※この作品はR-18です。

神楽魔法譚 ~次元世界妖怪録~   作:まさらのむひと

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タイトルの難しい漢字は「ちんにゅうしゃ」と読みます。断りも無く乱入してくる輩のことです。闖入者とは一体だれなのか……それは本編をお読みください。
さぁ、どうやって物語の風呂敷を畳もうか……一つの物語を終わらせるって、本当に難しいなと思います。


緊急事態発生!? ~帰ってくれ闖入者諸君~

 次元世界にて、1つの妖怪勢力が壊滅へと追い遣られたその頃、対策本部では情報の整理が進み、ついに事件の黒幕が判明するに至った。

 “情報霊”レジアス・ゲイズ……先の次元世界を震撼させたJS事件において黒幕側に付いており、ジェイル・スカリエッティの開発した戦闘機人、ドゥーエの裏切りによって命を落としたはずの人物である。

 レジアス自身と、潜伏していた妖怪によって酷い目に遭わされた秋月・小春であったが、彼女が持ち帰った情報は値千金。同行していたシーカーズメンバー、モンタス兄弟、妖怪さとりとの半妖である三船・孝太からの補足、そして何より頼れる無限書庫司書長、ユーノ・スクライアからの報告により確定したのだ。

 

「……まさか……既に亡くなったレジアス中将が黒幕だったとは……ははっ……これはいくら探っても黒幕が分からないわけですね……」

「私達といたしましても盲点だったと言わざるを得ませんわ……これほどの短期間で現実空間にも影響を及ぼすほどの強大な悪霊が発生するなんて……」

「ああ、俺達が経験した事件の中でもトップクラスの難題だね……そして被害も……」

「ふむ……被害は甚大かもしれませぬが……幸いなことに殉職者は居りません。初動が遅れた難事件の被害としては悪くないのでは?」

「肉体は無事でも心がね……退魔士組は本当の意味で妖怪に敗北したことが無かったから尚更だよ」

「そうかもしれませぬが、彼女らは強い。数少ない共闘でも分かりましたぞ? 彼女らのトップである貴方が信じなくてどうします……!?」

「………………そうですね。ありがとうございます……重ねて治療のための人員の斡旋は助かりました」

「はっはっは……お気になさらず……ウチも若い連中が多いですからな……治療行為といはいえ、役得だと任務以上に張り切っておりましたよ……お恥ずかしい」

「はは……それは我ら第8出身の連中もです。若さっていいですねぇ…………おっと失礼……話題を変えましょう。今回の件ではスクライア司書長の情報に助けられましたね。まさかあれだけの妨害工作をしながら侵攻作戦も並行していたとは……流石は元地上本部のトップと言ったところでしょうか。無限書庫が抑えられていたら本当に危うかったです」

「本当に優秀な殿方ですわね。魔力持ちの副作用の治療法も確立されたようですから、後顧の憂いが断てたと考えてよろしいかと」

「ええ、色々と後手にまわって来ましたが、それもここまで……」

「ふっ……反撃開始と行きましょうぞ!」

「よし、それでは反撃に向けて作戦を……「緊急事態発生……! ご指示願います……!!」……なにっ……!? 一体どうしたと言うんだ……!?」

 

 対策本部の重鎮がこれからのことについて会議していた時のことである。大慌てで伝令が会議室に駆け込んできたのである。緊急事態とはいったいどうしたのだろうか。

 

「慌ててはなりません……! ここは深呼吸して…………そうです……落ち着きましたか? 一体何があったと言うのです」

「はぁ……はぁ……ふぅ…………あ……ありがとうございますフォルツァート司令……実は、トウカノムギョウなる妖怪が隊舎前に突然現れ、有益な情報があるから上層部と話をさせろと言うのです。巫山戯るなと言い返したいところでしたが……相手の妖力に気圧されてしまい……申し訳ございません」

「トウカノムギョウ……? まさか……“透過”の無形……! 奴は桂香さんと初花ちゃんに討伐されたはず……どういうことだ?」

「擬態だったのかもしれませんわ。高度な妖怪はそのようにして危機から脱することがありますもの……後であの二人にはお説教しなければなりませんわね」

「ははは……お手柔らかに頼むよ。二人ともダメージがデカかったわけだし…………それはさておき、どうしようか、葉子さん」

「そうですわね……この妖力……騙りにしては真に迫り過ぎていると思われます。下手な対応をすれば本部が壊滅してしまうでしょう」

「そ……それほどまでの相手なのですか……?」

「俄かには信じ難いですな……」

「状況によっては私でも不覚を取ることでしょう。それほどの手合いですわ」

「なるほど……私達では荷が重そうです。お任せしてもよろしいですか?」

「承りましたわ。では、今集められる最強の布陣で参りましょうか」

「そうだね…………では伝令の君、無形には話し合いに応じると伝えてもらえるだろうか? 場所は……総合会議室1にしようか。あそこなら何かあっても援軍がすぐに駆けつけられる」

「承知……! では行ってまいります!」

「よし、ではメンツはトメ様、石動、将範、葉子さん、俺で対峙しよう」

「では、念話を送りますね」

「頼んでいいかい?」

「任されましたわ。旦那様」

「ありがとう…………やれやれ……どんな爆弾を抱えてきていることやら……」

 

 盛大な溜息を吐いた幹也は、呼び出した面々の気配が近付くのを感じると、気を引き締めて、総合会議室1へ向かうのであった。

―――対策本部総合会議室1―――

 そこは異様な空間と化していた。音に聞こえし大妖怪と歴戦の退魔士……巨大な妖力と霊力に満たされたそこは、まさに現代の魔境であった。

 

「ひっひっひ……話が分かる上層部で助かったよ……ここでぶつかり合うのはちと骨だからねぇ……改めて自己紹介といこうか……ワシの名前は無形……“透過”の二つ名で知られている妖怪だよ。こちらは油すましの油魔と一つ目入道の戒破……あまり人間たちには知られてはいないだろうが、“名付き”であることからその実力は分かるだろう? まぁ、分からん者がこの場に居るとは思えないけどねぇ……ひっひっひ……」

「……この話し合いの責任者、滝峰幹也だ。安い挑発に乗るつもりは無いからさっきの発言は聞かなかったことにしておこう。そちらの名付きはともかく、そちらの強烈な妖気を発する雪女は何故この場に居る? 舞歌さんから伝え聞く雪女と特徴がそっくりなのだが」

「ひっひっひ……なぁに、用心棒というところだよ。仮想敵の本拠地に赴くんだ……準備し過ぎということは無いだろう?」

「仮想敵……? 積極的に争うつもりは無いとでも言うつもりか? こちらの世界で好き勝手して来た分際で……!」

(……っ……!? この男……出来る……! このワシが多少なりとも気圧されるとは……)

「おっと……殺気を抑えてくれないか……ワシはともかく周りが保たんよ。気持ちは分からんでもないが、何のために話し合いに来たと思っているんだい?」

「…………わかった。余計な腹の探り合いはいいから、本題に入ってくれないか」

「わかったよ。単刀直入に言おう。今回の事件の黒幕、“情報霊”レジアス・ゲイズは大分弱っている。攻めるなら今のうちだと言っておくよ」

「……!? 何故そのような情報を我々に? 一体何を企んでいる……!」

「企むも何も……ヤツを野放しにしておくと次元世界が滅びてしまうからに決まっているだろう? せっかくこちらの世界に来たのに、滅んでしまっては意味が無い」

「…………次元世界を滅ぼすことがヤツの狙いだというのか……!? 一体何のために……幽霊こそ人が居なければ存在出来ないだろうに……!」

「それについてはワシも知らんよ。生前何かあったんじゃないかねぇ?」

「……発言いいかしら?」

「葉子さん? わかった。どうしたんだい?」

「ゴホン、私は滝峰葉子。そう、彼の妻ですわ」

「葉子さん……」

「あら、失礼。先程からそちらに居らっしゃる女性のねっとりとした視線が目に付いたものですからつい……私の男に色目を使うのはやめて下さるかしら? け・つ・お・ん・な(結女)さん?」

「なぁんだ……アンタの男だったの……ちぇっ……あんまりにも優良物件だったからアプローチするつもりだったのに……残念……もっと早くお会いしたかったわ……っていうか葉子……! けつおんなはやめなさいって言っているでしょう……!?」

「ごめんなさい。久しぶりだったものだから……つい……相変わらずね、結女」

「そちらこそ。人間に調伏されたと聞いていたけど、男を作っていたなんて……やるわね」

「それほどでも……あるわ」

「よく言うわ……それはさておき、私はそちらのおじいさまの護衛なの。ドンパチやるつもりなら別だけど、そうではないんでしょう?」

「あら失礼。“情報霊”レジアス・ゲイズの動機は推察できますわ。ちょっと前に起こったJS事件のせいでしょうね。彼、属していた勢力に裏切られましたの……黒幕と一緒に。お可哀想ですわ……黒幕は人の身体を捨ててまで生き長らえていた妖怪もどき……裏切られた恨みや妄念などが入り混じって悪霊となってしまった……と言うのが真相でしょう」

「ほぅ……流石は音に聞こえし大妖怪……こちらの世界の事情にも通じているとは……ひっひっひ……合点がいったよ……アンタたちと事を構えなくてよかったねぇ……」

「あら、何をおっしゃっているのかしら? 貴方の傍に控えている方々……報告に上がっておりますわよ? ウチの巫女達を好き勝手してくれちゃってまぁ……」

「何を言っているんだい? 襲われたから返り討ちにしてあげただけだよ? 未熟なキミたちが悪いんじゃないか」

「……その物言いで事を構えるつもりはないとは……どの口がおっしゃっていることやら……喧嘩は買いますわよ?」

「おぉ怖い怖い……老い先短い老人に向かって何てことを言うんだい…………ひっひっひ……ごめんねぇ……不謹慎だったよ」

「……分かればいいのです…………私もでしゃばり過ぎましたので……しばらくは引っ込んでいることにしますわ。幹也さん……頼みましたわよ」

「……わかった。お前たちの話を信じるなら、レジアス・ゲイズは弱っている。攻めるなら今のうちということだな? これについては俺たちの方でも情報を得ている」

「ほぅ……? これはこれは……強がりでもなさそうだ……でも……それだけでは責めるには弱い……と言ったところかな? レジアス・ゲイスの姦計にずいぶんと踊らされたようだからねぇ……ひっひっひ……」

「……っ……!……こちらに来ている妖怪が俺達の予想以上に多く、さらに好き勝手に暴れ回っている。被害は拡大する一方だ。これを野放しには出来るはずがない」

「あぁ、そのことだけどねぇ……これからは心配はいらないよ」

「……何……!? どういうことだ!」

「好き勝手暴れている連中だけど、そいつらの旗頭は粛清しておいたから」

「粛清……!?」

「その旗頭の名前は地酔……“重圧”の地酔だよ」

「なんだって……!? 確かにそれらしき妖怪の情報はあったが…………奴を粛清したというのか……!?」

「あんな派手に動く奴らが居たら、とばっちりでワシらも討伐されかねないだろう? だからこの機会に……ブチ殺してやったってわけだよ」

「な……!? “重圧”の地酔を……!?」

「巫女を返り討ちにしたりつまみ喰いが上手くいっていたからねぇ……慢心していた所をズドン……とね……」

「俄かには信じがたいが……」

「まぁ、そうだろうねぇ……こちらの話を信じるか信じないかはアンタたち次第。一応言っておくけど、これでも危険を犯してこの場に臨んでいるんだ。そのことを考慮に入れてほしいというのは分かるだろう?」

「……参考にさせてもらおう……それで……お前たちの望みはなんだ。タダより怖いモノは無いからな……何らかの見返りを求めてのことだろう?」

「ひっひっひ……話が早くて助かるよ。別に全面戦争をしに来たわけじゃないんだ。地球みたいに住み分けといこうじゃないか。こちらからは基本的に手出しはしないから、妖怪の積極的な討伐を止めてもらいたい」

「それは…………」

「出来ないことはないだろう? 見たところ地球に少なからず居た、妖怪即殺すみたいな過激派の連中はこの場にいないみたいだしねぇ?」

「少し時間をもらえるか?」

「ああ、いいよ。ワシも即答してもらえるとは思っていないしねぇ…………そうだ、判断の助けになるかはわからないけど……話し合いが決裂してもレジアス・ゲイズを攻める時は邪魔をしないと約束しようじゃないか」

「……っ……!? そいつは有り難いが……」

「ちょっと待った……! 鵜呑みにするのは危険だぞ幹也……!」

「石動……!?…………そうか……! その条件だけだと……決戦で疲弊した後漁夫の利を掻っ攫われる可能性がある……!」

「ひっひっひ……よく気が付いたねぇ……まぁ……これぐらい気付いてもらわなくては代表とは言えないか……ちょっと危なかったけど、及第点くらいはあげようじゃないか」

「くっ……! 言わせておけば……!」

「落ち着け……! 冷静さを失えば相手の思う壺だぞ」

「……っ……! 済まない……くそっ……掴みどころのないヤツだ……」

「褒め言葉と受け取っておくよ……まだまだ青いねぇ……ひっひっひ……」

「…………いい加減にせい!」

「「「「「…………っ……!?」」」」」

「トメ様……?」

「全く話が進まんではないか……! 無形よ……人をおちょくるのが愉しいのは分からんでもないがのぅ……これ以上戯れるつもりなら……このわしが武力介入するぞ?」

「……っ……!? 武神に介入されては困る…………わかった。アンタ達の対レジアス・ゲイズ戦には何もしないと誓おう。漁夫の利も狙わないことも確約する。これでいいかい?」

「ひゃひゃ……よいよい。じゃが……謀った場合……わかっておろうな?」

「念を押さなくとも分かっているよぉ!……ふぅ……全く……酷い脅しだ……どちらが妖怪かわかったもんじゃない……」

「何のことかのぅ……? さぁて、話し合いはこれにて仕舞いじゃ。疾く、去るがよい」

「ふぅ……仕方ない…………あぁそうだ最後に1つだけ……幹也くんと言ったかな? 余計なお世話かもしれないが、話術をもう少し磨くといい。武力だけでは通用しない場面もあるからねぇ…………あぁ、そこの神様は例外だから参考にしない様に」

「………………ご忠告に感謝する……お帰りはあちらだ」

「ひっひっひ……感情が表に出過ぎだよ。笑顔で皮肉を交えながら送り出すくらいのことは出来ないと……まぁ、それなりに愉しかったよ……機会があればまた会おうじゃないか」

「幹也さんは男色ではありませんので……色目を使うのはやめてくださるかしら? お・じ・い・さ・ま?」

「おっとそれは残念……それでは今度こそ、帰ることにするよ。健闘を祈る。せいぜい負けない様に足掻くといい……ひっひっひ……」

 嵐は去った。終始ピリピリとしていた空気がようやく霧散すると、誰からとは分からないが、次々と安堵の溜息が漏れる。

 

「あれが“透過”の無形……聞きしに勝る恐ろしい妖怪だったな……招集されたはいいが、全く役に立たなかった……済まない幹也」

「将範…………そんなことは無いよ。皆も含めて、居てくれるだけで助かった。アレは相当ヤバい」

「そうですね……あの分ですと、地酔の謀殺も事実でしょうね……以前会った時の妖力とは比べ物になりませんでしたから……」

「ふむ、葉子……お主の見立てでもそうじゃったか……全く……これからを思うと頭が痛くなるわい。それにのぅ……無形もアレじゃったが……油魔という油すまし……わしにはヤツの方が危険に感じたぞ」

「あの油すましが……?…………確かなずなさんが敗れていましたね……しかし報告によれば人質をとられたということでしたけれど……」

「そうか……考えすぎならよいがの……もしあ奴が地酔に止めを刺したと言うのなら……」

「……っ……!? 場合によっては無形よりも……!」

「はぁ……わしの脅しもどこまで通用していることやら……実に面倒なことじゃ」

「どちらにせよ、レジアス・ゲイズは何とかしなければなりません。作戦を詰めていきましょう」

「そうじゃな。ホレ……幹也に将範……何を呆けておる。早速会議じゃ……妖力の残滓もあるこの部屋が最適じゃろう。主だったメンツを集めるのじゃ。相手はご丁寧に待ってはくれぬぞ」

「…………っ……! わかりました。皆を招集します」

「ファイトですよ! 幹也さん。私はユーノ・スクライア司書長をお招きできないか尋ねてきます」

「ありがとう。葉子さん。頼りにしているよ」

「ふふっ……お任せあれ」

 

 夫婦の確かな絆を確認すると共に、佳境に向けて状況は目まぐるしく変化していく。決戦の時は近い。次元世界の明日はどうなるのだろうか……それは神ですらわからないのかもしれない…………。

 

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