「ハクレン様。これが今回の報酬、小銅貨92枚です。お受け取りください」
「………」
「……では、いつも通りあちらの木箱に入れておきます。そろそろ木箱も貯まってまいりましたので、また換金をさせて欲しいのですが、許可を頂るでしょうか?」
「……好きにすればいいでしょ」
「ありがとうございます。あの数であれば、おそらく大銅貨1枚ほどになるのではないかと思いますので、確認次第、いつものようにテーブルに載せておきます」
「……いいから、さっさと本題を言いなさい。わざわざアンタがここにいるなんて、……私に何かやらせるつもりなんでしょ」
「了解いたしました、では本題を…。この小屋ですが、ハクレン様のお越しが段々と減ってしまってから、お客達がかなり嘆かれた様子で、ここに来ては開いていないから帰るという日々を過ごしてたようでして…」
「そんなこと、知らないわよ。私は、もうずっと、来たくて来てるんじゃないんだから」
「そうですか。まぁ、かなり煩かったので新たに同じ小屋を計五件建てましてね。ハクレン様の、毎日人が途切れない程の盛況さではありませんが、それでも中々好評のようなんです。そうすると、この何もない区画にも、人が集まるようになってきましたので、そろそろ店や酒場を開いてくれとのことで建てたのですが…」
「はぁ…。もう行っていい?長いのよ、アンタの前置きって」
「は…、単刀直入に申しますと、ハクレン様に、その道具屋兼酒場で働いて欲しいのです」
「……そこで客達相手に腰を振れってこと?」
「いえ、そのようなことはさせません。前にも言ったとおり、私はハクレン様の正体を誰にも知られたくないのです。知っているのは私だけというのが、良いのです。だからこそ、私は持てる全ての力を使い、誰にも知られないように、処理をしているのですから」
「そうね。……今となっては、アンタのその性癖、かなり厄介だわ」
「はい……。流石にお気付きですよね。ハクレン様ご自身では、誰にも伝えることも出来ないようになっておりますから、私がヘマをやらない限り、そして、あの方の目を潜り抜けない限り、絶対に広まることはございません」
「……いいわ、話を戻して。その酒場で何をすればいいの?」
「簡単に言うと…、酒場の中に道具屋が入ったような店なのですが、そこで作成の手伝いや、ウェイトレスをして貰いたいのです」
「それだけ?」
「はい、それだけです。別に特殊な衣装を着ろなどは言いませんし、性的なことをされそうでしたら実力行使も構いません。それは他の従業員も同じですし、ハクレン様がここに来た時は、私が店主となって睨みも利かせます。ただ、そこで営業をして欲しいだけなのです」
「何を企んでるの…?」
「まぁ…、そのうち分かります。それまでは普通に働いてください」
「どうせ拒否権なんかないんだから、やってやるわよ」
「はい。ハクレン様は愛嬌もあって人あしらいも巧いと聞いておりますので、期待しております。……では、次回のお越しを、楽しみにしております」
「おーい、臨時の姉ちゃん!こっちにエール3つ頼む」
はいはい。
酒場の仕事っていうのも、なかな忙しいのね。
他のウェイトレス達もせっせと働いてるし…。
なんだか村の宴会みたいで少し楽しいわね。
「すまねえ、俺にはCセットよろしく!」
うーん…。
あっちこっちから注文が来るから、慣れないとバッティングしそうね。
他のウェイトレス達の動きとか、どこのテーブルの注文を取るかも見てないといけないし…。
この作業量…。
帰ったら少し鬼人族メイド達に優しくしてあげよう。
うん。
「あ、わたしそろそろ時間なんで、あっちに入ります。良ければみなさん来てくださいね。待ってますから」
あら、一人抜けるのね。
となると少し忙しくなるわね。
気合入れないと…、って。
あれ。
お客が料理放り出してぞろぞろ出て行ったけど…。
何かあるのかしら。
うーん。
さっきの彼女が何か宣伝してたから、もしかしてそれかしら。
「臨時の姉ちゃん、エールくれ!2つな!」
おっと、注文、注文。
客が減ったのは良いことだし、ちょっと楽出来るわね。
「あ、臨時の人、お客減っちゃったから、戻ってくるまで座って待機してていいよー」
あら。
休んでいいのは助かるわね。
アイツは……。
特に何も言ってこないし、座って休んでおこうっと。
「なんだよ、お前は行かなかったのか?三日ぶりの2番ちゃんだってのに」
「俺は今日は3番ちゃん待ちなんだよ。お前こそどうなんだよ、今日は1番ちゃんいねぇぞ」
「そうなんだよなぁ…。まぁ、1番ちゃんがいないから3番ちゃんの予定」
「あー…、やっぱそうだよなぁ。ってことは残ってる連中全員3番ちゃん狙いか」
「後で他の子が来ない限りはそうだろうな…」
うーん。
意外と客の声が大きくて休めないわね。
それにしても、ここの客ってウェイトレスのこと、みんな番号で呼んでるけど…。
そういう決まりなのかしら。
レギュラーメンバーじゃない場合は臨時の人って呼ばれてるらしいから、ちょっと分かりやすい。
「おいおい、1番ちゃんが1番だろ。だからこそ、1って数字になってるわけだし」
「あーあ、出た出た。モグリかよテメェは。あれは別に順位じゃねーの!つーか考えても見ろよ、皆好みが違うんだから客層によってめちゃくちゃ変動するだろうよ」
「あぁー、そういうことか。俺ずっと1番ちゃんだったから全然知らなかったぜ」
「もったいねえな!今度しっかりシフトチェックして、全員味比べしてこいよ」
「おう、それに今日は3番ちゃんを味わえるしな」
うるさいわねー。
一体何の話してんのよコイツら。
1番とか3番とか、味わうと、か。
あれ?
もしかして…。
「それによ、順位っつーなら、1位はそもそも番号すらねぇだろ」
「あ…、確かに!あれなら全員、満場一致で文句なしでトップだな」
「なかなか営業してねぇから、最近じゃ幻の小屋って別名まで出来たくらいだぜ」
「俺はまだ数回しかヤったことないんだよなぁ…。なんでも昔は毎日開いてたんだろ?」
「おう、二ヶ月くらい毎日営業してたが、その後からは数ヶ月単位で不定期の上に、一日だけの営業になったんだよ」
……っ!!
コイツら…、私の…っ!
くっ。
ぅぅうううっ……っ!!
そう…っ。
そういうこと、ねっ。
何考えてこんなことさせるのかと思ってたけど、これを聞かせたかったのね…っ!
「あの便器ちゃんにはお世話になったなぁ…。看板名が『銅貨一枚用便器』だろ?」
「おう、それで誰でも大銅貨一枚と思ってたら…。そしたら小銅貨一枚でビビったわ」
「あっ!もしかして、あの頃両替商が忙しくしてたのって…」
「そうそれよ、俺も慌てて両替商のとこで交換してもらったね」
「おっ、お前ら便器ちゃんのこと話してんのかっ?」
「俺も混ぜろ混ぜろっ!」
……っくぅぅ。
ったく、もう聞いてられないわ!
「おーい、そこの臨時の人、このテーブルの連中にエール頼まぁ!」
「ヒュー、太っ腹!」
「でも肴はどうすんだよ」
「分かってて聞いてんじゃねえよ、もちろん便器ちゃんのことよ!」
「ハッハッハッハッハ!」
こ、この男ども…。
……、いいわ。
ここを離れられるならそれでっ。
「注文ですか?」
エール5杯、よ。
それと、そろそろ仕事に戻るわ。
客はいないけど、掃除なら…
「では、こちら、エール5つです。配膳が終わりましたら、引き続き4番テーブルに座って、お休みください」
またあそこで話を聞けって言うの…っ!?
アナタ、いい加減にっ!
「あーっ!店長が臨時のひと口説いてるーっ!」
「違いますよ。配膳お願いと、今のうちに休憩しておいて下さいという指示出しです」
「休憩っていいなーっ!店長っ、やっぱり臨時のひとのこと贔屓してるっ。わたしだって休みたいですー。ぶーぶー!」
「3番さんはもう少しで上がりじゃないですか。それに、臨時の方はこの後もあるんですから、その為に今休んでおいてもらうのですよ」
「ちぇー。でもでもっ、わたしぃ、これから一晩中小屋勤めなんですよぉー?ちょっとくらい労って欲しいなー、なんて」
何この会話…。
私がこんな気分になってるっていうのに何イチャイチャしてるの?
さっきの私の怒りは…?
というか、ちょっと居心地悪くなってきたわね。
3番の人の目があからさまにあっち行けって言ってるし…。
「はいはい。では後ほど、小屋に行きますからそれまで頑張ってください」
「やったー!じゃあそれを楽しみにして頑張りまーすっ。その時はちゃーんとその変な営業口調やめて、わたしを楽しんでくださいねー」
「変って…。まぁいいです。臨時の方、皆さんお待ちですので、そろそろ持っていってあげてください。3番さんも、あちらの客が呼んでいますよ」
「はーいっ!じゃあさっきの件、よろしくお願いしまーすっ!」
……。
配膳しよ。
それにしても…。
何が悲しくて自分の評判を横で聞かなきゃいけないのよ。
というかさっきの3番の人とのやり取りからして、ずっと配膳なの?
……まぁ、小屋に行かなくていいのは助かるけど。
「おおっ、臨時の姉ちゃんっ、待ってたぜ!」
「よーしっ、じゃあ俺達、偶然の出会いにカンパーイッ!」
「ギャハハハハッ、偶然っておま、ギャハハハッ!!」
「ハハハッ、確かに偶然はねぇよな。だってここの客なんて全員便器ちゃんで楽しんだことあるだろ」
「いいんだよ、なんでもよ!さっきの続きだっ。便器ちゃんはな、なかなかイってくれねえんだけど、イキだしたら膣中がぎゅぅぅっと強く締まるんだよ!」
「便器ちゃんがイった状態で交代されると、めちゃくちゃキツくてすぐ順番終わっちまうんだよなぁ」
「そんときゃぁ、アナルで楽しんだよ。大抵油断してっからすぐ震えだすぜ」
「俺は便器ちゃんがイった時のっ、あの、足ピーンが好きだな!!ああ、コイツ今イってんなってのが後からでもよく分かるのが最高だったぜ!!」
「おっ、俺それ見てねぇな…。俺はいつも腰を下げさせてガニ股にさせてヤってたからな。こっちもいいぞ。」
「分かる分かる!3番ちゃんでもやってんだが、あのブザマな格好で腰振らせるのが最高なんだよなぁ」
「俺一回、下から覗きこんで時間いっぱいまでクリトリスをクンニしまくったことあるな」
「うわっ、汚ねっ…くはないのか。何故だかしらんが前の奴の精液なくなっていつも綺麗になってんだよな」
「そうそうっ!最初はよ、俺も壁尻の上に部屋だから、くっせえのによくやるわって思ってたんだけどよ!」
「俺もだなぁ。あまりにも並んでるから興味本位で入ってみたら、綺麗な生尻で驚いたわ。まあ速攻汚したけど」
……。
こっちはこっちで辛いわね。
新手の拷問かしら。
というか、ヤバい。
耳に入ってくる情報だけで、発情しちゃいそう。
前の小屋では何も聞こえなかったけど…。
そう。
後ろの部屋ではこんなこと言われてたのね。
「あーっ、話してたら便器ちゃんとヤリたくなってきたなぁっ!」
「あの綺麗な尻を揉みしだいてっ、アナル広げて舐め回したいよなぁ…」
「俺はまた足ピーンだな!俺の全力指マンで潮噴かせながらの足ピーンだ!!」
「ガニ股に興味湧いてきたから俺は今度それやるわ」
「はぁ…。俺ぁよ、楽しみすぎて、いつも小銅貨5枚はポケットに入れてんだよ」
「おいおい、そりゃあこの店の客全員やってることだろ」
「小銅貨だから、無くしたりスラれても特に痛くねーしな!」
「そんなはした金で使わせてくれるんだから、最高の便器ちゃんだよ」
「みなさーーんっ!お待たせしましたっ。3番ちゃんあがりまーっす! ぜーったいっ、満足させますからっ、どうぞよろしくお願いしまーすっ!」
「お、3番ちゃん来た」
「よっし、じゃあ行くか!」
「便器ちゃんを思い出した後に3番かぁ…」
「しょうがねぇよ。チャンスを待て」
「俺っ、さっき言ってたガニ股やるわっ!」
「俺はアナルだな」
「男は黙って子宮姦」
「短小が何言ってやがる」
「おーい、ケンカしてねぇで行くぞ。あっちでも話出来んだろ」
「分かった分かった」
皆、出てったわね。
あのままじゃちょっと危なかったから、助かったわ。
それとも、バレて大事になった方が良かったのかしら。
そうしたら…
「臨時の方。こちらはここまでで結構です」
……。
そう。
小屋に行けってことね。
「いえ、酒場はここで店長代理と代わりますので…。次はあちらの、道具屋での手伝いをお願い致します」
手伝いって…。
こっちの酒場にすら誰もいないんだけど?
というか、店員すらいないじゃない。
「それでいいのです。今からするのは、ポーションの作成ですから。臨時の方には、それを手伝って頂きたいのです」
はいはい。
わかったわよ。
それで、どこで何をすればいいのよ。
私、ポーションなんて作ったこと無いわよ。
「その道具屋スペースの裏、ですね。あの、カウンターの後ろの、ドアの代わり掛けてある、大きい布の奥の部屋で作業をします。作成自体は私がしますので、臨時の方には、その素材の採取を頼みたいのです。では、先に入っていて下さい。私は店長代理が来るまで、ここでしばらく時間を潰します」
りょーかい。
中で休んでおくわ。
うーん。
さっきからそうじゃないかなーって思ってたんだけど…。
これ、のれん、よね?
村長は簡単に付けられるし、行き来するのも楽だから便利って言ってたけど。
これ、密閉出来ないから、夏はいいけど冬は寒いのよね。
む。
村の屋敷にあるのとは違って、かなり薄いしヒラヒラして頼りないわね。
材料費でもケチったのかしら。
んー。
こっちの部屋は、色んな素材が置かれてるわね。
これ、結構珍しい薬草だけど…。
なかなか品揃えは豊富っぽいわね。
こっちにあるのは魔道具かしら。
二つの、コップみたいなのに、それぞれチューブが付いて…。
何に使うのかしら?
あ。
来たわね。
楽な作業だといいけど。
「お待たせ致しました。それでは早速、ミルクポーションの作成を始めましょう。よろしくお願いしますね」