「いくぞ!飛べッ!!!」
「はいっ!!!」
俺に合わせて岸本、いや、ケイが隣のビルへと飛び移る。
おおそよ10m程のビルとの間をわずか30m程の助走で飛び越える。
既に訓練を始めて7日目、最初はそのスーツの性能に驚いていた彼女だが、夜な夜なのスーツを着用しての特訓でいくらか使いこなせるほど成長していた。
もっとも、彼女が凄いというよりはどちらかというとスーツが凄いのかもしれない。
ズザザザー。
着地後、その衝撃を逃すように俺たちはその場で受け身を取り衝撃を流す。
「じゃあ次は組手かな」
「はい」
俺の言葉に彼女はその場で構えてファイティンポーズを取る。
組手といっても格闘技はお互い素人であるのだが、それでもスーツのおかげでそこまで痛みを感じないが出来るゆえの単純な殴り合い。
『女に手をあげるなんて〜』
とどこかのフェミニスト共が騒ぎそうな現場が今俺たちの2人を取り巻く。
時には彼女の顔面、腹、太もも、至るところに拳を時には蹴りをお見舞いする俺に岸本は必死な形相で身を躱し避ける。
そして今度は逆に彼女からの攻撃を俺が躱す。何度か拳を撃ち合い身体が慣れてきたことで俺たちは太ももに引っ掛けていたソードを取り出し左側に捻る。
ガシャリ。
そんな軽快な音を立てると剣先がツカから顔を出し、瞬時にそれは凶器と成り果てる。
とは言っても、これは3日ほど前に判明したことだが、ガンツソードには真剣モードと刃を潰した練習モード(どちらも岸本命名)が存在し、現在俺たちが出した刃先は練習モードである。
逆に真剣の時は右側に捻れば現れるのだが、それは流石に組手と言えども使うのは危ぶまれたので俺たちは練習モードで昨日からソードを使っての組手も行っている。
「エイッ!!」
ブゥンッ!!
しかしいくら刃を潰したと言えどもその強度は凶器そのもので現に彼女が先ほど降ったソードを俺は避け切ることが出来ずその衝撃を太ももに受け、そのあまりの衝撃に舌打ちを溢す。
「クソッ」
そして俺はその衝撃を感じながらも彼女に向かって横一閃にソードを振ると、それをケイはソードを盾にする事で防御した。
ガギンっ!!!
衝撃と同時にお互いの刃先から火花が飛び散るが、俺たちは構うことなくお互いに剣を打ち合った。
「ハジメさん、ハジメさん、私、だいぶサマになってきたと思いません?」
その後、暫く組手を行った俺たちは再び横のビルの屋上へと飛び、その場で座り込みながら休憩をしているとケイがそう言いながら家で水筒に入れてきたお茶をコップに注ぎ俺に渡す。
「うん。最初はどうなるかと思ったけどね」
俺は彼女の言葉に同意しながらつい最近までのケイの姿を思い起こした。
訓練開始すぐはスーツの性能を信じれなかった事に加えて、組手とは言え人を殴るという行為に忌避感がある為か、真剣ではあれど、本気で俺を痛めつけよう等と思ってはいない所謂腰の入っていないパンチを打ち込んでいた彼女が、気がつけば、練習モードとは言え、全力で振り抜くほどに変貌したのである。
もっともそうなるまでに幾度となく説得をした結果なので変貌というよりは成長というのが適当かもしれないが。
「もーぅ、そこは褒めるのが正解なんですよー」
ムゥーっと頬を膨らましてこちらを可愛く睨む彼女に俺は笑みを浮かべてチョイチョイと手招きをする。
すると彼女は先ほどまでの顔とは打って変わり喜色満面としてこちらに近づき頭を差し出す。
俺は差し出された彼女の頭を優しく撫でた。
既に一緒に住んで10日弱。お互いに抱く親近感は以前に比べるとグッと近づき、それを証明するように俺たちこの一連の動作も最早見慣れた光景である。
ケイが不機嫌なフリをする。
俺が手招きをして彼女の頭を撫でる。
この動作をするだけで彼女は犬のようにこちらに近づき、惚けた表紙を浮かべる。
「ハジメさん、ちゅー」
そして俺の胸元でしがみつくように抱きついていた彼女が頭を上げて俺の顔を見つめながら可愛く唇を突き出す。
「はいはい」
俺はそんな返事を返し彼女に唇を重ねる。
やがて触れていた唇はどっちからというわけもなく体液を交換し合うように貪りつくようなキスへと変わる。
そんな俺たちの関係で変わったのは一つ。
まずはセックスはせずとも、彼女の陰部を舐めるときは彼女がお風呂に入ってからと決まり俺たちは満足するまでキスをした後、岸本から風呂へと向かって行った。
「んじゃあ、俺も行ってくるよ」
「はい。待ってます」
彼女が風呂から上がると、脱衣所で着替えたのか、タオル生地のショートパンツにパーカーという女の子然とした寝巻きをきて上がったので入れ替わるように俺も浴室へと向かう。
その時、
ビクリッ。
背筋から電流が走るような衝撃を感じた俺たちはバッと顔を見合わせてた。
「ハジメさん!」
「うん。恐らく招集だね。くそ、風呂入りたかったのに」
ケイは俺の名を呼んで先ほどまで着ていたガンツスーツを取り出し「フフフ」と笑った。
「私もこのスーツ洗いたかったですし、髪の毛も乾かしたかったです」
彼女の言葉に俺は「せめてバスタオルだけでも持って行こう」
と伝え、俺もすぐさま転送の準備を始める。
彼女には転送の予兆を西から聞いたとして伝えている。
故に先ほど走った電流のような衝撃に察しが付いたのである。
「一応、上着持って行こう。スーツにポケットってないし」
俺は床に放り投げていた黒のレザージャケットを拾い、ポケットに携帯と財布を入れ、彼女にも同じように黒いレザージャケットを着るように伝える。
彼女はコクリと頷き、手元にジャケットを手繰り寄せ、両手にスーツとジャケットを持った時、ジジジジジジーっと音を立て、気がつくとあの部屋に転送されていた。
「あんたらも連れてこられたんだな」
部屋に転送直後、目の前に立っていた加藤からそんな声を掛けられる。
「まあ、そりゃあ当然だろ」
俺は彼の言葉にそう言葉を返した。
「にしてもあんたのその格好」
加藤はそう答えて俺の体を覗く。
「んだよ、今度はコスプレ野郎かよっん?なんだ!激マブじゃねーか!!!」
俺の隣に転送された岸本に行ったのだろう、加藤の背中に隠れていた不良男がそんな声をあげ、仲間(3人程)連れてゾロゾロとこちらに歩み寄った。
「姉ちゃん、おっぱいでけぇな!おい!!」
そう言いながらこちらに詰め寄る奴らにケイは俺の背に隠れるように動くので、かわりに俺が奴らの間に割って入る。
「あ?」
邪魔された不良グループは不愉快そうに声を上げて俺の顔を睨んだ。
「悪いけど、この子に手は出させねぇよ」
俺の言葉に不良のリーダーの額に青筋が浮かぶ。
「ケイ、玄関で着替えておいで」
俺は彼女の背を押し玄関に行くよう促すと彼女はコクリと頷きやや小走りで部屋を出た。
「邪魔だ、コスプレ野郎」
青筋を浮かべるヤンキー野郎がそう言って俺の胸ぐらを掴もうとしたので彼の手を捻りその場に倒した。
「グェッ!」
受け身も取れずに背中を床に打ち付けるように倒れたヤンキーがそんな声を上げるのを俺は構わず無防備となった腹部目掛けて拳を振り下ろした。
「グギャッ!!!!」
その瞬間、そんな声を上げた彼を見たヤンキーの仲間たちが仇を打とうと俺に向かって突進してくるのを俺はその場で彼らの頬に拳を当てることで無力化に成功する。
「暴力は良くないよ。それに彼女は俺のだ。
変なイチャモンつけてんじゃねーよ」
床に転がり呻き声を上げる4人にそう告げ俺はケイがいる玄関に向かう。
道中、加藤の肩を叩き、これから起こることの説明をよろしくと伝えると彼の近くにいた西がニヤニヤとこちらを見るのを無視しながら俺は室内を出た。
「キャッ」
俺が廊下に姿を現した瞬間、まだ着替えの途中だった岸本がそんな短い声を上げ、顕となった爆乳を手で隠す。
「ちなみに下は丸見えだよ」
全裸でそんな行動に出ている彼女にそんなツッコミを返すと、彼女は「エッチ!!!」と短く返し、下も隠すように手で覆い、俺に背を向けていそいそとスーツを着た。
直近の訓練でなんとかスムーズにスーツを着ることが出来る様になった彼女はスーツを着た後俺の横に立ち問う。
「大丈夫でしたか?」
彼女の問いに俺は頷くことで返事とし、彼女を連れて室内へと戻った。
「テメェっ!!!!さっきはよくもやりやがったな!!!!」
俺が部屋に戻るなり、いまだ床に苦しそうに腹を抱えていたリーダーらしき人物がそう言葉を告げるが俺たちはそれを無視して加藤の元へと向かう。
「説明は?」
「してみたけど、アンタのおかげでみんなそれどころじゃねーよ」
俺言葉に加藤の横に立っていた玄野がそんな声を上げるので俺はハアとため息をついた。
「まあ、スーツを着るも着ないも自由だけどよ。
このスーツで生き死にが決まるってことはちゃんと伝えとけよ」
「ちょっとまてよ!せめてスーツの説明ぐらいしてくれ!俺たちはアンタと違って着たことがないんだ!」
俺が彼らに背を向けようとした時加藤がそう言って俺の肩をガチリと掴んだ。
「えー、単純に面倒なんだけど・・・西くーん」
「うぜぇ」
俺は矛先を変えるべく壁に寄りかかる中学生の名を呼ぶと間髪入れずに彼から罵倒の言葉を頂いた。
「まあ、俺も彼以上には知らないけど、それでいいなら」
カクカクシカジカ
「よくわかんねぇが、とりあえずスーツの重要性は理解した」
俺のざっくばらんな説明で加藤はどうやら理解したようでそんな言葉を言った後、部屋にいる連中に大きな声で伝える。
「みんな聞いてくれ!これから俺たちは宇宙人と戦う。いまからこの玉が開いて武器やスーツを出してくれる。みんな、中にあるスーツを着て欲しい。この人みたいに」
そう言って加藤は俺を指差すが誰も加藤の『宇宙人』という単語に失笑を浮かべる。
俺はまあ、なんとかなるだろうと考えケイを連れて西と同じように壁側に移動し、2人で静観を決め込むこととした。
そして事件が起こった。
あの後、原作の流れ同士ガンツ玉が展開されその武器の生々しさにテンションの上がった俺にボコられたヤンキーの内1人が目の前に立っていた西に向かってXガンの引き金を引く。
西が途端に般若のように顔をしかめた後、すぐさま裾の中に隠していたXガンで打ち返した。
暫しのタイムラグの後、彼に打たれたヤンキーの身体が爆散し当たりに血が飛び散る。
「キャアアアアアア!!」
その様に岸本ほか女性陣が悲鳴を上げ、仲間を爆発されたヤンキーのリーダーが怒声をあげ西に近づこうとするも、起点を聞かせたように西から転送が始まりリーダーの手は宙を掴むかのように空振りに終わった。
「ガンツ、次は俺とケイを転送してくれ」
これ以上ここに居ると修羅場に巻き込まれること必至と考えた俺は玉に向かってそう告げ、こちらに抱きつき震えている彼女の背を抱くとジジジジジジーと音を立て俺たちの視界は次の戦場へと移り変わった。
「大丈夫?」
未だにガチガチと震える彼女に俺は優しく問いかけるも彼女から返答はなくただ怯えるように震えるだけだった。
ポンポン。
俺は彼女の頭を優しく撫で、彼女が落ち着くのを待った。
待つこと、数分、住宅街のど真ん中でガンツスーツを着て2人抱き合うも、俺たちを咎める声が出て上がらない。
それも当然と言えよう。時刻は既に2時を周り、閑静な住宅街には人は1人も歩いていない。
歩いていたとしても見えないのだから。
暫し抱き合っていた時、彼女がふと声を漏らしその場から離れた。
「もう、大丈夫です。ありがとうございました」
そう言って彼女はややキリッとした顔つきで俺に話しかけた。
「そっか」
それに対して俺も詳しく聞くことはなく一言だけ返事を返す。
これからいくらでも人の死ぬ場面に出くわすのだ。
彼女もそれを理解した上でそう答えたのだと俺は判断し、その場で周りを見渡した。
「どうやら、他のやつは違う場所に転送されたようだな」
俺は周りを見渡した後、腕のレーダーを操作しながら彼女に告げる。
ガンツが気を回したのか知らないが、俺たちの周囲に仲間の点は存在せず、少し離れた場所で固まっているのがわかった。
「じゃあ、行こうか」
俺が彼女にそう声をかけると彼女はコクリと頷き俺の後ろについて行動を開始した。
「スーツが!!スーツがオシャカになっちまった!!!!!」
俺たちが連中と合流した時、西が川の中でそう叫んだ。
どうやら着々と原作は進んでいたようで半ば安心した俺は他の連中同様、橋から彼を見下ろす。
「誰か助けてやれよ」
連中の中で1人そんな言葉を告げると玄野が「だれがあんな奴」と答えて舌打ちを打つ。
それには俺も同意見で、いまここで西が生存するのは色々とやりにくい部分があり、その場でケイと傍観していると加藤が飛び出し西を助けようとするも、結果は原作通り、西は田中聖人の咆哮を間近に浴び、顔中から血を吹き出し力尽きた。
最後に「100点取れば・・・」と言葉を残して。
「行こうか」
先ほど、決意を固めたのか、西の姿を見ても、もう震えることがなくなった彼女を連れ俺たちは連中と別行動をとるべく距離を取り、彼女に訓練の際に教えた透明化をするように伝え、その場でバチバチと音を立てて姿を消す。
消す間際、加藤や玄野、ヤンキー連中がなにか言っていたようだが俺たちはそれに返事を返すことなく、レーダーが写す、田中聖人の本拠地たる場所に向かう。
「でも良かったんですか?ハジメさん」
向かう道中、ケイの言葉に俺は「うん」と短く言葉を返した。
彼女が言いたいのは「西を見捨てて、加藤達と行動を別にして」その二つのことについてだろう。
「正直西の情報は欲しいけど、彼自身そこまで情報を持ってなかったみたいだし、それに前回のネギ星人の時に凡そは聞いたから」
嘘である。
嘘であるのだが、彼女はその場に居なかった故に俺の言葉に対してそうですかと返し、2人で田中星人のボスがいるアパートへと向かう。
「ここか」
レーダーが示す場所に着いた時俺たちは歩みを止め、眼前に立つ古いアパートを見上げる。
凡そは、築60年程のアパートは人の気配は無く、静寂に包まれながらもどこか不気味な雰囲気を醸し出し、俺の背筋がピリピリと電流が走った。
いくら原作で過小評価される田中星人といえども実際その場で命をBETしている故に感じる緊張感が俺を襲う。
そしてそれはどうやら俺だけでは無いようで後ろに立つケイが俺の手をギュッと握った。
「大丈夫。訓練通りにやろう」
俺が彼女に振り向きそう告げると彼女はコクリと頷いたのを確認して俺は「ひとまず偵察に行ってくるからケイはここで待ってて」と告げ、彼女の手をソッと振り払い、Xガン片手に俺はそのアパートの中へと向かう。
シンッとした雰囲気に体感温度が更に下がるのを感じながら俺は原作と同じように一階の柱となっているであろう部分を見境もなく打ち抜く。
ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!
やや間抜けな銃声が鳴り響き俺は巻き込まれないように後退りながら再びアパートの外を出た時
ガシャッ!グギャッ!ギャ!バキバキバキバキッ!!
若干のタイムラグを置いて、壁が爆ぜ、柱が豪快の音を立て崩れ始めた。
そして、
ドゴォォォンッ!!!
天井が地面に吸い込まれるようにしてアパートは爆音を建てて潰れる。
「ハジメさんッ」
俺が建物を出た瞬間崩れたことにケイは俺の名を呼んでこちらに駆け寄ろうとするのを手を突き出して制す。
「下がってッ!!!!」
背中にゾクリッ!と今まで感じたことの無い悪寒が生じ俺は彼女に向かって声を荒げた瞬間、眼前から高速に飛来してくる物体が腹部目掛けて飛翔してくるのを俺はガンツソードを刃を出し待ち受ける。
ガギンッ!!!!!
刹那、ソードの刃にナニカ衝撃を感じ火花が飛び散る。
「思ったよりデケェッ!!」
受け止めたモノの正体は言わずもがな、田中星人のボスであり、刃とギリギリと合わさるの彼奴の爪。
爪一つ一つが鋭利に尖り黒光りするそれは大凡20cmのナイフが連なるのと然程大差はないほど突き出し、三本の爪がギリギリとガンツソードに突き立っていた。
一瞬の膠着の内、田中星人のボス(以降、カラス)が俺の首目掛けてその、凶刃な嘴で啄むように噛みつこうとするのを俺はなんとか身体を捻り躱す。
「原作より大きくねえかっ?!」
そしてそのまま身体を回転させ、カラスの顔面目掛けて回し蹴りを繰り出し、カラスから「グギャッ」と潰れるカエルのような鳴き声が鳴る。
そして着地と同時に再びカラスの姿を視界に入れた俺は今日三度目の感想を抱きポツリと言葉を漏らす。
「いやいや、デカすぎだろ」
俺の眼前には先程蹴られた顔面を手で覆いながらも悠々をその場に仁王立ちする星人。
大きさは目測であるが6mを超え、果てしなく巨大なカラスがそこに立っていた。
「ケイッ!他の星人を頼むッ!!」
そしてそんなカラスの背後から潰れたアパートから這い出た3体の田中聖人がこちらにユラユラと近づくのに気がついた俺は、彼女に振り向くことなくそう告げる。
「わ、わかりました!!!!!」
そして直ぐに彼女から返答があり、俺の背後からビュンッと風が吹くとケイがカラスの側面を大きく回り込むように周回し、田中星人の元へ駆け寄るのが目に入る。
「グギャアア゛アアア゛!!!!」
しかしそんなケイの行動を察したのかカラスは俺から目を離し彼女に向かって咆哮を上げるとその場から飛び立とうと全身に力を込めた。
「させるかよ!!!」
そんなカラスの所作に気づき俺はその場から跳躍しカラスの下に一足飛びで駆け寄り拳を振り抜く。
ブゥンッ!!!!!
拳が豪快に風を切る音を立てて射出されるような俺の拳をカラスが身を伏せることで空を切った。
「ギャオオオオン!!!!!!!」
そして空ぶる形で拳を振り抜いた俺の胴体目掛けてカラスは咆哮を上げその逞しい爪を腹に向かって突き立てる時、俺はニヤリと笑んだ。
ガギンッ!!!!
爪とソードが再び金属音を上げかち合うも先と違い力の押し付け合いではなくそのまま連撃による肉弾戦を繰り広げる。
「テメェのッ!クッ!弱点はッ!分かったんだよっ!!!」
ガキンッガギンッと
刃と刃がかち合う金属音を上げながら俺はカラスにソードを突き立てる。
星人のボスと言えども、それでもまだ原作序盤の敵である。
そのスピードはある程度こちらも反応できるソレであり、俺達は互いに致命的な傷を付けることも出来はしないがそれでも剣戟を繰り広げ互いに致命傷を避ける。
ザシュッ
「ッチッ!!!」
何度剣戟を繰り広げていた時だろうか、俺の身体中についた切り傷はもはや数えるのも億劫になるほどであり、そして今、カラスの爪が俺の頬に一筋の傷をつけた。
その鋭い痛みから俺は思わずその場で舌打ちも打つも、怯むことなくソードを突き立てる。
「生きるッ!!!」
また一つ互いに傷を付ける度に感じる高揚感に俺は思わずその場でニヤリと笑いながら感想を述べる。
「生きるッ!生きるッ!!」
リアルの現実世界では凡そ感じることが出来ない『生』の実感を傷がつく度に、刃を交える度に感じる。
「フハハハハハハッ!!これが生きるという実感!!!」
そして俺の脳内でプチリと何かが爆ぜた時、俺はそのまま笑い声を上げながら突き出された爪をソードで受け流す。
「良い!実に良いぞ!!これが生!これが生きる!これがガンツ!!」
既にカラスと打ち合うこと幾度。
互いに全身から血を流しながら俺の身体をアドレナリンが駆け巡り、より世界をスローに動かす。
「殺った!!!」
そしてもう何度も突き立てられた爪を俺は首を捻ることで交わしソードをカラスの首に突き立てそのまま横に払った。
何事も最後というのは呆気なく訪れるようで、俺の掌には確かな感触を伝った後に、カラスが短く「グェ」っと鳴いた後、その首と胴体が離れた。
ブシャーーーーーー!!!
そして切り開かれた断面図から噴き出すように血が上へ飛び出し、そのままドスンっと大きな音を立ててカラスは横たわった。
ハアハアと未だ冴えやまぬ興奮を俺は無理やり抑えてつけその場に倒れたカラスを見下ろした。
「ハアッ、ハアッ、ざまあみろっ!!」
そして今倒れ伏すその死体目掛けて念には念をと、太ももに刺したXガンを取り出し爆散させるように引き金を引いた。
ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!
過剰なまでに引かれた引き金により、胴体、首がその場で爆ぜ、更に血が飛び散るのを俺はニヤリと微笑みながら観察をする。
「あ、そうだケイは?」
そしてふと冷静になった脳内で彼女の存在を思い出しその場で彼女の姿を探すとやや離れて田中星人と相対する彼女が視線に入った。
「一匹は倒せたか」
そして彼女のやや離れた場所に倒れ伏す田中星人と、そして相対する星人が2匹なことから彼女もまた戦っていたことに内心安堵し俺はその場で跳躍するように駆け出し彼女の元に
否、正確には彼女が相対している田中星人の一匹に駆け寄った。
「オラァッ!!!!」
そしてやや焼けくそ気味に振りかぶった拳をその星人の頬目掛けて振り抜くとドゴンっと鈍いを音を立てて一匹が後方へと吹っ飛んだ。
「お待たせ」
そして残ったもう一匹もそのまま回し蹴りを繰り出し後方へ飛ばし彼女に声を掛ける。
「ッ!危ないじゃないですか!ハジメさん」
俺の攻撃にその場で身を硬くさせた彼女がそう告げるのを俺は「まあまあ」と手を上下し落ち着かせるように伝えた。
「ハジメさんの方は上手くいったみたいですね」
そしてその場で地面に横たわるカラスに視線をやった彼女は、俺にそう告げた。
「まあ、少し苦戦したけどね」
俺は彼女にそう答えていまだ痛む頬の傷を撫ぜる。
「でもかなり盛り上がってましたけど?なんか『生きる!!!』とかあと、盛大な笑い声が聞こえましたけど」
そしてケイは最後に「ハジメさんってドSだったんですね」と告げ俺に微笑んだ。
「まあ、確かになんか楽しかったけどさ。生きてるってより実感出来たというか、なんかよく分からないけど」
俺の言葉に彼女は「自分を見失わないで下さいね」と答え、距離を詰め、俺の頬を傷を優しく撫ぜた。
ビクンッ。
高校生の彼女にそう諭されて背筋が伸びるのを感じた。
「そうだよね。うん。確かに君の言う通りだよ。
気をつける」
『自分を見失わないで』
彼女の言葉がおれ脳内でリフレインする。
確かに高揚感から自分を見失っていた気がする。
彼女の言葉をしかと心に刻み俺はやや緩んでいた表情を引き締めた。
「ごめん。ありがとう。とりあえず残り二匹片付けようか」
そう言って俺は遠くでガシャリと音を立て立ち上がった田中星人を睨みつけそう告げると彼女はどこか嬉しそうに「はい」と微笑んで答えた。