「見っけ」
俺は1人、その場でニヤリと笑い予想通りの収穫が故に思わず笑みがこぼれた。
その部屋にはガンツソードが5本ほど
床に転がり、部屋の真ん中と端に一台ずつのバイクが止まっていた。
そして俺はその場に落ちているガンツソードを全て拾い、その内1つを太ももに、あとの4つは己が持ってきていたビジネスバックの中に無理やり詰め込む。
正直一個だけでも残してやっても良かったのだが、何事も集めるならコンプリートは基本といった完璧主義者の一面を持つ俺である。利益を独占出来るならしたいという欲が出てきた故の行動なので、もし玄野が必要になったら貸してやってもいいかなと考えながら再び例の部屋に戻った。
「ガンツ。もういいよ。転送して。ただみんなとは少し離れたところでいい。なるべく1人になれる場所にね」
俺の声に返事をするように一瞬間を置いた後、ジジジジジーと音を立て俺の転送が始まる。
初めは頭の先、指先、腰、つま先
俺の転送の遅れを取り戻そうとあらゆる場所から転送されていき、ふと、気がつけばあっという間に今回の戦場になるどこかの住宅街へと転送されていた。
「しっかし、どうしたものかね」
1人、夜も深まり静かな街に1人立つ男。
いや俺なんだけど。
俺はとりあえずスーツの感触を、ガンツソードの切れ味を、Xガンの破壊力を確かめるべく行動を開始する。
確かめるべく行動を開始する。
まずはスーツ。
その場から陸上のクラウチングスタートの格好を取りその場で力を込める。
グググググググッ
スーツから布が圧縮されるような、むしろ俺自身の身体を圧縮するような音、感触を感じるが俺は気にせずそこから一気に力を解放するイメージで、身体を動かす。
ダンッ!
踏ん張っていたアスファルトが表面が割れるも、なんとかその下にあった硬い地面で踏ん張り、同時に反発するように力を込めて走る。走るッ。走るッ!!
加速度的に俺を取り巻く景色が変わる。
車の走行速度足るや、それが直接体感出来る。正直生きた心地がしないと言いたいところだが、俺の心、身体を支配したのはそれとは逆の感情だった。
『生きている』
いや、ガンツに転送されたんだから死んだのでは?という気持ちもないことはないが、しかし現在俺がしっかりと『生』を感じている始末。
それは日々の仕事での達成感でも、学生時代に入っていた部活動での体験。
それら全てを差し置いての、“生“の実感。
ジェットコースターにある安全バーなどない。生身の身体で車同様のスピードが出せる。もし、このまま地面にぶつかりでもしたら身体がバラバラになるのでは?
そんな死と隣り合わせのような状態は俺の鼓動を興奮で早くさせるには充分すぎる材料であった。
「お、忘れてた」
正直完全に順番が逆になってしまったことに否定出来ないが俺はその場で一旦急停止し、左手首の上にある時計のような携帯のようなタッチパネルを開いた手で弾き、透明化しようと試みる。
正直スーツの性能やXガンやソードについて知っていることが万が一西にでもバレたら面倒この上ないのだ。
転送されてすぐにスーツを使いこなす奴なんてそう居ていいはずがない。
左手首のタッチパネルを操作した時そのウインドウは初めにマップのような物を出現させた。
「ふーん。なるほどね。現在地がここで、この赤い線で囲われているところが領域かな?それでこの赤い点がねぎ星人だとすると、青い点は転送組か」
とりあえずマップで把握出来うる情報を口に出しながら確認する。
これはもはや社会人故の指差し確認や、独り言のようなものであるのだが、
「おっ、このボタンで周波数を変えるのか」
タッチパネルの左下の部分に『周波数』とご丁寧に書かれたマークをタップすると、画面は切り替わり真ん中にカラオケなどでよく見る音量を操作するような丸いダイヤルのようなモノが現れ俺はそれをタップしながらクルクルと回した。
カチカチカチカチ。
実際パネル状のアイコンを回しているだけなのでなる筈がないのだが、機能として備え付けられているのか軽快な音がパネル上から響く。
「多分これでいいんだよな??確かめようが実際には無いんだけど、まあこんなもんだろ」
しばしタップパネルと睨めっこをした後、俺は操作することをやめてその場で屈伸を行う。
グググッ
屈伸をやめて再びクラウチングスタートの体制をとり全身に力を込め、解放する。
先程はただ単に走っただけなので、今度はそれだけでなく大股で、一歩一歩を弾むように意識し、50m程駆けたあと、タイミングを見計らい、今までのステップとは違い、最後の一歩に渾身の力を込め三段跳びの要領で跳躍した。
いや。実際三段跳びがどんなのか分からないのだが、イメージである。
「スッゲェっ!」
想像を遥かに超える跳躍力に空を翔けながら思わず言葉が漏れた。
跳躍の高さ5mをゆうに越え、民家の屋根へと着地する。
ガシャン
瞬間、瓦が砕ける音が聞こえるがもはやそんな事など気にならない。なるはずがない。
ある種スーパーマン的な力を手に入れたのだ。興奮しないわけがない。
そして俺は左太もものフックのようなところにかけていたXガンを抜き取り手に構えた。
心臓は未だにバクバクと音を立てていたが俺は思わずその場にニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。
「サイッコー」
そしてそのまま足をつけている屋根に向かってXガンを向け引き金を二つとも引く。
ギョーン!
間延びした、俺からしたら原作でお馴染みの銃声がした後、俺はその場からすぐさま離脱した。