こんばんわ。
鬼人族メイドです。
では少し前の話をしようと思います。
夜中はいつもコタツにいる人のことです。
はい。
マルビット様ですね。
いつもと言いましたが、しっかりと仕事を終えてから来ているようなのでルィンシァ様が怒って連れ戻しに来ることはありません。
その辺、ルィンシァ様は厳しいですからね。
マルビット様を引っ張り出してからのパイルドライバーは見事の一言に尽きます。
この間はスアルロウ様にもかけていました。
あの技の冴えを見ていると、天使族最強はルィンシァ様なのではと思ってしまいましたね。
丁度その時は村長が居たので話を振ってみたのですが、同じ考えのようでした。
少し嬉しかったのを覚えています。
観戦していると物音を聞いたアン様が来て撤収させられますが、最近はあまりありません。
アン様も忙しそうですからね。
なので、その時は村長と二人で楽しく試合を見ることが出来ました。
思わず村長と一緒に応援までしてしまうほど熱中してしまいましたね。
ルィンシァ様がホールドを決めた時は私達のほか、何人かの観戦者からも喝采を浴びていたのが印象的でした。
また村長と一緒に見たいものです。
次は特設ステージでの試合をお願いするのも……
褒賞メダルを使って要望を出してみようと思っています。
以前に村長から聞いた、フランケンシュタイナーという技も見てみたいですから。
その時は村長係になれると嬉しいです。
話がズレてしまいましたね。
すみません。
そのマルビット様ですが、寂しそうにしていました。
セレス様が夜に晩酌をしに来る頻度が減ったせいかもしれません。
ヨウコ様もお忙しく、足が遠のいてるようなのでそれに拍車がかかってるのだと思います。
それで、珍しくマルビット様とキアービット様たち親子だけで飲んでいた時のことですが……
「ねぇ、キーちゃん。なんだか最近、人少なくない?」
「そうですか? 前からこんなだった気がしますけど、お母さまは何か気になりますか?」
「うーん。分からないけど、なんだか日中に人がいないような気がするのよ」
「それは、それぞれ仕事があるから仕方ないのでは?」
「それよ。この村の外に出て仕事をしてるって聞いてるけど、何かよく分からないものが多すぎない?」
「そう言われましても。ティアは相変わらずガーレット王国で大使みたいなことやってるみたいですし、他の人たちは……」
「えっ。 何それ? 私聞いてないんだけど」
「ええっ!? お母さまが知らないって……。おかしい、ですよね?」
「うん、おかしい。どういうことかな、ルィンシァは知ってるのかしら」
「お母さまが知らないのですから、補佐長にだけ話がいってるということも無いと思いますけど……。ティアが自分から補佐長に言うわけないですし」
「そうよね。帰ったらちょっと調べてみるわ。春になったら村長の子供たちが学園に通うようだから、様子を見に行ってからになるけど」
「え、帰るんですか? てっきり前みたいにコタツにしがみついての粘り勝ちを狙うのだと思ってましたけど……。 あっ! いい加減、補佐長に本気で怒られたとかですか?」
「キーちゃん、キーちゃん。 キーちゃんが普段からどう思ってるのかちょっと分かっちゃってお母さん、悲しいわ」
「いや、それならお母さまも少し補佐長の言うことを…」
「ちゃんと仕事はやってるもの」
「割り振られた仕事だけ、でしょう? 補佐長はそれ以上の仕事をしてるんですよ」
「あー、あー! 聞こえなーい! キーちゃんが冷たいから村長のところで飲んでくるわ!」
「ちょっ、だ、ダメですよ! 分かりました、分かりましたから! 何も言わないので村長のところに行くのはやめてください!」
こんな会話だったと思います。
この二人の会話はいつも、最後はこのような流れになりますね。
ただ、キアービット様もマルビット様とのやり取りを楽しんでいるようです。
なんだかんだ言って笑顔ですからね。
やはり、大樹の村にはこのような雰囲気が合ってます。
何やら不穏な話もしていたようですが……
いっかいのメイドには不必要な情報のような気がしますので忘れます。
マルビット様が動くようですしね。
そんなこんなで現在です。
アルフレート様たちは学園に行くために村を出て、マルビット様たちも出発しました。
あっさりと。
時間が経って考えが変わると思ってしまった自分に反省です。
ルィンシァ様もホッとしていましたね。
アルフレート様たちの様子を見に行くと言っていたのも理由のひとつでしょうが、やはり天使族の長。
決めるところは決めるようです。
ただ帰るだけなのでは?と一瞬思いましたが。
……
何はともあれ、無事に解決して欲しいです。
はい。
いっかいのメイドである私には何のことかはわかりません。
ですので、その威圧は、おさめて欲しいです。
始祖様。
よく分かりませんが、何でもしますので許してください。
対処しなければなんて聞こえていませんから。
え?
ありがとう?
いえ、お礼を言われるようなことは……
マルビット様たちの近況を話しただけですし。
はい。
褒美、ですか?
いえいえ、そのようなものを頂くわけには。
はい。
どうしてもということなら、せめてそれ以外でお願いしたいです。
仕事…、ですか?
ええ、私たち鬼人族メイドは主に奉仕したりお世話をさせて頂く事が喜びです。
えっと、村長のためになる仕事とは一体どのようなものでしょうか?
いえ、始祖様相手に警戒なんてそんな。
……
一応聞かせて欲しいのですが、拒否権などは……。
はい。
分かりました。
では、家当番の引き継ぎがありますので、少し外します。
……ダメ、ですか。
わかり、ました。
はい。
そのお仕事も、私は、頑張ります。