1しか知らない男が2の世界へ来てしまいフレンズに求められまくるお話(完結) 作:らんどまーく
「行くぞー!」
「はーい!」
50メートルぐらい離れた所でイエイヌが元気に飛び跳ね、俺は手にしたフリスビーを手首のスナップをきかせて投げ放つ。黄色い円盤が灰色の空を真っ直ぐ突き進み、受け取るべき相手のはるか上を通り越そうとするが、
「とうっ!」
さも当然のようにその場で特大のジャンプを決めフリスビーを捕まえるイエイヌ。芝生の上にすとんと着地した彼女がにこにこと笑みを浮かべている。
もはや普通の遊びでは満足してもらえそうもないな……。
「投げていいよー」
何度も往復で走らせていたのでキャッチボールのように投げ合いっこを始めることにした。
「はいっ!」
「飛ばすねぇ……!」
イエイヌが軽い力で投げ返したフリスビーは俺が投げるよりも一段階高い位置を飛んだ為、追いつこうと全力で後ろへ疾走する。そして研究所の建物の傍に鎮座する謎のオブジェ(ただのデカい岩を適当に積み重ねたようなやつ)を蹴り上げて跳躍の高度を上げようと試みた。
「っ?」
オブジェを踏み切る際に建物の窓から覗く誰かが見えた。白と黒の髪。
「っと」
俺は何とか空中でフリスビーをキャッチし3点着地を決める。特に足腰に異常もなく、数日ベッドの上で寝た人間とは思えない体のキレも合わせて自分がセルリアンだという自覚がここにきて強まった。まあ、それはどうでもいいことだ。
さて、俺はオブジェの隙間から向こう側の窓を眺めるが、こちらを覗いていた人影は既に消え失せていた。
「どうしましたご主人?」
尻尾を振りながら寄って来たイエイヌが尋ねる。質問に答えられずフリスビーを両手で弄びながら空を見上げれば、都合よく灰色が濃くなり始めている最中だった。
「……そろそろ戻った方がいいかと思ってね。また雨が降りそうだ。遊び足りなかったらもうちょっと続けるけど、どうする?」
「いえいえ満足できました♪ ちょっとお腹も減りましたし戻りましょう!」
「オッケー」
俺は彼女に微笑み、手を繋いで研究所内へと戻るのだった。
レストルームにて紅茶を味わいじゃぱりまんをつまむ、というのんびりとした時間を過ごした俺は気がかりを解消する為にかばんさんの研究室へと赴いた。
「アードウルフさんですか?」
快く俺の訪問に応じてくれたかばんさんはデスクの上で複数のタブレットを用い、何かしらの作業をしていた最中であった。
なおイエイヌは居ない。博士と助手に美味い紅茶の淹れ方を教えろ、という理由で捕まっているところである。
「ええ。さっきイエイヌと外で遊んでいる時に建物の窓から見えたんです。早めに会っておきたいと思いまして」
今頃何杯もの紅茶を淹れては飲みを繰り返しているだろうイエイヌに心の中でエールを送りつつ、数日前にセルリアンから救い出したフレンズを思い浮かべる。
一瞬の出来事であったが、あの時の彼女の悲鳴は今でも耳の奥にこびり付いている。とても楽しい出会いとは言えなかったし、この施設に留まっているということはトラウマを抱えている可能性も十分にあるということ。
トラウマの原因かもしれない奴が直接会いに来れば怯えるだけかもしれない。ただ、できるだけ早く彼女に会って区切りを付けたい――そういう欲求がずっと燻っていた。
「その子が大丈夫なら、ですが……」
言外に「助言をお願いします」と訴えつつ、俺はかばんさんの返答を待った。
姿勢よく椅子に座った彼女は目線を扉の方に向けて、
「会うのは平気だと思います。でも……」
「でも?」
「ええっと」
かばんさんの言葉は歯切れが悪い。なぜか気恥ずかしそうに両手の指を絡め、忙しなく左右に目を動かしている。そうして彼女の綺麗な瞳が何度か部屋の右から左を往復し、じっと答えを待つ俺の顔で止まった。
「は、発情、するかもしれませんし……」
「自分にですか?」
手の平を胸に当てながら問うとこくりと頷きが返ってきて、少しの間沈黙する。
「それでも会いたいんです。されたらされたで……まあ、減る物でもありませんから」
「大丈夫、なんですね?」
「ええ」
「……分かりました、ではご案内します」
かばんさんに案内されたのは俺が眠っていた部屋と同じ列の一室だった。名札などがある訳でもなく、どれも同じ無機質なドアに見える。
「アードウルフさん。かばんです。入ってもいいですか?」
中から小さく肯定の返事があり、彼女に続いて部屋へと入る。室内はやはり俺の居た部屋と似ており、家具と呼べるものは小さなテーブルとラック、そして医療用のベッドだけである。どれも画一的で温かみに欠け、ここがヒトのテリトリーなのだと主張せんばかりだ。
視線を戻すとドアの傍に立っていたアードウルフと目が合った。初めに会った時と変わらない、ツリ目なのに垂れ下がった眉が幸の薄そうな雰囲気を醸し出している。
「ひゃっ」
喉をすぼませたような声がして、直後に黒い尾が部屋の奥に備えられたベッドの下に滑り込んで行った。けものらしい身のこなし、と褒めておくべきなのだろうか。
かばんさんは困った顔をしてベッドの近くでひざまずき、下の隙間に向かって説得を始めていた。
「アードウルフさん。アードウルフさんってば。今朝も言いましたけど、ミレンさんはあなたを心配して会いに来たんですよ。お願いですから出てきてください」
「は、はい……ひぇっ」
少しかかりそうかと待ちの姿勢に入った瞬間説得成功。かばんさんの手をとって立ち上がったアードウルフは俺の姿を認めるやへっぴり腰になり、自然とベッドの上に尻もちをつく形になる。
穏やかに、そして自然体で話しかけてみよう。神経質になっている相手はこちらの感情をより機敏に察知するものだ。
「こんにちはアードウルフさん。自分はミレンといいます。元気にしていましたか?」
「は、はい。あの、ア、アードウルフ、です……えと……あ」
「ん?」
「……ち、血が! 血がたくさん……!」
アードウルフは唐突に俺を信じられない物を見るような目で見つめ、更にうわ言を発しながらがくがくと震え始めた。
やはり先日の精神的ショックは大きかったようだ。血、というが俺の着ている患者服は青。そもそも赤色が部屋のどこにも存在せず、彼女が脳内の幻を今の俺に映し込んでしまっているだけということは容易に想像できる。
適当になだめて悪化されては元も子もない。俺は錯乱した彼女に接する方法が思い浮かばず、ひとまず視界から消えてしまおうかと退室することすら考えた。
「アードウルフさん。大丈夫、大丈夫だよ。もうミレンさんはすっかりよくなったんです。大丈夫……落ち着いて。大丈夫……」
たじろぐ俺と違ってかばんさんは素早く動いた。彼女は正面からアードウルフを抱きしめて、頭を撫でながら我が子にするように優しい声色であやす。そうするとアードウルフの震えは徐々に収まって、先程の取り乱した時とは正反対の視線をかばんさんの肩越しに向けてきた。
「ご、ごめんなさいミレンさん。かばんさんから聞いてはいたんです。でも、どうしても思い出しちゃって……怖くなって。本当にごめんなさい。元はと言えば私のせいなのに……」
すごい、まるで魔法じゃないか。
俺はかばんさんに賛辞と敬意とを心の中で表しながら2人の傍に歩み寄り、潤んだ瞳に向かって笑いかけた。
「いいんですよ。あなたが無事で居てくれてよかった。それにほら、自分だってもう回復しましたから」
「ほ、本当ですか……?」
「本当本当」
「でもでも、お胸にぽっかりと穴が空いてて」
「穴?」
精神的な意味で、というならば中々に詩的なことだが。
今回は違う。あの時は鉄柱が貫通していて穴も何も見えなかったはずだ。
「アードウルフさん、私がミレンさんに応急処置をした際に気絶してしまったんです。その……刺さっていた電灯を博士と助手に引き抜いてもらって」
「ああそういう……」
かばんさんの耳打ちになるほどと頷き返す。きっと辺り一面がコーラのボトルをぶちまけたような惨状だったに違いない。アードウルフはその出元となった「穴」を見てしまったという訳か。
「やっぱり……ま、まだ痛いですよね? わ、私のせいで……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
ぶつぶつと念仏のように懺悔を繰り返すアードウルフ。光を失った目が合わさって負のオーラが充満しているかのようで、一刻も早く彼女の心の重しを取ってやらねばという使命感が胸に満ちる。当然穴は開いていない。
「本当に大丈夫ですって。ほら、もう傷跡だってないでしょう?」
「きゃっ!?」
「ごめんなさい失礼しました大変申し訳ありません見なかったことにしてください」
だからと言っていきなり上着をはだける奴があるか。アードウルフよりも近くにかばんさんが居るのにいったい何をやっているんだ、俺は。見ろ、お前の地肌など見るに堪えないと言わんばかりに両手で目を覆って……これが生まれ故郷ならとっくに警察に通報確定――
「あ、あの、よく見えなかったです」
「はい?」
アードウルフが手を挙げて言い、こちらは意味が理解できずに固まってしまう。
「み、見せてください。ミレンさんのお胸」
「えぇ……」
再度解放の要求をされるとは思わなんだ。叩き付けられた言葉も男女が逆なら完全な犯罪である上に、何故かまとわりつくような視線を
「ほ、本当に穴が空いていないか気になるんです。穴がなくても、その、傷があるかもしれませんし、わ、私を心配させないように我慢してるんじゃないかって……あの……だから見ないと気が済まないというか、安心できないというか……」
とても真剣な眼差しだった。若干早口だったその言葉が真剣な依頼だと信じ込んでしまうほどに。
「わ、分かりました」
勝手に自分から脱いだ時は何のプレッシャーもなかったのに、いざこうしてじっくり見られながらとなると緊張してしまうのが情けない。あと正直なところかなり恥ずかしい。散々フレンズを抱いておいて何を今更と思わんでもないが、今回は雰囲気や意気込みという要素において異なる。
若干まごつきながら紐を緩め胸板を空気に晒すと、ちりちりとした視線が集まるのを感じる。かばんさんは顔を横に逸らした。
「はい。何ともないでしょ?」
「すごい……」
「ほっ」
かばんさんの横顔はチラチラと伺う横目と紅潮した頬。アードウルフの方は安心の呟きが漏れていた。
「も、もういいですかね」
「あ、ま、待って! さわらせてください!」
「えぇ……それは流石に、ってうわっ」
ぴとっ。
こちらが拒否する暇を与えずアードウルフの両手が伸び、俺の胸に押し当てられた。
「とってもかたい。それに温かい……でも、きっと痛かったですよね……?」
「う、ちょ」
すりすりすり……。
ドレスグローブを着けているアードウルフの指はさらさらとした感触で、壊れ物を撫でるような手つきも相まってくすぐったいような、それでいてじれったさを感じる快感が広がって行く。
「いたいのいたいのとんでけ、いたいのいたいの――」
すりすりすりすりすり。
もう止めさせるべきだ。煩悩に侵されつつある脳が苦し紛れの警告を鳴らし始めた。
俺は立ち上がってアードウルフの手から逃れようとするも、追い縋って来た彼女の手にはだけた上着を掴まれてベッドへと引き込まれてしまう。
「あ、アードウルフさん。痛くないから、もう大丈夫だから。放してください、いやマジで放して」
「ミレンさんがよくなりますように。ぺろぺろ……」
「聞いてないし、うぁっ!」
ぬめる舌先によってもたらされた刺激に思わず情けない声を上げてしまう。
細腕にどれだけの力が込められているのか、上から組み敷くアードウルフに身じろぎでしか抵抗を示すことができずなすがまま。彼女と言えば一心不乱に俺の胸板にちろちろと舌を這わせていて、白い髪とその継ぎ目の黒いポニーテールが揺れる様だけしか見えない。
「かばんさんちょっとお助け――」
「あ、あわわわ」
たたたたっ、がらっ、ぴしゃん。
おい逃げやがったぞあのヒト。さっきの頼りになる大人の女性はどこへ行った。いや、なんか初心な素振りはあったけどまさかここまでとは。
「あれ? ミレンさんのおまたが腫れています。もしかしてここもお怪我を……?」
「ちゃうて」
どういう思考回路で出てきた推測だというツッコミも間に合わず、患者用の薄いズボンはフレンズのおぼつかない手つきでも簡単にずり下げられた。すると幕を張っていた
「こ、こんなに大きく腫れあがってる……い、痛そうです。ちゃんとこちらもおなめいたしますね……」
「待っ」
ぺろり。
「っ!」
根元から先端へ通過した生暖かい感触が口を封じた。
そうして俺が黙ったのをどう受け取ったのかは分からないが、アードウルフは脈動するペニスを舐め回し始める。
「ぺろ、ぺろぺろぺろ……」
まるで獣が自身を労わるように、快楽を目的としないそれは感じない竿を丁寧になぞり上げてくる。手は一切使わず、顔と舌だけを動かしてペニスに唾液をまぶしているのだ。
アードウルフの純真な目は時々脈動するペニスだけを追っていて、もう胸の傷どころか俺の顔すら視界に入っていないようだった。
「ぺろぺろ、どんどん腫れてきます……どうしたら……ぺろぺろぺろ……」
君が舐めてるからだろ、と言いたくなったが数日間の禁欲生活が理性のブレーキを駄目にしていた。通常であれば軽く受け流せるはずの舌技にも大きく揺さぶられてしまう。
「アードウルフさん、先っぽを重点的に舐めてくれないかな」
そもそもこうなることを心のどこかで期待していたのだ、自分は悪くないのだ、フレンズがエロいのが悪い――などという言い訳ラッシュで容易く撃沈されるのが男の性なのだろうか。いやそんなはずはない、これは性欲を発散できていないせいである。やはりしょうがないことなのだ。
「ふぇ? は、はい。分かりました」
意外にも彼女は素直に言うことを聞いてくれた。これが行為の中止を乞う言葉ならば無視されていたに違いないという確信もあるが、もはやそんなことを口にする理性は脳内と言う戦場で白旗を振っている。
「ちゅ、ぺろぺろぺろ……」
真っ直ぐ突き立った先端に集中してくれたことでアードウルフの表情がこちらからも見えるようになる。相変わらず熱に浮かされたような淫靡な顔をしているが、瞳には理性と本能がせめぎ合って混ざったような不思議な光が宿っていた。
「こうしたら痛くないですか? もっとして欲しいことがあったら言ってくださいね。何でもしますから」
不意に目が合うとアードウルフは元々垂れ下がった眉を更に申し訳なさそうに下げて言った。
そんな彼女を見て俺は想像する。罪滅ぼしや謝意といった「ヒトらしい感情」が彼女の獣としての本能を抑え込んでいるのでは? と。
「先っちょだけじゃなくてちょっと膨れてるところも舐めてくれないかな。溝をなぞる感じで」
さて、もう面倒な考え事はやめよう。今はただ、この子の献身(と言っておく)に身をゆだねよう。
「ふぁい。んむ、れるれるれる……」
「っ……!」
アードウルフがここに来て本気を出したのか、カリを精密に抉るような舌先の動きに意表を突かれ腰が僅かに浮き上がる。
「そ、そうそう、いい感じ。ちょっと吸ったりもしてみて」
「んん、ちゅるるる。ちゅるるるる」
「くっ……いいね……!」
腰の奥から亀頭へと血流が吸い上げられているかのような刺激が断続的に続く。予想以上の快感で腹筋に込めていた力が抜け、半分起こしていた上半身が再びベッドに沈みそうになるのを努力して堪えねばならない。
「れるれるれる、ちゅるるるるっ、れるれるれるっ」
アードウルフの視線は俺の顔へと注がれている。俺が指示した通りの動きを口内で繰り返しながら、しかしそれは複雑な舌の動作を伴っていて飽きさせない。その上、可愛いフレンズが自分のペニスを咥えているという背徳感が更に快感を助長した。
「ア、アードウルフさん。そろそろ出るから、口を離した方が……」
「んーん。ちゅるるる、れるるるっ」
それは「いいえ」か「だめ」か、どちらかは分からなかったが、彼女が迸る精液をそのまま受け止めようとしていることだけは理解できた。俺も無理に逃れようとはせず、見つめてくるアードウルフにそのまま溜まっていた数日分の欲望をぶちまけた。
ビュクルルルルルルッ!! ビュルルルッ! ビュルルルルルルルルルッ!!!
「んぐぅぅ……!? ん、んん……んぐ、んぐ」
初めの突出には目を見開いていたものの、すぐに彼女は喉を鳴らして放たれたものを飲み下して行く。長引いた行為に赤らんだ顔はひどく妖艶で、伏せたまつ毛はふるふると細かく揺れていた。
「ちゅるちゅる……ちゅっ」
最後の1滴までを優しく吸い上げて、満足して萎びて行くペニスを解放する間際には舌で労わるようなキスを施してくれた。
「やっと腫れが引きました。もう痛くないですか? 何かして欲しいことがあったら遠慮なく言ってください。私、恩返しをしたいんです」
一途な献身と謙虚な性格はとても好ましいものだ。だからこそそれ以上は俺も望まず、心からのお礼を述べ、それでもと手を伸ばす彼女をやんわりと断って部屋から引き下がった。
廊下を歩きながら考える。
あの悲惨な雨の日に区切りを付けたい。そう考えていたのはアードウルフもきっと同じだったのだろう。
「しかし結局エロいことに走っちゃうの、どうにかならんかね……」
イエイヌが嫉妬深い性格でなくてよかったと心の底から安堵する自分に、思わず苦笑いが漏れた。