1しか知らない男が2の世界へ来てしまいフレンズに求められまくるお話(完結) 作:らんどまーく
「さて落ち着いたところで話を……あ、お疲れならまた明日にしましょうか? それとも何か召し上がられます?」
「大丈夫です。体調もいいし目もばっちり冴えてますよ。食事は後でも構いませんから」
俺は尻尾を振って胸に頭をこすり付けてくるイエイヌを撫でながらかばんさんに言った。そんな俺達に彼女はなぜか寂しそうな目を向け、微笑を浮かべる。
「……では、ミレンさんの聞きたいことをどうぞ。私が知っている範囲ならお答えします」
「じゃあ3日前助けたフレンズさんはどうしていますか? あとビーストって呼ばれていた子も」
「アードウルフさんですね。あの子は今この施設に居ます。気を失っていたのでミレンさんと共に運んだんです。今は意識も戻っていますがちょっと精神的に不安定になっていて……あっ。で、でも健康状態は良好なので、あなたが元気な姿を見せてあげれば大丈夫だと思います」
申し訳なさげに眉を下げるかばんさん。
そのアードウルフという子は3日前に俺の大量出血を間近で見ている。というか思いっきり血を浴びせてしまっている。きっと相当ショッキングだったに違いない。PTSDなどになっていなければいいが……。
「見せるだけじゃダメなのですよ」
「労わってやるのです。ミレンの得意なやり方で」
博士と助手が目を細め、口角を僅かに吊り上げて言った。
……まさかヤれと?
心が参っている女の子に付け込む最悪野郎みたいで嫌だ。おまけに俺はセルリアンだと判明したばかりだ。
色々な意味で気が進まないのでかばんさんに視線で助けを求めると「こほん」と咳払いをして話を戻してくれた。
「そ、それとビーストさん。『アムールトラ』というのが本当の名前なんですけど、ミレンさんがここに運ばれた後いつの間にか姿を消していました。多分、自分の縄張りに帰って行ったんだと思います」
「アムールトラ……やっぱり虎のフレンズだったんですね」
「あの方――」
それまで尻尾を振っていたイエイヌがぴたりと動きを止め、どこか遠くを見るような目をして言う。
「わたしを助けてくれた時に『ごめんね』って言ってくれました。きちんとお話がしたかったです……」
「あー……悪かった。俺が不甲斐なかったせいでちゃんと話せなかったよな」
「ご、ご主人は何も悪くないです! それにあの方もご主人のことをずっと心配してました!」
「そっか。じゃあまた会った時にお礼を言わないと」
「あの子は多分恥ずかしがり屋さんなんです。もう普通の状態になっていますしきっとお友達になれますよ」
気になるワードがあったが今尋ねるとこの緩やかな雰囲気に水を差しそうだ。「普通でなかった状態」について聞くのはまたにしよう。
「いいですね。それじゃあ次の質問なんですが、ここはどういった施設なんですか?」
「ここは昔、まだパークにヒトが居た頃に機能していた研究所だそうです。私には分からない難しい資料や機械があって、主にサンドスターやフレンズさん達のことを調べていたみたいですね」
「研究か……」
「ごめんなさい。私の『権限』だとできないことが多くて詳しくは分からないんです。知識もたいしたことがなくて……全部ラッキーさんの受け売りだし……」
かばんさんの言葉はどんどんと尻すぼみになる。暗いオーラを纏って所在なさげに視線を逸らす姿はまるで疲れ切ったOLのようで、俺はもうこの話は切り上げた方がよいだろうと直感した。
ぐううう~。
「ミレンの腹の虫なのです」
「『てんてき』だけじゃ腹ペコなのです」
おっと、中々空気を呼んでくれた虫だ。助かった。
「し、失礼。やっぱり食べた方がよさそうですね。それによく見たらもう夜だ。話はまた後日にお願いできませんか?」
「え? え、ええ……それはもちろん」
「ではごはんの用意をするのですよ」
「こういう時には『おかゆ』を作るのです。れんじでチンなのです」
「わたしも行きますー!」
3人のフレンズが慌ただしく部屋から出て行って、また病室に空調機の音だけが響くようになる。窓の外はもう真っ暗だった。
「その……すみません。気を使って頂いて」
「ん? 自分はお腹が空いただけですよ。ほら、空腹だと考え事もできなくなっちゃうし。ああでも、満腹になったらそれはそれで眠くなりますよねえ」
「ふふっ。ありがとうございます」
ようやくまともに笑ってくれてこちらも気分が軽くなる。少女のような可愛らしい笑顔だ。
俺もつられて笑い、やがて彼女が幾分か明るくなった口調で切り出した。
「その、お願いがあるんです。明日、あなたとイエイヌさんの血液を調べさせてもらえませんか?」
「血を?」
「はい。ミレンさんの体液は……えっと、イエイヌさんにとても良い影響を与えています。まだ分かりませんが、もしかしたらこの島で困っている他のフレンズさんの助けにもなるかもしれません」
困っている、とは正気を失いかけていたナミチスイコウモリのようなフレンズを指すのだろうか。それとも、言い方は悪いが俺が欲求のはけ口として有用だということか。
まあどちらでも構わない。彼女の献身の意思は本物のはず。それに命の恩人の頼みなら何でも聞く所存である。
「いいですよ。自分が役に立てるのであれば」
「よかった。ありがとうございます」
「ごしゅじーん! ごはんですよー!」
「ええいだから騒ぐなです……!」
「走るなですよイエイヌ……!」
ものの数分でフレンズ達がけたたましく戻って来た。イエイヌはお盆を持っていて、その上にはほかほかと湯気を立てる器が乗っている。博士と助手はイエイヌの両肩にそれぞれしがみ付いていた。止めるのは無理だったようである。
それから俺は久しぶりのお米を堪能し、次の朝まで安静にすることにした。
ちなみにかばんさん達はイエイヌを伴って部屋を去って行った。かばんさんが点滴を打っている俺を気遣ってくれたのだ。実際は一緒に寝たら即交尾に走るだろうとか思われていそうだけども。名残惜しそうに留まろうとしていたイエイヌは結局博士達に引きずられて行ったが、明日になれば元気いっぱいになっているだろう。
「ふふ」
思わず小さく笑って、再び枕に頭を預ける。
…………まあずっと寝ていたのだから眠れる訳もなく。思考はかばんさんの顔を勝手に思い浮かべて行く。
見慣れた眼差しだった。俺の記憶が作り物や妄想でなければ、あれは理不尽な社会の闇に追い込まれた人間のそれと似た、疲れ淀んだ目だった。
いったい彼女に何があったのだろうか?
俺の知っている彼女は……いや、もうよそう。
あのセルリアンの悪意も胸に突き刺さる激痛も血の味も、ありとあらゆるモノが「やさしさだけでない」世界だという現実を叩き付けてきた。
「ならば」
やさしさの少ない世界なら嫌という程経験済みだ。きっと彼女の一助になれる。あくまでも俺の記憶が紛い物でないならば、だが。
それにイエイヌ。もう彼女を悲しませたりしない。
彼女の元気な姿を、あの眩しい笑顔を二度と見失わないように。その為なら何だってしてみせる。
「戦って勝利する、そして守り抜く」
心髄に叩き込まれた信念は、何時いかなる場所においても真実だ。
そしてあくる日。かばんさんの要望で俺とイエイヌは『血液検査』を受けることになった。なったのだが……
「待つのですイエイヌ」
「痛くないのですよ。ちょっとチクっとするだけなのです」
「やだー! こないでー!!」
「元気っちゃ元気なんだけどなあ……」
博士と助手から涙目で逃げ回るイエイヌは間違いなく元気ではあった。とても笑顔とは呼べないが。
ここは研究室。この施設に複数ある内のひとつである。装飾のないステンレス製のラックや作業デスクが並び、顕微鏡や大小のフラスコ、試験管、各種薬液や遠心分離機といった医療機器が目に付く。中には何のための機械なのか、ジャパリマークをそのまま立体化したような物まであり専門外な俺の好奇の目を引いた。
「お、落ち着いてイエイヌさん。大丈夫だから、本当にそんなには痛くないから、ね?」
「やだやだいやですー!」
かばんさんの言葉ですらもはや逆効果である。というかこのままでは機材をぶっ壊しかねないので止めないとヤバい。
「イエイヌこっちこっち」
「ごしゅじーん!」
胸に飛び込んで来たイエイヌを受け止める。俺は安心しきった彼女に今から無情な宣告をする。許してくれ。
「注射、受けよっか」
「ひ……」
イエイヌの目が見開き、顔が青ざめる。どんだけ嫌なんだ。
「嫌なことでもたまにはやらなきゃいけないんだよ? それが誰かの為になるかもしれないのなら尚更ね。ここはかばんさんの為と思って我慢してくれないかな。そうしてくれたら、ええと、いっぱい遊んであげるからさ」
「う、うう……わ、わかりました。でもあとでたくさん遊んでくださいね! 絶対ですよ!」
大きく頷くとイエイヌはようやく逃げるのをやめ、それでも渋々ではあったがかばんさんの向かい側の椅子に腰を下ろした。
「ありがとうございますイエイヌさん。それじゃあ注射をしますね」
「ひ、ひええ……やっぱり怖いです」
「ミレンさん。申し訳ないんですがイエイヌさんを抱きしめてあげてもらっていいですか?」
「了解しました」
ぷるぷると震えるイエイヌを正面から包み込むようにしてやり、その間にかばんさんがイエイヌの左腕に注射針を挿入。刺さった瞬間にイエイヌがビクッと俺の胸に顔を押し付けてきたが暴れたりすることはなかった。
「ふええ……」
「よしよしよく我慢できたねー」
「お疲れ様でした。ではミレンさんの血も合わせて検査機にかけてみますので、結果が出るまでレストルームで休憩なさってください」
かばんさんはイエイヌの腕に小さな絆創膏を貼り、血の入った2本の試験管をジャパリマークの機械へとセットしながら言った。
「まったく、いくらなんでも騒ぎ過ぎなのですよ」
博士はそのとび色の瞳でイエイヌを一瞥し、小さく溜め息を吐きながら言った。
「だって怖いものは怖いんですもの」
イエイヌは定型句らしい呟きをして俺の隣で小さくなっている。柔らかいソファーに身を沈めているのだ。
「まあそれも仕方ないのです。注射を何とも思わない奴は居るかもしれませんが、好きな奴は存在しないのですよ」
「お茶を淹れました、博士。お前たちも飲むといいですよ」
目だけを動かして俺とイエイヌを交互に見る博士に「その通りだ」と苦笑を浮かべていると、音を立てずにやってきた助手がティーポットやカップをテーブルの上に並べた。
「ありがとうございます、助手さん」
「よそよそしいのです。ミミと呼ぶのです」
「抜け駆けはやめるです助手。ミレン、ちゃんと私もコノハと呼ぶのですよ」
「しれっとミレンの横に移らないでもらえますか、博士」
「先手必勝なのですよ、助手」
「くっ……やりますね」
「えぇ……」
俺の左隣に席を移す博士にじとっとした視線を向ける助手。俺は俺で彼女達のよく分からない好感度の高さに困惑の声しか出なかった。まともに会話を交わしたのも昨日が初めてだというのに。
直接肌と肌が触れ合うようなことだってない。……理由は分からないが、まあ少なくとも嫌われるよりはいい。発情して襲いかかってこないのであれば。
「お待たせしました……!」
そうこうしているとタブレットを携えたかばんさんがレストルームのドアをくぐった。彼女は俺達のちょっとおかしな様子には興味を抱かず、椅子を引いて興奮した様子で語り始める。
「フィルター……! ミレンさん、フィルターでしたよ!」
「フィルター交換の指示でしょうか。専門は車両系ですけど空調機とか換気設備系なんかもある程度はこなせますよ。ああでも特殊な浄化槽の物はちょっと専門外でして申し訳ありませんがご遠慮頂くことに……」
「えっと、そういう意味じゃ、あの」
かばんさんは素直な性格の持ち主である。余計な冗談を適当にあしらってくれるようなこともない。非常に真面目だし、それはとても好ましいと思う。
「すみません茶々を入れて。気にせずお話しください」
俺はたじろぐ彼女に軽く頭を下げながら続きを促した。
「えっと、では……こちらのおふたりの血液検査の結果を見てください」
彼女がテーブルに置いたタブレット端末には複数のグラフと数値が表示されていた。一見すると3つの線が隣り合う棒グラフが主であり、突出した線、中間の線、そして低い線と綺麗な階段状を描いている。
「まず、このグラフは『血中サンドスター濃度』を示しています」
かばんさんは左のグラフ、右肩上がりのそれを指して言った。
「けっちゅうさんどすたーのーど?」
「多分サンドスターの濃さを示しているんだよ。イエイヌの体の中にどれくらいサンドスターがあるかってことじゃないかな」
「はい。大体その認識で合っています」
「ほええ~」
頷いたかばんさんは一度ちらっとイエイヌの様子を伺って、再びグラフを指でなぞり始める。
「まずこの一番長い棒。これがミレンさんです。その次に長い真ん中の棒がイエイヌさん。そして最も短い左端の棒がこの島のフレンズさん達の平均値です」
「えっとえっと、じゃあご主人はとってもサンドスターが多いんですよね? わたしのがみっつぶんぐらいはありますし」
「よく見るのです。ミレンのは真ん中で波線で区切られているので、実際はそれよりももっと長いのですよ」
俺の隣に座った博士が身を乗り出しながら言うとイエイヌは「わかりません!」と顔面で答えた。博士は速攻で「助手」と呼びかけ、説明をさっさと引き継がせた。
「普通に描くとここに収まらないので間を省略しているのです。グラフの数値を見る限り、ミレンのサンドスター濃度はお前の100個ぶん以上はあるのです」
「ひ、ひゃっこ! すごいです!」
「ええ。それだけでもすごいんですが、こっちのグラフを見てもらうと更にすごいことになるんです」
「さ、さらに!?」
驚愕して目を見開いたイエイヌにかばんさんが微笑む。まるで小さい子供に教える先生だ。
そんな彼女の指が置かれた右隣のグラフは、さっきとは逆に棒が描く階段が右肩下がりになっている。
「これは『血中セルリウム濃度』です。順番はさっきと同じで右からミレンさん、イエイヌさん、フレンズさん達の平均です」
「せるりうむ?」
「セルリアンの素なのです。フレンズが浴びすぎると体調が悪くなったり、物忘れが激しくなったり、下手をすると我々が中途半端に野生に戻されてしまう有害な物質なのですよ。セルリアンにとっては元気の源、我々にとってのサンドスター。主な性質はそんな所です」
「野生に……ということは、もしかしてアムールトラさんは」
「そう。『ビースト』は一度に多量のセルリウムを浴びてセルリウム中毒を起こしてしまったフレンズのことなのです。症状が強いと完治するのにとても長い時間と大量のサンドスターを要するのですよ」
助手は俺の呟くような問いに淀みなく答えた。
彼女の説明はナミチスイコウモリとの出会いにも矛盾なく当てはまる。あの時もそんな状態だった。
「なるほど、とってもよくないものなんですね……」
不安そうに呟くイエイヌに向けて助手が続ける。
「溜め過ぎなければ特に悪影響も出ないのです。じゃぱりまんかミレンを食べてしっかりとサンドスターを補給していれば問題ないのですよ。安心するのです」
「そうなんですね。よかった~」
「ちょっと待って今ミレンを食べるとか言いませんでした?」
助手は無表情ながらもどこか得意げに胸を張る。満足そうだ。あと俺の質問は無視かい。
「助手。それについては私が説明したかったのです」
「おや、そうでしたか博士」
「くっ……やりますね」
意趣返しのつもりだったらしい。助手が口の端をつり上げ博士は苦々し気な顔をしていた。静かで平和な戦いである。
「そのセルリウム濃度がいちばん低いのがミレンさんなんです。これはミレンさんがセルリウムに依存しない性質だということを示しているんですよ!」
「ほえ」
かばんさんのまくし立てるような説明に完全なお手上げ顔をするイエイヌ。笑ってるんだか困ってるんだかよく分からない顔である。
「自分はセルリアンなのに、本来は多いはずのセルリウムは少なく逆にサンドスターが多い。しかもセルリウムを点滴で体内に入れられていたにも関わらず血中セルリウム濃度が低いことから、セルリウムを体内でサンドスターに変換している可能性が高い。だからさっき『フィルター』と言ったんですね?」
「そう! その通りなんです!」
勢いよく椅子から立ち上がったかばんさんは鼻息荒く、俺の両肩を掴んで揺さぶってくる。少し異様な雰囲気を纏っている彼女に面喰った俺はなすがままにされる。
「ミレンさんのお力があればきっとこの島を正常な姿に戻せます! 何もかも元通りに、何もかも! ご協力をお願いできませんか!?」
「お、お、おお」
「ええい落ち着くのですかばん!」
殆どのしかかられるような状態になりつつあった博士がかばんさんを押し退けてくれた。両肩にかかっていた重さとプレッシャーがなくなり思わず息を吐く。
「ご、ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって……」
彼女は頭を下げる。それから自嘲的な笑みを浮かべて、
「先走っちゃいました。ええっと、とにかく今回の検査で分かったのはミレンさんは普通のセルリアンじゃないってことです。それと……あの、ミレンさんと一緒に……ええと、行動しているイエイヌさんもその影響を受けています」
「恥ずかしがらずに交尾と言えばよいのですよ」
「とっ、とにかく! 現在この島に住んでいるフレンズさん達にはミレンさんのお力が必要不可欠なんです!」
博士の言葉にかばんさんは顔を赤らめてまくし立てる。
フレンズの為にいつでもどこでも発射できるサンドスタータンクになれ! ということなら流石に命の恩人の頼みでもキツいが……。
「話が長くなりますのでそちらについてはまた今度説明いたします。もちろん強制はできません……。ともあれ私の用事はこれで一旦終わりですので、今日はどうぞご自由にお過ごしくださいね」
「やったあ! じゃあご主人、早速わたしと遊んでください!」
「あ、ああ」
「ミレン。3日以上寝たきりだったことを忘れてはいけないのですよ。それとこの施設の外には壁がありますが、そこより外に出てはダメなのです」
「分かりました。コノハ博士」
「はーい! じゃあお外にレッツゴー!」
「ちょっと引っぱっちゃ駄目、引っぱっちゃ駄目だってばイエイヌ」
イエイヌが鼻歌を歌いながら俺の服の裾を掴み、足を取られながら彼女に連行される。
俺はまださっきの話が気になっていてドアをくぐる際に振り向いたのだが、かばんさんと博士と助手が何事か話し合っている様子がちらと見えただけだった。
「ふんふふふ~ん♪ ようやくご主人と遊べます♪」
「せいぜい5日ぶりぐらいでしょ?」
「長すぎます!」
「はいすいません」
やけに意気揚々としたイエイヌの勢いに押されっぱなしだ。それだけ心配してくれていたのだろうから、それはそれで嬉しいことだ。
それにリハビリと思えば体を動かすのも悪くない。考え事ばかりでは体だけでなくその内思考までなまってしまう。
そう言えば……アードウルフというフレンズはどこに居るのだろうか。あとでお見舞い……いやお見舞いとは言わないか。顔を合わせに行くべきだろう。それにかばんさんの目的も追々説明してもらう必要がありそうだ。
俺はイエイヌと共にやけに天井の高いリノリウム張りの廊下を歩きながら、あれこれとこれからの過ごし方について考えるのだった。