活動報告で述べた通り主人公とカルマが性行為に及ぶので、本編のイメージを崩したくない方はブラウザバックを強く推奨します。
時系列は番外編12話ラストシーンの前日です。
以下余白
「……いいよ」
これは誰に言うわけでもない、強いていうのなら二人だけの秘密の話。
「初めてが、君なら」
つまりは、男女のあれやこれの話である。
「はぁ、久しぶりに疲れたなぁ」
大きく息を吐き敷布団の上に転がる。宿泊施設特有の真新しいシーツの匂いが鼻孔をくすぐった。
「でも臼井さん楽しそうだったじゃん」
寝転がりながら首を向ける。窓際の座椅子に腰かけた男が微笑みながら私を見ていた。
その手にはいつも通り煮オレジュース。いつも思っているがよく飽きないな。甘いのは好きだが飲み物のセンスだけはよくわからない。
「楽しいから疲れたんだよ。こんな風に誰かと旅行に行くなんて生まれて初めてだからな。年甲斐もなくはしゃいでしまった」
「電車の窓に張り付いてたもんね。ほんとこっちの身にもなってよ。マジで恥ずかしかったんだけど」
呆れたように吐き捨てるとカルマは煮オレジュースを一気に飲み干した。
「ま、はしゃいでる臼井さんが可愛かったからいいけどさ」
「またそうやって調子の良いこと言って……」
歯の浮くような台詞を言われ少し恥ずかしくなるけれど、それ以上に嬉しくて思わず顔がにやけた。
風が吹き窓に吊るされた風鈴が綺麗な音を奏でる。あの告白から約一カ月。ここは熱海、今日は待ちに待った旅行の日だった。
「そういえば臼井さん温泉入った?」
「うん、初めての体験だったがあれはいいものだな」
夏なので外は暑いかと思ったが、思ってた以上に涼しく風呂も特に苦痛なく入ることができた。家の閉塞的なバスルームでは絶対に味わえない開放感に私が虜になったのは言うまでもない。
「ご飯も美味しかったし、風呂も気持ちよかったし、卓球とかいう遊びも楽しかった。もう帰ってもいいくらいだな!」
「まだ初日じゃん。これで満足しちゃ駄目でしょ」
「そっか、まだ海が残ってたな」
楽しくて忘れていたが、そういえば私達は海に行くために遠路遥々電車に乗ってきたのだったな。
「まあそれくらい楽しかったってことだよ! ありがとうカルマ、誘ってくれて」
「別に、俺が行きたかったから誘っただけだよ」
「……私と?」
二人きりという雰囲気に呑まれたのだろうか。思わず恥ずかしい質問を投げかけてしまった。流石にこれは答えてくれないかな?
「そうだよ。俺が臼井さんと二人で行きたかったの」
しかし予想に反して私の疑問はなんの躊躇いもなく肯定された。
「そ、そっか……」
そんななんの混じり気もない好意に逆に恥ずかしくなった私は枕に顔を埋めたのであった。好意は嬉しいけど、こうも真正面から言われるとやっぱり恥ずかしい。
「どうしたの臼井さん、枕に顔埋めて」
「今顔凄いにやけてるから見せたくない」
吊り上がる頬を抑えることができない。付き合ってからもうすぐ四ヶ月だ。いい加減慣れたっていいはずなのに、私の赤面癖は未だに治らないままだった。
「えぇ、こっち向いてよ」
「やだー! 絶対見せない!」
足をばたつかせ子供のように駄々をこねる。どうせ見せたらからかわれるに決まっているからな。まあ見られてもいいと言えばいいのだが、この逃げ場のない畳の部屋で見られるのはかなり恥ずかしい。
「臼井さーん、浴衣から足見えてますよー」
「どうせ明日水着見せるから関係ないもん!」
「もんって子供かよ……」
自分でも心なしか普段よりも言葉遣いが幼くなっている気がする。この感覚はお姉ちゃんに甘える時に似ているな。違うのは恋愛感情が多分に含まれていることくらいか。
「いつも思うけど少しくらい気にしようよ。そんなんだから勘違いされるんじゃないの?」
まるで子供を嗜めるかのような物言いに私の心に一瞬だけノイズが走った。
「……もう人前でそんなことしないよ」
恋をしてから一番変わったことは、羞恥心が芽生えたことだった。いや、正確には羞恥心というよりも見せたくないという感情。今時の言葉で言い表すのならガードが固くなったということか。
「こんな姿を見せるのはカルマだけだ」
無知なことを差し引いても、以前の私なら絶対にありえなかった無防備な姿を見せるのは相手が彼だからだ。
カルマのことを信用し信頼しているからこそ、こうして無防備な姿をさらけ出しているのだ
「他の男にこんな姿見せるわけないだろ……」
私だってそれなりに性知識はある。知識のベースが戦場なので酷く偏っているが、それでも男と女の関係については同年代よりも知識があるつもりだ。
自分の身体が性欲の対象になることだって十分に理解している。その上で私はこうしている。
「いつまでも子ども扱いするな……」
私だって一人の女なのだ。優しくしてくれるのは嬉しいけど、もっとそういう目でも見てほしい。そう思うのはわがままなのだろうか。
「臼井さん……」
私の名を呼ぶ声を無視して枕に顔を埋める。こんな気持ちになるのも全部カルマのせいだ。
「臼井さん」
唐突に真横で名前を呼ばれた。急に近づいてきた声に驚き首を横にむける。
「か、カルマ!?」
視界いっぱいに彼の顔が映っていた。ここまで近づいたのはキスした時以来で、それだけで私の心拍数は急上昇した。
「俺、臼井さんのこと子供扱いなんてしてないよ」
風呂上がりのカルマの顔はどこかいつもと違う魅力があって私の心嫌でもは騒つく。
「前も言ったけど臼井さんのことはいつだって女として見るから」
「……う、うん」
手を伸ばして頬を撫でられる。指の腹が私の頬をなぞり甘い感覚が走る。そして親指がゆっくりと上唇に当たった。
「......キスしていい?」
「うん......」
拒む理由なんてない。急上昇した心拍数と昂ぶった神経に身を任せ目を瞑り小さく頷く。
「祥子……」
唇に彼の唇が重なる。二回目のキスもやっぱり煮オレジュースの味がした。
「……んっ」
唇を重ねるだけ軽いキス。それでも私の全身は幸せに包まれた。
「大好きだよ、臼井さん」
「私も、大好き」
たっぷりと時間をかけお互いの唇を堪能したのち、私達は同時に愛を囁いた。今更言わなくても気持ちは通じてるけど、言葉にすることでよりその想いは強まった。
「じゃ、ちょっと早いけど寝よっか」
「……うん」
カルマが立ち上がり電灯を消した。開けっ放しの窓から月明かりが差し込みどこか幻想的な雰囲気を醸し出す。
不意に、ここまま終わらせるのが勿体ないと思った。
「……本当に寝てしまうのか?」
思わず口から溢れた呟きが彼の動きを止めた。起き上がってカルマの目を見る。その目にはまだ熱が篭っていた。
「まだ、寝たくないな」
別の意味を含ませ彼に問う。そう言う私の目もきっと熱で浮かされているのだろうな。心なしか身体も熱い。キスだけでは物足りない。もっと先が欲しい……
「......言ってる意味、わかってんの?」
私の表情から全てを察したのだろう。カルマが真剣な目で訪ねてきた。彼の目に籠っていた熱が強くなっていく。
「私だって、そのくらいわかってるさ」
カルマが旅行に誘ったのは、単純に私と海に行きたかったからというのもあるのだろう。だが、決してそれだけが目的ではないのは、私にだってわかっていた。いくら無知とは言えそれくらいの知識はある。いつだって、どこだって、男と女の行きつく先など一つしかない。
「……いいよ」
熱に浮かされた頭でカルマを見つめた。先ほど暴れたせいで浴衣が少し緩んでいる。立ち上がっている彼の目にはきっと私の下着が見えているに違いない。
「初めてが、君なら」
身を捧げる覚悟なんてとっくの昔にできている。いや、そんな大層なことではない。結局は私がカルマを欲しいだけなのだ。いつから私はこんな人間になってしまったのだろうか。どれもこれも目の前の男のせいに決まっている。
「臼井さん……」
カルマの目の色が明確に変わる。返答はそれだけで十分だった。
「カルマ……」
布団の上で正座しお互いに向かい合う。既に心臓は破裂寸前。自分が今からされることを想像し、羞恥心と好奇心……そして期待が入り混じった熱が身体の奥から沸き起こって来る。
「髪、解いていい?」
「ああ」
頷くとカルマ抱き着いて私の髪を縛っていたリボンを解いた。解かれた髪が重力に従って背中に掛かる。
「凄い伸びたね。ずっと伸ばしてたの?」
「ああ、そっちのほうが可愛いと思って」
会話が途切れる。何も言わずお互いに見つめ合う。もう回り道する必要はない。彼もそう悟ったのだろう。カルマの手が私の肩を優しく掴んだ。
「キス、するよ……」
彼の顔が近づく。唇が触れ甘ったるい多幸感が身を包んだ。
「……っ」
目を閉じて唇の甘い感触に集中する。そうしているとカルマが私の唇を割って舌を入れるのがわかった。ざらついた舌先が私の舌と複雑に絡み合い私の頭を麻痺させていく。
「……っ!」
後頭部を掴まれより激しく口の中を掻きまわされる。先ほどのキスが確かめ合うためのキスならば、今のキスは求め合うためのキス。
「っ……んっ……んぐっ!!」
苦しくなる息、唇の隙間から漏れる湿った音、絡みつく舌、喉に入り込む唾液。
平時なら不快になるはずの要素の全てが今では神経を昂らせるためのスパイスにしかならない。やっぱり私はキスされるのが好きだ。ぼんやりとした頭でそんなことを思った。
「……ぁっ」
一分か、それとも十分か、最早時間の感覚が分からなくなるまで口の中を蹂躙されたのち、カルマがゆっくりと顔を離した。
お互いの唇から漏れた唾液が月明かりに照らされて銀色のアーチを形作る。
「か、るまぁ……」
酸欠と熱に浮かされた意識の中で彼の名前を呼ぶ。私の顔は今きっと酷くだらしない表情をしているに違いない。何も考えることができない。頭の中にあるのはカルマの潤んだ瞳だけ。
これじゃ物足りない。早く続きをしてほしい。
「臼井さん、横になって」
「わか──ッ!」
私が身体を倒すよりも先に、伸びてきた手によって私の身体は強引に押し倒された。月に照らされてカルマのスカーレットの髪が煌めく。その表情は今まで見たことないほどに余裕がなくて、私の理性は少しだけ平静さを取り戻した。
「胸、触るよ」
「……うん、いいよ」
包み込むように抱きしめられ、浴衣越しに彼の手が私の胸をゆっくりと撫でる。女の胸を撫でるのは初めてなのかもしれない。どこか手つきが覚束なくて、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「女の人って、胸触られると気持ちよかったりするの?」
「別にそうでもないかな。くすぐったくはあるけども」
そう答えるとカルマが少しだけ残念そうに表情を変えた。岡島も妙に胸に拘っていたが、女からすればただの己の身体の一部でしかない。実際大きくても良いことなんてないしな。
「でも、君に触られるのは凄く嬉しい……」
私が笑顔でそう言うとカルマの手の動きが激しくなった。胸から始まり腹、腰、尻、腿……全身をくまなく撫でまわされる。まるで彼に全身を包み込まれるようで、それだけで私は幸せで一杯になった。
「前から思ってたけど、臼井さんって触られるの好きでしょ?」
「うん、ずっと冷たい銃ばかり握ってきたからかな……」
私も手を伸ばしカルマの身体を撫でまわす。掌に伝わる温かい体温が目の前の人間が生きていることを教えてくれる。銃でも死体でもない、温かい愛しい人の身体。
「服、脱がしていい?」
そうしてお互いの体温を堪能していると、カルマが唐突にそんなことを言ってきた。
「そ、それくらい自分でやるよ」
どうせ脱ぐつもりではあったが、この歳になって服の着替えを手伝われるのは恥ずかしい。身体を抱き締め半目で睨みつける。
「そうじゃないって、俺が脱がしたいの」
「……仕方ないなあ」
抱きしめていた腕を放り出し彼を受け入れる。だが、込み上げる羞恥心に耐えきれずカルマから目を逸らしてしまった。はち切れそうな心音を感じながらただ成すがままになる。
「恥ずかしいから、早くしてくれ……」
彼の腕が私の浴衣の帯に触れる。前で結んでいただけの帯は簡単に解け腹に感じていた締め付けがなくなった。
「一回でいいから臼井さんの服、脱がしてみたかったんだよねえ」
彼の指が襟に触れる。露わになった素肌に吹き込んだ夏の夜の涼しい風が吹きつけた。
「後は、自分でやるよ……」
袖から腕を抜き軽く畳んで脇に退かす。そして、下着姿を彼の前に晒した。白のレース。以前ショッピングモールに行った時に半ば無理やり買わされた下着。カルマは可愛いと言ってくれるだろうか。
「あっ……」
「どうしたの、臼井さん」
唐突に我に返った。脇腹に走った銃創を指でなぞる。自分の身体がどうなっているのかを思い出してしまったのだ。
「すまない、あまり綺麗じゃないよな」
腕で胸を抱き締めながら呟く。告白の時、カルマは私の傷跡を好きだと言ってくれたけど、やはり褒められるような見た目ではない。
脇腹に走った大きな銃創、刺突痕、縫い痕、カルマには前しか見えないが、背中にも大きな切り傷がある。どれもが碌に手当てしなかったせいで醜く歪んでいた。
「ごめんね」
思わず笑う。卑下はしていない。でも、私がどれだけ望んでも皆のように綺麗な身体は手に入らない。それだけは事実だった。
「こんな身──っ!?」
自嘲染みた私の言葉はカルマの唇によって強引に遮断された。さっきのディープキスがお遊びに感じるような激しい接吻。腕を絡ませ背中を抱き締めながら燃えるようなキスを浴びせられる。
「……んっ、んぅっ!!」
甘いを通り越し、まるで電撃のような感覚が身体を駆け抜ける。唇の隙間からおかしな声が漏れ出る。惚けきった思考で腕を彼の背中に回しお互いに身体をくっつけた。温かい、とても温かい身体だった。
「か、カルマ?」
たっぷり口の中を掻きまわした後、カルマは私を解放した。突然の行為に困惑する私をカルマは真剣な瞳で睨みつけた。
「なんで、そんなこと言うの?」
「だ、だって……」
「前に俺が傷跡好きだって言ったの覚えてる? 言っとくけどあれ社交辞令でもなんでもないからね」
小さく頷く。目を見ればわかる。カルマは本気で私の傷跡を好きだと言っている。でも理解できない。
「どう、して?」
「だって、その傷は全部臼井さんが今まで頑張って生きてきた証拠でしょ? そんなの、好きになる理由にはなっても、嫌いになる理由にはならないよ」
カルマがそう言った瞬間、急に目の前が滲んできた。両目から涙が溢れ出しこめかみを伝い布団に零れ落ちる。素肌をさらけ出していることも忘れ両手で目を拭いながら泣きじゃくる。
「臼井さん、泣いてるの?」
「だって、そんな風に言われたの初めてで……ずっと汚いって思ってて、皆みたいに綺麗な身体じゃ──」
言い切る前に手首を押さえつけられ唇を塞がれた。口にしなくても何を言いたいのかわかる。もうそんなことは言うな。カルマはそう言ってくれているのだ。
しばらくして彼が唇を離し、そして私を優しく見つめてくれた。
「臼井さん、綺麗だよ」
「……ありがと」
ああ、やっぱり私はこの男を好きになってよかった。いったい私は何度この男に恋をすれば気が済むのだろうな。
でもそんな感情は次の彼の言葉で掻き消えた。
「ま、口で言っても説得力無いし……」
カルマの目に僅かに嗜虐心が宿る。私の目尻の涙を拭うと、そのまま指を頬、胸、腹へとなぞりあげ臍で止めた。何を、するつもりなのだろうか。
「か、カル──」
言い切る前に彼の指が脇腹に走った傷跡をなぞった。
「ひゃぁ!?」
唐突に感じたくすぐったさに思わず背中を仰け反らせおかしな声を上げる。例えるのなら首筋にいきなり冷たい氷を当てられるようなそんなくすぐったさ。くすぐったさ以外の感覚が混じっていたのは気のせいだと思いたい。
「傷跡って敏感になるって聞いてたけど、やっぱ本当なんだ」
カルマは指を舌で湿らせると今度はゆっくりと傷跡をなぞり上げた。
「や、やめ──っ!!」
肩がびくりと震える。喉から変な声が漏れ、羞恥心に頬が染まる。カルマはそれに味をしめたのだろうか、顔を胸に近づけると今度は鎖骨の下にある縫い痕を信じられないことに舌で舐めたのだ。
「んんっ!!」
自分の喉から出ているのが信じられないくらいの甘い声。びりびりとした電流にもにた感覚に耐えきれず全身を震わせる。
「臼井さんは傷跡が性感帯……あとでメモっとかないと」
「メモ、るな──あぁっ!?」
再び脇腹の銃創をなぞられ背中を仰け反らせる。恥ずかしさをこらえきれずに顔を手で覆い隠す。そうしている間にも絶え間なく刺激が襲いかかり私の身体は汗ばんでいく。ただ触られているだけなのに、頭がおかしくなりそうになる。
「もう、お願いだから、やめ────ッ!!?」
凄まじい刺激。傷跡ではなく明らかに別のものを触られている。それが何かを考える前に背中に手を回され胸に感じていた圧迫感がなくなった。
「え、ちょ?」
覆い隠していた手を退かす。視界に映るのはいつの間に浴衣を脱ぎ捨てていたカルマとブラを外され露わになった乳房。
「ごめん、触り辛いから外しちゃった」
「触るってどこ──あぁあっ!!」
訊ねる前に再び先ほどの電撃が襲い掛かる。異次元の刺激を耐えなが目を身体に向けるとカルマが私の左の胸を揉みながら人差し指で乳首を弄っているのが見えた。
「結構硬くなってるね」
彼が笑いながら指の優しく摘んだり撫でたりする。絶え間なく与えられる刺激に耐えきれずに肩が震え、その度に甘い感覚が蓄積していく。
「胸は感じないって言ってた割には、思い切り気持ちよさそうにしてんじゃん」
「き、気持ち良い?」
さっきからカルマに与えられる感覚。もしや、これが気持ちよいというものなのだろうか。わからない、もうなんでもいい……
目を閉じて与えられる感覚に身を投げ出す。
「……んっ……ぁっ」
「臼井さん、ほんと可愛い」
だたされるがままに甘い感覚を味わう。触られ、揉まれ、キスされ、舐められ、弄られ、全身に与えられる初めての感覚を感じる。膨大な快楽の前に理性が音を立てて崩れていく。
「……え?」
そうやって快楽に身を任せていると唐突に刺激がなくなった。いつの間にか瞑っていた目を開く。視界にはちゃんとカルマが映っている。何故止めてしまったのだろうか。もっとしてほしいのに……
「……やめて、しまうのか?」
「いや、そろそろ違うところ行こうかなって」
「違うって……」
私の疑問に答えるように彼の指がゆっくりと降りていく。何となくわかってしまった。臍を伝い、鼠蹊部を通り越し、そしてショーツ越しに私の秘部に指を当てた。
「うわ、もう濡れてる」
「濡れてる?」
「臼井さん気付いてないの? 下着凄いことになってるよ」
カルマに指摘され自分の下腹部に意識を巡らす。いつもなら感じないはずの湿り気が性器全体に広がっていた。
「え、嘘……」
あまり詳しくはないが、性的に興奮するとこうなることは知っていた。でも、まさか自分がこんな風になるなんて。つまりこれの意味することは……
「俺で気持ちよくなってくれたってことだよね?」
無言で頷く。恥ずかしいし、はしたないけれど、私は確かに彼によって感じてしまった。初めての感覚に恐怖も戸惑いも感じるが、それ以上に嬉しくて仕方がなかった。求められている。それが嬉しくてたまらない。
「祥子……」
下の名前を呼ばれる。カルマがこの名前を呼ぶときは決まってキスをする時だ。もう確認する必要なんてない。だまって口を開き彼の唇を受け入れる。
「んっ……ぅっ」
目を閉じる。身体の力が抜けていく。がら空きになった左手に彼の手が絡まる。温かい舌が歯茎や舌の付け根をなぞり上げとても気持ちが良い。ただ静かに与えられる感覚に集中する。その時だった。
「────っ!!?」
下腹部から強烈な刺激が襲ってきた。思わず目を見開いて驚く。そうして驚いている間にも刺激は収まることを知らずに、むしろ大きくなっていくばかり。
「臼井さん、すっげー濡れてる」
「ど、どこ触って──っ!!」
ショーツの中に差し込まれた右手の指が執拗に私の大事な部分を弄っていく。
「か、っるまぁ……やめっ……ぁっ!!」
頭がぐちゃぐちゃになり何も考えることができない。気持ち良くて、気持ち良くて、それしか考えることができない。快楽が膨らみ続ける。
そして──
「────っ!!?!」
弾けた。腰の奥から爆発が起こり視界が真っ白になる。涙がこぼれ、全身が痙攣し気持ちいいという事実だけが脳を駆け巡る。
身体がどこかに消えてしまいそうな感覚に襲われるけど、握った左手がそうでないことを教えてくれた。
そうしてしばらく震えた後、徐々に思考が戻ってきた。
「はぁ……な、なんだ今の」
荒れた息を整えながらカルマに訊ねる。今までの気持ちよさがお遊びに思えるような圧倒的な解放感と思考を根こそぎ奪われるような快感。
「もしかして、いっちゃった?」
「わ、わからない……腰の奥が爆発したみたいな感覚で、何も考えられなくて……」
「それ、いったってことじゃないの?」
いった。ビッチ先生が前に言っていたような気がする。ようは快楽が頂点に達したということだろうか。自慰すら碌にしたことがない私にはよくわからないけれど、多分これがそうなのだろう。
「そうだな、君にいかされてしまったな……」
汗で張り付いた髪をどかしながら笑う。まだ息が荒い。整うまでには時間がかかりそうだ。
「……臼井さんってさ、時々凄い爆弾発言ぶっこんでくるよね」
「ん?」
「そんなこと言われたら、我慢できるわけないじゃん」
頭を起こしてカルマ下半身に目を向ける。ボクサーパンツで隠された彼のそれが、わかりやすいほどに自己主張をしていた。
「私で、興奮してくれてるのか?」
「好きな女の子がこんなエロくて可愛い顔してくれてるんだもん、興奮するに決まってるでしょ」
そう言ってカルマはまた私にキスをした。優しいキスに私の中に残っていた僅かな緊張感が解きほぐされた。
「そろそろ、いいよね?」
ゆっくりと頷く。もう後戻りはできない。遂に一線を越える時がやってきた。