※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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(仕事はまだ見つかって)ないです。
借り物のPCから投稿してまーす。
んじゃどうぞ


17

 

 キャスターは確信する。追い詰めた、今有利なのは自分達、そう確信した。だが、奇妙な胸騒ぎがあった。人間で言うところの、喉に小骨が痞(つか)えるという感覚が。そして、キャスターはその違和感の正体を知る。燃え上がる瞳、相対するセイバーの眼が燃えている。光を失う事無く、未だ戦意を保っている。それはキャスターの目に異常なものとして映る。

 キャスターは驚きを飲み込み、唇で困惑を噛み殺した。ドラーナ(キャスター)が初めて経験する、初めて目にする人間の英雄。どのような困難を前にしても決して屈する事なく、死ぬまで戦い続ける戦士。最後の最後、死の瞬間であってさえも、絶対に希望を手放さない。セイバーという戦士は、キャスター相手に怯んでいなかった。命の簒奪者、血の長たるドラーナを相手にして、セイバーは窮地であっても希望を捨てなかった。

 

「なるほど、確かによくできた戦法だ。だが、追い込まれたのはそちらの方だぞ、キャスター」

「なにを…」

 

 馬鹿なことを、そう言おうとした瞬間、キャスターは迫りくる気配に気付く。高速で飛来する天使の姿、ランサーではない、ランサーによって召喚された熾天使である。上空から飛来する新たな天使を姿を見て、キャスターは顔を歪めた。

 

「セイバー殿! アヴァシン様の命(めい)により、助太刀いたします!」

「御助力、感謝いたす!」

 

 二対一である。この戦いの要がキャスターであるのなら、全力でそれを潰すまで。セイバーは戦士ではあるが、騎士ではない。それ故に、勝利のためなら手段は選ばない。いくらアーチャーが全力を取り戻したと言えども、対抗出来る武器が魔眼のみでは、総合力ではランサーの方が上だ。ならば、今はランサー一人にアーチャーを任せて置いても構わない、それよりも重要な、キャスターを倒す方が先決である。そのために、セイバー一人では手が足りないため、熾天使の協力を得たという訳だ。

 

「ロード・エルメロイ、魔力の方は大丈夫だろうな?」

「黙って自分の仕事をこなせ…、集中力を途切れさせるつもりか…!」

「今ランサーに倒れられるわけにはいかない、気をしっかりと持っておけ」

「解っている! 傭兵如きが私に指図するな!」

 

 戦場より遠く離れた、小山の雑木林。二人のマスターが、その中で状況を正しく判断していた。召喚した熾天使をセイバーの手助けに向かわせる作戦、これは衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)の発案だ。ケイネスは、妻のソラウと共に変則契約を交わし、ランサーと二重の魔力供給ラインを形成しているという。同盟間の情報共有により得たこの情報を元に、衛宮切嗣はケイネスと共に戦場を監視し、サーヴァントに随時指示を送っていた。それが、ランサーが宝具の真名解放を行った理由であり、また召喚した擬似サーヴァントをセイバーの援護に向かわせた理由である。

 しかし、状況は未だ混迷の中にある。熾天使をセイバーの援護に向かわせたはいいが、一瞬だけ姿を見せたアサシンの存在もあり、状況が有利に一転するとは限らない。そして、切嗣の十八番にして常套手段、狙撃が出来ない状況。戦いが長引くのは避けられない。

 

「舞弥(まいや)、遠坂(とおさか)時臣(ときおみ)の姿は確認出来たか?」

「いいえ、場所を変えて見渡しましたが、目視可能な場所には…」

「そうか、監視を続けてくれ」

 

 自身の右腕、協力者である久宇(ひさう)舞弥(まいや)からの、残念な報告を聞いた衛宮切嗣。しかし、その表情は依然として変わらない。その一方で、戦場の中心に居る、セイバーの表情も悲観ではなかった。心強い助太刀を得て、セイバーは更に強く剣を振る。そして、月明かりに照らされる夜空の中、アーチャーと交戦を続けるランサーもまた、強い意志が見える前向きな表情だった。

 キャスターの作戦が無駄に終わったかに見えた。精神の傷を肉体に反映させる呪いの結界宝具、しかし、諦めず、また屈する事のない二人を前にしては、その効力も発揮されない。精神に干渉出来る血魔術も存在するが、セイバーと熾天使の二体を相手にしては、そんな攻撃を当てる時間も無い。またも逆戻り。

 確かに、セイバーとランサーの二人は均衡が崩れたのを知った、敵の術中に嵌ったのを覚った。だが、諦めるという選択肢は無かった。むしろ捨て身になり、犠牲無くして勝利は得られないという考えの元、肉を切らせて骨を断つ戦いを挑んだ。余力があるのなら、残る全てをぶつけて、一気に押し切るのみ。それがセイバーと衛宮切嗣の、ランサーとケイネスの、総意であった。

 負ける事なぞ考えていない、ただ勝利へと向かうのみ。新たに増えた血煙の幻影を切り裂き、セイバーがキャスターへと迫る。万事休す、確実に耐え切れないと判断出来る一撃を前にして、キャスターの表情が驚愕に染まった。だが、剣は届かなかった。

 

「馬鹿なっ!?」

 

 真っ向唐竹割り、セイバーの剣が脳天から股まで切り抜いた、…かに思えた。その瞬間、キャスターの実体が消え、剣は空を切るに終わる。サーヴァントであるなら誰もが知っている現象、霊体化であった。しかし、それが奇妙だ。霊体化には隙が生じる、実体化を解く場合、一瞬だけとはいえ、どうしても霊核を晒してしまう。そして零距離でその一瞬があれば、サーヴァントなら確実に霊核を破壊できる。だからありえない。霊核を晒す事無く、振り下ろされる剣の速度よりも早く、刹那の一呼吸も無しに完全な霊体化を完了させるという不可思議。セイバーの驚愕は当然のものだった。

 セイバーの剣が空を切り、その手から勝利が零れ落ちた。セイバーと同じく、熾天使も驚愕の表情で、困惑が思考に空白を生んだ。

 

「令呪か!? …いや、違う、先のアサシンか…!」

 

 今までの状況から、それが令呪による強制力ではなく、アサシンの肩入れによるものだと、セイバーは瞬時に把握する。しかしそうなると、状況は更に悪化している事になる。キャスターとアーチャーだけではなく、そこに加えてアサシンの助力があるのなら、戦場のパワーバランスは一気に傾く。いくら熾天使の協力があっても、これだけ援護に優れた能力を持つアサシンが背後に居るのなら、セイバーが勝機を掴むのは限りなく難しいと言える。状況を打開する策を求め、セイバーは衛宮切嗣(マスター)へと念話を繋いだ。

 

『どうやら、アサシンはキャスター側に肩入れする道を選んだようだ。切嗣、何か策はあるか』

『・・・・・・、こうなっては仕方ない、プランCは中止だ。僕が直接遠坂時臣(マスター)を叩く他無いだろう』

『…大丈夫か?』

『無茶は承知の上だ…。セイバーはとにかく耐えてくれ。僕はアサシンに見つからないよう、遠坂邸に潜入する』

『…すまん』

 

 最後の一言が念話のラインに乗った時。セイバーの前方20メートル先に、キャスターが実体化した。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 無言の睨み合いの中、吸血鬼の第六感の触覚と、歴戦の戦士の嗅覚が、共に枝葉の様に伸びてアサシン探りあう。なぜ自分達を助けるような真似をしたのか、キャスターはその理由を探ろうとし。キャスター達を助けるような真似をする以上、それは確実に敵でしかないため、最大限の警戒を払うためにセイバーは四方を探る。張り詰める空気の中、気配遮断を解く事が出来なくなり、アサシンは息を殺して身を潜めるのみ。

 頭上に響く戦いの火花の下、四者同様、身動きが取れない膠着状態となった。

 

 

―――――

 

 混迷の中にある戦場の空気が止まると、そこに付け入る隙が生じた。衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)はそれを見逃さず、警戒網に引っかからないように、遠回りに遠回りを重ね、戦場を挿んだ遠坂邸の反対側へと来ていた。相棒である久宇(ひさう)舞弥(まいや)をケイネスの援護に就かせ、セイバーの頑丈さを頼りにして、単身で敵地の中で最も警戒の強い場所へと乗り込む。魔術師の家、そこは手の中、腹の中も同然。危険であるどころか、無謀にも等しい行為だった。

 

 窓ガラスを割り、窓枠を乗り越えて侵入する。魔術の痕跡と反応を探りつつ、忍び足で廊下を進む。息を殺し、音を殺し、感情をも殺して、衛宮切嗣が進む。

 敵は御三家、遠坂が現当主。故に、勝機はあると確信している。魔術師殺しの本領発揮。そこに迷いは無く、また不安も無かった。

 

 丁寧な消音歩行だった。衛宮切嗣は靴音ひとつ立てずに進み、玄関ホールにまで到達する。人の気配がまるで消えた廊下、目的の人物は二階に居ると判った。魔術を探知する魔除けをかざし、まずは階段に仕掛けがないかを確かめる。反応が無いのを確認しても安心したような素振りは見せず、魔除けをコートのポケットにしまって、階段を上り始める。左足を出して、まずは一段。奇襲に対応できるように腰は低く、肩を引き締めて、胸の前に銃を構えて階段を上る。まるで現役の特殊部隊の様な、完璧な行動だった。

 何事もなく二階に到達した衛宮切嗣だが、すぐに廊下に出るような事はしなかった。壁に背を当ててしゃがみ、コートの内ポケットから小さな手鏡を取り出して、それを伸ばす。手鏡に何も映らない事を確かめると、魔力の反応が強い方向を目指して進む。

 廊下には重苦しい空気が漂っていたが、衛宮切嗣は汗ひとつとして掻いていなかった。依然として気配も音も消し、まるで影のような存在となって廊下を進んでいる。そのまま足を進めて、二階廊下南を半分も進んだ頃。衛宮切嗣はまるで粘土の様に体を丸めて、ゆっくりとしゃがんだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

 前方右手にある扉から人の気配が漏れているのを、衛宮切嗣は見逃さなかった。そこで、強い魔術反応の正体を知る。それは防衛のために使われる結界だった。無意識に刷り込まれる人避けの結界、中の者を守る厄除けの結界。そして、その結界の中に居るのは二人。衛宮切嗣は壁に耳を当て、その正体を探る。

 

「・・・・・・・・・」

 

 呼吸…衣擦れ…そわそわ(・・・・)と不安そうな足音…、中の人物は非戦闘員、遠坂時臣の妻と娘だと判る。

 目的の人物はそこに居ない。それが分かってもなお、衛宮切嗣はその場を動かなかった。部屋の中へと向けていた意識を戻し、正面を向いて、スッ(・・)と目蓋を閉じる。恐らくは、中の二人をどうするか決めかねているのだろう。衛宮切嗣は妻帯者である、可愛がっている娘もいる。殺すべき目標―遠坂時臣―の置かれている環境が自身と重なっているのを再確認し、心が揺らいだのかもしれない。

 覚悟を決めなくてはならない。殺すのは容易いが、それは悪手だ。妻と娘を同時に失ったとあれば、絶望で崩れてしまうかもしれない。だがその一方で、復讐心と殺意に狂い、手がつけられなくなる可能性もある。人質に取るのも容易いが、これも判断が難しい方法だ。一人だけならまだしも、二人を連れては行動できない。対象者の妻は魔術の心得がない、一般人も同然の人間だとわかっている。人質にするなら娘の方だけにして、母親は足でも撃ち抜いておけばいい。だが、母は強しとも言う。娘と夫が危険に晒されている事を肌で感じたならば、母性本能が肉体の限界を超えさせるかもしれない。そうなれば殺す以外の選択がなくなり、結果として事は悪い方向へと転ぶだろう。『女も平気で撃てる殺し屋』だとアピール出来る、…と考えればプラスだが。そんな事のために、僅かなプレッシャーのためだけに人を殺すのは三流のやり方だ。どうせ殺すなら相手の目の前で、それが一流の殺し屋の脅し方。

 

 衛宮切嗣は迷っていた。どうしても確実な手段が取れない。心が決まらないままに行動すれば足元がおろそかになる。夫の無事を祈る妻の息、父の安全を願う娘の不安、それを目の当たりにしたがために。もう一度、覚悟を決める必要があった。

 何十秒そうしているのか、衛宮切嗣は同じ姿勢のままで居た。目を閉じ、呼吸を殺し、静かに。

 心を決める。そのために、衛宮切嗣はパートナーの言葉を思い出すことにした。

 

 




原作なぞり? そんなつもりはなかったんだけど、ラザーヴならこう動くだろうなーって…
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