「………殺すのかい?」
「そうしたいのはやまやまですが、殺しません」
「…それはありがたい。死なないとは言っても、復活には時間がかかるしね」
「何か勘違いしているようですが、竜族にはお前を消滅させる方法がちゃんとあります。それをしないのは、あの子の苦しみを少しでもお前に刻み込ませるためです」
「は、はは…は、温情に感謝するよ。…それで、拷問でもするのかい?」
「お前がのうのうと生き長らえることには虫酸が走りますが、仕方ありません。あの子達からの提案です。取りに行くのに少し時間がかかりましたが、これを使います」
「……はは、彼女達に感謝するべきなんだろうね。 …っ、ぐっ! ごはッ! あぐっ、ぐあああああッッ!!」
「調子に乗るのはやめなさい。今からでも消滅させてやりたくなります。 次に減らず口を叩いたら手足をもぎます」
「わか、った、よ。私も、あえて死にたいとは、思って、ない、からね」
「あの子達の姿を映したものが、大量にあるようですね? その管理をお前がしているようですが、間違いはありませんか?」
「ああ、許可した関係者以外は持てないようにしているよ。 出回って、君達や村長に知られたら終わりだったからね」
「………。 それと、あの子達を…、あの子達を……」
「全員、分かるようにしているよ。 始末するなら、さほど時間をかけなくても出来るように…、ぉごッ、ゴッ、ゥグッッ!」
「本当に、殺してやりたい…! そうやって保身の算段をつけて、すぐに消滅させられないように、全て利用して……、小賢しいっ!!」
「………」
「……この秘術をお前にかけます。その後、魔道具と、関係者を全て始末させます」
「ハァ、ハァ…ッ、は…、…全部、従うよ」
「お前を契約で縛ることは不可能ですから、当然、私も着いていきます。……お前が終わったと言えば、私に、私達に確かめる術はありません。ですから、その手段が見つかるまで、常にお前を監視させます」
「はは…、嘘なんて、つかない、さ」
「あの子達からの要求は三つです。お前が陥れた全ての者を解放する。魔道具や関係者の口封じや始末。自分達がされたことをお前にも味わわせる。 これら全てを確実に履行させます」
「全て……。はは…、三つ目は、辛そうだ、ね…」
「その前に、何故このようなことをしたのか話しなさい」
「は、ははは…、そうだね、本来はここで言うべきなんだよね……。 私は、子供が欲しかったんだ。血の契約ではない、本当の子供がね」
「それで?」
「ああ、それで、村長とルールーシーの間に子供が出来ただろう? それで、村長の子供となら、私にも子を作れるんじゃないかと思ってね。 はは、調子に乗っていたらこの様さ」
「子供……」
「慎重に、妥協をして、時間をかけて、自重をすれば、叶ったかもしれない。いや、恐らく叶っただろうね。本当に、何をやっているんだか」
「理由についてはあの子達が知りたがっていましたから聞きましたが、お前の後悔などはどうでもいい。さっさと準備を始めますから、抵抗せず、術を受け入れなさい」
「……どんな術かは、聞かないでおくよ」
「神から奪った女身化の秘術です」
「…は?」
「魔道具や関係者がどれだけ残るか分からない以上、殺すことも消滅させることも出来ないお前に対しての制裁で、全員の意見が一致した結果です。女の身体になって汚辱にまみれなさい」
「それで、始祖様が陥れた人達ってどれくらいいたんですか?」
「聞かない方が良いと思いますがどうしますか?」
「私は聞きたいかなー。それによってまだ制裁加えなきゃ気が済まないし」
「我も知っておきたい。いくらかストレス解消に使ってやったが、されたことを思えばこれくらいでは収まらん。名前を伏せられておる者達も、表立ってやり返すことが出来るようにしてやりたい」
「……分かりました。 ですがその前に、貴女達は本当に記憶を消さなくて良いのですか? 幾人かは希望されたので既に処置は済んでいますが」
「確かに、思い出すだけでどうにかなりそうですけど……、身体は元には戻らないんですよね? それなら、感じ方が変わってしまった身体のこととか、思い出せないことに苦悩するだけだと思いますから」
「そうですね。私もルーさんと同意見です」
「……ま、そうじゃの。この状態で記憶を消してしもうたら、それこそおかしくなるわ」
「そういうことね。もちろん、軽症なら消した方が良いと思うけど、私達はもう、この身体とうまく付き合っていくしかないわよねー」
「そうですか…。 では、記憶消去をした者以外の名前を教えます。貴女達とリア、アン、セレス、それとマルビットです。彼女達も、同じ理由で記憶消去を望みませんでした」
「え、マルビット?」
「それに、セレスも…?」
「うぅむ、まさかマルビットがのう」
「彼女は貴女達より少し前に独自で気付いたようです。そのせいでアレに捕まってしまったのは不運というか、もう少し早くアレを見つけることが出来ていれば……」
「だがあやつが素直に捕まるとは思えんのだが、何も手を打てなかったのかの?」
「アレから聞き出しましたが、どうやら遭遇前からおかしな術を使っていたようです。あとは恐らく、力で勝る狂人に対抗するには状況が厳しすぎたのだろうと」
「あの…、何をされたのか聞いても良いですか?」
「その辺は本人から聞いて欲しいですが……。徴を刻まれた後、悍ましいものが入った浴槽で身体を侵されたようです」
「うわぁぁぁ」
「貴女達と同じように徴自体は消せましたが、肉体が元に戻らないことを知って、記憶消去は受けませんでした。それと、このことは村長はもちろん、他のものには言わないようにと口止めをされています」
「……聞いてしまいましたが」
「貴女達は当事者ですから良いでしょう。駄目でしたら忘れなさい」
「聞かなかったことにしてやるかの。だがあやつとは飲み仲間じゃし、話の流れで事後承諾を得られるよう探り探りやってみるかの。 後はセレスも、か」
「彼女は、過去に色々なところに攫われた際に受けた拷問で子供が産めなくなったことで、そこをつけこまれたようです」
「そんなことが……」
「取引によって子供が産める身体になったのと、自身が決めたことだからと後悔はしていないと記憶消去を拒まれました」
「うーん。自分で決めたから、かぁ…」
「そういうことかの」
「……んー。 セレスって聖女なのよね?」
「え? ええ、本物みたいね」
「だったら、あわよくばだけど神様からの言葉を聞けるんじゃないかしら」
「んん、んー? いける、かの? 聞きたいのは我らの記録や相手の始末のことであろう?」
「ああ、それがあったわね!」
「…なるほど。それが出来ればアレの処分も考えられるようになります。良い着眼点です」
「確かに、それが出来れば、後は何も心配することがなくなるわね。もう私達は解放されたわけだし、始祖様には今、報いを受けてもらってるところですし」
「それですが、まだ貴女達がされたことの一巡もしていないというのに、大分参っているようです」
「うーん、少なくとも5年は続けてもらいたいのですが」
「ティア、あなた結構えぐいわね」
「ま、それくらいされたわけだしねー」
「じゃあ飴としての提案なんだけど、始祖様の動機って子供が欲しかったのよね? なら女性体になってる状態で旦那様と子作りさせてあげるって言えば…」
「えー。嫌よ、そんなの。村長の種を分けるってことでしょ? あいつにそんなご褒美なんて必要ないわよ」
「ええ、だから飴なの。 必死に贖罪を続けるために自ら進んでしていくなら、考えてあげますって」
「黒いのう。 だが良い手かもしれん。 我らの気が済むまであやつが踊り続けるのを見るのも一興よ」
「ふむ、それなら少しは溜飲が下がるかもしれませんね」
「最初は同じ苦しみをって思っていただけでしたけど、ここにきてより効果的な手段が見つかりましたか」
「村長に負担をかけないようにお願いねー」
「もちろん。 村に来る時は幻影魔法か何かで前の姿に戻ってもらうつもりだし」
「最悪、寄り代を使って傀儡を寄越すことも出来るだろうしの」
「これで解決、かしら?」
「……長かったですね」
「覚えさせられたものと、この身体は戻りませんけどね」
「それについては業腹だが、疼いた身体は村長におさめてもらえれば良い」
「えっと、秘密にしてたんじゃなかったの?」
「それだと回数はともかく頻度が、の。もう開き直って嫁にでもしてもらおうかと。その方がヒトエも喜ぶ」
「ま、ルーが言ったみたいに、今までのことは悪夢とでも思って、これからは元通りいきましょ」
「…そうですね」
「となると結構暇が出来ますね」
「私は前みたいに研究三昧に戻ろうかしら。ただ学園の講師達も一新してそうだから、時間はかかるだろうけど」
「旦那様が寂しがってましたし、ルーさんは少し研究を控えて子供達と交流するのはどうですか?」
「ええっ!? こ、子供達と交流って…、あ、…。 そ、そうね、うん。私も普通に子供達と遊んだりしようかしら。あはは…」
「……」
「……はぁ。今までがそうだったからとは言え、もうそっち方面のことを考える必要はないんですから、しっかりして下さい」
「ま、まぁ、お姉さまも徐々に戻していけばいいですよ」
「そうよね、徐々に…。 うん。 これからはのんびりやっていきましょ」