まだR-18展開はないので、タグを付けてません。
サブタイトル通り、契約のためキスだけはします。
魔界の王の娘。
アスタルテと名乗った彼女は、確かにそう言った。
オスマンと向かいあわせのソファーに、机を挟んでアスタルテが座っている。その隣には今にも倒れそうなほど顔色が悪いルイズがいる。
アスタルテは、にこやかに微笑んでいる。
オスマンは、知らず知らず息を飲み込んでいた。
高貴。妖艶。色気。彼女を表す言葉は色々と浮かぶが、ほとんどは色欲だ。
漆黒のドレスは、まさしく彼女の身体の肢体を美しく彩る飾りだ。腰ほどまである、流れるような黒髪も、同じ色のドレスに実によく合っている。病的に白い肌と、白い顔に彩られるような紅の唇。少し茶けた瞳が、今か今かという風にオスマンの言葉を待っているように見える。
「…ミス・アスタルテ殿。」
オスマンは、ようやく口を開いた。
「コルベール教員より聞いておりますが、魔界の王の娘とはまことなのですか?」
「そうですわ。」
アスタルテは、微笑みを崩さず、包み隠すことなくそう答えた。
「魔界とは…、やはり…?」
「悪魔…っと、人間はわたくし達をそう呼びますわね。わたくしの父は、文字通り魔界の王として魔界を統治していた者。わたくしは、その娘でございます。」
「おお…。」
オスマンは、いっそ気絶したかった。
なるほど、それが真実ならば、とんでもないモノが喚ばれたことになる。
魔界の王の娘。すなわち、王女。最上級悪魔だ。
外見は人間だが、高貴な雰囲気とその色香は隠し通せるモノではない。それは、彼女が魔の王女であるがゆえだろう。
しかし、今目にしている姿が真の姿だとは限らない。魔界の者ならば、言葉にも出来ない異形である可能性もある。
「此度の召喚に、図らずも参じた故、わたくしは、これより何をすればよろしいのかしら?」
「それは…。」
「聞くところによりますと、此度の召喚は、この学び舎の進級試験だと…。」
「はい。使い魔の召喚の儀式であります。本来ならば、その生徒の素質に見合った動物や幻獣などが召喚されるのですが…。」
「あら? ルイズさんが、わたくしめを喚んだのがありえないと?」
アスタルテが、笑みを消し、スッと目を細めた。
オスマンは、言葉を詰まらせる。
「ですが、わたくしが、喚ばれたのは事実ですわ。ルイズさんには、それだけの力があるのは間違いないと思います。もしや、ルイズさんは、この学校ではあまり良い目で見られていないのでは?」
「…は、はあ…。まことに…その通りで。ミス・ヴァリエール嬢は、魔法が使えないことから、ゼロという二つ名で蔑まれておるのです。」
「まあ…。」
「いかなる魔法を使えど、爆発しか起こらぬ故、そのような扱いを…。」
「ばくはつ? では、あなた方、魔法使いが魔法を失敗するとそのような現象が?」
「いいえ。そのようなことは…。」
「なにやら事情がおありのようですわね。」
「はい。ミス・ヴァリエール嬢は、かの高名な公爵家の…。」
「わたくしが問いたいのは、そのようなお家柄のことではありませんわ。」
「は! もうしわけない!」
「わたくしのような者を呼び寄せる、それは力なき者では到底叶うものではありませんわ。ルイズさんには、それだけの力があるのです。」
「は、はあ…。」
「なるほど…。分かりましたわ。つまりあなた方にとって、使い魔とは、その者の力を計る物差しなのですわね?」
「は、はい…。メイジの実力は、使い魔を見よというほどの言葉があります…。」
「ですから、わたくしがルイズさんに喚ばれたのがあり得ないと…。」
「はい…。」
「……まあ…。ルイズさん。」
「は、はひぃ!?」
急に話を振られ、ルイズは大げさに身体を跳ねさせて返事をした。
「…苦労されたのですね?」
「えっ…。」
「お辛かったでしょう?」
「えっと…あの…。あっ。」
すると、アスタルテが、ルイズを抱きしめた。
ふわりと香る香りは、彼女の体臭だろうが。香水とはまったく違う、けれど男も女のも酔わせるような香り。そして、胸に抱かれたルイズは、その香りにわずかにめまいを感じながら、その身体の柔らかさをに身を任せた。
「これより、先…。わたくしが、貴女の力の物差しとなりましょう。貴女はご自身の力を誇って良いのですわ。」
「そ、それって…。」
「わたくしは、貴女の使い魔となります。言ったでしょう? 人間の儚き一生に寄り添うのも、また一興だと。」
「それは…。でも…。」
「わたくしでは、不満かしら?」
「そんなことは!」
「では、よろしいですわね?」
「はい…。」
「それでは…、何をすればよろしいのかしら? 使い魔と契約をするならば、それ相応の儀式があるはずですわよね?」
アスタルテは、ルイズを抱きしめたまま、オスマンを見た。
「さ、サモンサーヴァントのあとには…、コントラクトサーヴァントという儀式を…。ですが、それは…。」
「では、ルイズさん、コントラクトサーヴァントを。わたくしに。」
オスマンから確認を取ったアスタルテは、ルイズを離した。
真っ赤かなったルイズは、俯き、チラッとオスマンとコルベールの方を見た。
しかし二人は目をそらす。
これは…やるしかないのか? そもそも出来るのか? 相手は最上級悪魔だ。許可は貰っているが失敗する可能性は高い。
「さあ、早く。」
アスタルテは、そう言って微笑んでいる。
うぐっ…と、呻いたルイズは、何度も深呼吸をして、杖を出し、アスタルテの頭上に構えた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え。我の使い魔となせ!」
もはやヤケクソだが、勢いよく唱えたルイズは、アスタルテの唇に己の唇を重ねた。
数秒間、やけに時間が経つのが遅く感じた。
アスタルテの唇は柔らかく、甘い。
やがて、ルイズがその感触を惜しみながら唇を離した。
「まあ…、情熱的な契約…、あら?」
アスタルテは、自分の左胸に熱を感じた。
「これが…使い魔の契約なのね?」
「失礼! 確認のため、ルーンをお見せ頂けますか?」
「どうぞ。」
「っ!」
コルベールが頭を下げて見に来たので、アスタルテは、遠慮無く左胸をはだけさせて見せた。オスマンが慌てて顔を逸らしていた。
コルベールは、コホンッと咳払いし、アスタルテの左胸に焼き付いたルーンを確認した。
「これは…珍しいルーンですね。」
そう言って素早くメモしていた。
「あ、もうだいじょうぶです。」
そしてアスタルテは、ドレスを正した。
「おめでとう、ミス・ヴァリエール。コントラクトサーヴァントは成功ですよ。」
「は、はい!」
「よかったですね、ルイズさん。」
アスタルテは、微笑み、パチパチと拍手した。
「では…、これからよろしくお願いしますわ。ご主人様。」
「あ…。」
そうだった。っと、ルイズは我に返った。
高貴な姫君。それも悪魔の王女。最上級悪魔。そんな存在を使い魔としてしまったのだ。
「ミス・ヴァリエール。」
「はい。」
「コレよりのことだが…。ミス・アスタルテ殿のことは、できる限り秘密にするのじゃ。」
オスマンは、真剣な顔で言った。
「な、なぜ?」
「分からんのか? ミス・アスタルテ殿は、魔界の姫君じゃぞ。もしそのことがバレれば、アカデミーが黙っているはずがないじゃろう。」
「あ…。」
それを聞いたルイズは、青ざめた。
「あら、まあ? そのようなことをしてくる輩がいらっしゃるのかしら?」
ルイズ、オスマン、コルベールが、バッとアスタルテを見た。
アスタルテは、クスクスと口に手を置いて笑っていた。
「わたくしを自由にするような輩は、そうはおりませんわ。ご心配なく。」
「そうですか…。」
自衛については問題ないと言わんばかりに言われ、オスマンは、口元をひくつかせたのだった。
もし…下手に手を出しならば、とんでもないしっぺ返しがあるかもしれない…。朗らかに笑っているのに、そんな圧力を感じたのだった。さすが、魔界の姫君…。
こうしてゼロのルイズは、魔界の姫君、アスタルテと契約を結んだのだった。
オスマンが注意するけど、アスタルテさんは、あんまり隠さないと思う。そう書くと思う。
R-18展開は、次回ぐらいから?
ルイズとの交わりがあるかも……。