次の日――――。
「…………」
パチッと目を開けると……昨日と全く同じ風景。
「ですよねー……はぁ」
「おはよう剣丞。起きて早々にため息とは、どうした?」
「………おはよう」
「二人ともおはよう。……いや、特になんかあったってわけじゃないんだけどね」
二人とも俺よりも先に起きていたようだ。
そのあと、俺はごそごそと布団から這い出しら畳んで置いていた服に着替える。
「うーん……ちょっと汚れるなぁ……」
学校から帰ってすぐ、蔵に行かされて、んでもってこの世界に来て、鬼と戦って……。
「俺の一張羅なんだから、大事にしないと……」
クンクンッ。
「汗臭くはないからまだいけるかな。……けど洗濯とかどうしよう」
「…………洗濯、あとで、やっておくよ?」
「一応その服以外にも着なれておけよ」
「分かってるよ。それと恋姉ちゃんありがとう」
「起きろ剣丞!」
勢いよく襖が開くと同時に、久遠さんと帰蝶さんの二人が姿を現した。
「――――と、なんだ。起きてるではないか」
「お陰様で昨日はぐっすり寝たからね。久遠さんも朝が早いね」
「惰眠を貪るほど無駄なことはないからな。……それと剣丞」
「我のことは久遠で良い。仮にも夫という立場になるのだからな、貴様は」
「了解。じゃあ久遠って呼ばせてもらうよ」
「じゃあ改めて。おはよう久遠」
「うむ!おはようだ、剣丞!それに好恋、恋もおはよう」
「「おはよう」
満面の笑顔で返された挨拶は、凛としていて、聞いていてとても心地が良い。
「で俺らは今日、どうしたら良いの?」
「今日はお城で久遠を前にして評定が開かれます。あなた方のことはそのとき、家中の者にお披露目することになるでしょう」
「おまえを夫にする、とお披露目するのだ……ふふっ。また好恋と恋も剣丞の直属の部下としてお披露目するつもりだ」
「なにその笑い方。……怖いんだけど」
「織田の家中は武闘派が多い。納得のいかないことは腕っ節で解決するのが常だ。覚悟しておけ?」
「うへ、マジで?……けど俺らのご飯と住処のためにも、納得してもらわないとなぁ……」
「おお!いいなそれ、何か気が合いそうなやつが多そうだな」
「…………楽しそう」
「そこは己でなんとかせい」
「投げっぱなしですかっ!?……まぁ何でもかんでも久遠任せってのも情けないし。了解。自分なりに何とかやってみるよ」
「じゃあ、認められなかったら稽古の難易度を上げるからな」
「ええー!……それはちょっと」
「男に二言はなしだろ。剣丞」
「分かったよ。やってやるよ」
「ふふふ、うむ。良い覚悟だ。……では行くぞ」
「え、もう?あのぉ~……朝ご飯は?」
「そんなもの、評定の後で食えばいい。……ほら早くせい。行くぞ!」
「ふぇぇぇぇ~い……」
「ちゃっちゃか済ませるか」
「………………ご飯」
久遠に連れられて、朝の城下町を、お城に向かって歩いて行く。
道行く人たちは皆、久遠の姿を見ると、すぐに頭を垂れて恭順の意を示す。
(やっぱ、偉い人なんだなぁ、久遠って……)
正直、俺の目にはただの可愛くて、でもちょっと偉そうな女の子……ってぐらいにしか映らないんだけど。好恋伯父さんたちは、どうなのかな?
「そういや久遠。評定って何をするんだ?」
「評定とは、領地の施政のため、家老や侍大将たちから意見や提案を聞く場だな」
「ふーん……家老は偉い人ってのは分かるんだけど、その侍大将ってのには、どんな役目があるの?」
「立場や役職、ということになるか。大まかに言えば、足軽が居て、その足軽を数人から数十人纏めるのが、足軽組頭という」
「その足軽組頭を数人纏めるのが侍大将で、その侍大将を纏めるのが家老や部将……といったところか」
「なるほどね」
主任、課長、係長に部長、そんな感じか。
「そのほかに納戸役や祐筆、台所役など、多くの役職があるが……当家ではそんな感じだと思っておけ」
「当家ではってことは、じゃあ他のお家では違うところがあるの?」
「当然だ。他家には他家の状況があれば、事情もある。それに即した組織になっているだろう」
「我が織田家は、室町より慣例である寄親寄子に頼らず、迅速に動けるように体制を変えたからな。他家とはかなり違う形になっているであろう」
「また分からない言葉が出てきた。その寄親、寄子ってのはなに?」
学校の授業でうっすら聞いた記憶はあるんだけど。
「寄親とは、大名に協力している有力豪族のことだ。その下に、更に規模の小さい勢力がつく。それが寄子だ」
「寄子は普段、小作人を使って田を耕したり、領地の運営をするのだが、一朝事あるときは、小作人を足軽にして寄親の下に集う」
「寄親はその寄子をまとめ、大名の下に集う。それを大名がまとめて軍とするのだ」
「へ~。あれ?じゃあ大名直属の兵って居ないの?」
「居るが少数だな。なぜと言えば、兵を養うために銭が掛かる。多くの兵を常に雇っておけるほど、銭に余裕のある家は少ない」
「うへ、世知辛いねぇ。……けどさ、それだと寄親って人の発言力が強くなって、たまったもんじゃなくない?」
「……聡いな。そういうことだ。だから我はその制度を撤廃したのだ」
「ということは、織田家って結構お金持ち?」
「尾張は地味肥え、八方に道が繋がっている。米も出来れば人も動く。人が動けば銭も動く。銭が動けば矢銭が入るからな」
「特に尾張は津島という、銭のなる木を持っておる。他家より銭は豊富だ」
「なるほど。恵まれてるねぇ、尾張って」
「恵まれてるからこそ、他家に翻弄されぬように、力を持たねばならんのだ」
「それで俺を夫に祭り上げようってことか。なるほど。繋がったよ」
「他家の糸がついた夫など、ぞっとする」
「ふむ。……俺の役割、やっと腑に落ちた」
久遠は俺を側に置くことによって、他家の口出しに左右されない国を作りたい。そういうことだろう。
「デアルカ。もうすぐ城につく。心構えをしておけ」
「あいよ」
「なんかここ最近、俺らって空気だよな。……口出ししないようにしてるからしょうがないけど」
「…………そんなもの」
それからしばらく、久遠と雑談をしながら歩いていると、前方にまばゆいばかりのお城が見えてきた。
「おおおー!立派なお城だなぁ!」
大きな橋の向こうに、立派そうに見える城門。それに小ぶりながらも堂々とした本丸が見える。
「ふっふっふっ。そうだろうそうだろう。清洲の城は尾張でも一、二を争う名城だからな」
「恋だったらこの城、どう落とす?」
「…………正面から落とす」
「だよなぁ、虎牢関よりは脆そうだし」
「………………いつか一人で、城落とし、してみたい」
「だな!」
なんか後ろで好恋伯父さんたちはが物騒な話しをしていたが、俺は聞かなかったことにした。そして、久遠たちにも聞かれてないことを祈る。
「うん凄い。けど……思ったより小さいね」
「確かに大きいとは言えんが、それでもかなりの広さがあるんだぞ?」
「そうなんだ?へぇ……中に入るのが楽しみだな」
「のんきな事を。家中の猛者たちとの喧嘩の覚悟は出来ているのか?」
「まぁ殺し合う訳じゃないんだし、何とかなるんじゃないかなーと」
好恋伯父さんたちほど強くなければ、何とかなる気がする。
「……大物なのか、馬鹿なのか」
「馬鹿に一票投じるね」
「自分で言うな、うつけめ。……では行くぞ」
「自分で言うか普通」
「………馬鹿じゃない、阿保」
「しばらくここで待っておれ。時が来れば呼ぶ」
そういって久遠は部屋を出て行った。
「へぇ~……」
やることもなく、部屋の調度品なんかを念入りに観察する。
「あら?久遠の屋敷より庭が狭い。……まぁそれでも充分広いんだけど」
だだっ広い平地、って訳じゃなく、あちこちに松が植えられてたり、生け垣があったり。
「攻められたときのことを考えて、障害物代わりになってるのかな?」
一通り庭を見て、色々思考を巡らせていたんだけど……若干、飽きてきた。
「そういや……久遠は家中の猛者たちとの喧嘩、とかって物騒なことを言ってたけど」
「いや、でも家でも何かあれば武闘派の奴らは何かと決闘で決めてたろ」
「そういやそうだった」
よくよく考えれば、どこの馬の骨とも分からん奴が、いきなりオラが大将の夫だー!なんて言っても、はいそうですかと納得できないだろうけど。
「でもそうすると何で決めるんだろ?流石に殴り合いじゃないだろうし」
「家と同じじゃないのか?」
「やっぱりそうか~……」
気が進まないなぁ……。家でもそういうの得意じゃなかったし。だけど、それが出来なければ、ご飯とお家が遠のいていくし。
「……俺は俺として、誠心誠意対応すりゃ、きっと分かってもらえるだろ」
「そんなに甘くないと思うぞ。まぁ、やれるだけやって見せろ。そのあと、俺らも参加してもいいか聞いてみるからよ」
「もしかしたら、武力的な意味で好恋伯父さんたちが雇われて、俺がついでになるかもな、そうなると」
「そうかもな、でも出来るだけ自分の価値を示して見せろよ!」
「分かってるよ。……」
もうやることはやった。じゃああとは……。
「少しまた寝るわ」
「はいよ。俺らもぐだぐだ時間潰してるわ」
「…………今度は、恋がする」
俺が眠ろうとした時に最後に見たのは好恋伯父さんが恋姉ちゃんに膝枕されるところだった。
「剣丞も寝ちまったな」
「…………さっきの話し、本気?」
「それは勿論、久しぶりに身体を動かしたいしな」
「………嘘、親心でしょ?」
「…………やっぱり恋には分かるよな。……そうだよ、子がやられたなら親としては敵討ちをしてやりたいし」
「…………同意、それに強さ調べも」
「だな、俺たちの力がどこまで通じるのかも試したいし、あの乱世では俺たちは最強の座にいたことだし今回のはいい機会だよ」
「…………楽しみ」
「……俺もだよ」
結局、何だかんだ言っても俺たちは武人なんだよ。あいつらのことを戦闘狂なんて言える立場ではないし、言うつもりもない。ホント、このあとが楽しみだよ。
俺たちは身体を動かしたくて、うずうずする気持ちを抑えつけて、ただひたすらその時はまだか、と身体を滾らせていた。
「剣丞どの……剣丞どの……!」
「ふぁぁぁぁぁ〜……あふぅ……。ん〜……あれ、麦穂さん?」
「おはようございます。……一晩ぶりですね」
「あ、はい。先日はどうもありがとうごさいました」
「そ、そんな……私は何もしておりません。剣丞どのお一人で鬼を追い払ったのですから」
あの場合、一人だと鬼に殺られてたと思う。好恋伯父さんも恋姉ちゃんも居なかったと思うと、ぞっとする。
「でもやっぱり、麦穂さんと壬月さんの足音がなければ、どうなってたか分かりませんし……ありがとうございます、ですよ」
「あ、ええと、その……こ、こちらこそありがとうございます」
「それで麦穂さん、俺に用事です?」
「あ、そうですね。失礼しました。久遠さまがお呼びでございます。お早く」
「お、いよいよかー。了解です」
「「………………」」
頷き、床に転がしていた刀を取って部屋を出る。
何故か好恋伯父さんたちは、無言だった。そして、雰囲気が少し不気味に感じた。
「ううー、緊張するなぁ……」
「ふふっ……そんな柄でもないくせに」
「あ、ひどいこと言いますね、麦穂さん。……笑い事じゃないんですよ。だって壬月さんみたいな達人が一杯いるんでしょ?」
「そんなことはありませんよ?壬月さまは織田家一の家老の責任感もあって、剣丞どのにはきついように見えますけれど……」
「本当はお優しく、面倒見の良い方ですよ。他の家臣たちもみんな優しく、良い子たちばかりです」
なんだろ?好恋伯父さんたちの方から、少しがっかりするような感じが伝わってきた。
「話半分に聞いてます」
「あら。私の言葉をお疑いになられるのですか?」
「そういうんじゃないですけど。自分の目で見てみないことには、何も分からないですからね」
「それはそうですね。うふふ……」
「そういえば麦穂さんって――――」
「剣丞どの。私のことは麦穂と呼び捨てにしてくださいませ。あなたは久遠さまのお側に仕える方なのですから」
「いや、さすがにそれは出来ませんよ。麦穂さん、俺より年上っぽいし。逆に麦穂さんの方こそ、俺のことは剣丞って呼び捨てで――――」
「いえ、それはなりません。久遠さまの夫ということになるのですから、私からすれば主筋にあたります。今まで通り、剣丞どのとお呼びさせて頂きます」
「……分かりました。ありがとう麦穂さん」
「ふふっ……」
「どうしたんです、急に笑って」
「その……好青年だなと思って、少し可愛く……い、いえいえ!何でもありませんよ!」
「……そうですか?あ、そういえば麦穂さんに聞いてみたかったんですけど」
「何でしょう?」
「麦穂さんは俺が久遠の夫になるの、反対じゃないんですか?」
「そう……ですね。当初は反対でしたけど、今になれば久遠さまの仰っていた言葉の意味が分かりますから」
「何か言ってたんですか?久遠」
「目を見れば、剣丞どのの
「あ、そういやそんなこと言っていたなぁ……」
「剣丞どのと向き合い、言葉を交わしたときに、直感的に悟ったのです。この方は悪い方ではない、と。またそれに従うお二人のことも」
「逆に言うと良い人でもないってこと?」
「そ、そういうこと言うの、意地悪です……」
「あははっ、ごめんなさい。ちょっと言ってみたかっただけです。……でもありがとうございます」
「麦穂さんがそこまで信用してくれるのなら、その信用に応えなくちゃいけないですね」
「はい。期待しておりますよ、剣丞どの」
「はい、頑張ります」
「では……こちらが評定の間となります。……剣丞どの、準備は宜しいですか?」
「ちょ、ちょっと待って下さいね。スー……ハー……スー……ハァー……」
襖の前で深呼吸を繰り返し、ともすれば臆病風が吹き出しそうなのを必死に抑える。
好恋伯父さんたちは、こういうことに慣れているのか自然体だ。
「……よし。もう大丈夫です」
「では参りましょう」
(うっ……)
襖を開けた瞬間、どれだけひいき目に見ても好意的には見えない、いくつかの目が、一斉に俺らを見てくる。
特にやはり俺に対して視線が集中している。
(こ……これは予想以上に居心地が悪いなぁ……)
「どうした剣丞。そんなところに突っ立っておらず、こちらに来い。それと悪いが好恋と恋は、雛の右側に座ってくれ」
自分の横のスペースをポンポンと叩き、俺らを呼ぶ久遠の表情は、笑いに堪えるのに必死だ。
(くっそー……後で断固抗議してやるぅ……)
「失礼します。……」
心中では久遠に向けて盛大に文句を言っているが、それを表情や仕草には出さないよう、細心の注意を払い、久遠が指し示す場所に腰を下ろした。
好恋伯父さんたちは、先ほど久遠に指差された薄紫色した髪の女の子の隣に座った。
「皆の者。こやつが我の夫となる男、新田剣丞だ。存分に引き回してやってくれ。それと雛の隣にいる男が、剣丞のお付きの者で、呂飛太源好恋、その隣にいる女が呂布奉先恋だ」
名を呼ばれた瞬間、好恋伯父さんたちはお辞儀をした。
「ほれ、貴様も何か言え」
「何かって何を?」
「自己紹介ぐらい自分でしろと言っている」
「あ、ああ。自己紹介ね」
「えー……新田剣丞です。天から落ちてきて久遠……こちらにいらっしゃる織田三朗久遠さんに好恋伯父さん共々保護されました」
「何の因果か、久遠さんの夫になることが決まりましたので、皆様、今後とも、どうぞよろしくお願いしま――」
「ふざけるなぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!」
「例え殿がお認めになってもボクは認めないぞ!」
「控えよ、和奏。御前であるぞ」
「でも壬月さま!いきなり出てきたこんな奴が、殿の夫とかって、どう考えても――――!」
「その件については後にしろ」
「むー……」
「まぁ確かに佐々殿の意見も分かりますよー。雛もそう思いますしー」
「佐々殿、滝川殿の意見に
「犬子ちゃん、無理して言葉遣いを改めなくても良いですからね?」
「えへへ、ごめんなさーい」
「という訳で、我ら三若は反対の立場ってことでー」
「そうそう!やっぱ雛も犬子も分かってるなー。さすが相棒だ!」
「まぁ、久遠さまがお決めになったことだから、認めるしか無いんじゃないかなーって、雛は思ってるけどね」
「なに軽く言ってんだよ雛ぁ!久遠さまの夫と言えば、政戦両略で尾張にとって重要な位置にあたるんだぞ!」
「それをどこの馬の骨とも分からない奴が、いきなり出てきて夫になるとか、そんなの認められるかー!」
「そうだそうだー!」
「……というのが家中の意見ですが」
「ふむ……まぁそうなるだろうとは思っていたが。……おい和奏」
「はい!」
「どうすればこやつを認める?」
「ボクより強ければ認めてやります!」
「え、結局それなの、和奏~……」
「まぁ和奏だし」
「強ければ、か。……ならば簡単だな。剣丞、和奏と立ち合え」
「…………」
「どうした?やらんのか?」
(あのなぁ……そんなに簡単に言うなって。相手の強さだって俺はまだ何も知らないんだぞ?)
(心配ない。勝てんまでも負けなければ良いのだ。あの和奏という奴は曲がったことが嫌いな奴でな)
(逆に言えば、まっすぐにぶつかってくる奴のことを気に入る傾向がある)
(だからまっすぐにぶつかって、熨されてしまっても問題は解決するであろう)
(解決って、痛い目見るのは俺なんだけど……)
(我の夫になれるのだ。それぐらいは我慢しろ)
「はぁ~……分かった。精一杯やってみるよ」
「うむ。よくぞ申した。それでこそだ。……ああ、言い忘れておったが」
「なに?なんかあるの?」
「死なんようには気をつけろよ?葬式は好かん」
「それは相手さんに、殺さないように気をつけろって言ってください……」
何かアドバイスでもくれるのかと思って、言われた言葉が死なないように気をつけろとか。どんだけサバイバルなんだ、織田家中は!
「……一ついいか?」
急に好恋伯父さんが手を上げて聞いてきた。
「うむ。許す!申してみよ!」
「その決闘、俺と恋も参加していいか?勿論、剣丞が終わった後でいいし、休憩を途中で挟んで、体力を回復してくれて構わない」
「ふむ。……何故、わざわざ参加する?」
「いや、もしも剣丞が合格を貰ってもそのお付きの者までも認められないとなるとまたやるのは面倒だからな。良い機会だからまとめて、殺り合えば話しは早いだろ?」
「……なるほど、よかろう。許す。好恋や恋も参加せよ!」
「無理な申し出に助かる」
「いや良い」
「……あのー、ここじゃ狭いと思うんだけど」
「なら庭でやりゃ良いだろ!」
「庭、かー……」
正直な話、俺としてはそっちの方がやりやすいんだけど……。
(絶対、後から難癖つけられそうださなぁ……)
木が邪魔だっただの何だのと。目の前の女の子―――わかな?ちゃんかな?――は負けず嫌いっぽいし。
(春蘭姉ちゃんにそっくりのテンションなんだよな。……となれば、万が一俺が勝てたとしても、木が邪魔をしたからだ!って再戦を要求してくると思うんだ)
ならば最初から、相手のやりやすい場所で戦った方が無駄がすくない。
「いや、庭も広いんだけど、障害物が多すぎて、戦いづらいというか……」
「なんだそりゃ!?贅沢な奴だなー!」
「そうだぞ剣丞。これから殺り合うって時に、ごちゃごちゃうるせぇぞ!」
「いや、なんで好恋伯父さんの方が俺より殺る気なんだよ!って、うわっ!恋姉ちゃんも殺る気満々だよ!」
この人たちこんなに戦闘狂だったけ!?
確かに家に居る時も、他の人同士で決闘になった時に自分たちは関係ないのに何故か参加して、結局、勝ち上がって好恋伯父さんと恋姉ちゃんで殺り合ってたけどさ!
「ならば我の屋敷の庭にすれば良い。……ああ、この際だ。他の立ち合いたい奴は居れば進み出よ」
「私も立ち合いとうございます」
「げっ……」
壬月さんが来た。しかも結構な殺気をまき散らしておあでですよ。……俺、マジで生きてられるかな。
「ほぉ!それは楽しみが増えたな!」
「…………(コクッ)」
でも好恋伯父さんたちも、かなりの殺気をまき散らし始めちゃったよ。
「犬子も!犬子もやりたいです!」
「あ、じゃあ雛も一応、参加しまーす」
「では私も参加させて頂きます」
「壬月は分かるが、麦穂もか?」
「私は剣丞どののことを認めておりますが、武士として一度お手合わせ願いたく……」
「ふむ。良い。許す」
「ちょっと久遠さん……?そんな簡単に許されも、実際にやるのは俺なんだけど?」
「なぁにたかが五人だ。何とかせい」
「はぁ……まぁ頑張るけどさぁ……」
何だか事が大きくなってきたことに、激しく頭を抱える俺をよそに。
「では時間が惜しい。さっさと移動するぞ」
「よーし!ボクがサクッとぶっ飛ばして、おまえなんか追い出してやるからな!」
「はぁ。追い出されるのは嫌なんで、何とか頑張らせてもらいますけど……」
はぁ~……どうなるんだろう、俺……。