そして箱の中身は……、東京赤ずきんに登場した登場人物です。
当然だが、盗難事件の片棒を担いでしまったアスタルテとルイズは、すぐに学院長室に連行された。
そして何をしていたのか事情を説明。さすがに魔法の出力を上げるためにエッチなことをしたことは伏せた。
「つまり、狙いを誤って本塔にミス・ヴァリエールの魔法が命中してしまったと?」
「簡単に言えばそうですわね。」
アスタルテの隣にいるルイズは、もう気が気じゃない。
自分のせいで学院の宝物が盗まれた上に、自分の醜態までさらされかねない今の状況に。
「しかし、なぜこんなやぶ遅くに?」
「特訓ですわ。」
「なるほど、ミス・ヴァリエールの魔法の講師をしていたわけじゃな。」
「そうですわ。」
「ふむ…。」
「オールド・オスマン! これは重大な罰を与えるほどの案件ですぞ!」
そうだそうだと集まっていた教師達が声を上げる。
ルイズがビクッと震え上がるので、アスタルテが安心させるように手を握った。
「鎮まれ! 今日の当直はどうした?」
「み、ミス・シュヴルーズが…。」
「あ、あの…。」
「サボっておったな?」
ずばり言われ、シュヴルーズは恐縮した。
「じゅ、授業の資料を…。」
「言い訳など必要ない! そして今ココでミス・ヴァリエールと、アスタルテ殿を責めたとて盗まれたもんは戻ってこんのじゃ!」
オスマンの怒声に教師達は恐縮した。
「これより、土くれのフーケの捕縛の任を掲げる! 我がと言う者は杖を上げよ!」
しかし誰も上げない。
「どうした! 先ほどまでの威勢はどうした! それでもこのトリスティン王国魔法学院の教師か!」
「では、わたくしが参りましょう。」
「ミス・アスタルテ!?」
アスタルテが挙手した。
「今回の盗賊の輩の侵入を許してしまったのは、わたくしの不始末ですわ。ですから、わたくしが尻拭いをしましょう。」
「ふん…。最初からそうすれば…。」
ギトーがそう言って嘲笑しかけたが、怖じ気付いているお前が言うなと、ギロリッとオスマンに睨まれ萎縮した。
「では、私も! ミス・アスタルテ殿はこの学院の客人です! そのような御身を危険にさらすわけにはいきません!」
するとコルベールが杖を掲げた。
「まあ、お気を使っていただいてありがとうございます。」
「なら…私も行くわ!」
「ミス・ヴァリエール! 君は生徒じゃないか!」
「いいえ! 今回の損害をもたらしたのは私の魔法です! ですから私が行かなくてはなりません!」
「ふむ…。では、コルベール君、そして、ミス・ヴァリエール、ミス・アスタルテ殿も、全力で当たってくれるか?」
「杖にかけて!」
ルイズがそう高々と叫んだ。
そこへ、オスマンの秘書である、ロングビルが駆けつけ、フーケらしき人物が近くにいるという目撃情報を得たという報告をした。
そして、フーケに逃げられる前に急ごうと言うことで、案内役としてロングビルも入れて、出発することになった。
***
森の中にうち捨てられた小屋に、フーケがいるということで、様子を見る。
「私が行こう。」
そう言ってコルベールが抜き足差し足で小屋に潜入。
そして数分ほどして…、コルベールが出てきて手を振った。
茂みから出てきたアスタルテとルイズが小屋に入ると、そこには、強固な魔法の鎖つきの鍵で雁字搦めになっている、大人の両手サイズぐらいで持ち上げられるような黒い箱があった。箱の表面の模様からしても、箱自体も鍵同様に強固な魔法が仕込まれていることが窺える。
「これが?」
「これが宝物庫から盗まれた破壊の箱で間違いないだろう。」
「これが?」
ルイズが不思議そうに箱を見つめた。
「何が入ってるんですか?」
「残念だが、私は名前は聞いていても中身までは知らないんだ。」
「これは…。」
アスタルテが徐に箱を手にして、ジロジロと観察した。
「何か…入ってますわね。」
「分かるのですか?」
「……この…魔力…まさか…。」
アスタルテの表情が変わった。
その時、地響きが轟いた。
「フーケか! 不味い、逃げなくては!」
「アスタルテ!」
「っ…。」
アスタルテは、大事そうに箱を小脇に抱え、小屋の外へ出た。
外でみたのは、巨大な土のゴーレムだった。
「私が隙を作る! 君達はその隙に!」
「いいえ! ここで逃げては貴族ではありません!」
「ミス・ヴァリエール! 何を言ってるんだ! 逃げるんだ!」
「ルイズさん。落ち着いて。」
「これが落ち着いてられ…。」
「いいえ。落ち着いて、相手をよく見て、集中してくださいと言いたいのですわ。」
「アスタルテ殿!? まさか!」
「わたくし達に喧嘩を売ったこと、後悔させますわ。そうでしょう? 土くれのフーケさん。」
「えっ?」
アスタルテの髪の毛が動き、ある方向へ伸びた。ゴーレムとは反対の方向へ。
「チッ!」
するとロングビルが舌打ちをして飛び出してきた。杖で魔法を放ち、アスタルテの髪の毛を切り裂きながら。
「ま、まさか…そんなことが…。」
「……どうして分かったんだい?」
ロングビル…、否、フーケが顔を歪めて尋ねてきた。
「ゴーレムとは、いわば…操り人形。これだけのゴーレムを操るには相応の力の糸が必要ですわ。それを辿ったに過ぎませんわ。」
「チッ! さすが悪魔だね!」
フーケが魔法で飛翔し、ゴーレムの肩に乗った。
土のゴーレムが拳を振り上げた。
コルベールが炎の魔法を放ち、その拳を焼く。しかし拳は止まらない。
アスタルテがスッと片手を迫り来るゴーレムの拳に向けた。
すると、触れた先からゴーレムの攻撃が止まった。
「なっ!?」
フーケもコルベールも、ルイズも驚愕した。
アスタルテは、貧弱ではないが、ハッキリ言ってこんな巨大な土のゴーレムの拳を片手で止めるような見た目をしていない。
「わたくしが悪魔だということをお忘れなく。」
「馬鹿な!? う、動け、動けぇ!」
フーケが必死にゴーレムを動かそうとする。しかし土のゴーレムは、動かない。
すると、フッと急にアスタルテが消え、同時に止まっていたゴーレムが動き出してゴーレムの拳が地面に命中した。
「アスタルテ!」
ルイズが悲鳴を上げる。やがてゴーレムの拳が持ち上がるが、そこには何もなかった。アスタルテは、まるで霞のように消えていた。
「どこに行きやがった!?」
「ここですわ。」
「!?」
すると背後からフーケの豊かなバストを両手で掴むアスタルテが現れた。
「触るな!」
「良い胸をお持ちのようですわね。」
裏拳をかまそうとしたフーケだったが、それは空振りに終わり、その横にアスタルテが立つ。
「隙だらけですわよ?」
するとアスタルテの髪の毛が蠢き、フーケの杖を握る手を絡め取った。
「離しやがれ!」
「ルイズさん。」
「は、はひぃ!?」
「錬金を。」
「なんで!?」
「このゴーレムを粉砕してごらんなさい。今の貴女ならば、苦も無いことですわ。」
「で、でも…。」
「思い出しなさい。教室をあれだけ破壊した威力を。あれをこのゴーレムにやってしまいなさい。」
アスタルテがそう指示する。
ルイズは、ギュッと自分の杖を握りしめた。
自分にそんなことが出来るのかと。こんな大きなゴーレムを一撃で?
そんなことが出来るのかとルイズは自問自答したが、不思議な自信が湧き上がってきていた。
フー、ハー…っと、息を吸って吐き、ルイズは、意を決して杖の先をゴーレムに向けた。
「錬金!」
唱えた瞬間、土のゴーレムが大爆発した。
粉々に粉砕され、あまりの爆風にルイズもコルベールも、そして肩に乗っていたフーケもアスタルテも吹っ飛んだ。
アスタルテは、空中で髪の毛を使って気絶したフーケをたぐり寄せつつ、抱えて地面に着地した。
「ルイズさん!」
「うぅ…。」
倒れているルイズが呻きながら起き上がった。
コルベールは、木に叩き付けられて気絶していた。
「できたじゃないですか!」
「…私が? やったの?」
「そうですわ! 本当に素晴らしいお力ですわよ!」
「私…。」
あの巨大な土のゴーレムを一撃で破壊したのだ。ルイズは、信じられず自分の手が震えているの感じた。
その後、コルベールを起こし、気絶しているフーケを縛って、学院に帰ったのだった。
馬車の中で、ぼう然としているルイズと、そんなルイズを見つめてアスタルテはニコニコしていた。
そして学院に帰ると、オスマン達が出迎えてくれ、フーケはすぐに魔法の封印がされている牢屋に入れられた。
あと、ロングビルという偽名で学院に侵入していた件については…、オスマンが美人だったから…っという理由で雇っていたことが明らかになり、周りから冷たい目を向けられたのだった。
「分かったでしょう? ルイズさん。」
「なにがよ…。」
「わたくしとの性交で、力が高まったのですわ。」
「うそ…。」
「自信があったのでしょう? あのゴーレムを一撃のもとに破壊できると。」
「う…。」
「では、これからも交わりましょうね。ルイズさん。」
「えっ? いやああああああああ!」
一旦部屋に帰ったルイズとアスタルテだが、帰って即押し倒され、ルイズは悲鳴を上げたのだった。
***
翌朝、アスタルテは、また早朝からオスマンの元へ向かった。
「此度は何用かね?」
「箱についてですわ。」
「破壊の…箱か。」
「そうですわ。単刀直入に言いますわ。あの中には…、悪魔が入っていますわね?」
ハッキリと言ったアスタルテの言葉に、オスマンは目を見開くが、やがて落ち着き、長い息を吐いた。
「そうじゃと言ったら?」
「箱の入手の経緯を知りたいのですわ。」
「分かった…。あれは…、三十年前…。」
オスマンが語り出した。
約三十年前。オスマンは森を散策していた際にワイバーンに襲われ命の危機に瀕した。
だがその時、人の姿をした一人の悪魔の助けを得て、隙を見て魔法でワイバーンを仕留めたのだ。
しかし、その悪魔は酷い怪我を負っており、命の危機に瀕していた。
学院まで運んだが普通の魔法では完全に癒やすことができず、そこでせめて命を取り留めさせようと当時の新型の魔法の封印の箱を用い、悪魔自身を箱の中に封印した。
そして万が一箱が開いて死ぬようなことがあってはならないと、動じにあった封印の鎖つきの鍵を使い箱をほぼ永久的に封印したのだ。
「これが…、箱がこの学院にある経緯じゃ。わしは、恩人を救う手立てができるまで宝物庫に破壊の箱として収めていたのだ。もしや…その悪魔に心当たりがおありなのかね?」
「ええ…。おそらくは…。あの魔力の感じですと…わたくしのかつての従者だった者である可能性が…。」
「それは、運命かも知れませぬな…。では、貴女ならば、彼を救うことが?」
「できるでしょうね。」
「では、箱を持って参ります。鍵は破壊しなければなりませんが、貴女ならば…。」
「なんですって?」
「?」
「それは困りましたわ…。」
「どうしたのです?」
「箱を触った時に感じた状態では…、わたくしの力を持って鍵を破壊してしまっては余波で彼が死んでしまう。それはできませんわ。」
「なんと!」
「鍵を破壊できるだけの、魔の力を持たない強大な力が必要ですわ。何か工具のようなものは?」
「すまぬ…。」
「なんてこと…。」
アスタルテは、両手で顔を覆って俯いた。
箱の中身…、そこに入っているのは、最後まで彼女についてきてくれた、忠実な部下であった悪魔、アスベエルだった。
なぜか来ていたアスベエル。
そして死にかけていて魔法の箱に封印状態。
けど鍵は、アスタルテでは壊したら中にいるアスベエルが死んでしまう状態だった。
なのでこの鍵は、ガンダールヴのような身体能力のみを強化しつつ、元々が強い物理攻撃力を持つ者ではないと破壊できない。じゃないと、中にいるアスベエルが死んじゃう。
なので、アスベエルの登場はだいぶ先になると思います。