シモな挑発は、アスタルテ、好きなのかな? 原作見てると……。
「どうして…、あんなこと言ったのよ…?」
「なにが?」
教室の片付けを言い渡され、二人で片付けながら会話をした。
「私の失敗魔法が…す、素晴らしいだなんて…。」
「本当のことですわ。」
「うそ! あんな魔法見たことない!」
「では、ルイズさんが特別なのですわ。」
「っ…。」
アスタルテは、微笑み真面目に答える。ルイズは、思わず言葉を詰まらせる。
「見たことが無いというのは、決して悪い言葉ではありませんわ。何事も発見から始まるのですわよ? あなた方が使う魔法も…、初めはきっと、とても変な力だと思われたでしょうね。」
「そんな話聞いたこと…。」
「歴史とはそういうものですわ。わたくし、10万年と11歳は生きてますが、歴史の正しき伝えなど、命儚い人間の一生では無理ですわよ?」
「じゅ…っ!?」
10万年と聞いてルイズは、目を見開いてアスタルテを見た。
そりゃ、人間なんぞ霞に等しいだろう。六千年の歴史あるハルケギニアも霞むレベルの長寿だ。
「ですから、もしかしたら、ルイズさんは、歴史に名を残す方になるかもしれませんわよ?」
「そ、そんなこと…。」
「その当時いた方というのは、自分が歴史に名を刻まれるなんてつゆほどにも思わなかったと思いますわ。天才と馬鹿は紙一重と言いますし、発見をした学者は、ほぼ必ず変人扱いをされるものだと思いますの。」
「うーん…。」
言われてみれば、コルベールなど…、だいぶ変な発明をしているではないか。ああいうのも後々歴史に刻まれるのだろうか?
「戦場の英雄だって、蓋を開ければただの人殺しに過ぎませんし、周りの見方で、歴史など一転二転するものですわ。決して諦めず、努力を怠らず、そうすれば、そのうち、貴女の力は当たり前になるかも知れませんし、花の咲く時期に諦めてはなりませんわよ?」
「わ、分かってるわよ。」
「じゃあ、さっさと片付けを終えて、ご飯を食べに来ましょう。」
「ええ…。」
掃除を再開し、なんとか終えた後、少し遅くなった昼食を食べに行った。
ルイズの身体は汚れてしまった。アスタルテも病的に白い肌がすすで汚れている。
「ねえ、ご飯食べに行くのも良いけど、汚れ落としてからにしない?」
「では、シエスタに昼食を運んでもらいませんか?」
「…そうね。」
「シエスタ。」
「はい。」
「昼食をバスケットにでも詰めて、持ってきてくださいな。わたくし達は、水浴びでもしますので。」
「はい。承知しました。」
一礼をして、シエスタは、食堂の方に向かって行った。
「まあ…、わたくしは必要ないのですけどね。」
すると、アスタルテは、パチンッと指を鳴らした。途端、身体の汚れがすべて消えた。
「あ、ずるい!」
「ルイズさん。背中を流して差し上げますわ。」
「い、いい!」
「そう言わずに…。」
アスタルテがずいずいっと近寄ってくるので、ルイズは、壁に追い詰められた。
「うふふふふ…。」
「あ、ああ、あああああ…!?」
そして、ルイズは、井戸の方に連れて行かれ、隅々まで洗われたのだった。
昼食後、その後の午後の授業で、グタッとなったルイズは、教師に叱られるなど散々となる。
ルイズは、内心でアスタルテを恨んだが。
アスタルテの真の恐ろしさを目の当たりにすることになるのは、その翌日のことである。
***
翌日の、昼のことだった。
「…あら?」
食堂で、アスタルテは、ふと床に、何か小さな小瓶が落ちているのを見つけたので拾った。
「綺麗な色…、この香りは、香水かしら?」
「その色は、モンモランシーの香水ね。」
「まあ、その方の? ……視線を感じますわね。」
アスタルテは、視線を周りに巡らせ、一人の金髪の少年に目を付けた。
少年は、アスタルテの視線を受けると慌てて顔をそらしていた。
アスタルテが、少年に近づく。
「これ…、貴方のモノ?」
「ぁ、あの…、ち、ちが…。」
「では、なぜ顔をそらしたのです?」
「それは…。」
少年は、たまらず周りにいる友人達に助けを求めるように視線を向ける。だが友人達は目をそらした。
「あ、あの…。」
「あら? 貴女は?」
「わたしくしは、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシっと、申します! その香水は、わたくしが調合したモノです!」
「まあ? では、貴女のモノだったかしら?」
「いいえ…、そちらにいる殿方に……。」
「まあ! ということは、あなた方は想い想われ人?」
「は…はい…。」
モンモランシーは、ポッと頬を染めた。逆に金髪の少年の方は青ざめていた。
「ギーシュ様…。」
「! ち、違うんだ、ケティ!」
「やはり、モンモランシ様と…。」
「ギーシュ様?」
明るい茶色の髪の毛の少女がやってきてギーシュと呼ばれたその少年を睨んでいた。
ただならぬ雰囲気にモンモランシーが顔色を変えた。
次の瞬間、ケティにギーシュはビンタされた。そしてケティは、涙目で走り去っていった。
場がシーンとなる。
だがモンモランシーが動いた。
「ギーシュ…。」
「も、モンモランシー…、こ、これは違うんだ…。彼女とはラ・ロシエールまで遠乗りしただけで…。」
「嘘つき!」
今度は近場にあったワイングラスの中身をぶちまけられ、ギーシュは頭からビショビショになった。
そして涙を散らしながらモンモランシーは、走り去ってしまった。
「……まあ、浮気だなんて…。」
シーンとなった場に、アスタルテの呆れた声が響いた。
「自業自得ね。」
「なんだと!」
ルイズがアスタルテに同意して、ため息交じりに言うと、我に返ったギーシュが席を立って怒鳴った。
「本当のことじゃない。最低ね。あの香水の色って、モンモランシーが特別に作るやつだったじゃない。それなのに…。」
「う、うるさい!」
「ほんと、サイテー。」
「っ!」
すると血管を浮かせたギーシュが、バラのように細工された杖を取り出し、ルイズに向けた。
「なんのつもり!?」
「ゼロの分際で僕を馬鹿にしやがって! 許さん!」
「呆れた殿方ですわね。」
「あっ…。」
すると、アスタルテがギーシュとルイズの間に立った。
「ど、どいてもらえますかね…? 僕は彼女に…。」
「何をするおつりもりで? もしや、私怨による決闘でも?」
「えっと…。」
「ルイズさんは、わたくしのご主人様ですわよ? もし傷つけるような真似をするのならば…、相応の覚悟はおありで?」
「! ほ、本当に、使い魔になってるのか…。」
「ええ。そうですわ。ここに印を。」
アスタルテが、左胸の使い魔の印を見せた。
胸の一部をさらけ出され、ギーシュは、思わず鼻血を出しかけたがこらえた。
アスタルテは、ドレスをただし、ギーシュを見つめた。
「……貴方“ごとき”…が…ねぇ…。」
「えっ?」
ギーシュは、耳を疑ったが、次に吐き出されたアスタルテの言葉に硬直することになる。
「貴方…、童貞ですわね? まだ女の身を味わったことが無いのでしょう?」
「はあ!?」
笑い顔で、いきなり言われ、図星だったギーシュはたまらず声を上げた。
「さぞやベットの上で、まだ皮もむけていない男根を、懸命にこすり上げて、二人の娘達がご自身を取り合う様を想像して達したのでしょう?」
「そ、そんな、僕は、そんな、ち、ちが…。」
シュッシュッと何かを握って擦る動作をしてみせるアスタルテに、ギーシュは、真っ赤になって否定しようとする。
「貴方ごときを取り合う娘達。なんと哀れでしょう…。この程度の殿方のため、純血を捧げるなど…、不幸としかいいようがないですわ。」
「ぼ、ぼぼぼぼ僕は! 誠実に…女性を…!」
「では、貴方にとっての誠実とは…、花の咲く時期の娘達を戯れに弄ぶことだと?」
「ち、ちが…。」
「なぜ動揺しているので? ああ、さては、複数の女性に戯れに情愛を囁き、貴方を求め、争う様を見て達する方なのですか? なんと…、加虐的な! 経験も無いのになんと!」
「うぅう…!」
「…………………サイテー…。」
誰かがそう言った。
ギーシュは、ハッとした。
周りを見ると、自分に向けられる、冷たい目、目、目!
ギーシュの顔から血の気が失せて倒れそうになる。
「うぅ…ああ…ああああああああああああああ!」
「あら?」
次の瞬間、ギーシュが杖を振り、錬金でこしらえた石の礫をアスタルテに飛ばしていた。
アスタルテは、首を横に傾げるようにして避けた。頬を僅かにかすめ、薄く切れた頬から血が垂れた。
場の空気がいっきに緊迫した。
「ぎ、ギーシュ! なんてことを!」
「離せ!」
慌てて止めに入った友人を張り倒し、ギーシュは、更に魔法を使おうとアスタルテに杖を向ける。
「お待ちなさい。」
「今更命乞いか! 娼婦め!」
「おい、ギーシュ!?」
「先ほどから、下品な言動といい、その身の色香といい…、姫君の皮を被った高級娼婦だろう、貴様!」
「あら? そう思いますか?」
娼婦と言われ、アスタルテは、コテッと首を傾げて微笑む。
「ですが…、一応元とはいえ、国を治める姫だったのは事実ですわ。」
「もと…だろ? 亡国の姫君になんて価値なんて…。」
「先ほど攻撃…、貴方はわたくしに決闘を申し込むとみてよろしいかしら?」
「当たり前だ! 僕を散々貶しやがって! 許さないぞ!」
「ギーシュ…。」
怒りに燃えるギーシュに、ギーシュの友人達はたじろく。
「うふふふふ…。では、その決闘、お受けいたしますわ。」
「ちょっ…!?」
今度はルイズが驚く番だ。
公にはしていないが、アスタルテは、最上級悪魔だ。どれほどの力を秘めているか分からないし、こんな真っ昼間に力を発揮できるのかどうかも分からない。
「よかろう! ヴェリストリの広場で決闘だ!」
「分かりましたわ。では、案内を。」
「アスタルテ!」
「ルイズさん、行って参りますわ。」
そう言って微笑みを浮かべたアスタルテは、ギーシュと共に食堂を出て行ってしまった。
ルイズは、青ざめる。
勝てるわけがない! ギーシュが!
ルイズは、大慌てで後を追った。
***
ヴェリストリの広場には、ギーシュとアスタルテのトラブルを聞きつけて野次馬がすでに集まっていた。
中央には、スカートの上で手を重ねて佇むアスタルテと、数メートル離れた位置で怒り心頭な顔でアスタルテを睨んでいるギーシュがいた。
あまりにも無謀になアスタルテの様に、野次馬達はざわついていた。
「覚悟は…できてるだろうな!?」
「ええ。いつでもいらして。」
「杖は?」
「必要ありませんわ。」
「僕を…馬鹿にして!!」
ギーシュが整った顔を歪め、杖を振ってワルキューレを錬金した。
「まあ…。お見事ですわね。」
「命乞いしても遅いからな!」
「ひとつ確認を。」
「なんだ?」
「この決闘…、いかなる形で勝敗を?」
そう聞かれ、ギーシュは、目を見開いた。だがすぐにフッと笑い。
「戦闘不能なるまでさ!」
「では、いかなる形でも良いと? 例えば命を奪っても…。」
「そうだ!」
「例えば……、貴方が人の形すら失っても…?」
「なに?」
「分かりましたわ。」
アスタルテは、確認を取り終えると、それ以上言わなくなった。
ギーシュは、それを決闘の開始だと取り、ワルキューレをアスタルテに差し向けた。
ギーシュは、殺す気はなかった。
ただ骨の一本や二本…折ってやり、命乞いをしたらそれで終わらせるぐらいですませるつもりだった。
ギーシュは、女性には誠実であろうと心がけていたのは確かだ。だが若さ故に間違いを起こしただけだ。
その間違いが……、水面に出来た波紋のように広がり最悪な形で自分の身に災いとなって降りかかるんだとひとつも考えることなく。
ワルキューレが振りかぶった拳が、アスタルテに当たろうとした直後。
パキィィンっと、音が鳴った。
その音の後、ワルキューレが輪切りになって崩れ落ちた。
「なっ!?」
何が起こったのか誰にも分からない。
だが、現実、青銅で出来たワルキューレが輪切りになって壊れた。
「脆いですわね。精巧に出来すぎているからかしら?」
「なにをした!?」
「あら? 見えなかったのかしら?」
「この…、っ? ーーーっ!?」
一歩踏み出そうとした足が何かに縫い付けられたように動かず、足を見てギーシュは、ギョッとした。
地面から生えているのは、細い黒い糸……否、毛だった。
アスタルテの髪の毛の一部が地面に伸びて、地面の下を潜り、ギーシュの足を絡め取っていたのだ。
「なっ…か、髪の毛!? どういうことなんだ!?」
「見たままですわ。あなた方が杖を触媒とするように、わたくしは、自身の髪の毛を触媒として力を行使するのですわ。」
「先住魔法か!?」
「いいえ。違いますわ。これは…、わたくしが、生まれ持ってた力ですわ。」
「う、うわあああ!」
ボコッと地面に埋まっていた髪の毛が出てきて、ギーシュは、髪の毛の力だけで持ち上げられ逆さまにされた。
髪の毛全部で吊るされているではない。前髪の、前左側だけの毛の量だ。
アスタルテが、ギーシュを宙に吊るしたまま近づく。
「お、降ろせ!」
「怒るのはいいですが、相手とご自身の実力の差を見極められる目を持つことですわよ。」
「ひっ!」
逆さまにされているギーシュの顔をのぞき込むようにアスタルテが顔を近づけた。
「さて…、どうしましょうか?」
「待って!」
「あら?」
すると、人混みをかき分け、モンモランシーが駆けてきた。
「お願いします! ギーシュを離してあげてください!」
「まあ…? この男は、貴女を傷つけたのに?」
「それは確かにそうですが…、どうか! ご慈悲を!」
「も、モンモランシー…。」
「…まあ。なんと純粋な…。」
アスタルテが大げさに驚いてみせる。
そしてギーシュを見る。
「このように貴方をお想いになられている乙女を傷つけて…。なんと酷い殿方でしょう…。ますます、許せませんわ。」
「お願い、アスタルテ! 殺しちゃダメ!」
ルイズが人混みをかき分けてそう叫んだ。
「殺したりしませんわ。……ですが、罰は必要ですわ。モンモランシーさん。」
「は、はい!」
「この男への愛…、わたくしに示せば、助けて差し上げますわ。」
「えっ?」
アスタルテがモンモランシーの手を掴んで引っ張った。
その瞬間、ブワッとアスタルテの髪の毛が翼のように広がり、ギーシュ、モンモランシー、そしてアスタルテ自身を包み込んだ。
モンモランシーを交えた、エッチは、次回かな。