※この作品はR-18です。

介護しちゃうよ、ユーリちゃん!!   作:ぴんころ

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第三話

 暗い室内で淫らな水音が響き渡る。二つの人影が一つに重なっていく。真夜中の、性を顕にした舞踏が二人の間で交わされる。

 ベッドに横たわる少女、ユーリはその行為を受け入れる。ベッドに己の身を押し付け、首を押さえつけることで逃れられないようにする空の、友人であるはずの高町なのはの復帰に対するどろりとした暗い感情の全てをその身で受け止めることこそが己にできる唯一のことだと。

 

 逸物を咥え込んだ秘所からはこぷこぷと漏れ出る愛液。すでに幾度か吐き出された精と合わさってその起伏の少ない肢体を淫靡に彩る。

 キスも愛撫も、一切の前戯を無視して行われた挿入に最初は苦悶の声を漏らしていたユーリだが、すでにそれも慣れたもの。今となっては痛みを伴っていた抽送もただ快楽を与えるだけに過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 未だに捨てるに捨てられず残してあるデバイスを展開し、苦痛を堪える表情をしながら、空は青銅色の魔力を放つ。デバイスの中から選ばれた記録済みの術式は治療魔法。翌日以降、ユーリの首に残る首を締めた痕跡を目撃されたら厄介なことになるために、体力の限界を迎えて気絶した少女に治癒を行なってそれを消す。

 すでに男女の交わりによってその寝具は体液まみれ。気絶しているユーリをどかして後処理して、とやるには片腕が存在しない空には厳しいものがある。それこそ、魔法でも使えれば話は別だったが、簡単な治癒魔法を使用した程度ですら苦悶に打ち震えそうな今の空にはそれは不可能。ユーリは小柄ではあるが、片腕のない、しかも体を本格的に鍛えていない十七歳に持ち運べるほど軽いわけではない

 

 ゆえに未だ裸のまま、乾いた体液に塗れた状態のユーリを放置して、空は部屋から出る。デバイスは元の場所に戻して、魔法を行使したなどとは知られないように。

 

「空……」

 

 パタン、と扉が閉まる音がすると先ほどまで眠っていたはずのユーリが目を開いて扉の方を向く。普段の夜に使う程度の魔力行使であれば部屋が違うこともあって気がつかないが、こうして直に魔力を行使されればさすがに気がつく。普段のそれと比べるとそこまで首絞めがそこまできつくなかったことによって、わずかばかり早くなった意識の回復。

 

「魔法、使えるようになったんですね……」

 

 小さく、本当に小さく呟く。魔力の行使には激痛が走るはずだということ、実際にその苦痛を堪えるような表情をしていたが、それでも行使できたという事実には変わりない。その理由までは結局のところユーリにはわからないが、そのことに喜びを感じていた。

 

「でも……」

 

 それと同時に感じるのは不安。

 

「空が本当に治りきったら……」

 

 嬉しいことだ。ユーリの気持ちに嘘はない。けれどそこには、彼に必要とされなくなるのではないかという思いがある。ユーリの中には彼の未来を奪った罪悪感と、介護という理由で惚れた相手の近くに常にいられることへの嬉しさと、そんな気持ちを抱いている浅ましい自分に対する自罰的な感情が渦巻いている。

 けれどそれも、『空の介護』が前提となってこの状況が作られている以上、その必要がなくなったらユーリ・エーベルヴァインという少女に川崎空の近くにいる資格はない。それは当然のことながらもこれまで無視してきたことであり、そして魔力に関しては治療できるかもしれないという事実からして、そろそろ直視せねばならぬ現実でもあった。

 

「嫌です……」

 

 彼から離れるのは嫌で、そう口にする。

 

「ずっと、一緒がいいです……」

 

 けれど、その言葉が現実になるはずがない。加害者と被害者という関係性。それを憎悪以外で繋ぎ止めるのは介護という役割だけ。それも、魔法に関する知識を持たないが故に魔力関係による肉体へのダメージに対する介護ができない彼の両親も、腕がないだけならば地球の技術で介護についてはどうとでもなる範囲。他人に迷惑をかけるのが嫌な空であっても、両親の言葉であれば理があれば従うし、両親からの優しさであればしかと受け取る。

 

「……!」

 

 足音が聞こえたことでとっさに息を殺す。眠りについているふりをする。ユーリは彼の前では彼が魔法を使えるほどにまで回復したことを知らないままでいないといけない。それを知ってしまったら、その時点でこの関係性が途切れてしまう。だから、魔力を扱えることを隠している彼に、首絞めの痕跡が消えたことを疑問に思うようなほど早く起きたことを知られてはいけない。

 彼が隠す理由なんてユーリにはわからない。彼女のことを嫌っているのだから早く明かして、お前はいらないと捨ててしまえばいいのに、そんな気配を見せない。あるいは最後まで使い潰すつもりだからなのか。その真偽は彼以外にわかることはない。

 

 足音が部屋の前を通り過ぎ、遠ざかっていく。それを認識してユーリは小さく息を吐いた。このわずかな時間に極度の緊張とそれから解放された安堵が胸中に満ちる。今ユーリがいるのは空の部屋。空に呼び出され、その部屋にて性行為を行った。その残滓が、この部屋に残る空の匂いが、少女の女としての部分を疼かせる。幾度となく嬲られたことで、少女に根付いた被虐趣味。それが、かすかに反応を始めた。

 

 けれど

 

「ダメ、です……」

 

 それを押し流す罪悪感。嬲られることに感じてしまうことはすでに仕方のないこととはいえ、ここは空の部屋であり、ユーリの様子を見に来るためではなくともいつ戻って来るのか把握できたものではない。ここで行ってしまえばそれこそ放り出される可能性がある。それを思えばこそ、少女の自制は保たれた。

 

「……あれ?」

 

 少女が堪えた頃、同時に家の玄関の扉が開く。すでに夜遅く、この時間帯に入り込む輩にろくな相手などいるはずもない。もしも空が出て行ったのだとしても、その場合は介護の関係で常に一緒にいないといけない。性交の気怠さが残る肉体に鞭打って、ユーリはその場に立ち上がる。

 服に関してはティッシュで体に付着したままの愛液や精液を拭き取ってから着て、最低限の装いを整えるの済ませる。家の中を見て回って、誰も侵入していないこと、そして鍵がかかったままである玄関を確認したことで、出て行ったのは空だと判別を終えた。

 

 鍵を持ってきて己も外に出て追いかけようとする。

 

「……」

 

 が、そこで動きがとまった。

 

「追いかけて、いいんでしょうか……?」

 

 何もないのであれば、わざわざユーリに隠していく必要がない。彼女の存在意義は『介護』であり、ここに彼女がいることを許しているのもつまりはそういうこと。なのにそのユーリを置いていくということは彼女についてきてほしくないということではないのか、とユーリは悩む。

 

 そして、それだけの時間で、普段は魔力をほとんど扱えない、無理をしてもEランク程度の魔力量しか苦痛を押さえ込みながらでは搾り出すことのできない空は、ユーリに感知できる範囲を超えて外へと出てしまっていた。

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