「あ、今ギルガメッシュさんが入ってきましたね」
「そうか……アヴェンジャーが勝ったのか」
ドクン、と世界そのものが脈打つようにして力が入り込んできた。
連夜は、これで聖杯戦争が真に終結したことを知り、願いを叶える時間がきたことを知った。
「……俺が望んだ形じゃ、俺の願いは叶わないんだよな?」
「はい、そうですね。……だから兄さんは、まだここで考え続けているわけですし」
桜の姿をした聖杯は言うが、考え続けたことでよりドツボにはまっているような気すら連夜の中にはあった。
今の己を構成するのはアンリマユの呪い。
これが魔術師による代物であればこそ、魔術師という概念が消え失せた後に彼の人格が残るのかどうか。
かつて、まだ連夜が人間だった頃であれば、今の人格が消え失せることになったとしても間桐の魔術に犯された肉体を疎ましいと思ってそれを容認できたかもしれない。
いいや、容認できたからこそ聖杯に託す望みをそれにした。
けれど今は、悪性に犯されたことで、これまでにはなかった様々な、未練というにはおぞましすぎる代物が彼の中にはあった。
人格の消滅を厭う、魔術師が消滅したとしても生きていたいという”強欲”が。
イリヤスフィールという女体を味わい尽くしていないという”色欲”が。
魔術師として、所詮貴様らはその程度かと他者を見下す、比較が。
その他諸々、人類が悪性と断じた代物が彼の中で渦巻き、彼の思想を自分よりへと変えて、自らの存続を祈っていた。
自分は生き残りながらも、魔術師という存在は消滅する。
そんな夢のような未来を手繰り寄せる方法は何かないかと考え続けて。
「……あった」
それを見つけた。
その願いを実行するための夢のような手段。
正面の聖杯の端末の姿が間桐桜……否、遠坂桜の、第二魔法を目的とする家系の人間の姿であることが、彼の中にその手段を見出させた。
「決まりましたか?」
「ああ」
その言葉を聞いて、では願いをと厳かに告げる桜の姿をした聖杯。
間桐桜の人格が表層から消えて、聖杯としての、願いを聞き届け、そして叶える機能が表層に出る。
「俺の願いは、魔術が存在しない世界で寿命を迎えるまで生きること。この肉体に寿命があるのか知らないが、それならそれで永遠に生きることだ」
「なら……」
「ああ。だから、そのための手段として”第二魔法”をよこせ」
「ふむ、なるほど」
そこで、もう一つ声が響いた。アヴェンジャーの声、連夜の背後……いいや世界全体に響き渡るそれは外から聞こえるのだと、なぜか誰もが理解した。
「そもそも恨みの原因が発生しなかった世界に行く、か。私にはできないことだな」
なぜなら
「たとえ、別の世界に行けたとしても”この我”が受けた屈辱と、それによって抱いた怒りは消えん。……だが、今を生きる人類にまで手を広げることもないのは事実……仕方ない。此度の聖杯戦争は”『ヘラの栄光』をこの手で殺した事実”によってよしとするか」
ではな、マスター。
そう言って、アヴェンジャーの魂も大聖杯の内側へと還ってきたことをそこにいた誰もが把握する。
「七騎の英霊に加えて、一騎で二、三騎ぶんの魂を持つギルガメッシュさん。これだけあればその願いも不可能ではないですね……」
「なら、頼んだ」
ああ、それと。
そう言って連夜はまるで普通のことを言うように、大聖杯を見据えて言う。
「お前も連れて行かせてもらうぞ、大聖杯」
アンリマユの魔力、彼の肉体を構成しているその魔力は大聖杯からのもの。
故に、その魔力が彼らだけが平行世界に渡った時に供給されるのかわからない事実から、魔力源として持ち運ぶことを宣言する。
「……兄さん、結構強引ですね」
それが、魔術の存在しない世界に魔術を持ち込むようなことだと理解しながらも、その言葉を取り消すことはなく、聖杯も苦笑いをしながらもそれが願いであることに変わりないために了承の意を返すしかない。
「俺は人間なんでな。魔力切れは倒れる理由にはなっても
だから、魔術の存在しない世界で寿命で死ぬためにも魔力供給源にはついてきてもらう、と。
「それに、たった一回の平行世界移動で目的の世界にたどり着けるとか思ってねえよ」
汚染されている聖杯なのだから尚更だと、そう宣言した。
それに対して聖杯は反応することなく。願いとそこにたどり着くための過程が成り立っているからと頷いて、魔力が弾け飛ぶ。
聖杯内部が光に包まれて、そしてーーー
暗い室内に水音が響く。
そしてそれに混じって、少女たちの、苦悶の内側に快楽を孕んだ声も。
眼下の汚泥が流動し続ける部屋に視線を向ける。
そこには、同じ年頃の、未だ幼き三人の少女がいた。
一人は、黒髪の少女。
膣とアナルの両方を蠢く泥に犯されながらも、その神秘性を保ち続ける者。
連夜には名前などどうでもいい。
ただ、その少女が聖杯としての機能を持っているとイリヤが気がついたことにより、自分たちが扱うためにふさわしい形に調整するために犯しているだけなのだから。
一人は、白銀の髪の少女。
イリヤと瓜二つであり、けれどその瞳には魔術師としての色が存在しない、ただの少女。
ピンクのフリフリとした衣装を着ていたその少女は、平行世界のイリヤであり、連夜と同じ世界から来たイリヤが自分と同じ顔をしながら、とそんな衣装に身を包んでいることに憤慨して犯されることになった。
魔法少女としての衣装を無残に破られ、わずかな残骸だけを体に残している少女は、白い肌の上を黒い汚泥が這っていて、その対照的な二色が目を惹く。
最後の一人は、二人目の少女とよく似た、けれど肌の色が違う少女。
イリヤを捉える直前に、イリヤから分離する形で生まれた魔力によって構成された少女。
体が魔力で構成されているために、最も魔力の泥による影響を受けやすい。
時折、肌の上を這う泥か、膣、アナル、それとも口を犯す泥か。どこかの泥の影響でビクビクと体を震わせながらも、涙目でこちらを気丈にも睨もうとして、その瞳が直後に快楽に蕩ける。
全て、この世界で捕獲した少女たち。
すでにいくつかの世界を渡りながらも、未だ目的とする世界にはたどり着けず、新たに来た世界にて発見した聖杯三つ。
すでに聖杯であった少女と、聖杯の器ながらも一般人として育てられた少女。そしてその少女の内側に潜んでいた魔術師としての人格。
連夜は今それらを犯し、自らの所有物へと変える作業を行なっていた。
これまでの聖杯では不可能であった「魔術師が生まれることがなかった世界」を生み出すことができる可能性にかけて。
使う泥は聖杯の泥、そこから快楽の属性のみを引き出した汚泥。
その影響を最も受けていたのは、それに浸かり続ける三人ではなく、その上、空中にて四肢を泥の触手に囚われ、泥によって構成された黒のドレスに身を包み、肌に触れた部分の泥の流動によって常に絶頂を迎えている、連夜とともにこの世界に渡って来たイリヤだった。
迎える絶頂により体を構成する泥が快楽一色に染まり、悪性の内側から”人外の手で快楽を得る”という部分だけが抽出された泥、それによって構成された潮を吹く。それは泥によって構成された沼に、そして泥に犯され続ける少女たちの体に常に降り注ぎ、それらに快楽の属性を強制的に叩き込む。
直後、上がった嬌声もそのイリヤから。
膨らんだ腹、そこに植えつけられていた卵とアナルに植えつけられた卵を出産し、泥の沼に受け止められたそれらが孵化して泥を伝って沼に沈み犯される少女たちの中に侵入する。
押し広げられた秘所はその蟲たちの侵入を拒むことなく、小さな腹は蟲の形に膨らんだ。
それすらも少女たちにとっては新しくやって来た快楽でしかなく、泥に与えられる快楽に思考が働かず、己が何に犯されているのかすらよくわかっていないのだろう。
その姿を見て、小さく嗤う。
直に、あの三つの聖杯も自分の色に染まる。
その時こそ、俺の願いが叶う時。
その時を思うと笑みを抑えきれず、連夜は哄笑をあげるのだった。
言峰? 聖杯が消えて死んだよ