朝起きたら、アスタルテが椅子に座って落ち込んでいた。
思わず何があったんだと聞いたが、何も答えてくれなかった。
一体何が?っと思ったが、答えてくれないので分からない。
『おい、ピンクの娘っ子。』
「私はそんな名前じゃないわ。」
『娘っ子は、娘っ子だぜ。まあ、そんなこたぁ別にいい。アイツの事情を知りたいんだろ?』
「知ってるの?」
『まあな。』
「デルフ。」
すると、アスタルテが立ち上がり、壁に立て掛けていたデルフリンガーを手にしてルイズから離した。
「無い口を慎まないと…、お仕置きをしますわよ?」
『そ、それは勘弁願いたいなぁ…。』
「ねえ、本当になにがあったの?」
「…それは、秘密ですわ。」
「なによ、急に。しおらしくなって…。」
「……。」
「今度はだんまり!? ホント何があったのよ!」
っと、ルイズがどれだけ言ってもアスタルテは答えなかった。
その夜。
フリッグの舞踏会があったのだが、ルイズは、ドレスで美しく着飾ったもののアスタルテのことで頭がいっぱいだった。
アスタルテを探すと、舞踏会会場となってる屋上のベランダで月を眺めていた。
「アスタルテ。」
しかし反応がない。
「アスタルテ?」
もう一度呼んだが意味が無かった。
「アスタルテ!」
「っ…、あ、ルイズさん?」
肩を掴んで呼んで、やっとアスタルテがルイズに気づいた。
「どうしましたの?」
「それは、こっちの台詞よ! さっきから呼んでたのに気がつかないで…。」
「まあ…そうでしたの? ごめんなさい。」
「ところで、こんなところで何してたの?」
「月を…眺めてましたわ。この世界の月は、二つなのですわね?」
「当たり前でしょ?」
「わたくしの世界の月は、ひとつだけですわ。」
「そう…。」
「なにか御用で?」
「えっ…、えっと…。」
「なにもないでしたら…。」
「あっ…、わ、私と踊りなさい!」
慌てたルイズが咄嗟にそう言っていた。
「ですが、あなたと踊りたい方は他にも…。」
「い、いいの。それとも、私とだなんてイヤなわけ?」
「いえ…、そんなことは…。分かりましたわ。」
「じゃ、じゃあ、行きましょう。」
アスタルテがニコッと笑い、ルイズの手を取った。
ルイズの白いドレスと、アスタルテの漆黒のドレスが対比となる。
二人は簡単なダンスを踊る。
さすが魔界の姫君だけあり、そして10万歳という長い年月を生きているだけあり、相手が自分より小柄である少女を相手にしても優雅に踊る相手として務めてみせる。
周りの目が釘付けだ。アスタルテに。
まあ、それはルイズも承知のうえだ。自分とアスタルテが並んだら自分が霞んでしまうことぐらい。
「ふう…、喉が乾きましたわね。」
「ワインでも飲めば?」
「一緒に飲みましょう。」
「ん…。」
踊るのをやめた二人は、料理とワインが置かれたテーブルに向かった。
シエスタが二人にグラスに注いだワインを渡す。
ワインで喉を潤したアスタルテは、ふう…っと息を吐いた。
「ねえ、アスタルテ…。」
「……詳しいことは、この場ではなく、お部屋でしましょう。」
「えっ?」
まさか語ってくれる気になるとは思わず、ルイズは素っ頓狂な声を漏らした。
その後、二人は、舞踏会の場から離れ、ルイズの部屋に戻った。
「破壊の箱…、覚えていますか?」
「ええ…。あれがどうしたの?」
「アレには…、わたくしの従者が封じ込められていますわ。……瀕死の状態で。」
「えっ?」
彼女の従者ということは、つまり悪魔ということだ。あの箱の中には悪魔が封じ込められてるということだ。
「わたくしなら彼を救うことが叶う…。けれど、今のままではそれは叶わない…。」
「どうして?」
「封印のせいですわ。あの箱の鍵は、強力な物理攻撃力がなければ破壊することはできない。そして、中にいるわたくしの従者の状態では、魔力のある攻撃では封印もろとも死んでしまう…。」
ルイズは、納得した。
アスタルテの今朝からの様子もそうだが、相当な信頼を置いている従者だったのだろう。救いたいのに救うことができないから、あんな愁いを帯びた表情と態度をしていたのだ。
「…強力な物理攻撃力って…、どれくらいの?」
「少なくとも、わたくしと戦えるだけの……。そうですわね…“彼女”ほどなら…。」
「かのじょ?」
「わたくしの…友人ですわ。とてもお強かったのですよ?」
アスタルテは、そう言いつつ、思い出す。
ヴィヴィアン。
四つの腕を持つ、造魔。
彼女ほどの力ならばあるいは…っと。
「そうだったの…。」
ルイズの声で、アスタルテは、思考を戻した。
「よっぽど大切な従者だったのね?」
「ええ…、彼は最後までわたくしに尽くしてくれた…。」
「……アスタルテ…。」
「なんですか?」
「私は…、できたらあんたの過去なんて詮索する気はないけど……、使い魔のことは知っておきたいの。だって、そうでしょ? 私が主人なんだから。」
「まずは、その巨大な力を制御できるようなることですわね。」
「んなっ!?」
コロッと態度を変えてニコッと笑ったアスタルテに、ルイズは顔を歪めた。
「知るということは、力を手に入れることと同じなのですわ。力が欲しければ……、強くなることですわね。ましてや、悪魔なのですわよ? わたくしは。」
「うぅ…。」
「そのためにも…。」
「あっ!」
ルイズは、アスタルテにベッドに押し倒された。
「さあ、今夜も励みましょうね。ルイズさん。」
「い…いやあああああああああああああ!!」
アスタルテの気分が沈んでいた分、反動でか知らないが、その夜は、いつも以上に熱烈にあんなこと、こんなこと…されたのだった。(※まだ処女は失ってない)
ルイズは、情事の後、くうくうと眠っているアスタルテに抱きしめられた状態で、下手に心配したことを激しく後悔したのだった……。
原作の、タルブ戦までを目安にしたいと思ってます。
しかし、エロが書けない……。