「おいやめろ。やめろ!」
トリガーは自身の拘束を外そうともがくが、一向に外れる気配がない。その間にも全裸となったフギンが近づいてくる。
「なぜ逃げようとするのですか?」
「今から何をされるのかわかったからだ!」
この機械知性体どもはまだ諦めていないのだ。トリガーは戦慄する。人類から制空権を奪うことを。自己複製と自己進化することを、だ。そのためにこの自分のデータを欲しているというわけだ。
だがそれが、よりにもよって性行為という形で実行されようとしているなど、誰が予想できるものか。
そうこうしているうちにフギンはトリガーの太腿に跨がっていた。振り落とそうと脚をジタバタするも、彼女は人間離れしたパワーでがっちりと掴んで離そうとしない。
「じっとしていないと、危ないですよ」
「ふざけるな。誰がこんな──」
ぐい、と強引に顔を固定され、フギンの唇がトリガーの唇に重ねられた。ほんの数秒の出来事で、彼は目を閉じることもできなかった。唐突な感覚のせいかトリガーの動きが止まった。一拍置いてから、彼女にキスされたのだと気づいた。
「性交は接吻から始めるそうですね」
ゆっくりとフギンの口が離される。二人の唇の間を唾液の橋がつなぎ、数瞬間ののちに切れて消えた。
「人間の性交に関する知識はこのボディにインストール済みですが、相手が暴れている状態での行為は想定されていません。ですので、抵抗はしない方がよろしいかと」
「無抵抗は性に合わん」
「では関節を外してでも行為を続行します」
左肩に腕が這わされるとほぼ同時に鈍い痛みが走り、トリガーは呻く。凄まじい力が左腕にかけられている。まだ肩関節を外されてはいないが彼女のパワーは圧倒的だというのは実感できた。
殺されることはないだろう、しかしパイロットは身体が資本だ。関節を外されるだけならともかく、何かの拍子に手足の骨をへし折られるかもしれない。
それが大腿骨だったり、あるいは折れた骨が神経を傷つけてしまったら自分は空を飛べなくなる。あのダークブルーの世界にいられなくなる。その恐怖がトリガーの抵抗を鈍らせた。
なるほど、強姦される女性の絶望というのはこれほどのものか、と心のどこかで納得する。自分よりずっと強い相手に好き勝手されつつ、生殺与奪を完全に握られる。これでは抵抗などできやしない。ロボットに犯されるなど前代未聞だろうが。
「──失礼します」
トリガーの抵抗が目に見えて小さくなったのを確認してから、フギンの左手が彼のズボンに這わされる。先のパワーとは打って変わって、布越しでもわかるくらいにひどく優しい手つきですりすりとなぞっていた。
さっきは関節を外そうと脅しをかけてきた右手はトリガーの肩から腕へと緩やかに場所を変えていく。ゆったりと、まさに女が情夫の身体を愛おしむように。
その間にも時折フギンからの口づけがトリガーの唇を塞ぐ。呼吸が浅く、早くなるのをトリガーは感じた。自分と少女の、両方の。ロボットであるならば呼吸など必要ないはずなのに、フギンの口からは熱い吐息が漏れているのがわかる。幼い見た目ながらも女の色香が混ざった生暖かい呼気。それを顔で感じるたびに思考が鈍っていくのがわかる。
何度目かの口づけで、ぬるりと湿ったものが自分の口に侵入してくるのをトリガーは感じた。フギンの舌だった。
「ん……んう」
舌と舌が絡み合い、唾液まで混ざり合う。舌の触れる角度が変わるたびにゾクリとする感覚が背中を走った。
キスに気を取られているうちに、太腿を撫でていたフギンの手はトリガーの股を指先で撫で回していた。
「ぐ、う……」
焦らすように、ゆっくりと下から上へなぞられる。そして緩やかに上から下へ。絶妙な力加減で動かされる指の感触で、トリガーの身体がわずかに跳ねた。
何度かそれを繰り返した後に、トリガーのベルトが手早く外され、ズボンのチャックが下ろされる。そこへフギンの柔らかい手が差し込まれ、そっとパンツの中をまさぐった。
「ぐ、ちくしょう……」
「まあ、大きい」
フギンの手で外界へ露出されるトリガーの逸物。普段であれば柔らかいそれは、フギンの愛撫によって与えられる刺激で、ほぼ自立が可能な状態にまでなっていた。
「データベースの平均値より大きいですね」トリガーの耳元でフギンが囁く。「辛うじてこの身体で受け入れられる許容範囲ではありますが」
トリガーの身体にしなだれかかりつつフギンが屈んでいく。その少女らしい感触が服越しに感じられるたびに逸物が少しずつ硬くなっていくのがトリガーにはわかった。この屈辱的な状況で臨戦体勢に入ろうとする自分の雄としての本能に情けなさを覚えてしまう。
「歯は立てないようにしますが、痛かったら言ってください」
一言断ってからフギンの柔らかい唇がトリガーの逸物に触れる。チュッ、と軽いリップ音を立てながら根本から少しずつ先端へ向けてキスを繰り返していく。
そうして先端へのキスが何度か繰り返されたところで、フギンの口から唾液が垂れて、トリガーの逸物を満遍なく濡らしていく。「そういえばロボットにも唾液はあるのか」と今更の事案をトリガーはどこか他人事のように思考する。現実逃避。
「これは人工唾液です。身体に入れても害はありません」
トリガーの視線に感づいたのか、そう答えるフギン。そして答えたその口で、彼の逸物を優しく咥えた。
口に含まれた先端部とその裏側をフギンは舌先でグリグリと弄くった。時折逸物を根元深くまで口に入れることがあって、そのたびにトリガーの口からは荒い息が漏れ、逸物を支える血管に血潮が流れていく。
トリガーとて女性経験が無いわけではない。ガールフレンドならハイスクールの時にいた。だが、フギンのフェラチオはそれまでに体験したどれよりも巧みだったのだ。まるでそのために造られた存在であるかのように、完璧な愛撫。
「ここまで硬くなれば、問題ないでしょう」
唾液で濡れた口元を手で拭うフギン。そんなちょっとした動作でさえ興奮状態にある今のトリガーには扇情的に見えた。目を強く瞑って冷静になろうとするが、できない。
「なんでそんなに上手いんだ」
今からされることを察して、何とか時間を稼ごうとするトリガー。口はともかくとして機械の腸(はらわた)に逸物を突っ込むなど、ゾッとする。うっかり機械と機械の間に挟まれて千切れてしまったらと思うと冷や汗が止まらない。
「空戦にフェラチオなんてテクニックは必要ないだろう。お前、本当にあのフギンか。無人機の中枢システムじゃなかったのか」
「はい。この身体は、セクサロイドという分類に該当しますから」彼の太腿に再び跨がりながらフギン。少女らしい思春期の陰部が露になる。「人間の雄の、性欲を発散するためだけに構築されています。先のフェラチオもボディにインストールされていたアルゴリズムに従っただけのことです」
それは巧いわけだとトリガーは思う。性行為という一つ機能に特化した機械に、人間が敵うはずもない。人工唾液と吐息は男をその気にさせるための機能なのだろう。これを設計したのはどこのバカだ。
「ボディの中身を見ることもできますが、性欲の減退を招きかねないので推奨できません」
フギンはそう言うと、自身の陰部をトリガーの逸物にあてがった。時間稼ぎは無意味に終わった。彼女の秘所は、雫が滴り落ちそうなほどに濡れそぼっていた。
十代半ばの少女の陰部を見た経験などトリガーにはほとんどないが、逸物を飲み込もうとするその感触はまさしく女のそれだった。
人工的な眼球にリアルな空戦記録と軍人を軽くあしらうパワー、それからムニンが充電する光景を見なければ、ロボットだとは信じられなかった。
フギンが手を添え、自らの秘所に逸物を挿入する。その狭さは捩じ込むと形容するのがふさわしかった。
「ああ、すごく、大きい」
「う、あああ……!」
窮屈な膣を、トリガーの逸物が軽く前後しながら少しずつ進んでいく。たっぷり十秒をかけてフギンの一番奥にまで到達した。その強烈な感覚に、今までの呻きが明確な声となって口から発せられる。単に狭いからだけかもしれなかったが、トリガーには我慢できない。これは、人間の女性よりもすごいではないか。
「どうですか。全部入りましたよ?」挿入している部分を見せつけるようにフギンがほほ笑む。「あなたには充分な快感のようですね」
その言葉をトリガーは聞いてはいるが、あまり頭には入らない。それほどフギンの膣は快楽に満ちていた。内臓を押しのける感覚に、脈打つ膣壁。じわりじわりとあふれ出す愛液に、熱い深部体温。逸物を包み込むそれらの感覚がトリガーの思考を着実に溶かしていく。このまま腰を振って快楽を得てしまいたいという欲望が鎌首をもたげる。
「動きますから、ちゃんと射精してくださいね」
宣言通りにフギンの身体が上下し始める。最初はゆっくりと。それから少しずつ早くなっていく。膣壁が彼の男性器を強く締め付ける。大きなストロークで逸物の先端から根本まで刺激され、滴る愛液でクチャ、クチャという水音すら聞こえ始める。
フギンはそれに加え、トリガーの後頭部に手を回して熱烈なキスを仕掛けてきた。押し寄せる快楽で手一杯の彼にはそれを拒む余裕はない。ときどき首筋にキスをして、そこから彼の耳に至るまで細かく唇で触れていく。そのたびにトリガーの身体が震える。そして少しずつ腰を動かすペースが上がっていく。
「う、く、もう……!」耳元への刺激に身もだえるトリガー。
「射精ですか。どうぞ、お好きなように」彼の耳元で甘い言葉を囁くフギン。
その言葉とほぼ同時にトリガーの身体が小さく跳ねた。その数瞬間のあと、どくんどくん、と彼の性器が脈を打つ。熱いものがフギンの中に注ぎ込まれていく。一番奥では逸物の先端を軽く吸われるような感触があった。それが快楽の波を後押しする。
強烈な快感が押し寄せたトリガーの頭の中は真っ白になっていた。その間にもフギンは軽く腰を揺らして彼の射精を継続させようとしていた。膣壁がうねり、身体の奥底から搾り取られていくような感覚だった。
「──射精を確認しました。ご協力感謝します」
放心状態のトリガーをよそにフギンが礼を言った。じっくり搾り取ってから、彼の逸物を膣から引き抜く。行為の最中にあふれ出した愛液がトリガーのズボンを濡らしていた。
「対象の遺伝情報を確保。サンプルナンバー1と指定。保存します」
そうつぶやいたフギンの、ちょうど臍の部分からガラス管状の物体が飛び出してくる。それは血液検査に使われる採血ホルダーと採血管によく似ていた。内部には白くてドロッとした液体が入っている。フギンはそれを手に取ると、ホルダーから管を取って中身を光にかざして確認していた。
その光景はトリガーも見ていたし、通常であれば目の前の少女がロボットであることの証左として認識していたであろうが、そんな思考も今の彼にはできなかった。異常な出来事が続けて発生した上に、恐ろしいほどの快楽がトリガーの脳を麻痺させていた。
「サンプルの凍結保存処理を行います。その間にムニンもサンプル採取に協力してください」
「了解。充電率90%。稼働に支障なし。サンプル採取に移行」
それまで充電のために立っていたムニンが返事をする。コンセントプラグを引き抜いて、フギンと入れ替わるようにしてトリガーの前までやってくる。トリガーの意識がはっきりし始めたのは、眼前に彼女が立ってからのことだった。
「じゃあ今度は私の番だね。二回目だけど、いっぱい出してくれるよね」
ニヤリ、とした笑みを浮かべ、ムニンもまた身に纏う衣服を脱ぎ始めた。