平成最後に投稿したかったけど、ネタがね……。
というわけで、令和最初の投稿。
アスタルテさん、この世界(ハルケギニア)が、自分が元いた世界と違うことを理解する。
オスマンの学院長室を退室した後、ルイズは、アスタルテに手を引かれたまま歩かされていた。
しかし、やがて…。
ルイズは、パシンッとアスタルテの手を払った。
「ルイズさん?」
「なんてことしてくれたのよ!」
ルイズが泣きそうな顔でアスタルテを睨んだ。
「ギーシュを元に戻して!」
「イヤですわ。」
「どうして!?」
「罰を与えるためですわ。」
「あなたは、自分が裁判官にでもなったつもり!?」
「ですが、誰かが罰を与えなければなりませんわ。それがたまたま、わたくしだっというだけの話ですわ。」
「…確認するわ。あなたは…、私のなに?」
「ルイズさんの使い魔ですわ。」
「じゃあ、主人として命令するわ。ギーシュの呪いを解いて。」
「まずは、わたくしを制御できるほどの力を身につけてから命令すべきですわよ?」
「くっ!」
「それに、ルイズさんのお力ならばギーシュの呪いも解くこと可能でしょう。」
「私が?」
「あくまでもそれは、貴女が力を制御できるようなればの話ですが。」
「ぅぐ…。」
あくまでアスタルテは、自分の意思ではギーシュの呪いを解かないと言っているのだ。
そして、ギーシュを一瞬のうちに(※実際はアスタルテが創り出した空間内で結構あれこれやってた)猫に変えるほどの力を持つ悪魔であるアスタルテが、ルイズならギーシュの呪いを解けると言っている。
自分にそこまでの力があるという自覚自体がないルイズは、だくっと汗をかいた。
「けれど、それは…、わたくしとの交わりを経て、より強い力を得れば早期に事を解決できましょう。」
「い…いやよ!」
「では、ギーシュ君はあのままですわね。」
どうあってもアスタルテは、ギーシュを元に戻す気はないらしい。
ルイズは、自問自答する。どうすれば、アスタルテを制御できるか、そしてギーシュを元に戻して貰えるかを。
しかし、相手は最上級悪魔。並のメイジでは制御などできようはずがない。
アスタルテは、そんなルイズを見てニコニコしている。
ルイズは、俯いて唇を噛み、拳を握りしめた。
今すぐに殴りたい衝動はあるが、殴ったとて事態が好転するわけもないのは頭では分かっているからだ。
ルイズは、落ち着こうと深呼吸し、アスタルテの横を通り過ぎて自室へ向かおうとした。その後ろをアスタルテがついてくる。離れすぎず、近すぎず絶妙な距離を保ってついてくる。
言うことを聞かないくせに、っと、ルイズは心の中で悪態を吐く。あくまでもアスタルテが自分の意志でルイズの使い魔として存在してもいいとは思っていても、最上級悪魔としてルイズが自分を使いこなせるかどうかは別問題としているらしい。そういう性根が悪いところは、さすが悪魔といったところか……。
しかしっと、ルイズは立ち止まる。
「アスタルテ…。」
「なにかしら?」
「……悪魔なら…、魔法の使い方くらい知ってるわよね?」
「そうですわね…。でも、この世界の魔法の原理は知らないわ。」
「どういうこと?」
アスタルテの方に振り返ると、アスタルテは、頬に手を置いて少し困った顔をしていた。
「お部屋に戻ってからお話ししますわ。」
「えっ、ええ…。」
そして二人はルイズの部屋に帰った。
ルイズは、勉強机の椅子に座り、アスタルテはベットに腰掛けた。
「では、お話ししますわ。この世界…、ハルケギニアといいましたわよね?」
「そうよ? それがどうしたの?」
「……わたくしが元いた世界は、地球という場所でしたの。」
「ちきゅう? 聞いたことない地名ね。」
「地名ではありませんわ。もっと大きな範囲の名前。まあ、それは置いておいて、わたくしの生まれ育った魔界は、恐らくこの世界にはありませんわね。」
「どういうこと?」
「そのままの意味ですわ。数多の木の枝や根っこが枝分かれしているように、あるいは、布地を織るときの糸のように、縦もあれば、横もありますの。それは、世界も同じこと。わたくしのいた世界は、この世界ではありませんわ。恐らく、この世界を縦だとしたら、わたくしの世界は横の世界でしょう。」
アスタルテは、そう説明する。ルイズは、聞いていてポカンッとした。
「えっ、えっ? どういうこと?」
「分かりやすくしたつもりですが…、分からなかったのでしたら、例えるなら、本の中の世界と、読み手側の世界、まったく違いますわよね?」
「ええ、そうね。……本の中から来たってこと?」
「本の中かどうかは分かりませんが、そういう風に、まったく異なる、あるいは似ている世界が別に存在するのですわ。魔法使いが存在しない世界があっても不思議じゃありませんわよ。少なくともわたくしの世界では希少な存在でしたから。」
「……へ~。」
「分かってます?」
「……なんとなくかな…。」
「まあ、そういうことですから、わたくしが使える魔法と、こちらの魔法が同じ原理だとは限りませんの。だから、わたくしの教え方がルイズさんの体に合うという可能性は…とても低いかもしれませんわ。」
「もし同じなら?」
「それなら、願ったり叶ったりですわ。まあ、物は試しですし、やってみます?」
「どこで?」
「ここでやって、万が一爆発したら…。」
「外でね!」
「では、行きましょう。」
そして、二人は外へ出た。
すでに日も落ち、夜になろうという時間帯だ。
アスタルテに手ほどきを受けて、魔法を使う。
しかし、上手くいかず、やはり爆発する。
「なるほど…。」
「なるほどって?」
「今ルイズさんのお体に触りながら魔力の流れを感じたのですが、この世界で魔法の動力として使う力の源は、精神力と言っていますが、わたくしが言うところの魔力に相当するか、近いモノを感じますわね。…強いて言うなら、魔力と精神(こころ)の力が直結していて、精神の力が強ければ強いほど、感情が高まることで魔力が増減する。面白い体のつくりですわね。」
「面白いって言われても。現に私なんて魔法が使えないのよ、それをなんとかしたいの。」
「う~ん…。ちょっと触ってもいいですか?」
「えっ? へぁ!?」
斜め後ろにいたアスタルテに体をまさぐられた。
「フムフム…、なるほど。」
「ど、どうなのよ!?」
「精神力を魔法をという形で発射する発射口までの出入り口がデタラメで、グチャグチャ。正しい道を通らないから、魔法が正しい形にならない。そういうことですわね。」
「……もっと簡単に。」
「ストローを通してコップに、海のように大きな泉の水を全部流し込むような…。」
「入るわけないでしょうが!」
「そう。ルイズさんの力は、巨大な泉。魔法というコップの中に入れる水の量を制御するのがストローだとしたら、流し込む水の量を止めるタイミングを自分で自由に出来ないのですわ。そのためあふれ出てしまった水は、魔法を爆発という形にしてしまう。」
「なるほど…。」
「しかも…。」
「しかも?」
「ルイズさんの精神力という水の性質も、これまたずいぶんと変わっていますわ。ギーシュ君やモンモランシーさんのソレとはまるで違う。彼らが単色だとしたら、ルイズさんのは、虹色ぐらいカラフルですわ。もう、何の色かとかいう問題じゃないですわね。」
ルイズの力は、グチャグチャで、わけが分からない状態。アスタルテは、ウーンウーンっと頭を抱えて考え込んでいた。
「風の色が緑だとしたら、緑色の魔力を出さなければなりません。ですが、これだけ色がグチャグチャだと、その色を出すのはほぼ不可能に近いですわね。」
「じゃあどうしろってのよ!?」
「ですが、現に魔法が形が爆発という形といえど、現実に起こっているのですから、ルイズさんに合う魔法の形というものが存在するのでは?」
「それってなに?」
「さあ?」
「そこよ、そこ! 風、水、火、土! これ以外に何があるってのよ!?」
「他にはありませんの?」
「……あえて言うなら、虚無?」
「あるじゃないですか。」
「でも、それは伝説であって……。」
「ですが、存在はしたのでしょう?」
「始祖ブリミルがそうだったって…言われてるくらいかしら?」
「では、ルイズさんは、その血統である可能性があるのでは?」
「そ、そんなのありえない!」
「なぜそう言い切れるのです?」
「それは…、だって私みたいなのが伝説だなんてありえない。」
「ルイズさん。」
「なに?」
「貴女…、諦めてはいませんか?」
「なっ!」
「自分には何もない。自分には合う魔法がない。自分は落ちこぼれだと……。」
「そんなわけ…。」
「では、なぜご自身が伝説である可能性を否定するのです? その可能性を捨てるのですか?」
「だって…、だって…。」
「貴女は一人ではありませんわ。」
「ふぇ?」
「これからはわたくしがいますわ。例え周囲にいる者達が貴女を否定しようとも、わたしくしは貴女と共にいる。一緒に、考えませんか? どうすれば伝説を扱えるようになるかを。」
「アスタルテ…。」
すると、ルイズの目から自然と涙がこぼれ落ちた。
アスタルテは、優しく微笑む。
「……じゃあ、ギーシュを戻してよ。」
「それはそれ。これはこれですわ。」
言ってみたが、またも拒否られた。笑顔で。
ルイズの魔力(精神力)の質が変わっているということは理解しても、自分が元いた世界の魔法の原理が多少違うためハッキリとしたことが言えないアスタルテさん。
どの属性でもない虚無属性は、どんな魔法を使っても爆発になるので、きっと色合いとかで言い表すとグチャグチャなんだと思って……。