Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
時間があればね
冬木の夜は寒い。静まり返る夜は、心情まで寒くなりそうな具合だ。
寒空の街は空気が乾き、静かだった。その中で、死臭だけが、漂っていた。
「ほ~ら、たあんとお食べ」
馬に餌をやる女性。本来は、街外れで見られる絵ではないのだが、不思議な事に、今夜はそれが見られた。微笑ましい光景なのだろう、女性が血濡れで、馬が食べているのが人間の心臓でないのなら。狂気の沙汰だ、非常に猟奇的だ。
血濡れ女性は、嬉しそうに、バケツを漁る。次に取り出したのは、人間の手。それを、またも馬に食べさせる。
「遠慮しないでたんとお食べ。足りなくなったら、また作ってやるからね」
木製のバケツの中に、人間だったであろうものの内臓や四肢が、砂糖漬けにされていた。血濡れの女性は、それを馬に食べさせていたのだ。
餌を貰った馬は、黙々とそれを食べている。特に、人肉の砂糖漬けを食べる事に、抵抗は無いらしい。むしろ、ふたつある頭で、次々と器用に食べ続けるあたり、これが好物なのかもしれない。奇妙な馬だった。
そのとき、餌やりに夢中になっている女性の背後から、一人の男が現れた。
「ライダー、これはどういう事だ」
「おや、綺礼かい? どうもこうも、この子は"コレ"が好物なんだよ」
「人に砂糖を買いに行かせておいて、なにをするのかと思えば、人肉の砂糖漬けが好物だと?」
綺礼と呼ばれた男は、不快感を露に、そして、嫌悪感を隠しもせずに話す。
しかし、ライダーと呼ばれた女性は、まさにどこ吹く風。今は、餌やりの方が大事なようだ。
「………」
綺礼は、ライダーの向こう側にある、積み上げられた死体の山を見た。およそ10人分はある、解体された、人肉の屑山。死臭の原因は、間違いなくこれが原因だろう。そして、一面を赤く染める血の海が、ここで解体が行われた事を意味していた。
やがて、綺礼は視線を落とした。見るに耐えない、という訳でもないようだ。重たい溜息を吐いているところから見ると、むしろ、呆れかえっているのかもしれない。
「まだ聖杯戦争も始まっていないというのに、問題を起こすな。死体を処分するこちらの苦労も考えろ」
「そうは言うけどね、綺礼。この子だって飲まず食わずじゃ可哀相だよ、たまには好きな物くらい、食わせてやってもいいじゃないか」
「好物が人肉だとは聞いてない。それに、ここはお前が元居た場所とは違う、
綺礼の言は、至極、真っ当な意見だった。しかし、それを聞いたライダーは、腹を抱えて笑い出した。
「…なにがおかしい」
「わかってないねぇ、まるでわかっちゃいない。いいかい? ラクドス教団の血魔女が説く、法ってやつを教えてやるよ、『放火、流血、愉悦。』このみっつだ。ラクドス教団はね、これを遵守するんだよ。覚えておきな」
「………」
その、あまりの異常性に、綺礼は言葉を失った。召喚した時から、
――――――
冬木郊外の公園を、まばゆい光が照らした。集まり、形を成すエーテル。膨大な魔力を孕んだそれは、人型となって、現世に固定される。
「やったぞ!」
ウェイバー・ベルベットは叫んだ。手応えを感じ、自分にも、参加する資格があったのだと実感し、歓喜した。
そう、彼は、聖杯戦争の参加者だ。七人の魔術師による、殺しあいの戦争だ。ウェイバー・ベルベットは、殺しあいをしに来たのだ。
「………」
人影は、確かに人間だった。赤黒いローブを着た、大柄な男。今は実体化しているが、霊体であるそれは、サーヴァントと呼ばれる存在だった。
そこで、時間が止まった。サーヴァントが動かない。一言も喋らず、ウェイバーの方を見るわけでもなく、ただ、サーヴァントは立ち尽くしていた。
「………」
ウェイバーもまた、言葉に詰まった。召喚に応えたからには、サーヴァントはマスターを確かめようとするハズだ、そう考えたウェイバーを嘲笑うかのように、サーヴァントはなんのリアクションも見せなかった。
「ハァ…」
「なんで溜息なんだよっ!」
時間にして2分、沈黙を破ったのは、サーヴァントの疲れた様な溜息。そして、ウェイバーの驚き。
まるで、自分がマスターである事が気にいらないと言われたようで、ウェイバーは憤慨した。そして、サーヴァントの側に詰め寄り、声を掛ける。
「僕がお前を呼んだ、ウェイバー・ベルベットだ。お前は?」
「…アサシン、そう名乗っておこう。クラスは
アサシンの返答には、力が無かった。やる気が感じられない、と言い換えてもいい。
しかし、それがまた、ウェイバーの気に障った。
「なんだよその態度! 僕は名前を聞いたんだ。僕は名乗ったぞ、それとも、マスターにだけ名乗らせて、自分は名乗らないつもりか」
「…ハァ」
「だからなんだその溜息は! そんなに不服なのか! そりゃ不服だろうよ! 英霊とあろう者がこんな子供に顎で使われ…」
ウェイバーがそこまで言いかけたとき、アサシンが、手でそれを遮った。
アサシンは、首を振って否定しながら、言った。
「違う違うそうじゃない。確かに、お前の魔術師としての力量は、並以下だ。だが、それを不満と思っている訳じゃない。私が不満なのはな、私が今こうして、サーヴァントとして、この聖杯戦争に参加させられている事だ」
その言葉は、ウェイバーの耳に、意外だった。情報と違う、それは、ウェイバーの思考を止める驚きだった。
「…なんでだよ、おかしいだろ。だって、サーヴァントは、望みがあるから召喚に答えるんだろ? 聖杯に賭ける願いがあるから…」
「あるとも、願いならあるとも。だがな、それは聖杯に賭ける望みじゃないんだ。だからな、私にとっては、聖杯戦争なんて、無意味なんだよ」
「じゃあ…、戦わないっていうのか」
ウェイバーは落胆を抑え切れなかった、隠すこともできなかった。サーヴァントの召喚に成功し、舞い上がった気分が、一気に沈下する。階段に足を掛けたら、次の段が無くて、そのまま落ちたような感じだ。聖杯戦争に参加できると思っていた、それが、外れのサーヴァントを引いたばかりに、終わった。目的も無いのに、殺しあいに参加してくれる、協力してくれる者などいない。だから、ウェイバーの旅は、ここで終わりなのだと。
しかし、アサシンは、それも違うと言う。
「勘違いするな。召喚に応えた以上、お前には協力してやる。ただな、私には何の利益も無いだろう? つまりタダ働きだ。それが嫌でなぁ…」
「…ふっ、なんだよそれ」
「ディミーアの為にもならんし、ラヴニカの為にもならん。全くのタダ働きだ。まぁ、何か得られる物がないか、探しながら戦うとしよう」
一応は、協力してくれるらしい。それを聞いたウェイバーの顔が、明るさを取り戻した。
これでようやく、本格的な準備に取りかかれる。そう考えたウェイバーは、アサシンの手を引き、隠れ家へと案内する。
そう、この時点で既に、ウェイバーは忘れさせられていた。アサシンの真名を聞くという事を。
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