コンコンと控えめな音が響く。
その小さな物音にびくりと身体を震わせる少女。
「ぐんちゃーん! いるー?」
「……高嶋さん」
物憂げな瞳が親しみの籠った声音に揺らめく。
毛布を頭から被り、寝台の上でジッとしていた少女はゆらりと立ち上がる。
強盗が入ったように散らかった部屋を素足で歩く黒髪の少女は、やがてドアの前へ立つ。
ドアノブに触れ、僅かな逡巡の後、静かに千景はドアを開ける。
小さく開けた隙間、そこからひょこりと顔を見せるのは太陽のように朗らかな顔。
幼げな顔、赤い髪に後頭部のポニーテールが良く映えた少女の名前は、高嶋友奈と言った。
「それで……どうしたの」
「うん。あのね、散歩しない?」
「散歩……」
「うん! 私と一緒にお出掛けしよう!」
「……」
桜が咲いたような笑みに千景はしばし黙り込んだ。
千景の他にも四人、敵に抗う術を持つ少女達がこの寮に住んでいる。
千景達、勇者が拠点とする丸亀城で、普段から生活と訓練を続けている。
だがここ一週間程、実家がある村から帰ってきた千景は部屋に引き篭もっていた。
授業には行かず、何かを殺すように、対峙するように大鎌を独りで振るう。
単純に誰かと会い話すという行為が億劫で、自主練習以外は部屋にいるようになった。
そんな引き篭もりと化した千景に対し、戦線を共にした勇者達が訪ねることがあった。
大社側は、千景の引き篭もりに対して何か言ってくる事は無かった。
携帯端末を見る限り、戦闘に対するトラウマという事でカウンセラーを紹介するらしい。もしも本気で言っているのならば、見当違いも甚だしい。
千景は結局誰にも言わなかった。
言えるはずが無かった。見知らぬ男に強姦されたなどと。
「それは……」
「あ、無理にじゃないよ! 私がぐんちゃんと一緒に行きたいなって思ったから」
「……ありがとう高嶋さん。でもまだ具合が良くなくて」
「そっか、……うん。みんなも待っているからね!」
高嶋と千景は友人関係である……と千景は思っている。
一歳下の彼女だが、人懐っこい性格の彼女に千景も惹かれた。
だがそんな彼女も、こんな汚れた自分を知ったらなんというのだろうか。
軽蔑するだろうか、馬鹿にするだろうか。
そんな訳が無いと否定しながらも、何故かその考えが拭えなかった。
「最低ね……私」
嫌悪感に吐き気がした。
同時に、このままではいけないという気がした。
誰にも相談出来ないならば、自分で立ち直るしかないのだ。
割り切るしかない。
そうでなくとも、この暗い部屋からは脱出しよう。
そう決めて千景は、久方振りに外出の準備を始めた。
---
丸亀城を出て数十分、帽子と眼鏡と言った変装をした千景は一人歩いていた。
少し前のバーテックスとの戦い、その勝利はこの四国全域に知れ渡っている。
勇者という人々の希望、老若男女問わずその存在は注目されるのは必然なのだ。
「今日は……曇り気味ね」
独り言を呟きながら、千景はゲーム売り場に脚を早めた。
とはいえ、新作のゲームが売られているという訳ではない。
世界が終焉を迎える寸前、辛うじて全滅を逃れた程度の状況。
ライフラインは確保されてはいるが、あまり娯楽にリソースは割けないだろう。
それでも何となく、店の棚に並んでいる昔のゲームのパッケージを千景は見ていく。
ゲームをする事が趣味かと言われたら、恐らくそうだろう。
少なくとも『縛り』と言われるプレイで高いスコアを出せる程度にはやり込んでいる。
だが、それも嫌な外の世界から逃れる為の現実逃避の手段に過ぎないのではないか。
「……だめね」
一人でいると嫌な思考が脳裏を過る。
じめじめと薄暗い気分が胸中に溜まっている感覚。
「……」
それなりに人はいるが、今にも閉店しそうな空気。
僅かに淀んだ空気はやはり自分に似合うのだと、小さく自嘲する千景の視線は、
「―――!?」
ふと店の窓越しに見た事のある男の姿を捉えた。
息を呑み、しかし此方に気付いていないのか平然と歩いていく男の姿を。
「……ぁ」
うどん饅頭を片手に、やや背の高い黒髪の男の姿。
その姿を覚えている。決して見間違えるはずがなかった。
薄暗い中でも、いや寧ろ周りが暗かったからこそ、至近距離にいた男の顔を覚えている。
何故ここにいるのかという疑問があった。
だがそれ以上に、男の手掛かりが転がってきた好機に千景は小さく笑みを浮かべた。
わずかな恐怖と、それを上回る言いようのない感情が千景の中で即座に行動へと促す。
即ち、尾行だ。
息を殺し、帽子を深めに被りながら千景は静かに男の後を追う。
大鎌は持ってくる事はできなかったがと、千景はスカートのポケットに手を入れる。
指先に感じる冷たい感触。
小さなカッター、しかし当たり所が悪ければ人は――死ぬ。
「――――」
できるのだろうか。
郡千景は、復讐の為に、人を殺す行為が出来るのだろうか。
「……するわ。……して、みせる」
覚悟は決めた。決めてきた。
あの男を倒さなければ、郡千景はきっと前に進めない。
あの日の屈辱と、苦しみと、悲しみと、憎悪を糧に、少し先にいる男を――
「……!」
ふらりと男は人のいる通りから細い路地へと入り込んだ。
もしかしたらその先に男の家か、それに準ずる何かがあるかもしれないと走り寄る。
昼過ぎにも関わらず千景の入った路地は薄暗く、日の光が届かない場所であった。
そうしてわずかに入り組んだ路地を追いかけると、男が此方を向き立ち止まっていた。
にやりと傲慢で醜悪な笑みを浮かべた姿に、尾行がばれていた事を千景は感じ取った。
「よお……、微妙に変装しているから一体誰かと思ったら」
「――――」
「あの時の名器ちゃんじゃねえか! また犯されに来たのか」
「……ころす」
プツンと何かが切れる音がした。
奥歯が擦れる音が脳内に響きながら、千景はカッターナイフを取り出し構える。
変装の都合上大鎌は持ってこれなかったが、この狭い路地ならば寧ろ都合が良い。
千景の構えた凶器、それを見ても動じない男は大物か、よほどの馬鹿か。
寧ろ嘲るように嗤い挑発するような物言いは、千景を苛立たせ、踏み込ませた。
「はあッ―――!」
「……なっ!」
一閃。
日々の鍛錬、鍛えた少女による一撃が男の顔色を変えさせる。
強者の皮を被っていたのか、唐突に臆病な表情を見せる男は千景の刃物の一撃を必死に避ける。
(いける……!)
この男も本来は、守らなくてはいけない市民なのだろう。
だがそれでも、千景にとってはバーテックスにも劣る敵にしか見えなかった。
『切り札』を使用した反動か、それともこの男限定なのか、湧き上がる感情に口端を浮かべた。
小さな刃物を振り回す千景。
それを必死の形相で避ける男に出来た隙を狙って――
「なんてな」
「がッ!! ……かふ、ぁ……」
鈍い痛みが少女の腹に広がっていく。
大人の一撃を、余す事なく食らったのだと、理解と同時に千景の視界が歪んだ。
痛みが、焦燥感が、衝撃に呼吸の仕方を忘れた身体が、致命的なまでに少女の隙を曝け出した。
「おっと、逃がすか」
「あぐっ」
「まあ、これって正当防衛だからね。ほら、刃物没収な」
痛みに呻く千景の華奢な身体は、路地裏の薄暗い地面に転がされる。
まるであの夕暮れに起きた強姦の再現のように、男は千景の腰付近に馬乗りになった。
「クックッ……、じゃあ……お楽しみの時間だな。お嬢ちゃん」
「ひッ、や、やめ、誰か、助け……っっ!!」
「……」
ザクリ、と。叫び声を上げようとした千景の顔の近くに男はある物を力に任せて刺した。
数本の長い黒髪を容易に切断した鈍い刃物は、千景が持参したカッターナイフであった。
冷酷に、残酷に、冷たい男の瞳が、震える千景をまるで家畜を見るように千景を見下ろす。
「騒ぐなって、前に言っただろ?」
「…………!」
「抵抗なんて無駄だって前に教えて上げただろ? ……顔に傷作りたくなけりゃ、黙ってろ」
「…………」
――カタカタと鳴る音が聞こえた。
先程までの激情は一瞬で消え失せ、闘争心など過去の記憶によって容易く搔き消された。
恐怖という感情が、残酷な記憶が、千景の身体を震わせ、じわりと大きな瞳に涙を浮かべる。
「……て、ください」
「あ?」
「もう、追いかけないので、許してください……」
涙交じりの懇願。
同情を引くように、憐れみを乞うように、哀れな少女は男に赦しを求める。
頬を上気させ瞳を潤ませる千景の表情は、それだけで男を誑かし唆せる魔性の物だろう。
「前に頼んで、俺が解放したか?」
「……ぅ、……ッ」
「素直に、大人しく、従順に、俺の言う事を聞けば、解放してやるよ」
「……」
千景には頷く以外の選択肢など存在しなかった。
男が誘い込んだ路地裏は汚れなどが酷く、人が通るような場所ではない。
路地裏の先、光が届く場所には人が通るが、誰も男にも千景にも見向きしなかった。
建物と建物の間から差し込む薄い光。
かすかな陽光が照らす埃が、この場所の不衛生さを男に教えていた。
「さて、と」
「……っ」
だからこそ人の介入は少ないと、少女のスカートのホックを男は外し、脱がす。
生地を破くという行為はなく、衣服を剥ぎ取られる行為に千景はそっと顔を背ける。
『前回』とは異なり、完全に日が差している状況での行為に羞恥を感じているようであった。
「立て」
「……」
衣服を剥ぎ取り、ピンク色の下着と靴のみを残した千景。
よろよろと近くの壁に背中を預けさせた男はブラをずらし、ショーツを膝下まで下ろす。
人の目が無いとは言え、外でほとんど裸にされた千景は頬に朱を奔らせ、小動物の様に震える。
「なんだ、もう濡れてんじゃねえか。期待してんのか」
「……!! ちがっ、そんな、んッ」
少女の抗議を無視して、躊躇なく男は千景の秘部を手のひらで撫でまわす。
貝状の肉は極上の柔らかさを持ち、解される度に蜜壺からは新鮮な蜜が手のひらに広がる。
「ああ、声出すの禁止な。声出したら罰ゲームな」
「……っ」
少女の反応を愉しむように、男は千景の形の良い耳に囁く。
くちゅくちゅと秘部から淫液の音と、必死に我慢する少女の息遣いが男の鼓動を高鳴らせる。
陰口付近を弄り、弾力のある生尻を揉みながら、ゆっくりと人差し指を膣口へと挿入する。
「……ふ」
少女の媚肉は熱く、男の指を溶かすように締め付ける。
貪欲にうねり、執拗に指をねぶる肉壁は狭く、その感触を男は愉しむ。
声を出さないようにと唇を噛み締める黒髪の少女の顔をチラリと見ながら静かに屈む。
じっくりと少女の秘部を見る。
男にここまで見られた事はなく顔を赤らめる千景を余所に、男は片手で陰口をなぞる。
薄暗い路地裏で咲く一輪の花のように、ピンク色の濡れた花弁の上にある小さな肉粒に触れる。
「ん、ぅ……!」
快楽の為に存在する器官は、果実のように触れるだけで少女の声が漏れる。
比例するようにぎゅうっと男の指を締め付ける媚肉の締め付けが増え、蜜液がショーツに滴る。
わずかに腰を引かす千景の尻肉を荒々しく掴み、ゆっくりと男は自らの顔を秘部へと近づける。
何か不穏な予感を感じたのだろう。
頭を横に振り、男の頭を押さえるがもう遅い。
僅かに使われた肉粒、それを包皮越しに唇で挟むように啄む。
「……ッッ!!」
ディープなキスをするように。
情熱的に、粘着質に、加虐的に、唾液をまぶし唇の肉で前後に揺らす。
「ぁ……、んぅぅっ……」
肉粒を弄りながら、同時に人差し指が媚肉を探る。
少女の身体はこの愛撫を気に入ったらしく、淫らな涎が少女の程良い肉付きの腿を伝う。
「ん、ふくッ……、ぃ、ぅ……」
がくがくと脚を震わせ、喉をひくつかせる千景。
外で衣服を脱ぎ、男に股を開き、秘部を弄られ、艶の入った声を漏らしている。
肉粒を弄るだけでぴちゃ、ぴちゃりと淫液が男の手を伝う。
必死に声を我慢している為か、快楽が蓄積される千景の身体は震える。
そして、
――ぐにっと男は挿入した指を曲げた。
「ぃうううッッ!!?」
千景の悲鳴と同時に、締め付ける媚肉に男は笑みを浮かべる。
人差し指の第二関節を曲げた部分に、僅かにざらついた感触がある肉。
我慢という言葉を忘れる程に達した千景の痙攣する身体を無理やり立たせる。
座らせるなんて事はしない。
壁に背中を預け、しかし腰だけは逃がさないと、再度指で肉壁をこする。
「んんっ、ツッ! ~~~~ッッ!!」
ぷしゅ、ぷしゃっと飛沫が飛び散る。
小水を思わせる飛沫が弧を描き、股下にいた男の顔を汚した。
口端から涎を垂らし嫌々と首を振る千景は、愛撫を続ける男に口を開いた。
「とまっ、ぁ、や、まだ、いまのが……ッ」
「あ? イッたならイッたって言わないと止まんないぜ、お嬢ちゃん」
「イきま、ぁ、ぃ、イぎましたから……!!」
「よし、素直になったな。いい子だ」
喘ぎ、息絶え絶えに告げる千景に男は頷く。
開いた両脚の爪先を伸ばし、口を開閉し、身体を震わせる千景に笑い、
「じゃあ罰ゲーム。膣出しな」
既に屹立した肉棒を余す事なく、濡れた秘部から最奥へと一息に突き刺した。
「ぇ」
肉壁を抉るように貫く。
激しい快楽を知ったぬめる媚肉が割り裂かれる感触。
「っ、ぷぁあぁ……!」
ひく、ひくっと千景は震える。
男による愛撫で快楽を刻み込まれ、追い打ちの様にいきり立った怒張の攻め。
もともとが敏感な身体であった事もあり、肉棒での不意打ちが千景の悲鳴を呼ぶ。
爆発した快楽に耐え切れないと千景の膝から下が崩れ落ちる。
しかし、腰を掴む男が落とす事を許さず、深々と柔らかい少女を串刺しにする。
「ぁ、ぁ……!!」
肉と肉がぶつかり合う音。
目の前にある乳房と硬くなった先端に男は噛みつきながら腰を突き上げる。
千景の白い生乳は、よくよく見ると薄っすらと噛み痕が付いている。
男が以前、荒々しく噛みついた、目の前の少女を女にした夜の名残。
その痕を更新するように、果実を貪るように、腰を叩きつけながら男は噛みつく。
「ぅあ、ぃッ……ぁ」
涙混じりの嬌声。
小ぶりな大きさの乳肉を揺らす姿。
快楽を知り、快楽に溺れようとする少女の姿。
「ぁ、~~~!! まっ、ぁッ!!」
男のピストンは加速する。
少女の最奥、子宮に己の子種を注ぐ為に。
「おら、出すぞ!」
「やだ、や、ぁ、ぁ、たかし、~~~~~ッッ!!!」
尻肉を両手で掴み、肉棒を最奥に叩きつける。
逃れようと浮かした腰を下ろさせ、震える少女に白濁を吐き出す。
びゅううっと男の欲望が、長い黒髪を乱れさせた少女に注ぎ込まれた。
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呆然と身体を弛緩させる黒髪の少女。
秘部からこぽりと零れる精を無言で見下ろす千景に、満足気に男は囁く。
「男は黙ってレイプなのが俺の心情だがよ……。お嬢ちゃん気に入ったぜ」
「ぇ……」
そっと携帯端末を取り出し、男は千景に画面を見せる。
そこには、朝日に照らされて、全身を汗と白濁で汚した千景の凌辱された姿。
その画像を見て理解に至ると同時に真っ青になる少女に、男は残虐な笑みを浮かべて告げた。
「――これをばら撒かれたくなかったら、分かっているな?」
「……」
哀れな少女は、頷く以外に選択肢など存在しなかった。