※この作品はR-18です。

間桐家の長男君   作:ぴんころ

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二月四日 

 百を超える大小様々な卵を絶頂と共に吹き出し、潮吹きと排便を同時に行なっているような状況のイリヤスフィールの嬌声をBGMに、彼女の吹き出した愛液と共に押し流されてきた受精卵から産まれた、産まれたての新種の蟲がどういった代物かを理解する。

 

「なんともまあ、使いづらそうな蟲だなこれ」

 

 イリヤスフィールの肉体に施した蟲による調教の結果、彼女の感覚ではすでに外をまともに出歩くことすら難しくなっていることを考慮して、蟲蔵にてその出産を行いながらも、出産を続ける相手には目もくれず、ただ新しい蟲の使い方についてのみ思案する。

 

 その蟲の性質を端的にいうなら、イリヤスフィールが使用していた鳥型の使い魔の蟲バージョン。小型の魔力炉心を持ち、わずかながらも魔力を自力で生成できる。そこにイリヤスフィールの魔力の性質……「願いを叶える」という特性が乗ったことで、俺が送り込んだ魔力と自前の魔力でできる範囲で思った通りの現象を起こす。

 

 できる範囲をきちんと把握しておかないと、この蟲を大量に同時使役した時の威力などが想定以上に跳ね上がってしまう危険性もある。そうなれば周辺被害は大きくなる。戦場において人質を使うのは立派な作戦ではあるが、アヴェンジャーの性格を考えるに民間人をそのために巻き込む、という類は決してダメ。最初からわかっていて、その上で潰せる懸念事項なのだから潰しておくに越したことはない。

 

「イリヤスフィール。今から俺がお前が産んだ蟲の性能テストをしてくる間”お前は蟲をもう一度孕め”」

 

 命令を行う。その宣告に、快楽に流されながらも理性を残していた表情に絶望の色を乗せるイリヤスフィールだが、彼女には歯向かうことは許されない。その彼女に、もう一つの命令を下す。

 

「”そして、今行なった出産での子供と同じ数を孕んだら、そのまま魔力を卵に流して出産を早めろ”」

 

 卵に必要なのは魔力のみ。故に戦力を手っ取り早く増強するのであれば孕んだ直後から魔力を送り込ませる方が効率的だ。蟲を呼び出しイリヤスフィールに殺到させて、その間に一度蟲蔵を出て新蟲の力を試しにかかる。

 

 幸い、というべきか。今日から聖杯戦争に戻る、ということを前提にした時にイリヤスフィールにかかる負担はそれほど大きくない。せいぜい、最初の出産を含めて三セット。つまり、あと二回同じ数出産すればそれで済むのだ。……最悪、今日中に戻ろうとした場合に肉体が負担に耐えかねて死んでしまう可能性も予想していただけに、その場合は明日以降に戻る形にして今日は限界まで出産させる程度で済ませるかと思ってもいたのだ。

 

「さてと、それじゃ試すとするか」

 

 魔術回路を起動する。あの工房は、そこで誕生した生命に対して強制的に「支配」の魔術をかけるための術式を壁の内側に加えてあるために、これらの蟲が自分の使い魔として動かない可能性など考える必要すらない。数時間に及ぶ実験の果てに、最初の感想である「使いづらい蟲」という評価は覆りそうになかった。

 

「魔力量が一定で、その規模で発現させられる魔術までしか使えないのはともかく……まさか、使用者の魔術属性でも魔力の使用量は他の属性の同難易度の術式と同じなんて……」

 

 火属性の術式であれば俺は扱えないから、この蟲に命じて火属性の魔術を使わせればいい。けれど水属性の魔術であれば、これを使用するよりも自分で使った方が、同一の魔力量でより力強い術式になる。願いを叶える属性(無色透明)であるためにどんな力(色)にも染まりうるが、代わりに個人個人が持つ属性(色)は扱えないために、これを使って使用する(描いた)魔術(絵画)は全てが平等になる。

 

「まず根本的に、火を使わないといけない状況でこれまでに火を使えなかった俺が、とっさに火を使うなんて判断にたどり着けるわけないだろ……」

 

 そういう意味ではとんでもない外れかもしれない。けれど、既存の蟲たちはしっかりと強化されているので彼女に出産させるのはそっちだけでもいいかもしれない、なんて考えてから、これからの彼女を使ってのプランを立て始めて、イリヤスフィールを蟲たちに犯させていることを約十分程度忘れていた。

 

 

 

 

 

「イリヤスフィール」

 

「なに、よぉ……っ!」

 

 肌が敏感になっていることを理解した上でもう一度ワンピースを着せて、そしてその上で胸や秘所などに触れながら、彼女に話しかける。母体としてのそれを蟲の母体として、間桐の後継を産む母体として、そのどちらもの調整の度合いについて確かめるための行為の最中、いくつかの伝えなければならないことを伝えることにした。

 

「お前の聖杯の器。それを使用するつもりはないぞ」

 

「どうい……んぅ!?」

 

 開いた口に指を入れて歯茎をなぞる。イリヤスフィールの体に触れる行為の全てが、イリヤスフィールを快楽の沼に叩き込む所業であると理解して、喋らせるのは面倒だから事実だけをただ伝える。

 

「まさか、五騎の英霊を自分の器の中に入れればこの地獄から逃れられるとでも思ったか? 悪いけど、第三次の時点でお前らがしたアヴェンジャー召喚(反則行為)は、かなり前から知ってるんだ」

 

 正確には、魔力経路を繋いだ日に行った支配の魔術。その時に「お前の知る聖杯戦争についての情報、その全てを洗いざらい話せ」と命令したことでそれらを知ったので、「かなり前」と言っても二日前のことなのだが。

 

「だから、俺たちも俺たちで反則行為をさせてもらう。もとより聖杯をまともじゃないものに変貌させたのはお前たち(アインツベルン)だ。こっちが勝った時に正しく扱うため、間桐の方でも聖杯を用意させてもらったぞ」

 

 つまり、言いたいことはわかるなと。そう告げて

 

「”お前はこれから先、脱落したサーヴァントの魂をその器に取り込むな”」

 

 そちらの用意した聖杯は信用できないとして、こちらの聖杯に全権を譲るように命令。

 

「”そして、間桐の聖杯を完全に駆動させるため、バーサーカー、ヘラクレスの魂を聖杯間のつながりを通して移譲せよ”」

 

「い、いや……っ!」

 

 その言葉が終わると同時、イリヤスフィールはこらえようとしていたが、それを無駄とあざ笑うかのように巨大な魔力の塊が抜けていくのを見た。ふっと消失したそれだったが、数瞬のタイムラグを挟んで邸内にいる桜の様子がおかしくなったことに気がついた。サーヴァントの魂の移譲。それを数日以内に行うことを宣言していたからこそ、この程度で済んでいるのかもしれないが、少なくとも桜は一瞬、それに耐えることができなかった。

 

「バーサーカー……! あ……」

 

 消失。おそらくはこの呆気にとられた表情はそういうことなのだろう。蟲が見た桜の変調と、イリヤスフィールの呆然とした姿からそれが事実だと判断する。彼女がここまでバーサーカーに固執するわけはわからないが、それでも精神的な支柱だったのだろう。……もしかしたら、今なら。

 

「そういえば、母体としての調整について教えてなかったな」

 

 バーサーカーが共にいる、ということがイリヤスフィールとしてのあり方を保つ精神的支柱だったのだとするなら、今ならちょっと押せば壊せるかもしれない。

 

「すごい結果だったぞ。俺の蟲は臓硯のように間桐の母体としての調整には向いてないんだ。俺がその調整をする必要なんてないからな。せいぜい行う調整なんて蟲を産むための母体にする、程度だし、間桐の母体としての調整もそれを利用して行うからかなり拙いんだ」

 

 でもイリヤスフィールについては違う。初日の蟲に犯された後のタイミングで確認した時、いくらなんでもおかしいと思って「支配」を使って無意識下で何を考えて何をしたのかまで知っている。そのことを伝えればーーー

 

「でも、お前は違う。たった二回犯されただけで、桜が十年近くかけて調整されたうちの六割程度まで調整を済ませてたんだ。当たり前に考えておかしいよな? プロフェッショナルが十年近くかけないとできなかったそれを、素人がわずか一日で六割も成し遂げたんだから。……そこには、確実に何かの理由があるはずだ。そう思って”支配”の魔術をかけたら、眠っているお前の無意識下の人格が答えてくれたよ」

 

 ーーーおめでとう。

 

「お前は、自分が蟲に犯される苦しみから少しでも早く抜け出したかったから、自分の肉体を間桐の母胎としての調整を聖杯としての願いを叶える力を使って自分から行ってたんだ。『私を間桐の母胎にふさわしくしてください』って」

 

 なあ、聞かせてくれよ。

 

「バーサーカー……自分の死因となったヒュドラの毒を攻撃として九十も受けて、一撃で死んでもおかしくないそれをお前を守るために全部ちゃんと受けてから消失したヘラクレスのマスターとして、恥ずかしいと思わないのか?」

 

 ヘラクレスのことを信用していて。彼のマスターとしてふさわしくあろうとしたのだと信じて。その言葉を告げる。少しでも早く楽になろう、なんて。原点の死因を受けながらも苦しみに耐え抜いた彼のマスターとして恥ずかしくないのか、と。

 

「嘘……嘘よ……」

 

「嘘じゃねえよ。言ったろ? 無意識下のお前に聞いたって」

 

 俺が自信満々に嘘をついている可能性を彼女は否定できなくて。けれど話の筋道としては通っているのだ。臓硯がどういう怪物か知っているアインツベルンからすれば。そして、俺が語ったことは全部真実。だから、彼女は否定するために必要な材料を探して、そして何も見つからなかったのか沈黙。

 

「あ、はは……」

 

 乾いた笑いを漏らすだけだった。




ちょっと少し前の話を編集。臓硯とのスクロールの内容を、誓約を戒律とするための条件を「臓硯に聖杯に接続させること」としました。最初でなくてもいい形にしました。

最近出番のないアヴェンジャーくん。そろそろ出番あげたいなぁ……
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