フローラから話があるって言われて。
ただ、準備があったり私以外にも話が聞きたいからってことで、調整に時間がとられたわ。
真剣な様子のフローラに、何か感じたからかな?
頑張って調整したわ。
その話し合いが実現したのが今日。
私は、学園に行ったアルフレート達の件で、魔王達と話し合ったりと色々用事が重なってしまってて。
他の皆も生活時間が違ったり、あちこち行ったりでフローラには少し待たせてしまって申し訳なかったけど、ようやく。
……
でも、この内容なら、もっと頑張って無理矢理にでも時間を作れば良かったと後悔。
だって、始祖様の契約の解除に、かなり近付く話だったから。
「それでフローラ。そろそろ種明かしをしてくれない? そもそもどうして貴女が私達のことが分かったの?」
「そうですね。今言わされたことについてはなんとなく分かります。そこのあーうー言ってる男を魅了して、契約を逆手にとって、今私達に言わせたんですよね?」
「まぁまぁ。このままフローラちゃんの話を聞かない?」
「うむ。 というかさっきの報告は別にいらんかったであろう。その理由も、のう?」
「あ、あはは…、すみませんお姉様方。色々調べたんですけど確証が持てなかったので。 …私も、始祖様に何をされたのか聞きたかっただけでしたが、まさかそれが出産報告になるとは思わなくて」
あー…。
まぁ、何をされたか言えってことになるとそうなっちゃうのよね…。
皆もかなり酷いことを
……
って違うわよ。
そうじゃなくて理由!
どうして私達が始祖様にハメられたことが分かったのよ?
「はい、お姉様。 ……実は私は、昔から始祖様に、子供を産まされていまして、村に来てからはそれが無くなってたんですけど、」
…は?
え、ちょ、ちょっと待って。
何それ、私知らないわよ。
「ええ、知られないようにしていましたわ。 私が断るなら、お姉様にさせるって始祖様に言われて、ずっと隠していました」
嘘…。
そん、な。
私のために……?
「私は大丈夫ですから、気に病まないで欲しいです。どうせ私を使うために言っただけ……、とは言い切れませんが」
「ま、そうじゃの。我らにやったことを考えれば、フローラが断ればルーに矛先が向いたであろう」
「はい。それで、まあそれは置いておくとして、最近、またそれが再開されたんですの。 ご丁寧に淫紋を刻まれて、今までよりも強い子供を産ませようと…」
淫紋…。
そう、フローラも。
今までよりってことは、本当に昔から産まされてたのね。
あれ、でも私達吸血鬼って血の契約以外では子供を作れないはずだけど…
以前は淫紋の効果もないんだから余計に無理なんじゃ?
「……、その、昔は。 いえ、今もですけど、直接子宮に卵を植え付けられて、射精されて、大きくなった卵を産むという流れで、言うならば産卵ですわ」
「むごいことを……」
「そんなことを…。 始祖様と契約などは交わされなかったのですか?」
「はい、私の場合は脅迫でしたから。多分、同族ってことでどうとでもなると考えてたんだと思いますの。 …今回は記憶のこともありますし」
フローラが産卵…。
私を引き合いに始祖様に脅迫されて……
「ルーさん、戻ってきてください! 今は後悔や自省をする場面ではありません」
「そうねー。 皆似たり寄ったりあいつに苦汁舐めさせられてるんだから」
……
確かに、そう、かもしれないわね。
フローラ、ごめんなさい。
後で何度でも謝るから今は……
「はい。 それで、淫紋を刻まれたことで、以前お姉様方の身体を見かけた時のものと同じものだと気付いて、お姉様が既に始祖様の手に堕ちてると判断したんですのよ」
「なるほどのう。身代わりを勤めていたと思っていたら、姉にこのような淫紋があるのを知って、実は裏で同じように汚されていたのではと考えたわけか」
「そうです。 ただ、本当にそうなのかは分からないので、独自にお姉様のことを観察して、尾行したりして突き止めました」
「フローラさんだけが契約で縛られてなかったのが大きいですね。そうでなければここまで」
「いえ、今なら分かりますけど、お姉様方の契約の強制力は凄まじいですわ。何しろ、ハクレンさんまで縛っていますから。ただ、今回お姉様に気付かれたり妨害されずに監視出来たのは、多分その呪いのおかげですわ」
「…へー。これってちゃんと効果あったのねー?」
「うーむ、好き者になりやすくなるだけだと思うておったが……」
ええっ!?
そんな風に思われてたのこれ?
「し、失礼ですわね! ちゃんとルーさんと一緒に研究して刻んだものですよ! 契約の効果を減じる呪いを見つけるのにもかなり時間がかかったんですから!!」
「そうよ! ちょっとでも強制力を無くすために、契約に反発されないセックス関係の呪いを、出来るだけ負担が少ないのを選んでつけたっていうのに!」
「えへへ、ごめんね?」
「むぅ、すまぬ。……ただ、これを刻まれてから肉欲を抑えるのが本当に難しくなってのう」
「あー、うん。それは確かに」
うっ…。
それは、私も思ってたけど。
ティアも顔を赤くしてるし。
うん。
ごめんなさい。
「で、でも、そのおかげでお姉様のことが分かりましたのよ? 本当なら私に気付いて観察すらままならなかったと思いますから!」
「ま、まぁ、ちゃんと効果があったと言うことで」
そうよね。
うん。
良かったわ。
これで効果無かったら、私達、ただ自分から深みにハマりにいったようなものだし。
……
良かったぁ…。
「それにしても間抜けよねー? 今までは厳重に警戒してたのに、フローラちゃんに対しては脅迫だけで済ませてたなんて」
「うむ、そうだのう。 なんぞ予定外なことやショックなことでも起きたのではないか?」
「うーん……。 それにしてもおかしいと、……あっ!?」
もしかして…。
うそ、もしかしてこれ?
「ルーさん、何か気付いたんですか?」
「お姉様も分かりましたか?」
「えっと、多分これだと思うんだけど……。 始祖様って時々記憶をリセットするみたいなんだけど、昔フローラに口止めのための縛りを入れてないのをそのままにしてて、それを忘れてるんじゃ…?」
「私もそう思いましたわ」
「それは、なんというか、その……」
「……ふーん。 ま、いいんじゃない理由は何でも?」
「そうじゃの。 どう転んでも自業自得で間違いはあるまい。 それよりも大事なのは今よ。 それで、これからどうするのだ? フローラが動いて村長に、かの?」
「それも考えたんですけれど、私達のこととか始祖様のことを知ったら、どうなると思います?」
「どうなるって……。 助けてくれる、と思うんだけど」
大丈夫、よね?
旦那様に捨てられたりしないわよね?
今想像しただけで震えてきたんだけど…。
「いや、待て。 そうか、言えんか」
「村長のことだから、多分怒り狂って凄いことになるんじゃないかな?」
「……そんな気がします。 あの槍で消滅させられるのが始祖様だけならいいんですが、私達の記録石のこともありますし、……街とか国とか色々滅びそうですね」
うわー…。
そっちの方がありそう。
普段穏やかな旦那様だけど、怒った時は結構……
ううん。
かなり怖くなるし…。
真面目に世界の危機かも。
「しかし、流石にこのままというのは嫌なのだが…」
「ええ。ですので、一旦ドース様かライメイレン様に相談してみませんか?」
「確かに、旦那様に言えないとなると、ドース様達しか頼れませんか」
「お父様はやめておいた方がいいと思うわー。普段はあんなだけど、身内のことになると怖いから」
「なるほど、ではライメイレン様に」
「激昂してあやつに突撃せんようにハクレンにフォローしてもらおうか」
「分かってるわよー。世界がどうなろうと構わないけど、村長が壊れるとこなんて見たくないもの」
「よろしくお願いします」
はぁ。
ようやくこの生活が終わるのね。
……長かったわね。
全部解決したら、私達、どうなるのかしら?
旦那様に言えない秘密を抱えたまま、っていうのは嫌だけど……
あと、私達の身体も。
竜の秘術とかでなんとかならない、かな?
……
ううん。
高望みはやめて、とりあえずは始祖様からの呪縛を解くことだけを望みましょう。
全てはそれから、ね。