※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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真昼間だとかそんなのはどうでもいい! 更新するチャンスだ!!

二話連続更新です(3/19)


第二夜
14


 驚愕が10人の頭を強く揺さぶった。普段から冷静沈着な衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)や久宇(ひさう)舞弥(まいや)でさえ、その衝撃には声を漏らして驚いた。アインツベルン城、ハイアットホテル、遠坂邸、マッケンジー宅、情報を受け取った場所も、それを知った時刻も違ったが、重なった10人の驚愕は同じだった。聖杯戦争の監督役である言峰(ことみね)璃正(りせい)の死、その情報は多くの者に衝撃を与え、場に混乱を招いた。

 

「…死因は?」

「出血は多いが、ショック死ではない。刃物で胸を抉った痕がある、これが最終的な死因だな。惨殺だよ、恐らくはライダーの仕業だ」

「…その根拠は?」

「残虐性が見て取れるいたぶり方だからな、こういう手合いはよく知ってる、奴はこういう事を楽しめるのさ」

 

 逸早くその情報を手にしたのはウェイバー・アサシン陣営。しかし、それは何のアドバンテージにもならなかった、むしろアサシンにとっては大損害である。自身の写し身を利用しての多方同時諜報、その戦略がアサシンにもたらした情報的優位性は大きかった。ライダーのマスターが監督役の息子、言峰(ことみね)綺礼(きれい)である事分かっていた、そして言峰綺礼がライダーに対して不信感を持っていたことも。アサシンは死んだ監督役に関連する情報を整理して推測する、導き出される推論はひとつ、ライダーとそのマスターの親和。それが意味する処とは、それは手の付けられない怪物コンビが生まれたということ。

 

「まずいことになったな…」

「…ああ、結局…反英霊討伐作戦はおじゃんってわけか…」

 

 ウェイバー・ベルベットの落胆の声を聞きながらも、アサシンは真剣な面持ちで思考していた。セイバーとランサーの同盟陣営も驚きはするだろうが、戦意は失わない筈で、むしろ、そのサーヴァント達は怒りに燃え上がり、より苛烈に戦うだろう。恐らくは街中に逃げ隠れたライダーとそのマスター、ゲリラ的に襲われる危険性を考えれば、セイバーとランサーがまず一番に狙うのは遠坂。一方の遠坂は現状全く動きを見せていないが、監督役の死という情報を受け取った場合、どう動くのかは予想し辛い、そのまま篭城を続ける可能性が最も高いが、それは確証ではない。

 今の自分はどう動くべきか、アサシンは速くも答えを出した。

 

「ウェイバー、恐らくは今夜、一波乱あるぞ」

「…動くんだな?」

 

 ウェイバー・ベルベットの言葉には期待があった、アサシンの声色が真剣であったため、とうとう自分にも活躍の機会が回って来たのだと思ったのだろう。まだまだ若く、一学生に過ぎないウェイバーであるが、頭の回転は速かった。受け取っていた情報を確認し、アサシンよりも少し遅れたが、ほぼ同じ推論を出していた。アサシン一人では手が回らない、ならば、ウェイバーも手伝わなくてはならない。

 

「私は衝突の場を監視し、戦いを煽る。ウェイバー、お前には使い魔を放ってもらいたい、ライダーを探してくれ」

「分かった、まずは街からだよな? 早速始めるぞ」

 

 待ってましたと言わんばかりに、ウェイバーは嬉しそうに答えた。たった一日だけの指導であったが、アサシンは実に良き教師であった。実践的な魔術を教わったウェイバーは、早くその成果を見せたくて、どうにも疼いていたらしい。しかし、その返答を聞いたアサシンの表情は暗かった。

 

「もしかすると宝具を使う事になるかもしれん、魔力の残量には気を配っておけ、何が起こるか分からんのでな」

「分かってるよそれくらい。情報は随時報告してくれよな、こっちもそうする」

「ああ…」

 

 アサシンの返答は簡素なものだった、恐らくは、これから起こる事態について考えていたためだろう。どうあっても今夜ばかりは血を見ずには終われない、アサシンはそれを覚ったのだ。今夜堕ちるのはいったい誰か、セイバーか、ランサーか、それとも遠坂が抱えるサーヴァント達か。

 

「まあ、私でないのは確かだがな」

 

 自信過剰とも取れる呟きだったが、アサシン本人は大口を叩いたつもりではなかった。未だどの陣営にも姿を見せず、一切の情報を渡していない。他の全ての陣営に対して確実に有利だと言えるのは自分達、そう確信しているからこその自信。宝具も、スキルも、そして真名も、全てを明かさぬままに、状況が動くまでいられた。戦いは避けられない、今夜、確実に誰かが死ぬ。そして、そうさせるのはアサシンだ。

 

「フッ、迷路の終わりを思い出すな…、あの時も、私は戦乱を煽って殺し合いをさせていた」

 

 ラザーヴ(アサシン)は昔を思い出していた、ディミーア家の新たなギルドマスターに成り上がってからの、最初の大仕事。全てがラザーヴの手の内だった、他の迷路走者は争い合っていて、それを煽るだけで、おもしろいように事が進んだ。そして、それは今回も同じ。だが、今回こそは、最後の最後で失敗したりはしない。

 アサシンの計画は潰れていない、監督役は死んだが、その目的はセイバーとランサーが継いでくれる。愚直なまでに正義を信じる者共が他の反英霊を倒してくれる、そうなれば、残るのは無傷の自分のみ。戦いを挑まれる以上、遠坂も応戦せざるを得ない。その隙にライダーが切り込むならよし、そうでないなら残った者を各個撃破するまで。どういう結果に転ぼうとも、アサシンが失う物は何も無く、アサシンが得る物は多い。

 

「全ては私の思うがままだ、私を止められる者なぞ存在しない」

 

 その呟きは誰の耳にも届かなかったが、闇夜の空気だけはそれを受け止めていた。

 

 

―――――

 

 夜の遠坂邸、その庭園。そこに、ふたつの光とふたつの闇が、向き合い、火花を散らしていた。片や、同盟を結び共同戦線を張る、セイバー陣営とランサー陣営の組み合わせ。片や、共同歩調こそ取るが、同調はしていない、アーチャーとキャスターの篭城陣。その戦力差には開きがあったが、誰一人として、怖気付いた者は居なかった。

 

「よもや卑怯とは言うまいな」

「二人がかりはお互いサマだ、卑怯なんて言わないさ…」

 

 セイバーの挑発を受けたアーチャーの軽口。それが切欠となり、空中を翔けたアーチャーの先手から、戦いの火蓋は切って落とされた。

 始まってしまった戦いを見て、キャスターは自然と焦りを覚えた。こうならないようにと、わざわざ他の陣営の目につくように、屋根に上って二人の姿を晒したのに。キャスターの考えは甘かった、二体のサーヴァントが守る遠坂邸、そんな難攻不落にしか見えない場所に、まさか真正面から挑んでくる陣営があるとは思いもしなかったのだ。そしてキャスターは、自身のAランクの陣地作成スキルにて、鉄壁とも言える防御を築いていたが、それさえもランサーに破られてしまっていた。

 

「呪詛邪法の類(たぐい)なぞ、気高き意志が放つ光の前には、無意味なことです」

 

 『呪い破り』、イニストラードの次元中に及ぶ、アヴァシンが放った強力な魔法の波の一片。弱体化の呪いが幾重にも張り巡らされたキャスターの結界、しかしそれはランサーの放った光によって、次々と浄化され破壊されてしまった。

 性質を見誤ったか、僅かな後悔がキャスターの胸に影を落としたが、それよりも、今は焦りの方が大きかった。相手は三騎士のランサーだ、キャスターではどうにもならない。それに、キャスターとランサーでは、あまりにも相性が悪かった。アヴァシン(ランサー)は吸血鬼狩りのスペシャリストで、ドラーナ(キャスター)は狩られる側の吸血鬼だ。呪いにも魔術にも対抗策を持つランサー、一方でキャスターはそれしか武器が無い。戦ってはいけない相手だと、最初から分かっていた事だ。

 

「逃げられるとでも? おとなしく灰に返りなさい、吸血鬼よ」

 

 上空からランサーに睨まれているというのに、どういうつもりだろうか、くるりと体を反し、キャスターが無防備にも背を晒した。艶っぽく腰をくねらせて、優雅にニ三歩歩いてから、半身反してキャスターは言った。

 

「残念ですけど、アナタの相手は私じゃないの。…アーチャー!!」

 

 言うが早いか見るが早いか、キャスターの命令と共に、ランサーが地に堕ちた。A++ランクの『直死の魔眼』、対象者の命を一瞬で無に帰し、例え死に至らずとも、その命を大幅に縮める死線。高ランクの対魔力と神性スキルを持つランサーでなければ、その一瞥で再起不能にされていたかもしれない、それほどの威力だった。しかし、大天使は死なず。ランサーは即座に立ち上がり、槍を天に向け、治癒の効果を持つ光で自身の体を包んだ。

 

「逃がさんッ!」

 

 ランサーへと飛び掛るアーチャーの背を追い、セイバーが走る。が、その前方に、カラストリアの血の長が立ち塞がる。立ち塞がったキャスターは右手を腰の左へとやった、すると空気が歪み、生々しい血の臭いと共に、暗い銀色の剣が実体化する。宝具の顕現、キャスターが女王である証、『血の長の刃』。剣のクラスであるセイバーは当然としても、奇(く)しくも、キャスターの持つ武器もまた剣であった。だが、その性質は真逆と言えた。血を啜り死を喰らう、命の簒奪者だけが持てる権利の象徴、キャスターの持つ剣は魔剣だ。共に栄光という共通点を持つ、平穏の光を放ち、戦火の炎を放つ、セイバーの剣は聖剣である。その違いはまるで、二人の在り方の違いを表しているかのようであった。

 

「貴様、吸血鬼だな…?」

「ええそうよ、オシャレなマスクのセイバーさん」

 

 微笑を浮かべて、まるで社交界の貴婦人であるかのような口調、しかし、キャスターの目は笑っていなかった。実力差は明白、剣を持ったところで、何が変わるわけでもない。それでも、キャスターは余裕の表情を崩さない。

 纏う空気と微笑の合間に見える尖った歯、セイバーはそれを見逃さず、相手が吸血鬼であると見抜いた。一筋縄ではいかない相手である事は間違いない、そう考えると、セイバーは即座に身構え、念話を通じてマスターに意思を伝えた。

 

『切嗣(きりつぐ)、プランCだ、いつでも令呪を使えるようにな』

『任せてくれ』

 

 そして、セイバーと衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)の念話が終わると同時に、キャスターの準備も終わった。瞬間、空気の色を変える程の、強力な結界が遠坂邸全域を覆った。それを肌で感じたセイバーが、目の前の吸血鬼のサーヴァントの正体が、まさかの魔術師(キャスター)であると理解する。途端、セイバーの額に汗が浮かんだ。見ただけで判る程に弱いのは、キャスターであるなら当然の事だった。だが、それが実にまずい。今、セイバーとランサーは、ものの見事に敵陣のど真ん中に居るのだから。その性質を判断し、ランサーの能力であれば、結界の破壊は容易だと分かった。だからこそ、セイバーとランサーは正面から戦いを挑んだ。しかし、"今の"は違う、桁が違う。たったいま展開された結界、それは、セイバーが肌で感じただけで判ってしまう程に、とても強力な物だった。まず間違いなく、キャスターの奥義、結界宝具であると分かった。ここまで強力な結界ともなれば、ランサーの能力でも破壊は難しいかもしれない。それに、今のランサーはアーチャーと交戦中だ、結界の妨害はセイバー一人に託されている。だが、あまりにも速かった。既に展開されてしまった結界を無効化する手段なぞセイバーは持っていない、となれば、使い手を殺す他に選択肢は無い。敵の術中の中、術士の掌の上で、そのキャスターを倒す事が可能だろうか。

 キャスターの背後で、凄まじい衝突音と共に、ランサーとアーチャーが激突していた。その衝撃に突き動かされたのか、それとも覚悟を決めたのか、もしくは腹を括ったのか、セイバーが俊足で前に出た。それと同時に、キャスターもまた、一歩踏み込んだ。

 

 

 




区切りがいいようにと14話15話に分けたけど、正直まとめても良かったかもしれん。

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