「お~い、一刀伯父さん~って、げっ!好恋伯父さんもいるのかよ」
「会って早々に、げっ!とはなんだ、げっ!とは」
「そうだぞ。こんな奴でもお前の保護者の一人なんだぞ」
「お前はお前で何気に酷いことを言うような」
「だって好恋伯父さんがいるってことは恋お姉ちゃんも―――」
「……勿論いるよ」
その声は、俺のすぐ後ろから聞こえてきた
「うおっ!……いつも言っているけど、すぐ後ろから話し掛けてくるのやめてくれよ。心臓に悪いからさ」
「「「気配の察知がまだまだ甘い」」」
「伯父さん達が人間離れしているだけだろうがっ!」
「それは好恋や他のみんなだけだっ!っと、そう言えば、前回の稽古の時に言ったが今日は真剣でやるから蔵の中にあったはずだから取ってこい」
「はいはい、取ってきますよ~」
「ついでに好恋と恋も一緒に探しに行ってやってくれ」
「あいよ」 「…………わかった」
「あれ?好恋伯父さん達も来たの?」
「ああ、一緒に探してやってくれってな」
「……ったく、一刀伯父さんはホント、人使いが荒いんだよなぁ……」
「「同感」」
あの伯父さん、笑顔で人に無茶を強いるのが得意技なんだよな。そのクセ、妙に口が上手くて、いつのまにか乗せられたりするし。
俺達は手分けして刀を探した。
「それにしても……ガキの頃から気になってたんだけど、なんでこの家の蔵は、こんな中華風なんだ?」
「まぁ、色々事情があるんだよ」
いつの間にか近くに来ていた好恋伯父さんに聞かれていたようだ。
「母さんが事故で死んでしまってから、ガキの俺を引き取って養ってくれてるけど。………あの伯父さんはホント謎が多いおっさんだ」
母の兄である伯父さんは、俗に言うかなりのたらし……もといかなりの艶福家で、俺が育ったこの屋敷には五十一人もの女性や好恋伯父さんと奥さんの恋姉ちゃんも一緒に住んでいる。
また好恋伯父さんとは血は繋がっていないが、俺が生まれた時には、一刀伯父さんと兄弟のようにつるんでいたため、好恋伯父さんと呼んでいる。本人達曰く向こうの世界とやらで出逢い、兄弟の儀とやらをやり兄弟になったらしい。
また、本来稽古する時間には、好恋伯父さんも恋姉ちゃんもいないのだが、たまにこういった日のように稽古する時間にいると、好恋伯父さんと恋姉ちゃんが稽古の相手になる。
恋姉ちゃんも好恋伯父さんも手加減と言うものを知らないのか、いつも気絶させられてしまうため、姉ちゃんたちの稽古の中でも特に苦手だ。
っと、色々考え込んでいたが早くしないと、夕方の鍛錬に遅れてしまう。
〜数分後〜
「ん?これかな?」
蔵の奥の棚に無造作に押し込まれていた刀らしきものを手に取ってみた。掌にずっしりとした重みが伝わってくる。
「へぇ……重さのバランスも良いし、リーチもちょっと長めで俺好みだ。良い刀だなー、これ」
柄の長さも丁度良く、まるで俺用にあつらえてあったかのように、しっかり手に馴染む。
「お~い。見つかったのか?」
「ああ、あったよ」
刀が見つかったことで、どおやら好恋伯父さん達は、こっちに向かってきていることが気配でわかった。
「……と、これはなんだろ?」
棚にあった日本刀の横、こちらも無造作に押し込まれた丸く大きな物体があった。
「これなんだろ?鏡?でもガラスもはまってないし…あ、銅鏡ってやつかな」
辛うじて顔が映ってるような……そんな具合に小汚ない銅鏡を手に取ってみる。
「剣丞、見つかった刀とやらはどんな物だ?」
俺が銅鏡に興味を示しているうちに好恋伯父さん達が合流したようだ。
好恋伯父さんに声を掛けられて、俺は棚に放り込まれていた刀を手に取った。
その瞬間ーーーー。
「なっ!?なんだこれ………っ!?どうなって!?」
「っ!?くそっ!あの野郎、こうなることをわかってやがったな!!恋っ!」
「わかった」
辺り一面が白く閃光のように光ったあと、そこには誰も存在していなかった。
「やっぱり行っちまったか……」
「あれから三年……とうとうその時が来たのでしょう」
「ああ、凪も来たのか」
「剣丞は大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫だろう。俺達が教えられることは全て教えた。あとは本人次第さ。……俺のときのようにね。っと言っても好恋や恋も一緒に行ったようだから心配はないだろう」
「隊長が決めたように、私は私なりに全力を尽くしましたが……やはり心配です。………それにしても好恋や恋も一緒に行かせるなど、隊長も過保護すぎませんか?武力の心配が一切ないのですが」
「そりゃあ、私達にとって、あの子は実の子供と同じくらい大切な存在でしたけど……」
「ならわかるだろう?それに外史の扉は開いてしまった。……俺達もあいつも。運命を受け入れるしかないよ」
「申し上げます!」
「許す!」
「今川勢は現在、田楽狭間にて小休止!全軍を分散させて昼弁当を使っております!」
「デアルカ。………大義」
「はっ!」
「勝者の余裕……ということですかな」
「勝者か。あながち間違ってもおらんな」
「我が方は二千弱。対する義元公は一万五千ほど。軍神摩利支天といえど、この差を覆すのは至難の業でしょう」
「常識的に考えればあの大軍にこれだけの少数で奇襲を掛けるのは無謀を通り越して自殺行為だからな」
「常識などと、そんなつまらんものに縛られる者に、大業など成しえんぞ」
「ですが殿………」
「おけぃ。今やることは問答てはなく、合戦である。説教は義元を討ち取った後に聞いてやる。持ち場につけ」
「「はっ」」
「さて………これより織田久遠信長、一世一代の大博打。勝ちきってみせようではないか……!」
〜数十分後〜
「東海一の弓取り、今川殿、討ち取ったりーーー!」
「なんだと……っ!?」
「殿がお討ち死に……っ!?」
「ひぃ!も、もう今川家も終わりだ……!」
「命あっての物種だ!オラぁ逃げるぜ!」
「俺も!」
「俺も逃げる」
「ひ、ヒーーーッ!逃げろぉぉぉ!」
「ああー!こらー!逃げるなです!取って返して戦うですよ!」
「綾那!ここはもうダメよ!後退しましょう!」
「やです!綾那まだまだ戦えるです!」
「義元公が討たれた以上、この戦はこれで終わりよ!それに、これで私達の殿様の未来が開けるの!だから後退して殿様と合流するわよ!」
「むーっ、分かったです……」
「今こそ好機なり!織田の勇士たちよ!これより敵を追討――――」
「なんだ、この音は―――」
「な、なんだあれはっ!?殿、空を!」
「光の玉が天から落ちて来ているだと………!?」
「消えた……」
「……おい権六。あやつらは誰だ?」
「は?……っ!!」
「…男か?女もいるな。歳は我と同じぐらいに見えるが」
「久遠さま!崩れたとは言え、彼我の戦力差は未だ変わらず!今はすぐに後退すべきかと!」
「…デアルカ。おい猿!」
「は、はひっ!?」
「そやつらを持って帰れ。あとで検分する」
「あ、あの死体をですかっ!?」
「死体かどうかまだ分からん。やっておけ」
「は、はひぃ~……」
「権六!五郎左!疾く退くぞ!」
「はっ!皆の者、追い頸は諦めぃ!今はすぐに清洲に戻る!」
「全軍退却!速やかに清洲に戻ります!急いで!
「「「おう!」」」
「義元は討った。当面の危機は去ったが……」
「天から降ってきたあやつらは何かの兆しなのか……」
「乱れ乱れたこの世の地獄で、何かが始まろうとしている………そんな予感がする」