「えっと、ご馳走さま、だったかしら?既製品にしては中々悪く無かったわね」
「日本の食に対する情熱甘く見るなよ。まぁ、時折なんで作ったって思うような商品が並んでたりするけどな」
「例えば?」
「ドリアンの文字が見えた瞬間に選択肢から外したな」
「なんでドリアンを使ったのかしら……」
首を傾げるイリヤスフィールに苦笑いで返しながら、食べ終わった食器をゴミ袋へと放り投げてダストシュートに叩き込む。どうやら高貴な暮らしをしていた彼女の口にもコンビニの弁当は合ったようだ。
帰ってきた時は全裸だった彼女だが、今は俺のインナーとワイシャツを貸し与えて着て貰っている。彼女が最初に着ていた服は生憎と昨夜の行為のセックスの最中で引き千切る様に脱がせてしまった、或いは着ながらにしてしまったので着れるような状態では無くなっているのだ。しかも下着も含めて、だ。なのでどうにか着れそうな物を選んでその場凌ぎで着てもらっている。
その結果、出来上がったのがワイシャツ装備の合法ロリである。最高の目の保養になる。
「コーヒーと紅茶、どっちがいい?まぁインスタントとティーパックだけど」
「そうね……なら、紅茶を頂こうかしら?」
食器棚からカップを二つ取り出し、一つにはティーパックを、もう一つにはインスタントコーヒーの粉を入れ、ヤカンで沸かした湯を注ぐ。茶葉から色が出てくる間に牛乳と角砂糖を用意し、出来上がった紅茶をイリヤスフィールの前に置く。コーヒーは俺の前に起き、来客室を想定して配置した、彼女の向かいに置いたソファーの上に腰を下ろした。
「ふぅん……悪くは無いわね。特別美味しいわけでも無いけど」
「ちゃんとしたのが飲みたかったらそういう店に心当たりがあるから連れて行ってやるよ」
「そう……そろそろ本題に入りましょう」
コーヒーに牛乳と角砂糖をぶち込んでカフェオレに魔改造していると、一口だけ飲んだカップをテーブルの上に置き、彼女はそう切り出した。
「間桐誠一、貴方の目的は何なのかしら?敗れたマスターである私を自分の工房に連れてきて、あまつさえアサシンに見張らせるなんて信じられないわ」
「俺がお前をここに連れてきた目的なら、あれだ。お前の持ってる魔力が目的だよ」
予め話すつもりでいたから躊躇うことなく彼女をここに連れて来た理由を話した。
持ち前の魔力回路の本数が少ないせいで、俺は慢性的に魔力不足に悩まされている。アサシンの戦闘と蟲の使役だけでもいっぱいいっぱいだというのに、それに加えて〝汚泥の貴婦人〟も使う事を考えると大赤字になる。聖杯戦争を続けるならばその問題を解決することは決定事項だった。
「バーサーカーに全力で戦闘させても賄えるだけの魔力、それに俺の性癖からお前がドンピシャだったんだよ」
「性癖」
「俺、少女趣味だから」
「少女趣味……」
俺の性癖を知ったイリヤスフィールが遠い目をしながら天井を見上げたと思うと、俯かせながら顔を手で覆った。この反応、遠坂のと似てるなぁと思ってしまった。
ちなみに割合としては魔力が三割程、性癖が七割程だったりする。
「俺からの要求は一つ。聖杯戦争が終わるまで俺の魔力供給源になる事だ」
「ふざけないで!!そんな要求を私が飲むと思うの?」
「飲むさ」
出来上がったカフェオレを一口含み、まだ甘さが足りなかったので追加で砂糖を入れる。
俺は〝識っている〟。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという少女の取り巻く環境を〝識っている〟。彼女の急所になりそうな箇所なんて、既に調べるまでもなく心得ている。
「郊外の森、アインツベルン城。そこにホムンクルスを連れて来てたよな?名前は確か……あぁ、そうそう。セラとリーゼリットだったな」
「ッ!?」
セラとリーゼリット。アインツベルンから連れて来た二人のホムンクルスの名前を出した途端にイリヤスフィールがソファーから立ち上がった。顔は強張っており、困惑と怒気が入り混じったような顔をしている。
「……二人を、どうするつもりなの?」
「さてな、そこはお前の対応次第だ。もしかしたら聖杯戦争が終わったら再会出来るかもしれないし、明日の朝にでも二人の頭部と再会出来るかもしれない」
俺一人ならばそんな事は不可能だが、アサシンがいる。彼なら森に張られている結界を掻い潜りながらアインツベルン城まで辿り着き、セラとリーゼリットを殺して生還する事も不可能では無い。俺がアサシンのマスターであるという事を知っている彼女だからこそ、やりかねない事を理解している。
憤りに困惑、そして焦燥。外見通りに精神が幼いからこそ、彼女は予想外に対して弱く、見た目通りの幼い反応しかすることが出来ない。そんな姿を眺めているだけでも中々に楽しめるのだが、臓硯との約束の時刻が迫っているので悠長にはしていられない。
鞭を叩きつけたのならば甘い飴を、追い詰めたのならば優しく逃げ道を用意してやる。
「お前の知りたい事だって教えてやれるさ。例えば……第四次聖杯戦争、衛宮切嗣とアイリスフィールの事とかな」
「え……」
衛宮切嗣とアイリスフィール、それは彼女の父親と母親の名前。第四次聖杯戦争の最中でアイリスフィールは死亡し、衛宮切嗣もその五年後に死亡した。イリヤスフィールに伝えられているのは衛宮切嗣がアインツベルンを裏切ったという事実だけであって、どうして裏切ったのかという真実は伝えられていない。
全てを知っているであろうアハト翁はその事を決して彼女に伝える事はしないだろう。何故なら、あれは臓硯とは違ったベクトルでの妖怪だ。第三法の成就だけを見据えて稼働する壊れた魔術師。駒である彼女が余計な事をしないように、要らない事を絶対に教えはしない。
「知って、るの……?」
「あぁ。所々に俺の主観が入るかもしれないが、どうして衛宮切嗣がアインツベルンを裏切ったかは間違いなく伝えられる」
「そう、なの……」
「大体、この聖杯戦争におけるお前の役割なんてもう無くなってるんだよなぁ。小聖杯の役割だって、マキリの杯が起動したから無くなってるし」
「待って」
手を突きつけられて止まるように言われたので、それに従って口を止める。手のひら越しに見えるイリヤスフィールは、もう片方の手を顔に添えていた。
「え?何?小聖杯の役割無くなったって?それにマキリの杯って何?」
「マキリの杯っていうのは前回の聖杯戦争で臓硯がくすねた聖杯の欠片を埋め込まれた人間の事、つまり俺の事だ。昨日の戦闘でバーサーカーを呑んだ事で俺の方に霊基が入って来て、小聖杯として稼働してる。このままなら、間違いなく俺の方が小聖杯になるぞ」
小聖杯とは聖杯戦争で脱落したサーヴァントを溜め込む器。願望器という観念からしてみれば、これがこの聖杯戦争の優勝商品となる。本来ならばこの役割はアインツベルンが用意する。前回からホムンクルスの中に溶け込まれていてアイリスフィールが、そして今回はイリヤスフィールが担っていた。
が、臓硯が俺の心臓に前回の聖杯戦争で手に入れた聖杯の欠片を埋め込み、その俺がバーサーカーを泥を介して呑んだ事で俺の方に霊基が溜め込まれた。そのせいでイリヤスフィールの役割を俺が奪ったのだ。
「何やってるのよマキリはぁ〜ッ!!」
「もうあの妖怪のやる事だから諦めとけ」
少なくとも俺は諦めるか、最後の最後でどんでん返しを狙うことにしている。
「まぁ、何が言いたいのかっていうとだな。お前が魔力供給を務めるのならばアインツベルン城にいるホムンクルスには手を出さない、第四次聖杯戦争での衛宮切嗣とアイリスフィールについて話す。ついでに俺が小聖杯になったから聖杯戦争終わっても生きられる……条件としては割と破格だと思うけど?」
「小聖杯の事に関しては許さないから」
「臓硯に言ってくれ。俺は悪くないから」
その事に関しては俺はどちらかといえば被害者の立ち位置なのだから勘弁して欲しい。
イリヤスフィールは腕を組み、うんうんと唸りながら悩んでいる。リスクとリターンを考えているのだろう。どれだけ悩んだところで彼女が選ぶ選択肢は一つしかないのだが。
イリヤスフィールが聖杯戦争に参加したのはアハト翁の命令というのもあるが、衛宮士郎に対して復讐という個人的な理由もある。彼女と衛宮士郎との間には直接の関わりは無い。あるのは衛宮切嗣を介した間接的な繋がりだけ。
つまり、イリヤスフィールはまだ自分を捨てたと思っている衛宮切嗣に対して執着を持っている。
「……良いわ、その条件を飲みましょう。それで?
「これくらいなら口約束でオッケーよ。話すことは話すし、アインツベルン城には手を出さない。その代わりに魔力供給を拒んだり、俺が裏切ったと思ったらすぐに反故するから気をつけとけ」
スクロールを使えば確かに相手を縛る事が出来るが、その代わりにこちらも契約に縛られる事になる。その点、口約束ならば相手の自由を許す代わりにこちらの自由も約束される。
「よし、それじゃあ服買ってくるから留守番頼んだ」
「あら、この格好のまま過ごさせるかと思ってたわ」
「確かにその格好は興奮するんだけどさ、見てて寒々しいのよねーーーそうだ、魔力供給する時にはその格好で頼むわ」
「ーーー変態!!」
顔を真っ赤にしながら叫ばれた罵倒を笑って受け流し、財布を片手に工房を後にする。生憎と服のセンスに関しては全く分からないので適当に買って、それを着てもらって明日に外に連れ出そう。
明日の予定に胸を膨らませながら、キャスターへの殺意を漲らせた。
我を忘れておセッセをした結果、イリヤちゃんの服は全滅しました。今はマコニキのインナーとワイシャツ姿だぞ!!全裸ロリからワイシャツロリにジョブチェンジだ!!
どうしてだろうか、全裸よりもワイシャツの方が犯罪チックに思えてしまう。