1しか知らない男が2の世界へ来てしまいフレンズに求められまくるお話(完結) 作:らんどまーく
まあ色々と思う所はあるんですけど
とりあえず言いたいことは私は待つの慣れてないのでイエイヌちゃんの登場マジであくしろよ(1コマ顔チラ見せで無事死亡)
今回は久々にミレンがアレなことになるのでお願いします
俺達はフィルタリング機構のある中央機関室へ一路前進。
まずは最後のエレベーターまで伸びる通路区間、その行く手を阻むセルリアンの群れを排除する。
「えいっ!」
先んじて俊撃を仕掛けたチーターの爪が先頭のセルリアンを弾き飛ばした。
速さに特化した彼女の攻撃は石を守る殻に阻まれ、1撃だけでは殻にヒビが入るのみだ。
「やっぱり殻付きってめんどくさいわねっ!」
──ころす
──ころす
──ころす
チーターの苛立ちが向けられる対象、それらの殆どはインガが身を挺して封印していた連中の置き土産だった。
異常な攻撃性を見せるセルリアンの群れはヒト由来のモノ。その体色はどす黒く、ガサガサと地を這うムカデにも似た形状はより一層おぞましさを際立たせている。
「チーター! そろそろ戻れ!」
「うん!」
流れる金髪が一瞬で隣を駆け抜け、俺は構えていたサブマシンガンのトリガーを連続で引く。
タタタンタタタンタタタンッ!!
>命中
>セルリアン(小)×3 外殻破壊
「削った! 行けイエイヌ!」
「はいっ!」
チーターと入れ替わるようにしてイエイヌが飛び出した。銃撃を受け石を守る殻を失ったセルリアンに抵抗する術は残されていない。
こうなれば後は──
ぱかんぱかんぱかんっ!
飛び石を渡るかのような身のこなし。優雅さすら感じさせる彼女の軌跡に沿って虹色の光線が描かれ、軽快な音の後に残るのは霧散して行くセルリアンだけだ。
「やりました!」
「まだまだおかわりが来るぞ! リロードする!」
「カバーします。サンドスタースパイク展開」
2人は迅速に元の配置へ。リロードの隙はラッキーがポーチからばら撒いた特殊なまきびしが埋める。
セルリアンは狭い通路の奥から次々に現れた。こちらは緩やかだが確実な地歩を固め、進む。
すなわち速力に優れるチーターが攪乱と先制攻撃を担い、彼女がバテる前に下がらせて俺が銃撃を加え、最後にイエイヌが仕留める。この繰り返しだ。
「クルーのIDタグ反応を検知。距離10、前方の十字路を右に曲がってすぐです」
「了解。確認する」
【IDNO.0133】
ステータス【死亡】
通路の途中には遺体が散在していた。結晶に包まれたそれはやはりヒトで、インガと違って既に完全な死体だった。
俺と同じセキュリティクルーの制服を纏う男の胸には複数の穴が空いている。
銃で何発も撃たれたようだ。奇妙に折れ曲がった足はくずおれた瞬間に関節が外れたのだろう。
「っ!」
イエイヌかチーターかどちらとも分からない声がした。大きな悲鳴は上げず、動きも鈍らないのは戦いの高揚で麻痺しているからだろうか。それとも、もっと酷い状態で保存されていたインガを見たからか。
「眠れ」
遺体は旧式の小銃を握り締めていた。インガの仲間であることはほぼ間違いない。
そして、薄く虹色に透き通った結晶にはやはりセルリアンの石に良く似た物体が浮き出ていた。
ぱかん
インガの頼みだ。
木刀で切り払い、終わらせた。
──芯の部分が剥き出しに──
──ろ過する為のシステム──
「ミレン、報告します。フィルタリング機構の出力上昇を確認しました。現在の出力は20パーセント。フィルター再発生の閾値は90パーセントです。注意してください」
今は目標に集中しよう。
脳裏に少し前の会話がよぎったが頭の片隅へ追いやる。
「……急ごう」
「分かったわ」
振り返って十字路へ戻る。
ラッキーのセンサーとイエイヌの鼻に反応はなく、先にチーターが小走りで角を曲がろうと身を翻す。
ぞわり。
その時、前触れなく俺の首筋に悪寒が走った。
「っ、待て!」
「えっ?」
>攻撃軌道予測【セルリウム含有弾(小)】
赤い警告ラインが空中に表示され、その軌道はチーターの頭部を貫く。
狙撃──!
「デコイ散布」
俺は彼女を引き戻そうと手を伸ばし、ラッキーはポーチ側面から小型のロッドを射出。
致死回避の即応はしかし、間に合わなかった。
──ッダーン!
何か重たい物が落下したような音が遠く右手から響き、チーターの頭が勢い良く反対側に傾いた。
さらりとした金髪の一部が千切れ、ゆっくりと宙を舞う。
「いったーーーい!!」
「くっ!」
「チーターさん!?」
俺は銃を放り出し、その場で頭を抱えようとするチーターを今度こそこちら側へ引き寄せた。
同時にラッキーが放ったデコイロッドが上下に分裂し、虹色の光を含む白煙を噴射する。
「狙撃地点を算出。ロングレンジサンドスターミサイル発射」
ラッキーのポーチの中で最も大きいポケットの蓋が開き、そこからロケット花火の先端のような物体が真上に打ち出される。
バシュッ……!
頭上まで浮かび上がったそれは噴炎と共にL字の軌道を描き、曲がり角の先に消えた。
「大丈夫かチーター……!?」
「頭痛い。ロードランナーとごっつんこしたぐらい痛い」
チーターは両手を被弾した辺りに添え、眉間に皺を寄せて悶えている。
致命傷ではない。とはいえ安心もできない。
「よしよし、手をどかすんだ」
優しく、無意識の抵抗が無駄になる程度の力を込めて彼女の手を引きはがす。
着弾した位置に黒い液体が纏わり付いており、そこからチーターのこめかみに一筋の赤い液体が伝った。
「ああっ、チーターさん! 血が出てますっ!」
「うそっほんと? ならプロングホーンとごっつんこ並みね……」
俺の心胆から温度が失われて行く。
──どーん……。
「セルリアンの撃破を確認しました。勝手な行動をして申し訳ありません」
木霊したミサイルの着弾音のお陰で、どうにか我に返る。
「いいさ。そういうのはどんどんやってくれ……チーター、今から応急処置をする。染みるから暴れないように」
「え、ちょっとまいたたた!」
おくすりセットを使用し手早く消毒と止血を行う。
軽い切り傷による出血はすぐに止まったが、傷口に纏わり付くセルリウムがどうしても取り除けない。
● チーター【セルリウム汚染度:中】【軽傷】
>セルリウム汚染はビースト化現象の主要因である
>フレンズのセルリウム汚染度、及びKP値残に注意せよ
セルリウム汚染。これは単純なサンドスターの摂取だけでは容易に取り除くことができない。必要なのは時間か、フィルタリングだ。
サイドポーチからシリンジケースを取り出す。中身は今朝博士達から渡された特別な薬剤。フレンズ相手ならこれ以外の
俺は片手でチーターの肩を抱き、薄く水色に光る液体で満たされたシリンジの保護カバーを外す。
「あぅ。ミレン……♡」
「ちょっとチクっとする。じっとしてなよ」
「えっ」
惚けたチーターの口元が引きつるが、構わず彼女の腕を覆うロンググローブを捲ってスティック型のシリンジを押し当てた。
「いったい!」
>セルリウム汚染度低下
● チーター【正常】
効果はてきめんだった。傷口は塞がり、付着していたセルリウムも消え去る。
「うー……もうなんなのよー。いきなり何か頭に当たって痛いし、ミレンに注射までされるし」
「だ、大丈夫ですかチーターさん?」
「ん、へーきよへーき。イエイヌも気を付けてね。何か飛ばして来るセルリアンも居るみたいだし油断してると私みたいになるわよ。ちょっと得した気分になれるけどね♪」
「う、うーん。痛い思いをするのはちょっと……注射も嫌ですし」
尻尾をくねらせるチーター、そして空になった注射器を仕舞う俺をチラチラと横目で伺うイエイヌ。
どちらも俺に気を遣っているのが分かる。彼女達はわざと緩い会話を交わしているのだ。
「チーター……悪かったよ。俺がもっと──いっつ」
後悔に包まれかけた俺の額をチーターの指がぴしりと弾き、じーんとした痛みが広がる。
「これぐらいの痛さよ。だからそんなに落ち込まないで、ね? それに急がないとでしょ」
ウインクする彼女に何を言うこともできず、俺は床に落としていた銃を拾い直す。
曲がり角に蔓延していたデコイの残留は、まだ少し煙たかった。
それから幾度かの交戦を経て、ようやく防火壁が封印していた通路からセルリアンの反応は消失した。
その間に終わらせた数名のクルーの亡骸は全てIDを持っており、チーターを負傷させたであろうセルリアンの出元である結晶体にはそれがなかった。
「ラッキー、これか?」
その結晶体は黒く、完全に不透明だ。
通路の最奥近く、エレベーターのドアにへばり付くようにして存在するそれからたった今もセルリアンが湧いたのだ。
「気を付けてミレン。またセルリアンが出てくるかも」
「大丈夫。分かってるよ」
やはり殻付きの、ムカデに似たセルリアンだった。
飛びかかって来たそいつに俺が弾丸を浴びせ、チーターが叩きまくり、イエイヌがトドメを刺したのはつい数秒前のことである。
「デバイスID、及びクルーIDは無効な値です。クラッキングを受けた形跡が認められます。データ内部に上級研究員・インガによって製作されたウイルスコードを確認しました」
「……なるほど。良い対抗手段だ」
内部にデバイスの反応もあるにはあるが、そのデータはOS……LBシステムごと破壊されている。どうやら、中身のヒトはインガ達を襲った連中の1人であるようだった。
これでようやくイマが残したテキストファイルの意味も理解できた。
インガ達を襲った連中はデバイスを使わなかったのではなく、使えない状態にされていたのだと。
「この銃は……」
結晶からはみ出た銃器は見知らぬ近未来的な形状で、スキャンの結果、使用する弾丸はサンドスターを含まない鉛玉ということが判明する。遺体数の比率を考えれば、この武器がどれだけの性能を誇っていたかは想像に難くなかった。
「このセルリウムの塊……この間も同じものを見た気がします」
「なんか嫌な感じね……」
左右の2人は結晶に嫌悪を見せた。特にチーターはいつでも動けるように前傾姿勢を保っている。
結晶の形はヒト型。下は大きく、上は1本だけ細い棒が伸びたような……どうやらエレベーターのスイッチに手を伸ばした状態で死んだらしい。イエイヌが言っているのは研究所跡の地下で見た結晶体のことだろうが、あれとの違いは黒の濃度とクルーIDの反応か。
そういえばつい先ほど終わらせた正規IDを持つクルーはスライドが引き切ったハンドガンを手にしていた……振り向けば、彼の遺体があった場所とここは射線が通っていることが分かる。
つまりこの男は逆襲されたのだ。とはいえ、1ミリもこの結晶体の中身が可哀想などとは思わなかったが。
「とりあえず──」
まともなヒトの邪魔どころか、危害を加えるようなクズにかけてやる葬送の刃は持ち合わせていない。
おまけに
おもむろに足を振り上げる。
「邪魔だな」
グシャッ
これはこれでブーツと制服が汚れるか。
かと言って銃を使うのは弾がもったいない。
「ご、ご主人?」
「行こう」
結晶は踏み付けた場所から黒い塵となって四散する。木刀でなくとも処理は可能らしい。
一瞬纏わり付いた黒い物体を壁に擦り付けるようにして落としつつ、インガから受け取った権限でエレベーターを起動させ全員で乗り込む。
閉まり行くドアの向こうには、無数の弾痕と血痕ばかりが残っていた。
「ここがちゅーおーなんとかしつ……?」
エレベーターは終点で停止した。
800階、地上3000メートル付近……俺達が今立っている場所は間違いなく中央機関室のある階層で、衛星軌道宇宙ステーションまで直結するエレベーターの建設が途絶した地点でもあった。
「これってサンドスターですよね。さっきの……インガさんが居た場所と同じ」
「イエイヌってば。それぐらい見れば分かるわよ」
穏やかな口調、しかしへの字に口を曲げたチーターが睨み付けるのは目の前の壁だ。
薄っすらと透き通ったそれはエレベーターを降りてすぐを完全に密閉し、機関室への立ち入りを拒否するかのように立ち塞がっていた。
「大丈夫、私達で壊してやりましょう!」
「はいっ!」
チーターとイエイヌが爪や蹴りを交互に入れるもびくともしない。僅かに削れはすれど、向こう側の見えない厚みを取り払うのにどれだけの時間を要するだろう。
「ミレン。フィルタリング機構の出力は現在50%にまで上昇しています」
そして告げられる無慈悲な時間制限。もはや間に合わない。
このまま、こんなことで終わるのか?
文字通り命を楔としていたインガ、そして彼の仲間のクルー達が抱いた未練を浄化できぬままフィルタリング機構は破損し、この島に住むフレンズ達は気まぐれな黒い雨に曝され続け、不運な子はかばんさんとサーバルのように──
「クソが!!」
忌々しい虹色に拳を叩き付ける。
視界の端でイエイヌとチーターの尻尾がビクリと跳ねた。
何の解決にもならない八つ当たりだ──
無力感と絶望。
握り拳は力なく解かれ、腕は頭と共にだらりと垂れ下がる。
「あっ!?」
今度は俺がビクリと反応する番だった。俯きがちに左手を見れば、甲高い声を上げたチーターの尻尾が針金のように立っている。
「ご主人……」
俺を呼ぶ右手を見れば、イエイヌの丸まった尻尾が中途半端な位置で固まっている。
「か、壁を見てください……!」
顔を上げ、驚愕した。
パキパキパキパキパキ────
「これは……!?」
思わず後退った。
2人の攻撃で傷一つ入らなかった壁、その一面にハチの巣のようなヘックス模様のヒビが無数に繋がり、広がって行く。
そして──
パッリーーーンン
どこか軽快にも聞こえる音と共に、粉々に砕け散った。
「す、すごーい! 割れた、割れたわよミレン!」
「本当にすごいですご主人! どうやったんですか!?」
「い、いや。分からない。全然、さっぱり」
興奮した様子で左右から抱き着いてくる2人。俺はしどろもどろになるだけ。
訳が分からない。
だが、ひとつだけ確実に理解できることがある。
「とにかく進もう。あの扉の向こうが──」
「中央機関室です」
道は開けた。
扉の前で小ジャンプを繰り返すラッキーの元へ。
「セキュリティクリアランス6をクリア。クルーID0925、ミレン。正規登録済みラッキービースト2型──」
ラッキーが腹のレンズをピロピロ光らせ、やがて塔の中で最も重要な扉の封印が解かれる。
「あの柱……すごく不思議な形。ツタがいっぱい生えてるみたい……」
開かれた浄化の間。その広大な空間の中で最も目を引いたのは中央の巨大な円柱だ。
電気回路を始めとする部品はパネルなどで隠されておらず、見上げる上は高く高く、まるで機械で造られた大樹のように大量の配線を天面まで張り巡らせている。
「色んな匂いがします。サンドスター、セルリウム……セルリアンも」
鼻をひくひくさせるイエイヌが眉間に皺を寄せた。
周囲には何メートルもの高さまで積まれた建築用の足場が残され、殆どガラクタ置き場になった壁沿いは暗闇と化している。これではどこに何が潜んでいるか分かったものではない。
俺も首筋がじりじりして止まらなかった。どこかから強い憎悪を向けられているような、気味の悪い感覚だった。
「2人共周囲に気を付けろ。ラッキー、どうすればいいか指示をくれ」
「機関部の柱の東西南北、それぞれ定められた位置に四神をセットする為のスロットが設けられています。現在はダミーがセットされていますので、順番に入れ替えて行きましょう」
巨大な柱を1周しつつダミーと本物の四神とを入れ替えて行く作業だ。
柱にはサーバールームにありがちなラックが埋め込まれている。現在目の前にあるそれは西に位置する『白虎』のスロットなので、時計回りに北、東、南の順に回って行くことにした。
「『白虎』の固定ロック解除。ダミーを引き抜いてください」
「ぐっ、結晶で固着している……!」
ダミーの頭部が露わになるも、スロット内部を埋め尽くすサンドスターの結晶が接着剤の役目を果たしていた。俺の力では無理だ。
「わたしがやってみます!」
「そうだな。頼む」
「私は周りを警戒してるわね」
今までもそうであったように、こういう時はフレンズの力が頼りになる。
イエイヌが爪をダミーに引っかけ、力を込めた。
犬歯を剥き出しにしたイエイヌの瞳が虹色に光り──
「ぐ、るゥーーッ!!」
ばきいぃぃんっ!
「取れました!」
「流石だイエイヌ!」
「えへへ……♪」
ダミーの石板を高く掲げしっぽをばたつかせるイエイヌを撫でながら、用意していた本物の四神との違いを少しだけ見比べる。
材質と形状はそっくりだ。しかし四聖獣をかたどる白い線はまるで趣が違う。ダミーが精巧な模写のようなそれであるのに対し、本物は抽象的な幾何学模様として描かれているのだ。
ダミーの方も無駄に力作である。これでは騙されるのも無理はないかもしれない。
だがもしこれが偽物だと分かる程度の代物だったなら、あるいは──
「……『白虎』の石板をセットする!」
無駄な思考だ。弄ぶ手を止めてダミーをガラクタ置き場へ放り捨て、本物をスロットに挿し込んだ。
カチャン。
機械式の錠が閉じる無機質な音。
それが、切りくずのように残った過去への妄想を完全に断ち切った。
「『白虎』再ロック。現在のフィルタリング機構出力は60パーセントにまで上昇。次へ行きましょう」
「了解。イエイヌ、次もお願いするよ」
「お任せください!」
「私、私も!」
「ああ。もちろんチーターも」
イエイヌとチーターのお陰でダミーの入れ替えはスムーズに運んだ。
北の玄武、東の青龍の入れ替えを終え、最後は南の朱雀。
「『朱雀』の固定ロック解除。イエイヌ。ダミーを引き抜いてください」
「はい!」
「ねえ、ミレン……」
「分かってる」
最後のダミーを引き抜かんと気合いを入れるイエイヌを注視しつつ、彼女を守るように銃を構えた俺はチーターの不安げな眼差しに頷いて応じた。
このフロアに入った直後から感じていた重苦しい敵意、憎悪の類は次第に強さを増している。
それはこの機関室を満たさんとする勢いで、周囲を警戒していたチーターの野生の勘にも引っかかったらしい。
「ラッキーのセンサーに反応はない。それに仕掛けるなら……もう遅すぎる」
やるならとっくにやっているはず──
銃を再び握るようになってから錯覚したのか、俺は襲い来るセルリアンにヒトの動きを当てはめ出していた。
「ご主人、最後の四神をくださいっ」
「分かった」
それがいけなかったのだろう。
「っ!?」
イエイヌの差し出すダミーと本物を受け渡ししようと手を伸ばした瞬間、まさにチーターが撃たれた寸前に感じた寒気と同じ感覚が走る。
それは、あらゆるセンサーより早く俺の神経に警告を発した。
──撃たれる
「イエイヌッ!!」
「わっ!?」
>攻撃軌道予測【セルリウム含有弾(大)】
ドダアアーーーンッ!!!!
右手に持っていた四神を放り出してイエイヌの腕を引くと同時に、雷鳴のような轟音があらゆる音を消し去った。
バシッ
刹那、左上腕に感じるとてつもない衝撃と熱。
>警告
【重大な外傷】
退避。
「ク……負傷……デ……イ……全……即……散布」
「ミ……ン……!?」
「ついて来いチーター!!」
鼓膜がやられたのか自分の声すら聞こえず、周りは噴き上がる白煙で塞がれる。
俺はイエイヌを右脇に抱え一直線に疾走し、煙の間に霞むガラクタの山の影に倒れるようにして滑り込む。
>警告
【重大な外傷】
「むううーー!! むうーーっ!!!!」
「声を出すな、出すんじゃない。大丈夫だから」
倒れた状態のまま右手でイエイヌの絶叫を止めた。
彼女の服に赤い液体が雨のように降りかかり、染み込んで行く。それを見て、俺は左手で体を起こすのが
>警告
【重大な外傷】
スライディングの音。
チーターが飛び込んで来た。
「ミレ……んんむーっ!?!?」
「大声を出してはいけません。敵に位置がバレます」
ラッキーがポーチからマニピュレーターアームを伸ばし、自身を抱えたチーターの口を無理矢理閉じさせる。
>警告
【重大な外傷】
熱と共に痛みが濁流のように押し寄せ始めた。
……まだだ。絶対に失神するな。
「大丈夫、だから……」
俺は脳が発する膨大な信号に抗い、必死の形相を浮かべ続けるイエイヌに微笑んだ。
>警告
【重大な外傷】
【大量出血】
【左腕欠損】