※この作品はR-18です。

神楽魔法譚 ~次元世界妖怪録~   作:まさらのむひと

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先月は投稿ができず、申し訳ございませんでした。仕事が忙し過ぎて執筆時間が確保できませんでした。漸く落ち着いたので、一気に書き上げた次第です。
今回もエロシーンはございませんが、少しだけムフフな展開は出て来ます。
スクライア無双というサブタイトルですが、後半はユーノ君が黒幕の思惑を丸裸にしちゃうという展開の為、このような形になりました。無理矢理感やこじつけ感は否めませんが、対策本部が裏を掻かれまくった理由や、何故妖怪が次元世界に来たのかといった理由が明かされます。そのようなことを詰め込んでいたら、まさか一万文字を超えることになるとは……ボリュームだけはそれなりにあると思いますので、読んで頂ければ幸いです。


置き土産と秘策 ~スクライア無双~

「滝峰さんでございやしたか? お話は終わった後でございやすが、うっかり忘れていたことがありやして……」

「……!? お前は確か……油魔といったか……? 一体何の用…………っ……!? その女性は……!」

 

 “透過”の無形が率いる妖怪の幹部連中と話し合った直後のことである。関係者を集めようとしていたところ、なんと、油すましの油魔が引き返してきたのだ。その手には、簡素な布で包まれた女性が居た。そう、“重圧”の地酔によって精神が壊れるまで犯し尽くされた、トーア・シュッツェンその人であった。衣服は纏っておらず、口元からはよだれを垂れ流し、目は虚ろ……声をかけてもまともな返事はない。

 

「おっと……そんな怖い顔で見つめないでくだせぇな……あっしは小心者でございやすからねぇ……この娘をお返しする際に手元が狂ってしまいやすよ」

「くっ……卑劣な…………ん……?……お返しするだと……? お前たちの仕業ではないというのか?」

「へっへっへ……中々の慧眼でございやすな……先ほどの話し合いでは、無形様が会話を愉しみ過ぎてしまいやしてね……この娘をお返しする予定をすっかりと忘れてしまったというわけでございやすよ」

「…………っ……! ぬけぬけと…………いや、忘れ去られるよりは断然よかったと考えるべきか…………礼を言っておくよ……不本意だけどね」

「へっへっへ……賢明でさぁ……」

(思った通り……油断は出来ない御仁でございやすな……戻って来て正解……)

「おっと……ここで激昂しておけばよかったかな? アンタのような輩には侮ってもらっていた方がやりやすかったかもしれないね」

「……っ……!? 恐ろしいお人だ……流石はあのお方の旦那と言うべきでございやすなぁ……」

「お世辞はいいよ。無形にはあまり人間を舐めるなと伝えておいてくれるとありがたい」

「はっはっは……承りやしたよ…………ついでといっちゃあなんですが、あっしも少し自己紹介をば……無形様から名前だけはご紹介いただきやしたが、改めやして……あっしの名は油魔……油すましの名付きでございやすよ。無形様の忠実なるしもべと思っていただければ幸いでございやすな」

「覚えておこう。さぁ、今度こそお暇してもらおうか」

「へっへっへ……嫌われたもので…………おっと……これ以上長居をしてしまっては討伐されてしまってもおかしくはありやせんな……滝峰さんのおっしゃる通り、お暇させてもらうとしやしょう」

「ああ、そうしてくれると助かる。出来ればもう二度と会いたくないものだな」

「へっへっへ……あっしもこの場所は生きた心地がしやせんでしたよ……では……これにて失礼をば……」

「……ふぅ……やっと帰ったか……底の知れないヤツだったな……トメ様の懸念は当たっていたというわけか…………おっと、こうしちゃいられない。葉子さん、そちらの女性を医務室に運ぶ手配をしてくれないか? 俺が運ぶわけにはいかないし」

「承りましたわ……………………ええ、第一会議室です。かなり重篤な患者さんですわ。医療班には緊急体制の構築を指示してください。頼みましたよ………………お待たせしました、幹也さん」

「ああ、ありがとう…………葉子さんはヤツをどう思った?」

「…………戦闘能力で言えば無形より劣るでしょうが……戻ってくるタイミングや気配の希薄さ、丁稚のような喋り方で下手に出ておきながらも狙いは外さない狡猾さ……挙げればきりがないですわ」

「やはりそうか……何故あれほどの妖怪が今まで有名にならなかったんだ?」

「討伐されないためじゃろうよ。無形もかつてはそうじゃった」

「トメ様……! 無形もですか?」

「うむ。ヤツも以前は名の通った大妖怪の影に隠れて暗躍しておったよ。そして今回のように、油断しておる大妖怪の寝首を掻いて一気に台頭したというわけじゃ」

「知能犯というわけですか……しかしそれなら戦闘能力に関しては地酔より何段か落ちると見ても……?」

「残念ながらそうはいかん。ヤツは暗躍していた頃から既に大妖怪の実力を凌駕しておったからの。おそらくヤツもその手合いじゃ」

「頭の痛くなる話ですね……ただでさえ情報霊という未知の妖怪を相手取らなくてはいけないというのに……」

「泣き言は言っておれんよ……次元世界の命運はわしらに懸かっておる。レジアスとやらの目的は次元世界の破滅らしいからのぅ……」

「くっ……猶予はあまり無さそうですね…………」

「まぁまぁ、焦っても事態は好転しませんよ、幹也さん。そろそろ主だった面々が集まる頃です。考えるのはそれからでも遅くありませんわ」

「……そうだね。ありがとう葉子さん。しっかりと対策しなければ」

「その意気です。さぁ、しっかりと作戦を練りましょう」

「ああ、頼りにしているよ」

「ひゃひゃ……見せ付けてくれるのぉ……御琴や涼香も早く身を固めればよいものを…………あの図書館におった御仁とか……どうじゃろうか?」

 

 危険な気配を纏った油すまし、油魔の思いがけないUターンは首脳陣に更なる頭痛の種を呼び込んだ。とても無事とは言えない被害者女性の治療、無形に匹敵する脅威がいるという事実……対策は取れるのだろうか……混迷はまだまだ続く。

 関係者が集まるのを待っていた会議室に一報が入る。どうやら来客のようだ。幹也は伝令の声に耳を傾ける。

 

「お疲れさまです! ユーノ・スクライア司書長とシプラウト・スクライア上級司書が到着されました。お通ししてよろしいでしょうか?」

「おお! もちろんだ。お通ししてくれ」

「かしこまりました。司書長、上級司書、どうぞ、お入りください」

「失礼します。初めまして。僕の名前はユーノ・スクライア。無限書庫で司書長をしております。本日は妖怪対策本部にお招きいただきましてありがとうございます」

「お待ちしておりました。スクライア司書長。貴方の研究成果には我々も助けられっぱなしですよ。本日の会議でも是非お力添えを頂けたら嬉しく思います。そしてシプラウト上級司書。先日はうちの連中がお世話になりました」

「いえいえ、次元世界のため、当然の事をしたまでのことですよ。改めまして、シプラウト・スクライア上級司書です。以後、お見知り置きを。ああ、これから共に闘う同志となるのですから、畏まった話し方は無しにしましょう」

「そうかい? ではお言葉に甘えて……こちらこそ、よろしく。対妖怪作戦総合指揮官の滝峰幹也だ。忙しい中よく来てくれた。皆が集まるまで座って待っていてほしい」

「ありがとうございま……「遅くなりました! 医療班です! 急患を搬送いたします」……急患? まさかそちらの女性が……」

「二人とも、お騒がせして申し訳ない。妖怪の被害を受けた急患が運び込まれて来ていてね……」

「…………っ……! シプラウト! これは……!」

「ああ、このままでは命の危険があるね」

「……なっ……!?」

「すみませんが、これから目を疑うような治療に入ります。どうか止めないでいただきたい」

「治療を止めるわけがないだろう? 何を馬鹿なことを………………いや、二人ともどうして裸に……!? それに身体からいかがわしい触手が生えて……」

「んっ……んんっ………………あっ……あっ………………」

「やめろ……! 病人に鞭を打つつもりか……!?」

「まぁまぁ、幹也さん。止めないでとおっしゃっていたじゃありませんか。目を疑う治療というからには何らかの意味があるはずです。それに……うふふふ……」

「じゅるり……なかなかイイ身体をしておるのぉ……ぐふふ……」

「ちょっ……!? 葉子さん、トメ様!?」

 

 突然発生したストリップ劇場と18歳未満にはお見せ出来ません的な状況に幹也は慌てふためくことに……こんな時に頼りになるはずの女性陣は学者肌の二人の魅せる以外な肉体美に目が釘付けである。するとそこに……

 

「葉子さ~ん! トメさまぁ~! バスティップ・ファトモーモが貴女方に会いに来ましたよ~? 今後について、じっくり、しっぽり語り合いましょ~う…………って……なんじゃこりゃぁ~~~~!!?」

 

 更なるカオスの根源が現れてしまう。説明が面倒くさくて堪らなくなりそうな状況に頭を抱える幹也であったが……

 

「おおっ……同志シプラウトとユーノじゃないか! 相変わらずムカツクくらいの美ボディをしやがって……頭も良くてイケメンとか……やらしい奴らめ~!」

「んん?……あぁ、同志バスティップじゃないか。色々と語り合いたいところだけど、今はこの女性の治療中なんだ。かなり危ない状況だったから事前説明なしに始めてしまってね……」

「悪いけど幹也さん達に簡単な説明をしておいて欲しいんだ。今回は中々手強くてね……しばらくは治療に専念したい。頼んだよ」

「……マジか……アンタ達がそこまで言うとは……相当ヤバいじゃないか……患者は…………なるほど……トーアの姐さんだったら無理もないな……わかった。事情は説明しておく。もう少ししたらトーサッツ隊長も来るしな」

「ありがとう。流石は同志バスティップ……頼りになる」

「バスティップ君……きみはこの状況を説明出来るというのかい? 是非ともお願いするよ。あまりの光景に理解が追い付かなくてね……」

「いいっスよ。でもみんなが集まって来てからにさせてくださいっス。シーカーズの面々は知っているんっスけど、他の方々が知らないっスからね。幹也さんみたいな反応になるのがオチっスから」

「……わかった。皆が揃うまで待つことにしよう」

 

 目の前で展開する濡れ場をなるべく見ない様にしながらも、今後の方針を掲示する幹也であったが、バスティップは当然のことながら、目を血走らせてガン見している。これでいて、既に隊長たちには念話で事情を説明し終えているのだから驚愕モノである。

「さて、皆集まったみたいだな…………うん、横で行われている行為について言いたいことがあると思うが、どうやらシーカーズの面々が事情をしっているそうだ。早速説明してもらうとしよう。トーサッツさん、頼んでもいいですか?」

「任されましょう。先に言っておきますと、アレは治療行為ですな…………ええ、信じられないのも無理の無い事でしょう……どう見ても触手モンスターに蹂躙される可愛そうな女子としか思えない」

「もしかして、あの触手を身体から生やしているお二人が鍵を握っているのでしょうか?」

「その通り。皆様方もこの次元世界での妖怪の被害に心を痛められていると思いますが、魔力を持った女性が襲われると、とある副作用があることはご存じでしょう」

「えろぉい気分になってしまうというヤツじゃな。今の所浄化の符による対処療法しか執り得る手段がないのが現状……というわけじゃが……もしやアレが……?」

「そう、かの手段を執れば、劇的な回復が可能。根治も夢ではない……絵面はアレですが、効果は実証済です」

「実証済み!? 魔力と霊力・妖力の関係性は未知の部分が多く、根治は難しいと思っていたが……」

「ふむ……信じがたいと言ったところでしょうな。証拠をお見せしよう……高町くん、こちらへ」

「は……はいっ……! 高町なのはです。よろしくお願いします」

「君は確か……重症患者の一人じゃなかったか? 後遺症に苦しんでいると聞き及んでいるが………………なるほど……そういうことか……」

「お察しのとおりです。あちらでハッスル…………失礼、奮闘されているユーノ氏は、こちらの高町くんとは旧知の仲でしてな……その縁もあって、氏の研究していたアノ治療法の進展に寄与できた……というわけですなぁ……ふふふ……若いとは素晴らしいエネルギー……」

「なぁるほど……くく……恋は盲目……エロは世界を救う……かの……?」

「うぅ……ほぼ事実なんだけど……恥ずかしいよぉ…………助けてユーノくん……」

「ん……トメ……せくはらだよ……そんなこといっちゃだめ。それとなのは、おちつく。あなたはすごいことをした。はずかしがらなくていい」

「ぐっ……!? 誰じゃナツに斯様な言葉を教えたのは……!?」

「そんなことはどうでもいい。トメはなのはにあやまる」

「う……そのような目で見つめるでない…………わかったわかった…………すまなんだ。なのはよ……揶揄(からか)って悪かったの」

「まったくもぅ……酷いよトメちゃん!…………えっと、ナツちゃん? ありがとね」

「ん、なのは、久遠のともだち……こまってたら、たすけるのは、あたりまえ」

「ええっ……!? 久遠ちゃんの……? うわぁ……! 懐かしいなぁ……ふふっ……久しぶりに会いたいよ……」

「だいじょうぶ。けがれはほとんど、きえたから。あえるよ。ぜったい」

「ありがとう……! ナツちゃん……ぐすっ……よかった……よかったよぉ…………」

 

 幼く見えてもナツは神。流石の貫録であった。気丈に振舞い、親しい友人や家族にすら見せなかった涙を引きだしたのである。トメ様は見習うべきだと思う。もはや手遅れかもしれないが……それはさておき、会議室には堪えていたモノが解放され、静かにすすり泣く音だけが響くのであった。

「ごほんっ……我らが話題を振っておきながら……大変恐縮なのだが、話を進めていいだろうか……高町くん、協力に感謝する。ここに集まった諸君も、実証については理解して頂けたかと思うのでな。あとはゆっくり部屋で落ち着くといい」

「ぐすっ……ありがとうございます。でも、ごめんなさい。もう少しだけ、ナツちゃんと一緒にいさせてください。まだ、少し、一人になるのは……怖いです」

「承知した。心の傷を抉るような真似をして申し訳ない。ゆっくりでいい。少しずつでいいから、癒していってほしい」

「はい……すみません。お言葉に甘えさせてもらいます……ナツちゃん。そっち行っていいかな?」

「うん。いいよ。こっちきて。“よしよし”してあげる」

「うぅ……ナツちゃぁ~~ん……!!!」「いいこ、いいこ……よくがまんした。“よしよし”」

(バブみを感じる……ママぁ…………はっ……いかん、会議を続けなければ……!)

「では、アノ治療についてですが……名付けるとしたら、セクシャルアプローチ式瘴気除去法とでも言いましょうか。膨大な無限書庫の資料とスクライア一族の尽力によって開発された最新の治療法となっておりますぞ。事件の黎明期から研究していたらしく、インパクト抜群なあちらで触手責…………もとい治療行為に励んでいるユーノ・スクライア氏とシプラウト・スクライア氏を中心に確立されたようですな。詳しくは一族の秘伝に該当する部分があるらしく……流石の我らシーカーズも使用は出来かねる……と言ったところでしょうかな」

「ああああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!? かはっ……げほっ……げほっ……はぁ……はぁ……ここは一体………………って……きゃあああぁぁぁ……!? な……なななな……なんで裸なのよ……!? いやっ……み……みないでぇぇぇぇ~~~~!!!?」

「おおっ……! トーア姐さんが可愛い……!? 新たな魅力を発見だ……!」

「ちょっ……お前らシーカーズの奴らか……! くそっ……こっち見るんじゃねぇ……!?」

「ふ……不可抗力ですよ姐さん……! 俺達は……」

「い……言い訳してんじゃ……「そんなことはどうでもいいの! いいからあっちをむきなさ~~~~い!!!」…………って、高町一尉……!?」

「「「「マム、イエス、マム!!!」」」」

「~~~~~~~~っ……!!!…………はっ……!? ご……ごめんなさい……つい大声を……!」

「ふふふ……調子が戻ってきたようだね。なのは」

「ユーノ君……! あぅ……恥ずかしいよぉ……」

「ははは……この状況になってしまったのは僕らのせいだからね。隠しておけばよかった」

「隠すことが出来るんだったら、やっといてよ。もぅ……!」

「ごめんごめん。緊急だったから、余裕がなかったんだ」

「ふふっ……なんか久しぶりに心から笑った気がするよ。ナツちゃんのおかげかな? もちろんユーノ君が治してくれたっていうのが一番だけどね?」

「ありがとう、なのは。そう言って貰えるなら、頑張った甲斐があるよ」

「「あはははは……」」

「ゴホン……嬉し恥ずかしいのは分かるが……場所を選びたまえ。そろそろ議題を進めさせて欲しいのだよ」

「「あ………………ごっ……ごめんなさい……!!」」

「瞬く間に元気になってくれるのは嬉しい誤算。これが特効薬という奴ですかな?」

「「あぅ…………」」

「ふふふ……若いカップルを揶揄(からか)うのはこれくらいにするといたしましょうか。さて……どこまで話しましたかな……かの治療法は現在、スクライア一族しか使えないという所まででしたな。とはいっても治療法について語れるのは実はこのあたりまで……この先はユーノ氏に説明していただくことにしましょう。何やら今後の戦略上重要なことが判明したということですからな」

「ゴホン……では僭越(せんえつ)ながら説明させていただきます。治療法の効果や現状については、トーサッツさんが説明したとおりで間違いありません。僕がこれから説明するのは、なのはを治療する過程で判明した無視できない重要な事実です」

「同志ユーノ、それはあの時言葉を濁した内容だろうか?」

「ええ。シーカーズの方々には懸念を伝えただけで詳細は伝えていませんでしたね。(ようや)く説明出来る材料が集まりましたのでこの機会に共有したいと思います」

「「「「「「「「ゴクリ……」」」」」」」」

「まずは今回の事件の黒幕の事です。皆さんもご存じのとおり、元地上本部のトップ、レジアス・ゲイズ中将が悪霊に変じた姿です。しかしながら、僕が調査を進めたところ、彼はもう、レジアスであってレジアスではない……と言わざるを得ない状態です」

「……っ……!? 確かに死亡してから現在の規模にまで強大になっていることはおかしいと思っておりましたわ…………まっ……まさか……!」

「はい。混ざり合ってしまっているのです。同時期にレジアス中将と共に裏切りに遭って死亡した、最高評議会の面々と……!」

「「「「「「「「なっ……なんだってぇぇぇぇ…………!!!??」」」」」」」」

「驚くのも無理はありませんが、事実です。肉体を捨て、脳髄と思考能力だけを残したまま100年単位で生き続けた存在が混ざり合うことで、悪霊としての存在が信じられないほどに格上げされてしまったというわけです」

「やはりそうでしたか……納得がいきましたわ……ですが、本題はこれからなのでしょう?……こちらが不自然なまでに敗北を重ねた原因……」

「流石です。葉子さん。“情報霊”レジアス・ゲイズは、最高評議会の悪霊と混ざり合ったことで、旧暦の時代から蓄積された、世界のあらゆる情報にアクセス出来るようになりました」

「「「「「「「「……………………は?」」」」」」」」

「正直に言ってこれだけでも相当ヤバいのですが、ヤツは積もり積もった憎悪に支配され次元世界を滅ぼそうと考えるようになりました。しかし、普通の方法ではJS事件のように発展した魔法や科学技術によって阻止されてしまう。それならば、主流となっている“魔法”という文化を根本から破壊しようと画策したところが今回の事件の始まりです」

「「「「「「「「…………………………………」」」」」」」」

「絶句しているところ申し訳ないのですが……まだ続きがあります。ヤツは目的を達するために管理世界に留まらず、管理外世界の情報まで貪欲に集めだしました。そして最終的にヤツが目を付けたのが、第97番管理外世界地球に存在が確認される“妖怪”だったという訳です」

「なるほど……妖怪には“魔法”の効果は限りなく薄い……世界の情報にアクセス出来るなら百も承知……気の長い話ではあるが、執念で探し出した……恐ろしい存在だな」

「ええ、僕も同感です。ですが、僕らはその存在に勝たなければなりません」

「ああ。そうだな……だがこれまでの話を聞いていると、対策を執りようが無い様に思える……どうしたものか……」

「そうですね。ですがヤツの能力も万能ではない。世界の情報にアクセス出来るようになったとはいえ、その量は膨大どころの話ではないと思いませんか?」

「確かに……ではそこに突破口があるというわけか」

「そうなります。しかしヤツもそのことは理解っていたのでしょう。妖怪を次元世界に招致すると共に、とある仕込みをしました。実体が無いことを活かして、自らの一部をデータとして全ての妖怪に潜り込ませたのです」

「な……! 正気か……!? 下手をしなくても存在が消滅してしまってもおかしくはないぞ……!? いや、悪霊の地点でもう、正気ではないのか……」

「その通り。そしてその目論みは成功した。後は次元世界に広がった妖怪が情報を集めてくれる。そして勝手知ったる地上本部で自分の後任であるアーブラ・ギッシュ大将を裏から操ってクラナガンで暗躍したというわけです」

「…………ううむ……正直に言って…………詰んでないか?」

「ふふふ……そう思えるかもしれませんが、ヤツにもいくらか誤算はあった……まずは招致した妖怪のトップ、“重圧”の地酔が強大であったこと……そして“透過”の無形の存在です」

「……! そうか……! 何故今になって仲間割れのようなことをしたのか疑問だったが……地酔に細工がバレてしまったんだな?」

「概ね間違っていませんが、イレギュラーでこちらに飛ばされた無形が気付き、唆したというのが事実です。無形にはヤツのデータは仕込まれていませんからね。彼ほどの妖怪なら、会うだけですぐに気付いたことでしょう。ましてや排除を狙っていた相手とあれば……」

「なるほど……あの仲間割れにそんな背景があったとは……」

「ええ、これで妖怪の動きは大分抑制されましたが、本題はそこではありません。ここからはいかにしてこちら側が敗北を重ねたか、そしてヤツへの対抗手段についてお話していきましょう」

「お願いするよ。いやはや、その分析力に感服する。今後もよろしく頼む」

「任されました。直接的な原因はアーブラ・ギッシュ大将であることは皆さんも認識しているとおりです。では何故彼が猛威を奮ったのか……彼には多めにヤツのデータが埋め込まれていたのは事実ですが、それだけであそこまで敗北を重ねるというのはいくら何でも無理がある。ヤツの狙いは、データを埋め込んだ妖怪に女性達を襲わせ、データを女性に感染させることだったのです」

「襲われた女性に……?……っ……!? まさか……そんなことが……」

「ええ、被害女性は保護され、基本的には対策本部の医療施設に運ばれる……そして感染させたデータを介してこちらの情報を取り放題だった……というわけです」

「何てヤツだ……!! 被害者の保護までも戦略に組み込むとは……! しかし……そのようなこと……本当に出来ることなのか……?」

「疑うのも無理はありません……ですが、無限書庫で実際にヤツと対峙した身としては間違いないと断言できます」

「…………失礼した。だがそうなると、いよいよどう対策してよいかわからないぞ」

「大丈夫ですよ。ここで僕らが開発した治療法が活きてくるんです」

「何……? 全く見当がつかん……どういうことなんだ?」

「説明します。魔力持ちの女性が襲われた時、強い副作用があることはご存じでしょう。治療法の開発の中わかったことなんですが、副作用は、感染したヤツのデータと魔力が過剰反応したせいだったのです。魔力と反応して瘴気を発生させるため、データが残っていれば浄化の符で瘴気を取り除いたところで同じことの繰り返しとなってしまう……分かってしまえば単純ですが、分かったからといって対処できるかと言えば……困難と言わざるを得ないでしょう」

「……幾重にも練られた恐ろしい計画だな……下手をしなくても気付くことすら出来ないじゃないか……!」

「ええ……ですが僕が気付きました。そしてそれこそがヤツの最大の誤算……! 人の女にちょっかいを掛けて来やがったこと……絶対に後悔させてやる……!!!」

「ゆ……ゆーのくん……!……やだ……かっこいい……//////」

「ヒュー! アツイねぇ……同志ユーノ! で、どうやってヤツに一泡吹かせてやるんだい?」

「ああ、考えているよ。実はあの治療法は、正確には治療じゃない。襲われた女性達に巧妙に埋め込まれてしまったヤツのデータを取り除いているんだ」

「なるほど……! では今後の方針は……」

「うん、被害者を片っ端から集めて、乱交パー…………ゴホン……集中治療行為だね。スクライア一族の威信にかけて、ヤツのデータを駆逐してやる!」

「「「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ…………!!!!」」」」」」」」

「よし、方針は固まった。集中治療行為の段取りは対策本部が責任を以て組もう。散々こちらをコケにし続けてきたあのヤロウに……鉄槌を下してやるぞ!」

「「「「「「「「サー・イエス・サー!!!!」」」」」」」」

 

 遂に暴かれた“情報霊”レジアス・ゲイズの正体と迂遠ながらも綿密かつ強大な戦略……後手に、後手に回らざるを得なかった戦況を変える一石が、遂に投じられる。この行為がいかなる結果をもたらすか……出来れば希望であってほしいものである。対策本部の本当の闘いが、漸く始まった……

 




疲れた……
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