1しか知らない男が2の世界へ来てしまいフレンズに求められまくるお話(完結) 作:らんどまーく
それと2のアニメの地形とか施設の設定が少ないのと不明瞭なのとで勝手にオリジナルで設定を付け足してます。
あとキャラの棘も抜いてます。
「朝だ……」
ライブ会場の控室でしっぽりねっとりささやきな夜を過ごした俺ことミレン。ジャパリパークにて2回目の起床は全裸のフレンズを2人もベッドに侍らせた大変爛れたものとなってしまった。寝息を立てるイエイヌとマーゲイに気づかれぬよう静音移動、からの早着替えを済ませ外へ出ることに。
「霧が濃いなあ」
ライブ会場の周りは濃厚な霧に覆われていて陽の光がぼんやりとしている印象を受ける。水辺が近いからなお一層である。
しかしこういう気候は電子機器に非常によろしくない。スピーカーだのライトだのも寿命が縮んでしまう。まあその辺は導入したエンジニアも考えてるか。
……ぽいぽいぽいぽい……
霧の中でいつもの朝体操をしていると特徴的な足音と共にボスことラッキービーストが1人現れる。頭の上にはかごinじゃぱりまん。
「おはようございますボス」
「………………」
ボスはかごを置くことで返答とし、しばらく俺の顔を見つめてから霧の向こうへと消えて行った。
「マジで何とか言ってくれよ……」
俺はもしかするとヒトではないのだろうか。もしくは子供にしか喋らんとか。大人の男単品は客判定しないとかはマジでありそうだから困る。ジャパリパークは家族連れか子供向けのもんだろうし。フレンズ目的の下衆な野郎はお呼びじゃないとか。それも普通に想定されていそうだ。
「まあいいか。完全に無視されてるわけじゃないんだ」
答えのないモヤモヤを感じながらかごを拾う。青い色のじゃぱりまんは少し色がくすんで見えた。
「かばんさんに全然会ってないですって?」
「は、はい」
起きたてマーゲイ&イエイヌと共にじゃぱりまんを食べながら(ちゃぶ台を囲み座布団正座で)こちらの目的について質問してみたらこれである。正直食べていたじゃぱりまんをポロりするところであった。
「どれくらい会ってないんですか?」
「それがどれくらい前だったかも……」
イエイヌの追加質問にも歯切れの悪い言葉が返ってくる。
これはどういうことだろう。かばんちゃんがこのちほー、というより「この島」に居ないというのだろうか。そうなると目的は完全にジャパリパーク探検だけになってしまいそうだが……。
「でもご主人。ぺぱぷのらいぶに来ていたフレンズさんたちの中には最近会った、って言う方も居ましたよ」
「本当? ていうか聞き込みしてくれてたのイエイヌさん」
「はい。ここに来る前にご主人が『ライブに来てるフレンズさんたちに聞きまくるぞー』って言ってましたし……セルリアンとすぴーかーのしゅうり? のあとはご主人がずっと寝てましたので……あっ、も、もしかして勝手にやったらまずかったですか?」
しょげた表情すら可愛らしいイエイヌによる素晴らしいファインプレーである。正直言ってとても嬉しいです。
「全然全然、全くOKだよ。それで何か聞けたかい?」
「えっと、かばんさんはじゃんぐるちほーの辺りによくいらっしゃるそうです」
それを聞いた俺は電子タブレットの地図アプリを開く。…………こっからだとかなり距離あるなオイ、ちょっと想像以上だ。あまり会えないというのはそれが理由かもしれない。
「なるほどなるほど……いやほんとありがとねイエイヌさん」
「えへへ♪」
「ご、ごめんなさい。私あまりお力になれなくて……」
「いやいやいやマーゲイさんが普段頑張ってライブを盛り上げてくれてたお陰ですよ、ありがとうございます」
「へふはぁ♪」
2人にニッコリ感謝の正座一礼。こういうやり取りって本当に気持ちいいと思う。奴隷労働万歳社会じゃこうはいかねーぞありがとうの言葉の価値なんざ1円にもなりゃしないって考えが蔓延してるからほんと酷い。
おっと失礼、現実のギスギスなんぞ要らんわな。
そんなこんなで朝食を終えたら霧も少し晴れてきたので少々早めだが出発することに。アイドルペンギンさん達はまだ来ておらず見送りはマーゲイ1人である。
俺とイエイヌはトラクターに乗車して彼女に別れを告げようとしていた。
「それではマーゲイさんお元気で。何か壊れたら喜んで直しにくるのでどうにかして呼んでください」
「本当にありがとうございましたミレンさん。ミレンさんのお陰で昨日のライブも中止にせずに済んで……あ、そうそう!」
マーゲイは急いで懐から何かを取り出して差し出してくる。
カラフルなペンギンの足型が描かれた……栞?
「ライブ、握手、練習見学付きのぺパププラチナチケットです! お礼になればいいんですが」
あー思い出した! アニメでサーバルちゃんが木の上でマーゲイに見せびらかしてたアレか。
「ありがとうございます。今度観に来ますね」
「はいぜひ! それと……」
ぴょんと身軽なジャンプ。マーゲイの顔が運転席に座る俺のすぐそばにくる。そのまま耳に顔を寄せ、
『まだごほうびをあげてませんから、また一緒に交尾しましょうね♡ご主人♡』
イエイヌの声でそう言うと頬に触れるだけのキスをして地面に降りる。俺は見上げる彼女の赤らんだ顔に若干引きつり笑いを浮かべながら頷いて見せることしかできない。
ええい発車で誤魔化してしまえ。エンジン始動。ドコドコとうるさいエンジン音が水辺の静寂を破り、近くの池でのんびりしていた鳥がバタバタと飛んで行く。
「では行きまーす! ありがとうございましたマーゲイさん!」
「マーゲイさーん! ありがとうございましたー!」
「おふたりともお気をつけてー!」
俺は彼女の姿が霧の向こうに消えるまでちょくちょく後ろを振り返って手を振った。あとイエイヌは身を乗り出して延々と手を振りまくってた。
しかしプラチナチケットか……「アイドルはお触り厳禁」を守る為にさっさと出発したのだが貰ってしまった以上はまた来ないと失礼だろう。
しかし俺のフレンズ発情スイッチ即ONのクソ仕様を考えるとなあ……。向こうが迫ってきたら成り行きでヤってしまう予感しかない。いくらなんでもフレンズ達の憧れの象徴を汚すのは……いやそもそもそれ以外ならOKとか考えていやしないか俺。まずいぞ色々と。
「ねえご主人」
あれこれ考えながらハンドルを握っていると後ろの荷台からイエイヌがひょっこり顔を出す。
「はいはい?」
「ぜったいまたマーゲイさんと一緒に交尾しましょうね♡ごほうびもまだですし♡」
「き……聞こえとったんかーい……」
あの催眠音声プレイもまたやらないと(やられないと)いけなさそうである。
「ようやく霧が晴れてきたなあ」
「お日さまが気持ちいいですー♪」
マーゲイと別れてから少し経ち。
風景を閉じ込めていた霧も薄くなり、陽光がきらきらと朝露を反射する美しい自然の中をトラクターで進んでいる。木々の数がまばらになり所々に大小の軽石が転がる草原へと抜けていたのだ。
「目的地はほてる、でしたよね?」
「うわっ」
言いつつ顎を肩に乗せてくるイエイヌ。先日の催眠音声プレイのせいで耳がやられているのでやめてください的なことをやんわりと申し出ると大人しく引っ込んでくれた。
発情していない時は至って普通である。差が激しい。ということはさて置き目的地についてであったか。
「そそ。このまま進めば『草原ホテル』ってのがあるはずだからそこで泊まらせてもらうの」
予約の電話すら入れてないが。まあどうせ廃墟化してるだろうし従業員など居やしないだろう。下手したらフレンズの住処になっている可能性すらある。そもそも一番の目的は宿泊ではなく――
「とらくたーのしゅうり、です?」
「そうそう修理修理。こいつフレーム以外が結構ガタガタでちゃんとした設備があるところじゃないと元の馬力出ないんだよEV車つったってメンテフリーなわけないしサスは相変わらず底付きしてるし燃調というか電気信号の出力ちゃんとしてんのか怪しいし駆動部も一度バラしてグリスアップしないとだし荷台のふきっ晒しも改造しなきゃだしえーとそれから」
「ごごごご主人っ、ごめんなさいよくわからないです」
「ンンッ、これは失礼」
あいつ機械のことになるとやたら早口になるよな、とか言われるの確定やぞ。フレンズ相手に何機械うんちく垂れてんだか。
あの窮屈な現実に未練でもあるのか?
いや全然。
ともかくだ。
「ちゃんとした道具のあるところでこいつを元気にしましょうってこと。なんかさ、タブレットの地図曰く『お客様の集まるスポットには車両メンテナンスピットあり』だとかで……」
ザザザザザザ…………
「ッ!? ご、ご主人前からっ」
タブレットに表示された説明文を読み上げていたその時、草がやたらと音を立てていることに気付いたのとイエイヌの声によって前方に意識を戻し、
「どいてえええええーーー……!!」
次の瞬間には人影が見えていた。またその誰かが猛然とこちらに向かって走ってきていることも。
「まずいッ!」
「ふわわわあっ!?」
相手の進路を空けるためにハンドルを勢いよく切る。荷台の片輪が浮き上がってイエイヌが悲鳴を上げた。
「えぇいっ!」
ずざざざざざーーーっ!!!
ゴトンッ。
間一髪ですれ違う影。こちらも車体をなんとか安定させて停車する。
「っ、イエイヌさん大丈夫か?」
「は、は、はーい……だいじょぶですー」
荷台の上ではイエイヌが四つん這いなっていた。どうやら爪を立ててこらえていたようである。
スピードが出ていたら横転していたかもしれない……少々注意散漫だったようだ。反省。
「ああ良かった……。そうだ向こうは――」
「ちょっとあなたたち」
うわっ、いつの間にかトラクターのそばに居る。
「ぶつかりそうになったけど大丈夫だったかしら」
高めでハキハキとした女の子の声はやはりフレンズのそれである。ぱっと見では……ネコ科のフレンズのようだ。長い金髪がさらさらと風で揺れていて、イエイヌに似たツリ目の瞼にはアイシャドーのような色が付いている。ただ格好が白いカッターシャツに班模様ネクタイ、スカートとニーソックスなだけに背伸びした中高生に見えなくもない。
「え、ええ。こちらは大丈夫です。あなたも怪我とかは」
「平気よ。そっちが避けてくれたでしょ? 私は急に曲がれないから助かったわ」
「ものすごいスピードでした。匂いを嗅ぎつけたらすぐに目の前でしたもの」
荷台から顔を出したイエイヌの言葉に、ふふん、とそのフレンズは胸を張る。
「すごいでしょ? 何て言ったってこの私は地上最速、チーター様だから。さっきのだって実は本気じゃないのよ?」
誇らしげに髪をすく動作をして見せるチーター様とやら。ここまで自信たっぷりな性格はフレンズの中ではかなり珍しいのではないだろうか。
「すごいっすね」
「すごいです!」
「ふふふ、もっと褒めてもいいのよ?」
なかなか面白いフレンズさんだなあ。
「で、あなたたちはここで何をしてるの? なんだか見覚えのある変なのに乗ってるみたいだけど」
「この先にある『ほてる』に向かっているんです。あ、わたしはイエイヌです! こっちはご主人!」
「名前はご主人じゃなくてミレンです。どぞよろしく」
イエイヌと一緒にひとしきり「すごーい!」の称賛を終えてからの自己紹介の最中である。
放っておくと名前が「ごしゅじん」になっていやしないかと少々不安になるのがイエイヌ流の紹介だ。そもそもご主人じゃないが、というツッコミは早々に諦めた。頑として変えてくれないのだ。
「イエイヌとミレンね。改めて、私はチーターよ。よろしく」
あ、ネコの手。アニメのジャガーさんを思い出すな……。
「ところで『ほてる』って言ったわよね?」
「はい。わたしたち今日はそこで泊めてもらおうと思ってて」
「へえ……この辺りにもあったのね」
よく聞こえなかったがチーターは1人で何やら納得したように頷いている。
「ねえ、よければ私も一緒に行っていいかしら? この辺りってちょうどいい草とか木が殆どないのよ。これじゃ安心して休めないわ」
「わたしはもちろん構いません! ご主人は……」
「そりゃ当然OKですはい」
一抹の不安(襲われる的な意味で)はあったが彼女は話してみた感じ平気そうだしイエイヌにも良くしてくれそうである。これまでの経験上身体接触しなけりゃ大丈夫なはず。それにわざわざ断る理由を探すこともない。
「ありがと♪ じゃあついて行かせてもらうわ」
「よかったら後ろの荷台乗ります? チーターさんの足よりかなり遅いですけどまだそこそこ距離があるので……」
「そういえばこれってめちゃくちゃ遅かったわね……。でもちょっと疲れたし……お言葉に甘えさせてもらおうかしら。よっと」
疲れなど微塵も感じさせない軽やかな跳躍で荷台に乗り込むチーター。やはりフレンズの身体能力は人間の比じゃない。……あとなんかトラクターに乗った経験があるような口ぶりだったな。ちょっと気になる。
「狭くして悪いわねイエイヌ」
「いえいえ。一緒に乗れて嬉しいです!」
「ふふ。そう言ってもらえるとありがたいわ」
野生のチーターというとあまり社会的なイメージはないのだが彼女は随分とフレンドリーである。まあフレンズなんだしそれも当たり前なのかもしれないが。
「それじゃ発車しますよー」
俺は楽しそうに談笑する2人をちらっと眺めてからエンジンを再始動し、今度はわき見をせずに運転しようと気を引き締めるのであった。