からん…っとベルディアの投げた武器が地面を転がる音が静かな部屋に響く。
誰も喋らず、剣を刺したカズマもベルディアも何も言わない。
「・・・」
やがてベルディアはゆっくりと突き刺された剣をゆっくりと掴み、カズマに問う。
「…冒険者よ、名を聞こう」
「…カズマ。冒険者、サトウカズマだ」
「…そうか」
ベルディアが手をかざすと投げられた剣が闇に溶け、再度手の中に剣が現れた。
その剣を大きく振りかぶる。
「カズマさんっ!!」
アクア達が急いで駆け寄ろうとするがカズマは避けようともせずその場に立っていた。ベルディアは振り上げた剣をカズマの横に突き刺す。
「よき…戦いだった」
「…こっちは二度とごめんだよ」
「ふっ…そう…か…」
ぱたっ、とベルディアの手が地面へと落ち。溶けるように消滅した。
カズマはゆっくりと起き上がると残ったベルディアの剣を手に取る。すると剣は変化していき黒い刀へと変わった。その刀を抜くと刃を見つめながら呟く。
「…【冥】って言うのか…お前は」
そういうとカズマはいつの間にか腰に差してあった鞘にその刀を納め。アクア達の方に振り向く。
「…帰るか!」
「…はいっ! …あれっ?」
「アクアっ!?」
アクアはそう言って扉の方を向くがふらりと体勢を崩し、駆け寄ったカズマに抱き留められた。すぐにダクネスが駆け寄り額などに手を当てる。
「怪我はないのにどうして…」
「お、恐らくマインドダウンの重症化だと思います。支援魔法やら回復魔法をあれだけ使用してもすぐに倒れないのは凄いことですが…とりあえずは休んでいれば問題ないと思います」
「そ、そうか…とりあえず俺が背負っていくよ」
「ではめぐみんは私が」
そうしてカズマ達は部屋を後にした。残した仲間に勝利を報告するために。
…なんだか…ふわふわする。
立っているのか分からない、でもなんだか…懐かしい…?
その瞬間、意識がはっきりする。
「…あれ」
視界に入るのはどこかの一室。
どこかのマンションの一室のようで部屋には生活感のある様子が見て取れる。
だがアクアは唖然としたように呟いた。
「ここ…私の部屋だ…」
記憶がなくても理解できた不思議な感覚、ここが自分の部屋だと確信が持てた。
何がどこにあるのかは全く理解できないが何故かそう、理解した。
「ん~誰か来た? ここって誰か来るの?」
しばらく立ち尽くしていると黒い髪を後ろに縛って眼鏡をかけた女性がいた。
特に特徴もなさそうな普通の成人女性、でも私には分かる。
彼女はジャージ姿で背中をぼりぼり掻きながら私の姿を見ると驚く。
「あれ? 私がいる、なんで?」
「やっぱり…私…なの?」
「んー何か繋がっちゃったのかな? まぁいいわ、転生の影響で知らないようだし説明してあげる」
彼女、恐らくアクア本体だろう彼女に話を聞くと以下のことがわかった。
・転生することにしたが私(アクア)にあこがれを持っていた
・特典として元の世界の自室に似た空間を貰った
・そしたら今度はアクアが羨ましいと思った
・互いに入れ替わりたいと思った
・そしたら何かのエラーなのか入れ替わって転生し、私の記憶は飛んでいた
「まぁこんなところね、何か質問ある?」
「えっと…入れ替わったことに関しては何もないのですか?」
「うわ、私の声で聴くと変な感じ。最初は驚いたけどここはパソコンも漫画も食べ物も好き放題出来るし最高ね! いいならずっとこうして居たいわ!」
じゃ、じゃあ…。
「この身体…私が好きに使っても…いいんですか?」
「もちろんよっ! その代わり私も好きにさせてもらうけどね!」
その瞬間、私の意識は薄れるように消えていった。
視界で驚く彼女の姿は、ちょっと面白いと思っちゃったけど。
「…んっ」
「…おっ、アクア。目が覚めたか」
「カズマさん…?」
目を覚ますとカズマさんの背中にいた。横にはダクネスさんとマナボトルを歩きながら飲んでいるめぐみんさんがいた。
ダクネスさんからマナボトルを渡してもらい、飲むと全身の気だるさが抜けていきカズマさんの背中から降りる。
周りにはボロボロのミツルギさんやオルガさんがいる。どうやら今は一階の広間に向かっているようだ。
「おっ、起きたな姫さん。体調はどうだい?」
「問題ないですよ…魔力を使いすぎただけなので」
広間に出ると骨兵士が崩れたのかプリーストに怪我を治してもらっていた。
オルガさん達が現れるとざわざわしだす。するとカズマさんの背中をオルガさんがぽんっと押した。
「行ってこい、今回の主役はお前だ」
「お、おう…」
カズマさんが前に出るとざわめきが大きくなる。カズマさんはベルディアから手に入れた刀を抜いて上に掲げて叫んだ。
「俺達の…勝ちだっ!!!!!!」
『オォオオォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!!!!!!!!!』
冒険者たちの雄たけびでこの戦いは終結した。
古城 ベルディア討伐戦
参加冒険者 238名
軽傷 131名
重傷 39名
死者 0名
「ふい~」
カズマはとある宿にいた。普段の馬小屋ではなくMVPということでカズマ達に紹介された高級宿だ。
少し前まで宴でアクセル全体で騒いでいた。報酬は流石に量が量のために遅くなるらしいが…、普段は冷静なオルガですら酔っぱらって裏路地で吐いていたぐらいだ。
ベッドに寝ころんで天井を見上げ、懐からカードを取り出す。
討伐に記載されたベルディアの文字、ベルディアから継承した【冥】。大幅に上がったレベル。
「俺…本当に…魔王の幹部倒したんだなぁ…」
実感がわかないわけではない、ただの引きこもりが異世界で魔王の幹部を倒し。あまつさえ勇者扱いだ。
ぶっちゃけ、あのアクアがいなければ俺はこうはなっていなかっただろう…。
そう思い、まだ宴の続く喧騒を聞きながら俺は寝ることにした。
………
……
…
…寝れん。
目を開ける、時間は恐らく真夜中も過ぎた頃。
…全く眠れん、いやまぁ原因は分かってるけど。
と、俺は自らの下半身に目を向ける。そこにはとても盛り上がったカズマさんのカズマさんがいた。
いや知ってるよ、命の危険を感じると種を残そうと~みたいなあれを。
死に掛けたり左腕千切れかけたり命の危険は滅茶苦茶感じたし。でもこれは怒張しすぎだろ。一向に抑えられる気はしないんだけど。
その瞬間、コンコンっと部屋のドアがノックされる。
俺はびくっと起き上がり布団で腰元を隠しながら体を起こした。
「だっ誰だ?」
「私です…カズマさん、少しいいですか?」
「あっ、アクアか…あ、開いてるぞ」
「では…」
ドアがガチャリと音をあててパジャマ姿のアクアが枕を持ってそこに立っていた。
表情はちょっと恥ずかしそうであり非常に可愛らしい。
「あの…その…今まで一緒に寝ていたせいで…なかなか寝付けなくて…その…一緒に…寝てもいいですか?」
そう言ってこてんっと首を傾げる。可愛すぎる…思わず「お、おう…」と言ってしまった。
アクアはトコトコと歩いてきてベッドの端にちょこんと座り、俺の横に寝ころんだ。
ふわりと同じ宿の風呂に入ったはずなのに滅茶苦茶いい匂いがする。カズマさんのカズマさんがさらに凄いことになった気がする。
そのまま背を向けて寝ることになったのだがもちろんの如く寝れぬ。
「カズマさん…起きてます?」
「え、あぁ…」
「今回のこと…私はふがいなく思っています。もっと私が強ければ…って」
「それは違うだろ…むしろアクアがいなきゃ何人かは死んでる…言い忘れてたけど…本当に助かったよ。アクア」
「違いますっ! むしろ助けられているのは私の方で…!」
アクアがこちらに向き、声を少し荒げるが俺もアクアの方を向き優しい声で伝える。
「だったらよ…みんな助けられてるってことでいいんじゃないか。俺も、アクアも、ダクネスも、めぐみんも…みんな、助け合ってる。それでいいんじゃないか」
「…ふふっ、そう…ですね…」
そう二人で笑う、そうだ…みんな助けあってるんだよ。俺は一人じゃ何もできないし…これからも助けてくれよ。
それで綺麗に終わればよかったのだが…。
距離が近かったのもあるがカズマさんのカズマさんがアクアの足に当たってしまったのだ。
あっとおもったのもつかの間。
「あれ、カズマさん…何か…」
「あっちょっ…」
「…」
「あの…ほら、生命の危機になると種を保存するためにみたいな…」
と布団を捲られて見られてしまった。途端に真っ赤に染まるアクアの顔…終わった。
これからどう接していけばいいんだ…と思っていたが。
次言ったセリフの俺は意識が飛んだ。
アクアは顔を極限にまで顔を赤くし、震えるような恥ずかしそうな声で言った。
「あ…あの…よ、よかったら……わ、私が…お、お手伝い…し、ましょう…か?」
はい、次ようやくRシーンです。
え、R付けているのにR話に入るまでに18話も!?
というわけでまた次も長くなりそうですけど
待ってくださるとありがたいです。