―――地球 海鳴市―――
「ここが海鳴市……ここちょっとおかしいやろ……ありえへん気配が漂いまくっとるやん」
「確かに……この気配は尋常じゃないわね……」
「ええっ……! 大丈夫なんですか!? いぶきさん、なずなさん!」
着いて早々、海鳴市に漂う超常的な雰囲気に対して言葉を漏らすいぶきとなずなに、莉音が心配そうに尋ねる。
「う~ん……でも悪い気配ではないわ……藪をつつかない様にすれば大丈夫よ……たぶんね」
「ええ……そんなぁ……」
心配する莉音に舞歌がたぶん大丈夫と逆に不安になることを言ってのける。
「ふふふ……大丈夫ですよ、莉音さん。ここ海鳴市は永世中立地帯。妖怪も神も相互不干渉です……こちらから何もしなければ……ね」
「葉子さん……それなら大丈夫ですね! よかった~」
「まぁ、その分何が起こっても自己責任。神も仏も助けてくれませんけどね」
「ちょっ……葉子さん! 怖いこと言わないで下さいよぉ!」
莉音涙目。葉子のいい標的だ。躱すことを覚えた方がいい。
「あはは……さすが葉子さん。上げて落とすのが大好きでいらっしゃる……」
「葉子さんは相変わらずね……桂香、初花、あの人の相手、疲れない?」
「う~ん……慣れたらそうでもないよ? 私たちのことを思ってのことだろうし……わかりにくいけど」
「そうね……不本意ながら……人をからかうのが日課みたいなところがあるしね。莉音ちゃんがんばれ」
うずき、かんな、桂香、初花が葉子について品評する。
「……海鳴市ってそんなところだったのね……中継ポートがあるだけじゃないんだ…………皆さん、行きますよ。中継ポートのあるお宅へ」
ピアは知られざる海鳴市の実態に驚いたが、気をとりなおして巫女さんたちを先導する。目指すは月村邸。中継ポートのあるお宅である。
―――海鳴市 月村邸―――
「ほぁ~大きい家だねぇ、ちはちゃん」
「そうねぇ、立派な門構え。すっごいお金持ちが住んでるんだろうなぁ」
紫とちはやが月村邸を見て呆然としている中、ピアがインターフォンを鳴らす。
『はい。月村です。ピア・ニッシモンさん一行ですね。どうぞ、お入りください』
女性の声がしたかと思うと、門が自動的に開いていく。
「おお、はいてく!」
「弥生さん、月村ってもしかして……」
「奏さん……多分そうなのでしょうね……」
梓紗、弥生、奏がそれぞれ思うことを言いながらピアの後をついていく。一名ほど、ただの感想だが。やがて一行は月村本邸の玄関にたどり着く。するとそこには一人のメイドがいた。
「ようこそおいでくださいました。私はファリン・K・エーアリヒカイト。すずかお嬢様にお仕えするメイドです。以後お見知りおきゅを…………ゴホン……お見しゅりおきゅを……あわわ……おみゅしゅりおきゅを……うぅ~~」
「「「「「…………………」」」」」
「うわ~ん……お嬢様ぁ~~!」
「ふふふ、ファリン、ノエルの真似なんて似合わないよ?」
「カミカミじゃない……あははは」
突然のカミカミ劇に絶句する一行を紫髪の長髪の女性と金髪のショートカットの女性が出迎える。月村すずかとアリサ・バニングスだ。
「皆さんようこそ月村邸へ。月村すずかです。ファリンの事は……気にしないでくださいね?」
「友人のアリサ・バニングスよ。見たことがある顔もいるみたいね」
「やはりすずかさんでしたか……お久しぶりです」
「アリサじゃん! 髪、短くしたんだね~一瞬誰だか分からなかったよ」
「すずかさん、アリサさん、お久しぶりです」
二人と知り合いらしい弥生、梓紗、奏が声をかける。退魔の名家の出身である三人はパーティー等で知り合ったらしい。髪をばっさりと切ったアリサに驚いていたようだが。
「遠くからお疲れ様です。あがってください。お茶を淹れましょう。色々積もる話もありそうですし」
「では、お言葉に甘えて。お邪魔します」
一行はファリンに案内されて、応接室へと移動を開始した。途中何もない所で躓いてこけるファリンに苦笑しながら。
―――月村邸 応接室―――
「あらあら、すごい大人数ね」
「おお、美人さんばっかり」
「リンディさん!? エイミィも。どうしてここに」
「アルフが飛び出しちゃったから……その件でここに来ていたの」
「アルフが……やはりあの件で……」
「ピアさん、とりあえずその辺で……皆さんお疲れでしょう? 適当な席に座ってください」
月村邸にリンディとエイミィがいることに驚いたピアだったが、すずかに言われてとりあえず椅子に腰かける。巫女のみんなもそれぞれ思い思いの席につく。
「人数が多いのでお茶はセルフで注いでくださいね。ファリンに任せちゃうとこけちゃうから……」
「ファリンさんは相変わらずですのね……そういえばお姉様はいらっしゃらないのですか?」
「奏さん……お姉ちゃんはお義兄さんと一緒にドイツに行っているの」
「忍さんいないんだ。いろいろ面白い話が聞けると思ったのに、残念」
「梓紗は忍さんと仲良かったわね……子供っぽいところがウマが合ったのかしら」
「なにを~! このツンデレアリサめ! ナマイキな!」
「んなっ……!? 誰がツンデレよ!」
(((((いや、絶対ツンデレでしょう……声的に)))))
昔からの知り合いを中心に、自己紹介を交えながら和気藹々とお茶を楽しむ面々。そうしているうちに話は本題に移っていく。
「えっと……すずかさん、アリサさん、リンディさん、エイミィは今回の事についてどれだけ知っているのですか?」
「詳しいことはあまり……何か良くないことが次元世界で起こっているとしか」
「私もそんな感じね。アルフが慌ててたこともあったし尋常じゃないことがあったんでしょう?」
「次元世界で妖怪事件というものが起こっていると聞いているわ」
「私もリンディさんと同じくらいしか知らないや」
「……妖怪というものを知っていますか?」
すずか、アリサが肯定、リンディとエイミィが否定する。そこでピアは妖怪について分かっていることを四人に伝える。
「妖怪がそんなことを……」
「うわっ……妖怪ってそんなことするの? きっついわ」
「……何てこと……! それじゃあ……」
「……やばいね……」
「リンディさん、エイミィさん……何か気がかりなことが……?」
リンディとエイミィの態度を不審に思ったすずかが二人に尋ねる。
(二人にはもう隠しきれそうにないわね……二人とも聡明だからアルフのことと照らし合わせてある程度気付いていそうね)
「アリサさん、すずかさん、落ち着いて聞いてくださいね……アルフが飛び出したのは……行方不明になったフェイトを探すためなの」
「「えっ……?」」
「次元世界では今妖怪事件という詳細不明の事件が起こっています。行方不明者続出の難事件です。フェイトは行方不明者を捜索中に行方不明になったの」
「そんな……! 妖怪事件で行方不明ってことは……」
「フェイトが妖怪に……!」
「落ち着いて二人とも。まだ確定じゃないわ。身を隠しているだけかもしれないし、捜索隊も組まれるはずよ」
「くっ……でも……」
「フェイトが心配だわ」
「さらに追い打ちをかけるようで悪いんだけど……行方不明なのはフェイトだけじゃないの。なのはさんもはやてさんも……以前ここに来た、エリオ君以外の機動六課の子たちも揃って行方不明なの」
「「そんな……!?」」
驚愕の事実に呆然としてしまうアリサとすずか。驚きすぎて二の句が継げない状態だ。リンディもエイミィもすまなさそうに顔を俯けている。そんな中、静まり返り、固まった空気を切り裂くようにピアが発言する。
「すずかさん、アリサさん、リンディさん、エイミィ、落ち込むのはまだ早いです。何のために我々が集まったと思っているのですか? 決して観光のためなんかじゃないのですよ?」
「ここにいるのは次元世界妖怪事件対策本部から依頼を受けてこの度派遣されることになった、妖怪退治の専門家、退魔巫女の皆さんです」
何故か葉子がドヤ顔で言う。
「退魔巫女……妖怪退治の専門家……」
「弥生も梓紗も奏もそうなんだ……」
「そうだよ~お友達のことは任せて!」
「はい。人助けは退魔巫女の使命です」
「お任せください。アリサさん、すずかさん」
「ありがとう。弥生、梓紗、奏。他の退魔巫女のみなさんも」
「私たちの友達を、親友をよろしくお願いします……!」
ピアと退魔巫女の一行は、その願いを受け、決意を新たに、次元世界へと赴くのであった。
全然進まなかった……