私の名はフローラ。
フローラ=サクトゥ。
引き篭もりの吸血鬼。
今も味噌と醤油の味の向上を目指してるわ。
もうそろそろ良いんじゃないかって思うけど、五村での生産指導もあるし頑張ってるの。
もちろん、それだけじゃないわ。
薬学と治癒魔法。
この村は死の森の中にあるから危険だからね。
それに何より武闘会。
うーん。
武闘会というより世界一決定戦ね。
その出場者や訓練のためにも必要なの。
だからこっちも日々合間をぬって技術の向上を目指してるわ。
病院もあるしね。
その病院。
私の作った薬を求めて、遠方からワザワザやってくる人も居る。
今回もそんな中の一人だったのだけど。
患者の容態が急変。
お姉様がシャシャートの街まで行くことになったわ。
そのおかげで治療は順調。
村からも薬を取り寄せたみたいね。
シャシャートの街に近い五村にいる私に言った方が早いと思ったけど……
私の知らないポーションが必要だったみたい。
ミルクポーションって名前ね。
知らなかったけど、アンやハクレンさんたちが関わってるらしいわ。
薬といえば私かお姉様。
そんな私が知らないポーションがあるなんて。
これは研究しなきゃと思ったわ。
ただ、なかなか数が出回らないらしいの。
アンに何度も頼み込んでようやく一本譲ってもらったわ。
アプローチ法を色々変えたのが良かったと思うわ。
頼み込んでもダメ。
村長にお願いしてもらってもダメ。
実力行使をして返り討ちにあってダメ。
でも、何度も頼み込んだ甲斐あってやっと。
そう、やっとミルクポーションを手に入れたの!
嬉しかったわ。
え?
どうやって説得したかって?
お姉様から頼まれたって言ったの。
そうしたら今までの頑なさが嘘のように渡して貰えたわ。
……
後でアンに嘘がバレないようにお姉様と口裏を合わせないと。
バレたらどうなるかなんて、考えたくないわ。
またボコボコに……
ええ。
実力行使でアンに負けたのは仕方ないわ。
私は後衛だもの。
ただ、ちょっと訓練しようと思うわ。
他意は無いわ。
別にアンの打撃が痛すぎるからじゃないから。
ええ。
嘘じゃないわ。
……
ともかく、それは置いておいて!
早速検分ね。
……
容器は普通。
中身は……
「うーん、このポーションって何で出来てるのかな? なにかドラゴンの力の気配がするけど」
……
流石に、すぐに解析出来るとは思ってなかったわ。
でもやっぱり、少し悔しい。
うーん。
私が見たことのない素材が使われてそうね。
ちょっと本腰を入れて調べてみるわ。
お姉様の知識に負けないように頑張らないと。
味はどうなのかな?
貴重な一本だけど、ちょっとだけ飲んでみるわ。
ふむ。
ポーションというより、ミルクみたいで美味しい。
後は薬効を調べて、原料を突き止めて……
うん。
楽しくなってきたわ。
味噌や醤油、納豆もいいけど、新しいものを解明するのもたまには良いわね。
またしばらく村長のところには行けないけど、仕方ないわ。
研究が私を待っているのだから!
……
決して村長が嫌というわけではないわ。
その、何度もしてるのだし。
ただ、なんというか。
やっぱりちょっと怖いというのが今の気持ちね。
今さらとか言わない。
村長との子供は欲しいから、そっちもなんとか頑張りたいと思うわ。
アルフレートは可愛いしね。
うーん。
調べれば調べるほどおかしいわ。
このミルクポーション。
薬効が完全に男性向けの精力剤ね。
それもかなり強力な。
お姉様が病人の治療に使ったみたいだけど。
こんなの患者に飲ませたら変なことになると思うわ。
それとも、私の知らない効能があるのかな?
とりあえずもう少し調べましょう。
ふむ。
そこそこ高級な薬草を使ってるようね。
それに、やっぱりドラゴンの力も感じるわ。
それも強力な。
もしかして竜の血?
この村には神代竜族がいっぱい来るし、ハクレンさんたちもいるから材料としてはクリアー出来るわ。
でもそんなものをあの人たちが許すのかな?
疑問ね。
あと、属性が聖だから…。
まさかハクレンさんの?
……
ちょっと整理してみるわ。
アンとハクレンさんが関わってる。
アンが厳重に管理。
お姉様から頼まれたって言ってようやく渡してもらえる。
聖属性のドラゴンの力を感じる。
該当者はハクレンさんくらい。
うーん。
この三人の共通点といえば……
何か思いつきそうな気がするのだけど。
出て来ないわ。
結構前にひっかかったものがあったのに放置してたから出て来ないような感覚ね。
何だったかな?
うーん。
いいでしょう。
お姉様に口裏を合わせてもらうついでに聞くことにするわ。
分からないことは聞くのが一番ね。
村長も言ってたわ。
え?
お姉様、まだ学園から戻ってないのね。
先にハクレンさんに聞こうかな?
夜だから寝てるかもしれないけど。
あ、やっぱり?
うーん。
朝食時に聞くことにしましょう。
それじゃあ研究に戻るわ。
ありがとう。
え?
始祖様が呼んでる?
私を?
何かあったのかな。
ええ。
もちろん行くわ。
五村の屋敷でいいのね。
分かったわ。
それにしても珍しいわね。
始祖様に呼ばれるなんて、いつぶりかな?
とりあえず、早く行きましょう。
待たせるなんて失礼だものね。
「やあ、フローラ。呼び出してしまってすまないね」
「いいえ、始祖様のお呼びですもの。それで、どうしたのです?」
「少し事情が変わってね、君にも協力してもらいたいんだ。 ……以前みたいにね」
「協力、ですか。 あの、以前というと……、まさか」
違いますよね。
アレのことでは無いですよね。
私はもう。
「―――ああ。また子供を産んで欲しいんだ。ただ、今回は以前のように卵ではなく、実際に孕んで産んでもらうよ」