そして、ルイズのために虚無に関する古書を求めるアスタルテ。
「虚無に関する古書じゃと?」
「はい。あれば良いのですか。」
「な、なぜそのようなものを?」
翌日、アスタルテは朝早くからオスマンの元へ向かって虚無に関する書物がないかと聞いた。
「それは、秘密ですわ。」
「しかしのう…。虚無はあくまでも伝説上の属性でしかない故…、関連する書物もほとんどないと思うが?」
「つまり、長い歴史の中で、虚無と呼ばれる者はひとりも現れたことがないと?」
「約六千年前、始祖ブリミルがそうであったという伝承があるだけで、ハッキリと虚無だと断定された者はおらんかったはずじゃ。」
「まあ、六千年も…。では、これから先も現れる可能性は?」
「なにか心当たりがあるのかね?」
「もしもですわ。もしも、ルイズさんが虚無であったなら…、あなた方はどうされるのです?」
「ミス・ヴァリエールが? …それは、わしの一存では答えられん。」
「六千年…それは儚き命の人間には途方もない時間ですわ。その過程で、その始祖ブリミルなる存在の血筋が、正確な形で伝わらず、先祖返りという形で現れる可能性も無きにしろ非ずでは?」
そう言われて、オスマンは呻く。考えたこともなかったからだ。
「ルイズさんの力は…、あまりにもある方向に特化しすぎていますわ。」
「っと、言いますと?」
「強いて言うならば…、相手を殺傷する、あるいは破壊する攻撃力に特化しており、非常に難しい形をしておりますわ。貴方や、他の生徒達が、ひとつの色だとしたら、ルイズさんの色は強いて言うなら虹色。何の色かと言われてもグチャグチャすぎて言いようがないですわね。この学院では、これまでそのような特化型の生徒や教員は存在しなかったと?」
「うむ…。わしの知る限りでは、そのような特殊なメイジの体質を者はおらんかったはずじゃ。」
「と言うことは、ルイズさんが初めての例だということですか?」
「貴女の話を聞いている限りでは…。」
「六千年もの間…、前例がないというのは困りましたわね。ここは、魔法使い…メイジが学ぶ学院でしょう? どうしますの?」
「うぅむ…。」
アスタルテの言葉に、オスマンは困ったように呻く。
「では、何か方法があればお伝えください。わたくしは別の方向からルイズさんのお力を目覚めさせる方法を模索しますわ。では、失礼いたしました。」
アスタルテは、一礼して学院長室から出て行った。
「方法と言ってものう…。」
残されたオスマンは、ただただ困った。
***
「目立つのよね~。」
「なにがですの?」
「今日は虚無の日だから、町でも出ようと思ったんだけど…。」
「わたくしの姿が目立つと?」
察したアスタルテが自分の姿を見る。
上品で妖艶な姿形は、どう見ても庶民には見えないし、悪目立ちするだろう。
ふむっ…と考えたアスタルテは、ふいにこうしましょうっと呟いた。
すると、髪の毛がブワッと広がり、アスタルテの全身を包み込んだ。
ルイズが驚いている間に、グルグルと髪の毛が回転し、やがて髪の毛が晴れるように短くなる。
そして姿を現わしたのは…。
「えっ!? あ、アスタルテ!?」
「はい、ルイズさん。」
そう、赤い頭巾と可愛らしい白いエプロンと黒い衣装を纏った美少女が姿を現わしたのだった。
伸びていた髪の毛が瞬く間に足ほどまである長い二つの三つ編みに変わる。
「これならどうでしょう?」
声も少女のそれに変わっていた。
「ルイズさん?」
「…あんた…姿まで変えられるの?」
「これくらい簡単ですわ。」
「ああ…そうよね、悪魔なんだから楽勝よね…。」
「町にお出かけでしょう? わたしくも興味があったので楽しみですわ。」
少女の姿に変わったアスタルテが嬉しそうに笑った。
ルイズは、まあこの姿ならまだいいかっと納得し、少女の姿になったアスタルテを連れて外にある馬に乗り、トリスティンの城下町へ
白い石造りの町並みを、ルイズとアスタルテが歩く。
アスタルテは、キョロキョロと周りを見回す。
「ちょっと、あんまりキョロキョロしないでよ、目立つから。」
「だってぇ。」
っとアスタルテは、悪戯っぽく笑う。
そのあどけなさというか…子供っぽさは、黒い姫の姿だった時とは多少違う。見た目相応に振る舞っているだけなのだろう。
「そうですわ、ルイズさん。わたくし欲しいものがありますの。」
「なに?」
「武器ですわ。」
「えっ? あんた、あれだけ強いならいらないんじゃ…。」
「備えあれば憂い無しですわ。わたくし、以前の世界では武器をたくさん使ってましたもの。」
「そうなの? ……そうね、この辺で武器屋って言ったら…。」
ルイズは、アスタルテの頼みを聞いて悩む。
「安物で良いなら買えなくもないけどいい?」
「いいですわ。」
そしてルイズは、アスタルテと共に路地裏に入った。
入り組んだそこに入って行くと、やがて剣の形をした看板のある店を見つけた。
「あら、分かりやすいですわね。」
「じゃあ、入るわよ。」
「はい、ルイズさん。」
そして二人は入店した。
入店すると、暇そうにしていた店の主人が驚いてすぐに接客モードになる。
「奥様、貴族の奥様。うちはまっとうな商売をしてまさあ。お上に目を付けられるなんてこと、これっぽっちもありませんや。」
「客よ。武器を見せて。」
「こりゃおったまげた。貴族が剣を!」
「こっちの…子に武器を見繕ってくれればいいわ。できれば、安くね。」
「こりゃ驚いた! こんな小さい子に刃物を!」
「わたくし、こう見えても腕に自信はありますわ。」
そう言ってアスタルテは、近くに置いてあったナイフを手にしてクルクルと指で器用に回して見せた。
それを見て目を見開いた店主は、ちょっと待ってくださいっと言って店の奥に引っ込んだ。
「こちらの武器なんてどうですかい?」
「あら、これは…。」
「こいつは、かの高名なゲルマニアの…。」
「見てくれだけの武器はいりませんわ。」
「なっ!?」
「この店内の武器を見てもよろしくて?」
「えっ、あ…はい。」
アスタルテの雰囲気に飲まれた店主は汗をかきながら頷いた。
そしてアスタルテは、武器を物色しだした。
キョロキョロっと見回し、束で立て掛けられている武器の山を見つめる。
すると。
『やいやい! ジロジロ見てんじゃねぇぜ!』
「あら?」
「で、デル公黙ってろ!」
「でるこう?」
『おでれーた! こんなちっこい娘っ子が武器を! けど、さっきのナイフの扱い方といい、素人じゃねぇな!』
「これですわね。」
『こら、触んじゃねぇやい! ん?』
束の中から一振りの剣を引っ張り出したアスタルテ。その剣はさび付いており、お世辞にも見た目は良くなかった。
『おでれーた…、おめぇ…。』
「秘密ですわよ。」
『うっ…! わ、分かった。なあ、俺を買わねぇか?』
「インテリジェンスソード? 見た目悪いけど…いいの?」
「お喋りな剣もあるのですわね。あなた…、ただの剣ではありませんわね。いいですわ。あなたを買いましょう。お幾らかしら?」
「えっ…、ひゃ、百でけっこうでさぁ。」
「あら、安いわね。」
『デルフリンガーってんだ。よろしくな。』
「デルフリンガー…、デルフって呼んでも?」
『ああ、いいぜ。あんた、名前は?』
「アスタルテですわ。」
そうしてアスタルテは、デルフリンガーを手に入れたのだった。
夕方に学院に帰ってきたのだが、アスタルテは、ふと学院の塔を見た。
「どうしたの?」
「…今、あそこに人が…。」
「どこ?」
「もう、いませんわ。」
アスタルテは、そういうと視線を戻した。
そろそろエロ書きたいが、タイミングがね……。
それとも猫にされたギーシュを使うか…。
デルフは、アスタルテが人間じゃないってのを感じ、なおかつリーヴスラシルのルーンに気づきましたが、アスタルテは、まだ自分に刻まれたルーンを知りません。
次回は、土くれのフーケかも。