※この作品はR-18です。

間桐家の長男君   作:ぴんころ

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二月五日 朝

 身体中を走る痛みで目を覚ます。昨晩の戦闘の終了後、イリヤスフィールの魔力を含めて体に流すのは今のままだと魔術回路の容量の問題で桜のそれと併用するのは難しい、ということが発覚した。帰ってきた時点ではまだ魔術回路は多少傷ついていた程度だったが、これからもああして戦うことになると思うと、魔術回路の拡張は必須だった。

 

 だから、霊的なパスを繋ぐための性交だけではなく、昨晩はイリヤスフィールの魔術回路の一部を肉体に貰い受けるため、目的の違う性行為を行なった。

 

 昨晩の移植が成功したのかどうか、それを確かめるために魔術回路を起動する。己の魔術回路を流れる、魔力という異物は元より、これまでに流すことができるはずもなかった、魔術回路が存在しなかったと思われる空間すらも魔力が流れて、慣れぬ感覚が痛みとなって体を苛んだ。

 

 けれど、これで十分に魔力を受け取ることができる。今は俺の中にあれど、大元がイリヤスフィールの魔術回路であるから、俺の内側で俺の意思で動かせるイリヤスフィールの魔術回路という状態。経路を通して流れてきた魔力を、俺の魔術回路よりも強靭であるその回路に流し込むことで自分の魔術回路の損耗を防ぐ。そんな仕組み。

 

「おい、起きろ」

 

 上で眠る裸の少女を起こす。未だに互いの性器は結合したまま。昨晩の情事の残り香を漂わせ、イリヤスフィールは目を覚ました。目をこすりながらも正面にいる俺のことをその寝ぼけ眼で捉えて、これまでのそれとは違うふわりとした笑顔を浮かべる。

 

「おはよう、御主人様(マスター)」

 

 間桐の母体としての自分にすがるしかなくなった少女は、その価値を与える俺の奴隷のような状態。もしも俺が見捨てれば、それこそ何も残らない状態であるがために。言葉すらもわかりやすく従順になっていた。笑顔ながらもその目には常に捨てられることへの恐怖があり、蟲に犯されたことで削られた思考力のせいで瞳の光もほのかに濁っている。もうすでに、そこに逆らう意思も抗う意思も感じられない。言われれば、自己強制証文の効果がなくとも股を開くであろう。

 

 愛玩動物(ペット)であり性玩具(おもちゃ)でもある今の彼女は、貫かれているお腹がぽこりとわかりやすく俺の肉棒の形に膨らんでいる。そんな彼女の中に肉棒を押し付けて精液を吐き出す。はあ、と熱い息をこぼしたイリヤスフィール……イリヤは今、感覚を鈍らせる魔術をその肉体に使用されて、蟲によって過敏になっていた感覚を普通の人よりも多少過敏な程度にまで一時的に戻している。セックスをするか蟲に犯されるかでもないとその魔術を解除するつもりはない。

 

 昨晩の情事の痕跡を洗い流し、イリヤも服を着る。今のところは戦力にそこまで困っていないというか、俺の使役できる範囲……はともかくとしても、俺が状況を確認しながら使役できる二倍の蟲が存在する。多少砕かれた程度では問題ないし、そもそもそれで二セット使い潰しても魔術師との戦いに勝利しきれないようでは、いくら蟲がいたところでその魔術師には勝ち目がないと判断したほうがいい。イリヤを学校に連れていくわけにも行かない現状、蟲の産卵などの聖杯戦争に対する備えをしている最中ならともかく、それを行う必要性がない今は家の中に置いたままでは臓硯が何をしでかすかわからない。

 

 自己強制証文(セルフギアス・スクロール)は、聖杯戦争に優勝するまでは臓硯には決して効力を発揮しないのだから。

 

 なので、日光を嫌う臓硯のことと、すでに裏切らないという前提で話を進めて日中家の外に出ることを許可して、その上でもしものために聖杯戦争関係者への自分からの接触と、接触された場合の状況説明、さらには聖杯戦争関係者の存在する間桐邸以外の場所に近づくことを禁じた。

 

「ほほう……!」

 

「うげっ……」

 

「マキリ、ゾォルケン……」

 

 部屋を出ると、そこには臓硯が立っていた。ニヤニヤとしながら一度二度と俺とイリヤの間で視線を移動させてから、からからと笑う。その笑い声だけで十分不快な思いをしながらも一体何の用だと言わんばかりの視線を向けると、上機嫌なままの臓硯は、わざわざ説明してくれた。

 

「全く、その目はなんじゃ。アインツベルンの小娘の調教が進まぬようであれば手伝ってやろうと思った祖父心を……」

 

「それでされる調整は、俺用の調整じゃないだろうが」

 

「まあ、儂は貴様と違って、蟲の母体とするのは普段はせぬからな。そういう意味では確実に貴様専用の母胎とするのは不可能じゃったが」

 

 そうして、その粘つくような、枯れたような、けれどその内側には不老不死への執着という熱量が灯っている瞳を受けたイリヤが、俺の後ろにとっさに隠れて服の裾を握る。

 

「うまいこと調教しよったな。これでもう、少なくともその小娘は貴様を裏切らん。そして貴様も間桐から完全に解放されるために儂を裏切らんのだから、儂が手出しする必要もなかろう」

 

 本気で楽しそうに。おそらくはこれまでで一番聖杯戦争優勝に近い状態になっているために愉悦を隠しきれないのだろう。遠坂、アインツベルン含めて、御三家の中で一番最初に悲願を成就するのは儂だ、といった感じだろうか。この蟲爺の考えはよくわからない。

 

「ああ、そうだな。これで、桜を聖杯として使っても、俺は魔力供給源を失わないってことだ。勝ち残るために、アルケイデスを維持するのは必須なんだから」

 

 そうだ。どういう手段を用いてもいい。最終的に魔術師という存在そのものをなかったことにするのだから、「桜が聖杯となりそのことに桜の人格や魂が耐えきれずに死んだ」事実も消える。聖杯なんて代物は魔術師が存在しないために作り出されなかったことになるのだから。

 

「ふむ……そういえばの話じゃが。桜はしばらくの間衛宮の倅のところで世話になるようじゃ」

 

「へぇ……」

 

 どういうことだろうか。そうなる理由に皆目見当もつかない。でも、確かにそれは好都合としか言いようがない。確か遠坂と衛宮はあのバーサーカー戦を見る限り同盟を組んでいたように思える。衛宮の家に下宿しているまでだから、きっとそうだと信じたい。でも、つまり。それなら桜が衛宮邸に泊まることであいつらの行き先とかがわかるかもしれないのだ。

 

「……っていうか、間桐の聖杯なのに、桜を衛宮の家に行かせたのか」

 

「いきなり行かなくなるのは、自分が聖杯戦争の関係者です、というようなものじゃろうが。お主が遠坂の当主に桜がマスターであることを暗示するような発言をしたが、未だに遠坂の当主はわかっておらん。となると、姉心として桜の体を調べて令呪がないことを知る。そうなれば、砕かれる心配は少ない。何せ、聖杯戦争には桜は参加しておらんのだからな」

 

「間桐に置いておくと対城宝具を食らった時に破壊されるってか」

 

「そういうことじゃ」

 

 からからと、思った通りではなくとも自分の目標の成就に向けて順調に進んでいることを喜び笑う臓硯の横を通り、学校へと行く支度をした。

 

 

 

 

 

「あ、連夜先輩」

 

「衛宮か」

 

 学校に向かう道中、桜の思い人でありセイバーのマスター……つまりは敵である衛宮士郎と出会った。

 

「聞いてるかもしれませんけど、桜。今日家に来た時に倒れて……」

 

 頭を掻きながら、苦笑いで告げる衛宮。けれど次の瞬間、その苦笑いは顔から消え去り、少し怒ったような表情になる。

 

「その原因が、家の中がピリピリしてて緊張感が酷いからって言ってたんです。あんたら、一体何をやってるんですか……!」

 

 桜のために心の底から怒っている。それは、ありがたいことで。桜の男を見る目はちゃんとあったんだなと思いながらも、少しばかりイラっとしたのでこちらも言い返させてもらうとしよう。

 

「衛宮、お前も聖杯戦争の参加者だろ?」

 

「え、あ、はい……って、ちょ……!」

 

「大丈夫だ。魔術師がどうこうとか話をしてても近所の人からしたらそんなものが実在するなんて思えんだろうしな。むしろ堂々と、聞かれたら『小説家になりたいからその作品の設定を煮詰めてるんです』とでも言っておけばどうにかなる」

 

 慌て始める衛宮だが、実際に使わなければ、自分が魔術師だと口にして、それを証明するような何かをしなければばれるはずもない。

 

「それで、俺たちが何をしてるかっていうと……桜のためになることだよ」

 

「……どういう意味ですか?」

 

 言葉にして、それを聞いたことで慌てていた状況から、桜を倒れさせるほどにピリピリしておいて何をいうかという表情に変わった衛宮。それに対して笑うように、嗤うように。衛宮に告げる。

 

「そもそもうちの家系は廃れて来ててな。桜は魔術回路が多いけど、俺はそんなことはない。前回の聖杯戦争は聖杯が使われて破壊が広がる前に聖杯が破壊されたから、十年前程度の被害で済んだ。その時の残留魔力もあって早く開催されるだろうって思ってたうちの爺さんは『早く行われるであろう聖杯戦争のために育てた魔術師』である俺と、今はまだ何も知らされていないが『俺が敗北して死んだ場合、間桐の家の再興のための政略結婚の道具』の桜として分別した」

 

「……慎二は?」

 

「そもそも魔術回路を持ってない」

 

 続けるぞ、と言って、頷いた衛宮に話を続ける。少しばかりの嘘は入り混じるが、『桜のためになること』という事実は変わらない。だから堂々と言える。

 

「さっきも言ったけど、桜は俺が死んだ場合の次回以降の聖杯戦争のために取っておいてあるって状況なわけだ。でも、これでも兄なんでな。桜に自由な恋愛をしてもらいたい。そのために必要なことは何か? 簡単だ。桜が聖杯戦争に勝つための道具なら、桜を道具にする必要をなくせばいい。……つまりは俺の勝利だ」

 

 むしろ

 

「俺からしたら、お前の方がどうかと思うぞ? お前は自分が言ったその言葉が自分にも返ってくるって本当にわかって言ってるのか?」

 

「どういう、意味ですか?」

 

「藤村先生。あの人、お前の姉代わりだろ? お前は俺が聖杯戦争に参加したことで桜を悲しませてるってことを詰って来たけど、お前もちゃんと自分が敗北して殺されたらあの人がどれだけ悲しむことになるのかってことをわかった上で参加したんだよな?」

 

「それは……」

 

 多分、考えていないと思っていたが、やはり考えていなかった。いや、考えたかもしれないが具体的にどれくらい悲しむのかを他人から言われて初めて考え始めた。衛宮のことだ。おそらくは聖杯戦争で出る被害を考えて参加したんだろうが、その被害に自分が含まれない保証が何もないことも、そうなった場合に悲しむ人間がいることも忘れて、『被害を受けることになるかもしれない人たちのために、防がないと』といつもの異常な正義感を発露したんだろう。

 

「まあ、考えずに参加を決めたっていうなら、もう一回自分の実力と、それを見て勝ち抜いて無事に生き残って帰れるかどうかを考えて、もしも死んだ時に自分の周囲の人をどれだけ悲しませるのか考えて。そこまで考えて、もう一度『聖杯戦争に参加するか』を考えるといいさ」

 

 そう言ってひらひらと手を振りながら、その場で立ち止まって考え始めた衛宮をおいて学校に向かうのだった。




また改竄されたスクロール。臓硯の聖杯戦争後の手出しを消すためになんども修正中だよ!

ちなみに臓硯はここまでやれた主人公に対して結構大きな期待を抱いてるよ!! 下手なことして変に動かれるぐらいなら黙って待ってようと思う程度には!!

御三家主人公にした場合、一番楽なのは「聖杯戦争の真実を知った状態のキャラを書ける」ってことですよね。特にアインツベルン。作者の持つ聖杯戦争の知識と主人公の持つ知識にはルート展開以外の差はないんですから。
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