※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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時間があればもっと書くよ
時間があればね


02

 

 冬木の夜は寒い。静まり返る夜は、心情まで寒くなりそうな具合だ。

 寒空の街は空気が乾き、静かだった。その中で、死臭だけが、漂っていた。

 

「ほ~ら、たあんとお食べ」

 

 馬に餌をやる女性。本来は、街外れで見られる絵ではないのだが、不思議な事に、今夜はそれが見られた。微笑ましい光景なのだろう、女性が血濡れで、馬が食べているのが人間の心臓でないのなら。狂気の沙汰だ、非常に猟奇的だ。

 血濡れ女性は、嬉しそうに、バケツを漁る。次に取り出したのは、人間の手。それを、またも馬に食べさせる。

 

「遠慮しないでたんとお食べ。足りなくなったら、また作ってやるからね」

 

 木製のバケツの中に、人間だったであろうものの内臓や四肢が、砂糖漬けにされていた。血濡れの女性は、それを馬に食べさせていたのだ。

 餌を貰った馬は、黙々とそれを食べている。特に、人肉の砂糖漬けを食べる事に、抵抗は無いらしい。むしろ、ふたつある頭で、次々と器用に食べ続けるあたり、これが好物なのかもしれない。奇妙な馬だった。

 そのとき、餌やりに夢中になっている女性の背後から、一人の男が現れた。

 

「ライダー、これはどういう事だ」

「おや、綺礼かい? どうもこうも、この子は"コレ"が好物なんだよ」

「人に砂糖を買いに行かせておいて、なにをするのかと思えば、人肉の砂糖漬けが好物だと?」

 

 綺礼と呼ばれた男は、不快感を露に、そして、嫌悪感を隠しもせずに話す。

 しかし、ライダーと呼ばれた女性は、まさにどこ吹く風。今は、餌やりの方が大事なようだ。

 

「………」

 

 綺礼は、ライダーの向こう側にある、積み上げられた死体の山を見た。およそ10人分はある、解体された、人肉の屑山。死臭の原因は、間違いなくこれが原因だろう。そして、一面を赤く染める血の海が、ここで解体が行われた事を意味していた。

 やがて、綺礼は視線を落とした。見るに耐えない、という訳でもないようだ。重たい溜息を吐いているところから見ると、むしろ、呆れかえっているのかもしれない。

 

「まだ聖杯戦争も始まっていないというのに、問題を起こすな。死体を処分するこちらの苦労も考えろ」

「そうは言うけどね、綺礼。この子だって飲まず食わずじゃ可哀相だよ、たまには好きな物くらい、食わせてやってもいいじゃないか」

「好物が人肉だとは聞いてない。それに、ここはお前が元居た場所とは違う、冬木(ここ)には冬木(ここ)の法があるのだ、それに従え」

 

 綺礼の言は、至極、真っ当な意見だった。しかし、それを聞いたライダーは、腹を抱えて笑い出した。

 

「…なにがおかしい」

「わかってないねぇ、まるでわかっちゃいない。いいかい? ラクドス教団の血魔女が説く、法ってやつを教えてやるよ、『放火、流血、愉悦。』このみっつだ。ラクドス教団はね、これを遵守するんだよ。覚えておきな」

「………」

 

 その、あまりの異常性に、綺礼は言葉を失った。召喚した時から、ライダー(コイツ)はまともじゃない、と思っていた。しかし、綺礼は、それを間違いだと認めた。こいつは狂っている。確実に、人間としての精神性を逸脱している。そう確信した。

 

 

――――――

 

 

 冬木郊外の公園を、まばゆい光が照らした。集まり、形を成すエーテル。膨大な魔力を孕んだそれは、人型となって、現世に固定される。

 

「やったぞ!」

 

 ウェイバー・ベルベットは叫んだ。手応えを感じ、自分にも、参加する資格があったのだと実感し、歓喜した。

 そう、彼は、聖杯戦争の参加者だ。七人の魔術師による、殺しあいの戦争だ。ウェイバー・ベルベットは、殺しあいをしに来たのだ。

 

「………」

 

 人影は、確かに人間だった。赤黒いローブを着た、大柄な男。今は実体化しているが、霊体であるそれは、サーヴァントと呼ばれる存在だった。

 そこで、時間が止まった。サーヴァントが動かない。一言も喋らず、ウェイバーの方を見るわけでもなく、ただ、サーヴァントは立ち尽くしていた。

 

「………」

 

 ウェイバーもまた、言葉に詰まった。召喚に応えたからには、サーヴァントはマスターを確かめようとするハズだ、そう考えたウェイバーを嘲笑うかのように、サーヴァントはなんのリアクションも見せなかった。

 

「ハァ…」

「なんで溜息なんだよっ!」

 

 時間にして2分、沈黙を破ったのは、サーヴァントの疲れた様な溜息。そして、ウェイバーの驚き。

 まるで、自分がマスターである事が気にいらないと言われたようで、ウェイバーは憤慨した。そして、サーヴァントの側に詰め寄り、声を掛ける。

 

「僕がお前を呼んだ、ウェイバー・ベルベットだ。お前は?」

「…アサシン、そう名乗っておこう。クラスは暗殺者(アサシン)だ、クラス名で呼んでくれればいい」

 

 アサシンの返答には、力が無かった。やる気が感じられない、と言い換えてもいい。

 しかし、それがまた、ウェイバーの気に障った。

 

「なんだよその態度! 僕は名前を聞いたんだ。僕は名乗ったぞ、それとも、マスターにだけ名乗らせて、自分は名乗らないつもりか」

「…ハァ」

「だからなんだその溜息は! そんなに不服なのか! そりゃ不服だろうよ! 英霊とあろう者がこんな子供に顎で使われ…」

 

 ウェイバーがそこまで言いかけたとき、アサシンが、手でそれを遮った。

 アサシンは、首を振って否定しながら、言った。

 

「違う違うそうじゃない。確かに、お前の魔術師としての力量は、並以下だ。だが、それを不満と思っている訳じゃない。私が不満なのはな、私が今こうして、サーヴァントとして、この聖杯戦争に参加させられている事だ」

 

 その言葉は、ウェイバーの耳に、意外だった。情報と違う、それは、ウェイバーの思考を止める驚きだった。

 

「…なんでだよ、おかしいだろ。だって、サーヴァントは、望みがあるから召喚に答えるんだろ? 聖杯に賭ける願いがあるから…」

「あるとも、願いならあるとも。だがな、それは聖杯に賭ける望みじゃないんだ。だからな、私にとっては、聖杯戦争なんて、無意味なんだよ」

「じゃあ…、戦わないっていうのか」

 

 ウェイバーは落胆を抑え切れなかった、隠すこともできなかった。サーヴァントの召喚に成功し、舞い上がった気分が、一気に沈下する。階段に足を掛けたら、次の段が無くて、そのまま落ちたような感じだ。聖杯戦争に参加できると思っていた、それが、外れのサーヴァントを引いたばかりに、終わった。目的も無いのに、殺しあいに参加してくれる、協力してくれる者などいない。だから、ウェイバーの旅は、ここで終わりなのだと。

 しかし、アサシンは、それも違うと言う。

 

「勘違いするな。召喚に応えた以上、お前には協力してやる。ただな、私には何の利益も無いだろう? つまりタダ働きだ。それが嫌でなぁ…」

「…ふっ、なんだよそれ」

「ディミーアの為にもならんし、ラヴニカの為にもならん。全くのタダ働きだ。まぁ、何か得られる物がないか、探しながら戦うとしよう」

 

 一応は、協力してくれるらしい。それを聞いたウェイバーの顔が、明るさを取り戻した。

 これでようやく、本格的な準備に取りかかれる。そう考えたウェイバーは、アサシンの手を引き、隠れ家へと案内する。

 そう、この時点で既に、ウェイバーは忘れさせられていた。アサシンの真名を聞くという事を。

 

 

 

 

 

 




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