異様だった。
生肌が晒された上乳がまず目に入る。
そそり立つ黒茶色の柱が今にも眉間を刺してきそうで、妙な威圧感があった。
セーターと乳房の隙間に目を凝らせば、薄っすらだが突起物らしき姿が目視できる。
もしそれが乳首なのだとしたら──これ以上にないチラリズムだろう。
正座により張ったタイトスカートと太腿も、妙に厭らしく感じてしまう。
今から顔だけで乳房に飛び込む──傍から見れば、言い訳の仕様がないほどの変態行為に臨もうとしている。
「どうぞ……ご奉仕の準備は出来ております」
勝負ではなかったのか、等と無粋な発言が飛ぶこともなく。
指揮官は静かに、最初の一口を咥えた。
──さくっ。
先程も説明した通り、一本辺りの長さは十三か十四センチ。
一口食べるごとに三センチ進むペースであれば、約四回か五回で終点へと辿り着く。
そして食べれば食べるほど、魅惑の領域へ近づいていくのだ。
普段のメイド服でもはっきり分かるほど存在感のある爆乳、それが剥き出しになったゾーンへと。
──さくっ、さくっ。
なんと瑞々しい肌色なのだろう。きめ細やかで絨毯よりも柔らかな乳肌が、今にもおでこに触れそうな位置まできている。
──さくっ、さくっ。
五口目。
最後の欠片を前にして、指揮官の顔は完全にベルファストの上乳へと沈んでいた。
あと少し口を動かせば終わる。そこまで来て、最後の一歩が踏み出せない。
(……これは、駄目だ)
食虫植物は、一度捕らえた獲物を長い時間をかけてゆっくりと消化すると聞く。
今の状況は、まさにそれと同じだ。
四肢の力が抜けていく。
母性の象徴は顔を満遍なく満たして、柔和な慈悲を与えてくれる。
「失礼します、ご主人様」
ベルファストの声が遠くで聞こえたかと思うと、両肩に腕を回され、胸に押し付ける形で抱き締められた。
その一押しで、最後の欠片が口へと放り込まれる。
それは、指揮官の勝利を意味していた。
(なんだ、要はこれがしたかったのか)
ようやく読めた茶番の真意。ベルファストは「よし……よし……」と子守唄のように囁いて、自身の胸に指揮官を抱き寄せるのを止めない。
(甘やかすの好きそうだもんなぁ……ベル)
鼻先が乳房に埋まっているため、呼吸がやや苦しい。
熱い吐息が谷間に注がれ、湿度が徐々に上がっていく。
ようやく解放されたときには、指揮官はすっかり蒸気して、のぼせ顔になっていた。
「申し訳ございませんご主人様。思わず力が入ってしまったみたいで……ベルファストの我が儘にも付き合わせてしまい……」
「それは……ほら、お互い様だから……」
未だ夢見心地の指揮官は、気の抜けた声で答える。
だが、ある一部分だけは違う。
火照った身体から熱を集めるかのように、燻った情欲が一点に凝縮されていく。
ズボンを徐々に押し上げる、勇ましき益荒男。
もはや隠すことも出来ないほどに主張していた。
「でも一応勝ったんだから……俺のしたいことも、していいのかな」
「それは……もっと熱く滾るモノをベルファストに挟ませてみたい……ということでしょうか」
「……ッ」
ますます膨張していく逸物を抑えられない。
何を示唆しているのか察しがつかないほど、指揮官は鈍くは無かった。
ひたすらに想像を掻き立てられる。
今しがた顔を包んでいたあの長い乳房に、自身の怒張を埋めたとしたら……一体どんな感覚がするのだろう。
きっとただ癒されるだけで済むはずがない。
指揮官は黙って、ズボンの留め具に手を伸ばしていた。
「それでは、ご主人様の上に跨らせていただきます。はしたない体勢ではございますが……どうぞ、ベルファストの臀部をご覧になりながら、身をお任せくださいませ」
仰向けの指揮官に対し、頭を反対の向きにして覆い被さるベルファスト。
当然指揮官の視界には、タイトスカートにより強調されたヒップラインが光沢を放っている様が一面に広がっている。
俗に言うシックスナインの体勢である。
ごくりと唾を飲み込む大きな音がした。
タイツの中ではち切れそうなほど肉厚な太腿が、余計に興奮を煽る。
「少々風変わりな趣向ではありますが……ご主人様の性的嗜好を鑑みて、このようなご奉仕はいかがでしょう」
ベルファストはセーターを捲らなかった。
てっきり下から挟むのだと思っていた指揮官は、完全に意表を突かれる。
胸元に掛ったセーターに指をかけ、谷間への侵入口を作ると、そのまま寝そべって反り返った肉棒をずずずと迎え入れていく。
イメージとしては、通常の吊るされた状態から逆さにしたバナナが、湾曲した末端から呑まれていく構図だ。
着衣のまま、大胆に露出した上乳から挟んでいくパイズリというのは、さぞマニアにとって堪らない光景に違いない。
ましてや、それが衣服に収まりきらないほどの長乳なら尚更であろう。
「ベルファストの胸の中でこんなにも硬く……それに熱も篭って、このまま乳房が溶けてしまいそうですね」
「はぁ……ベルのおっぱい、ふわふわだ……」
蒸れた乳肌が竿に密着して擦れている。
肉感を持った柔らかな双丘に挟まれた肉棒は、まるで流体の中にいるかのように滑らかな挿入を繰り返していく。
両側からの圧により、乳房の形がスライムのように歪んでは、また元の張りのある形へと戻っていった。
「ふっ、はっ……お気に召して頂ければ幸いです。そのままベルファストの乳房を心ゆくまでご堪能下さいませ」
より強く抱擁するために、ベルファストが上体を屈めて体重を前へと乗せる。
尻が持ち上がったことで、タイツに覆われた下着がタイトスカートの中から姿を現した。
薄ピンクの逆三角形は指揮官の視線を釘付けにし、より怒張へ送られる血流量を増していく。
「ご主人様の情熱的な視線を後ろに感じていると、思いのほか火照ってしまいますね。むしろその方がお好みでしょうか……ベルファストの熱が増すほど、乳房の中がますます煮えたぎって、噴き出す汗が絡みつき……あぁ、こんなにも淫靡な音が響いて」
亀頭から竿へ、竿から亀頭へ。
竿全体が埋まるほどの乳に撫でられ、喜びの痙攣を示す。
指揮官の方からは、どう挟まれているのかを見ることは出来ない。
だが、ずっしりとした両乳の重さを、陰茎だけでなく股関節の部分でも感じ取れるのは、直接見ないことで感覚が凝縮されているからに違いない。
このシックスナインで行うパイズリには、いくつかの利点が存在する。
縦パイズリのような乳房に挿入する感覚であるため、亀頭は常に乳の奥で埋もれ、揉まれ続ける快感が得られる。
加えて座位特有の、体重を預けた乳房の押しつけも可能である。
そして何よりも優れているのが────
「ぴちゃ……れるっ……」
睾丸を舌がなぞる。
皴を伸ばすように、二つの玉の間を舌先が舐め上げた。
予期せぬ快感に足がぴんと張ってしまう指揮官。
睾丸を舌で弄ばれながら、肉棒を谷間の中で扱かれるなどという、得体のしれない快楽を味わえるのはこの体位ぐらいなものだ。
甘い痺れが広がる。
チョコレートよりも甘く、深く浸透する射精への疼き。
────ずりゅ、ずりゅ、ずりゅ。
淡々と響く水音自体が、カウントダウンの役割を果たしているかのようであった。
「ご主人様、ベルファストの私服を汚してはいけない、などと遠慮をしてはいけませんよ。込み上げる欲望のまま、全てを解き放ってくださいませ。その様子を独り占めできる贅沢を、どうかこの私に与えてください……んちゅ」
ベルファストはそれ以上何も言わず、ただ睾丸を弄ることにのみ口を使いだした。
乳房を掬い上げる両腕に力が入る。
セーターに覆われたまま、乳圧が増した肉壺の中でぶるりと肉棒が震え────濃厚な男汁が漏れ始めた。
白濁液がセーターへと染み込んでいく。
元の生地の色を侵略するように、より濃い色に染め上げる。
やがて心臓に匹敵するほどのサイズにまで染みは広がり、むせ返るようなスペルマ臭がベルファストの上半身を覆った。
射精の終わりを察したベルファストは、ゆっくりと肉棒を引き抜いていく。
まだ硬さを保った肉棒は、粘ついた状態のままぶるんと跳ねて、健在ぶりを見せつける。
彼女がそのまま上体を起こすと、固形を保ったままの精液がスカートにまで垂れていった。
「とても勢いの良い吐精でございました……ですがまだ、この子は満足し切ってはいないようです」
細い指が裏筋をひと撫でしただけで、再び臨戦態勢へと移る。
「どうでしょう、お次のお楽しみとして──ベルファストのタイツを破ってみるというのは」
混濁した意識の中、指揮官の手は彼女の臀部へと伸びていく。
あぁ────これは朝までしっぽり行くかもしれない。
まだ夜を迎えたばかりだというのに、確信に近い予感が指揮官にはあった。
運営とお題箱に狂わされた男
次は予定通りホーネットです
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