Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
キャスターの結界内に、強力な呪いの波動が響いた。目視可能な程に強力な呪い、刺々しい朱の力線、キャスターの全身から発せられている様に見えるその力こそが、命の簒奪者だけが持てる権利の象徴。カラストリアの血の長として永きに亘り君臨し続けた、
「どうやら始まっちまったようだな? お前、もう終わりだよ」
滞空を続けたまま、ゴルゴンと天使が睨み合う。やはり自力の差が大きかったのか、アーチャーの体にはいくつかの浅い傷があった。しかし、そこは流石に
「さあ、好きに暴れなさい! アーチャー! 」
キャスターの許可が下りた瞬間、アーチャーが目に見えて強くなった。二人のマスターが供給可能な魔力は限られている、だからこそ、キャスターの用意が整うまで、アーチャーはロクに魔力を回してもらえていなかった。それが解決され、今度はキャスターへ供給される魔力が減り、その分がアーチャーへと回される。その結果、全力を取り戻し、アーチャーが文字通りの怪物となる。
だがこれは、二人にとって、一種の賭けでもあった。いくら遠坂時臣の手元に魔力を込めた宝石があり、追加で魔力供給が可能だと言えども、まずは開いた差を埋める必要がある、そして当然ながら限界も存在する。分の悪い賭けだった。呪いの結界を張って、有利な戦場を作り出し、少しでも性能の差を埋めようという戦略。そのために支払った代償の大きさを、これから取り戻せるのかどうか。
結界宝具が始動し始めた以上、キャスターはただ逃げ回って時間を稼ぐだけでいい。可能な限り浪費せず、可能な限り消耗させ、可能な限り削り取る、それだけだ。だが、問題なのはアーチャーとランサーの戦い。サーヴァントが持つ宝具は決して単一とは限らない、キャスターがふたつの宝具を持っているように、セイバーやランサーも同じように複数の宝具を持つ。キャスターが危惧しているのはそれだ。一人のマスターに二人のサーヴァント、どうしても魔力不足に陥ってしまうため、アーチャーやキャスターは宝具の使用を最初から制限されたも同然だった。だが、相手は違う。セイバーやランサーは魔力不足で困る事が無く、また、宝具の使用にも制限が無い。キャスターの宝具である『血の長の昇天』は発動に使用する魔力が少なく、継続的な維持費としての魔力消費だけが問題で、遠坂時臣のキャパシティから判断して、唯一これだけが使用に耐えられる宝具であった。だからこそ、アーチャーへの魔力供給を絞ってまで、キャスターは宝具の発動を待った。だがしかし、発動させたはいいが、それは敵も同じこと。キャスターの宝具が強力な物であると分かったなら、セイバーやランサーも宝具で対抗してくるだけ。これ以上の策を持たないキャスター、宝具の使用を制限されたアーチャー、二人からすれば、これは最初から分が悪い戦いだった。
「こっからは全力でいく、もうさっきまでのようにはいかないぞ」
しかし、チャンピオンは怖気付いてなぞいなかった。例え宝具が使えなくとも、自分が負ける筈がない。そんな自信があり、絶対の自負があった。
そんなアーチャーを嘲笑うかのように、ランサーは絶望的なまでの戦力差を見せつけた。
「ならば、こちらも全力を出すまで。
ランサーがそう言った次の瞬間、その手に握られた銀色の槍が強く輝いた。ランサーの宝具、『月銀の槍』の真の能力。それは魔の眷属に対する常時発動型能力ではない、装備者に先制攻撃スキルを付与するものでもない、それは真名解放によって発動される、『擬似サーヴァントの召喚』である。
宝具自体の
「イニストラードが守護者、アヴァシンの名において! 象徴たる『月銀の槍』を持って道を指し示さん!!」
天を指すように槍を掲げ、
ランサーの槍がいっそう強く輝くと、夜空にかかる雲が晴れた。そして、月明かりが四人を照らす。夜空に浮かぶ月が、その色を変えていた。アーチャーが目を見開いて驚く、銀色に輝く月がこの時ばかりは大きく見えて、とても神秘的な輝きを放っていた。
迫るアーチャーから距離を取ろうと、ランサーは更に上空高くへと上る。追いつけないと考えたアーチャーが魔眼で射止めようとするが、その時にはもう、遅かった。ランサーの槍が振り下ろされ、宣言と同時に、真名解放が整う。
「夜空に輝く銀の月より、来たれ! 我が同胞!!」
―
イニストラード。古代より絶えず、光の陣営と闇の陣営間で争い続けている、長く停滞した次元。かつては両陣営共に、どちらもそれほどではない力しかなかった。実体を持つ
ある時、イニストラードで最初の吸血鬼が誕生した。錬金術師エドガー・マルコフが編み出した邪法により、一部の人間が吸血鬼へと変貌したのだ。数を増す吸血鬼、追い込まれる人類、その果てにあるのは共倒れという未来。それを良しとしない男、エドガー・マルコフの孫、ソリン・マルコフが立ち上がった。ソリンは強大無比な力を持って、同族の吸血鬼を倒し、最後には自らの祖父を殺した。
その後、吸血鬼の繁栄に伴い、イニストラードという次元に異変が生じた、神秘の具現化が起きたのだ。悪魔は実体を持ち、次々に姿を現し、直接的に害をなすようになった。霊体は人の目に見える程に濃くなり、幽霊や悪霊が人々を脅かした。銀色の月の満ち欠けで狼男が凶暴化し、大勢の人間が犠牲となる。そして同時に、天使もまた実体を持って顕現した。
光と闇、どちらに傾きすぎてもいけない。特に吸血鬼が力を増せば、人類はやがて死に絶え、そうなれば吸血鬼までもが飢え、共に死に絶えるだけだ。人類を守らねばならない、そのために、安定しない力の均衡を取り持つ必要があった。ソリンは同族の吸血鬼を裏切り、光の勢力に肩入れする道を選ぶ。この時、アヴァシンは初めて世界に生を受けた。
イニストラードで最大の力を持つソリンであるが、個人では次元全土を守護するには難しく、吸血鬼であるために、人類からの助力も受けられなかった。それを解決するべく、ソリンは自らの力の源に通ずる物を差し出し、最高最大の天使を創り上げた。これが人類の守護者、大天使アヴァシンの始まりである。
アヴァシンは原初の天使ではない、アヴァシンが生まれるよりも以前から、既に天使は存在していた。天使とは元々、希望や願いといった、思念から生まれる存在である。イニストラードの人類が闇の者に脅かされる時、希望や願いが形となって、マナより天使が生まれるのだ。そんな中、ソリン・マルコフという一人の吸血鬼から作られたアヴァシンは、意外にも本人の予想に反して、人々に受け入れられた。呪いを打ち破り、悪霊を浄化し、
しかし、戦いは終わらなかった。どれだけの倒そうとも、悪魔は消滅すればマナへと返るだけで、また新たな悪魔が生まれるだけ。吸血鬼も依然滅びる事なく、人間を引き込み、その繁栄を保っていた。アヴァシンはそれを終わらせるべく、悪魔を滅ぼすのではなく、封印する方法を編み出した。最強の天使の手により多くの悪魔が封印されていくと、人々の希望は更に強くなっていった。希望が大きくなれば、同時にそこから天使が生まれていった。そうして、アヴァシンの名の下に、多くの天使が力を付けていったのである。
―
宝具の真名解放時にはどうしても隙が生じる、手遅れだとしても、一撃を入れられる
「アヴァシン様!!」
純白の翼、銀色の剣、鎧姿、熾天使の参戦。血を流して落下するランサーを助けんと、熾天使は全速力で飛んだ。若き天使の多くはアヴァシンがもたらす希望や願いから生まれた、云わば、アヴァシンの子も同然である。故にその信頼も強く、尊敬の念は盲目的でさえある。そのアヴァシンが傷付けられているならば、熾天使は怒り、また焦る。その動揺を見逃す手は無い、その隙を突かんと、アーチャーが熾天使を襲う。
一方で、なんとか体勢を立て直し、空中で復帰したランサー。だがしかし、その表情は驚愕の一色だった。見れば、ランサーが身に付けている黒い服の合間から、何本かの線になって、血が垂れていた。ランサーが誇る高ランクの対魔力と神性スキルの恩恵により、生命力の大幅な減少という程度にまで、魔眼の威力が殺されていた。しかし、実際にこうして、ランサーは血を流している。物理攻撃でもなく、傷を与える攻撃でもないのに、ランサーの体は損傷し、血が流れた。
苦痛は連鎖する。血を流して落下したランサーを見て、駆けつけた熾天使、地上から見上げたセイバー、この二人が同時に呻き声を上げた。
「馬鹿な…!」
血煙の幻惑を切り裂きながら、上空で落下するランサーを一瞬視界に収め、セイバーが不安を募らせた。その瞬間、痛みがセイバーの体を走り、傷が生じて血が流れた。攻撃は受けていない、対魔力を貫く魔術を受けた形跡も無い、しかしセイバーは傷ついた。驚きの声を上げたセイバーが最後の幻影を切り裂き、残った本体のキャスターを睨む。すると、驚愕の事実がセイバーの目に映った。
「フフフフ…! アナタ達、これでもう終わりよぉ?」
切り裂かれたキャスターの乳房、その傷口が塞がっていく。炎に焼かれた皮膚は潤いを取り戻し、裂けた肉が自然と密着し、見る見るうちに傷が塞がってゆく。これが結界宝具『血の長の昇天』の真の能力、生命力の吸収である。
人間の血肉を通して、生命力を奪うのが吸血鬼。そんな吸血鬼の長が使う血魔術の極致が、『血の長の昇天』。精神の損傷を肉体の損傷に繋げる、呪いの結界。不安、恐怖、そういった原因であっても、この結界内で精神が傷ついたならば、それは呪いの対象になる。精神の傷は肉体の傷となり、生じた肉体の傷から漏れ出た生命力がキャスターへと流れる。精神の傷が肉体の傷へと反映されるのは内側からであり、外側からの魔術に対抗する対魔力スキルは効果を発揮しない。これがキャスターの真の能力、そして余裕の表情の理由である。
「仲間を呼んだって無駄よ? アナタ達はここで死ぬの、無様に悶え苦しみながら…、私に刃向かった事を後悔して死ぬの」
キャスターは悪い笑みを浮かべ、手に持つ刃を揺らし、これみよがしに言った。
防御不可能の呪い、その効果の誘発条件を明らかにしない限り、セイバーとランサーは圧倒的な不利に立たされる。防御も出来ない突然の攻撃、予測できないそれに対処するのは不可能だ。結界が原因だとは分かっていても、何がどう作用してダメージを受けるのか、それが分からない。分からないままに戦闘を続ければ、不意のダメージで体勢を崩す事があるかもしれないし、その上から攻撃を受ける可能性もありうる。セイバーとランサーは敵の術中に
寝ます…
次回の更新は遅れるかもです。
あと、今月いっぱいで更新止まるかもです。OS新調してないからね、XPだからね。
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