「じゃーね。頑張ってきなさいよ! 応援してるから!」
「退魔巫女のみなさん。私たちの親友をよろしくお願いします」
「お任せあれ~! 行ってくるね~」
アリサとすずかに見送られて転送ポートへと足を踏み入れる退魔巫女一行。独特の浮遊感のあと、景色が一変する。
「おおっ……ここが異世界!」「空港みたい」「空間ディスプレイがあるよ」「興味深いですね……」「はわわ……なんかすごいですぅ……」
初めて見る光景に思い思いの感想を述べる退魔巫女たち。田舎者丸出しだ。きょろきょろと落ち着きがない。落ち着きのない一行にピアが声を張り上げて注意する。
「皆さん! 見惚れるのは分かりますがまだ目的地に着いてませんよ! はぐれないようについてきてください」
「ふふふ……遠足みたいですね。先生?」
「葉子さん……やめてくださいよ……」
「ピアせんせ~バナナはおやつに入りますか~?」
「初花さんまで……もう……行きますよ!」
引率のピア・ニッシモン先生に連れられた退魔巫女組の面々は第8番管理世界アラルガン行きの中継ポートへと歩み始めるのであった。
―――第8番管理世界アラルガン―――
「おっ……来た来た……遅いぞ紫~、ちはや~」
「ゆーくん!?」「悠馬!?」
「ふん……相変わらずとろい奴らだ」
「飛天丸さん!?」「飛天丸!」
「勇、護、元気にしてたか?」
「石動!?」「石動さん!?」
「ははは……たくさん来たね」
「みっちゃん!?」「みなせ!?」
「弥生、梓紗、奏……卒業以来か?」
「お兄様!?」「お兄ちゃん!?」「誠一郎様!?」
「遠野、杜崎……お前たちも来たのか」
「教官!」「あら、あなたも来ていたのね」
「かんな、うづき、久しぶりだな」
「木島!?」「木島さん!?」
「うわ……何だこの面子……ヤバすぎるだろ……」
「孝太君!? 久しぶりですぅ」
「葉子さん……君も来たんだね」
「ふふふ……来ちゃいました……幹也さん」
それぞれが以外な人物を目撃して声をあげる中、葉子が訳知り顔で語り出す。
「ああ、巫女さんだけでは心許ないので男性陣には先入りしてもらいました。ふふふ……意中の彼と一緒に仕事が出来て嬉しいでしょう?」
「「「「「えっ……!? そんな訳……!!」」」」」「「……はい……」」
「ふふふ……素直になればいいのに……私は幹也さんと一緒に仕事が出来て嬉しいですよ?」
「「「「「う…………」」」」」
「ま……まぁまぁ、皆さん、ここが第8番管理世界アラルガンです。妖怪事件の対策本部がある世界です。ベース基地へ行きましょう」
埒があかないと思ったピアが無理やり軌道を修正する。ベース基地は中継ポートからさほど離れていない。雑談をしているうちにたどり着いてしまった。
「妖怪事件対策本部ようこそ、退魔士のみなさん。対策本部本部長でこのベース基地司令のスフォル・フォルツァートです。以後、お見知りおきを」
「実行部隊隊長のヴィーオロン・セロ二等陸尉だ。よろしく頼む」
「ご丁寧にありがとうございます。退魔士組の代表を務めます滝峰葉子ですわ。よろしくお願いしますね」
いつのまに代表になったのか、葉子があいさつする。年長者なのは確かなので文句は出なかったが。
「皆さんが集まったところで、早速会議に入りたいのですがよろしいですか?」
「構いませんわ。ざっと見たところ霊脈が汚染されている様子。かなりの妖怪がこの世界に発生しているみたいですから」
「霊脈……ですか? 詳しい話をお聞かせ願えないでしょうか」
「わかりました。では会議室へ行きましょう」
「案内します」
ヴィーオロンに案内された一行は会議室へとたどり着く。ごく普通の会議室だ。
「それでは……第5回妖怪事件対策会議を開催します。今回は第97番管理外世界地球から、妖怪退治の専門家である退魔士、退魔巫女の皆さんが来られています。遅々として進まなかった妖怪対策に一石を投じることができるでしょう。それでは、退魔士団代表の滝峰葉子さん、ごあいさつをお願いします」
「先ほどご紹介に預かりました、滝峰葉子ですわ。よろしくお願いしますね。さて、いきなりですが、私は妖怪です」
「「「「「!?」」」」」
会議室に衝撃が走った。武器を構える者までいる。
「静まりなさい! 話はまだ終わっていないですよ……武器を下ろしなさい。彼女がその気ならこの会場は吹き飛んでいますよ! ちゃんと話を聞きなさい……滝峰さん、続きをお願いします」
スフォル本部長が逸る部隊員を制して続きを促す。
「ふふふ……咄嗟の臨戦態勢……優秀ですのね。しかし妖怪には通用しない。さぞかし悔しい思いをなさっているでしょう。ですが……我々が来たからにはその思いは過去の物となります。次元世界に巣食う悪い妖怪を懲らしめてやりましょう。そのために我々は来たのです。妖怪は倒せないものではありません。われわれが倒し方を伝授します。優秀なあなた方なら成し遂げられるでしょう。さぁ、一緒に頑張ろうではありませんか!」
「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」
「ははは……すごいですね……では具体的な話に移りましょうか。滝峰さんよろしくお願いします」
「はい。まず妖力についてですね。妖怪は妖力という力を纏っています。この力を使って力を増したり、動きを速くしたり、魔法のような不思議な力を使ったりするわけですね。そしてこれはピア・ニッシモン執務官が検証したことなのですが、妖力と魔力の力関係についてわかったことがあります。ピアさん、説明してくださるかしら」
「時空管理局本局所属、執務官ピア・ニッシモンです。先ほど議題に挙がった妖力と魔力の力関係についてですが、完全に妖力が上位です。具体的に言えば100対1です。一発の妖力弾を消滅させるのに100発の魔力弾が必要でした。それまでは魔力弾を当てても霧散します。これが妖怪には魔法が通じないとされた理由でしょう。結論から言えば魔法でも妖怪は倒せます。しかし、大量の魔力を消費する上に効率が悪いことがわかっていただけたかと思います」
「ピアさん、ありがとうございます。では実際に見ていただきましょう。皆さん、私は今から妖力弾を作ります。これを魔力で消すところを見ていただきます」
そういうと葉子は掌の上に妖力弾を作り出す。
「さて、皆さん、今私の掌の上には妖力で作った弾があります。これが見えない方はいらっしゃいますか?」
手を上げる者はいない。どうやらみんな妖力弾が見えるようだ。
「いらっしゃらなくてよかった……これが見えない方は妖怪を倒す手段が魔力しかないということになってしまいます。さて、誰か妖力弾を消してみたい方はいらっしゃいませんか?」
「では私がやりましょう」
本部長自らが立候補する。スフォル・フォルツァート、陸戦Bランクだが綿密な魔力操作のできる人物である。同じ規模の魔力弾100発などお手の物だ。次々と魔力弾を作り出して正確に当てていく。そしておよそ100発当たったところで妖力弾が霧散する。
「……おわかりいただけましたか? あの大きさの妖力弾を消すだけでこれです。妖怪はバリアジャケットのように妖力を纏っているわけですから魔法で倒すのは現実的ではありません。妖怪を倒すにはどうしたらいいか、それは霊力を使うことです。人間には少なからず霊力というものがあります。詳しくはこの場では言いませんが……ピアさん、妖力弾を霊力で消してください。出来ますね?」
「はい。葉子さん妖力弾、お願いします」
再び葉子の掌の上に妖力弾が作り出される。
「……はっ……!」
ピアが気合いを入れて妖力弾に触れるとそれは霧散する。
「「「「「おお~!!」」」」」
退魔士ではない、執務官がやってみせたことで、こちらの世界の人間でも出来るとわかって歓声があがる。
「そう、こちらの世界の方でも霊力は扱えます。今回、我々は妖怪を倒す人員の他に倒し方を教える人員も連れてきました。その者たちに妖怪の倒し方を学んでください。霊力は魔法のようにいろいろなことができます。人によっては闘いに向かない能力が開花することがあるでしょう。それでも後方支援の人員も連れてきていますのでご安心ください」
「滝峰さん、適性などはすぐ分かるものなのですか?」
「ある程度霊力の扱いに慣れないとわかりませんね。でも妖怪と闘うときは基本的に武器に霊力を纏わせる方法をとりますのである程度は予測できます」
「やってみないとわからないということですか……しかし隊員全員に適性があることがわかっただけでもよかったです……長くなりましたね……少し休憩しましょうか」
「そうですね。実際の妖怪対策についてはすこし難しい話になりますので時間を置きましょう」
「わかりました。では15分の休憩をとります。各自頭を整理しておくように」
「「「「「了解!」」」」」
興奮が冷めやらない様子の隊員に苦笑しながら、スフォル本部長は頭の中を整理するのだった。
主人公勢も出しちゃいました。キャラ管理しきれるかな……