Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
泡吹いて身悶えするアヴァシン様が……ああ^~
ヤバイヤバイ…もういいよ、気持ちよくなっちゃう…
「ランサーッ!!」
二人の男の叫びが重なった。ひとつは彼女のマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトのもの。もうひとつは、共に戦った男、セイバーのもの。どちらも叫びであり、また驚愕と心配の声でもあった。だが、籠められた力は違った。
大天使が堕ちる。既に二度も、直死の魔眼で射止められているのだ。一度目は回復行動が取れたし、二度目も耐え切った。だが、今回は訳が違った。存在する筈がないアーチャーからの、これまたありえない、魔眼による攻撃。理解不能な出来事を前にして、意識に一瞬の空白が生まれ、その隙を突かれた。回避行動も防御行動も取れず、
しかし、それでもランサーは死ななかった。先の叫びと同時に、
「かっ…は…、あぐ…ううっ…」
アーチャーの魔眼には『再生能力の無効化』がある。呪いではないが、同じようなものだ。一度その死線に捉えられたが最後、死は免れない。今は令呪の強制力が効いているが、それもすぐに効果を失う。そうなれば、ランサーは死ぬ。
ランサーは生と死の狭間に立たされ、苦しみ、もがき、文字通り必死で耐えている。だが、死は避けられない。そう間違いなく、普通のサーヴァントならここで終わりだ。だが、ランサーは普通ではない。この程度で、希望の化身は消えたりしない。
「第二の令呪を持って、我がサーヴァントに命ず! 即座に"祝福の宝具"を解放せよ!!」
離れた林から空のランサーへと、
「美しい…」
そう漏らしたのは誰か。誰でもないかもしれないし、それを見た全員かもしれない。暖かい慈悲の光に包まれて、時間が止まってしまったかのよう。だが、やがて光は弱まり、最後にはランサーの姿と共に消えてしまった。同時に、マスターであるケイネスが倒れた。元々限界だったのに、その上から更に魔術回路を酷使したのが原因だろう。大量の汗を掻いていたケイネスはまるで糸の切れた人形のように崩れてしまい、完全に昏倒した。
光が止むと、セイバーは理性を取り戻した。そして、原因を見つける。間違いなくアーチャーだ、それはさっきまでのアーチャーそのものだった。どうやって蘇ったのか。再生スキルを使ったようには見えなかった、蘇生スキルか、または特殊な宝具によるものか。なんにしても、ランサーを攻撃したのならば、それは間違いなく敵だ。
セイバーは剣を握り直し、蘇ったアーチャーを倒すべく踏み出した。そこで、目が合った。
「待てっ!」
視線が交差して一秒。
―――――
玄関ホールの大扉を蹴り破り、セイバーが邸内に足を踏み入れる。それと同時に、続けて二度、発砲音が廊下に響いた。
「二階か!?」
無事であってくれ、そう願いながらセイバーは走った。一秒掛けずに正面の階段を上りきり、二階廊下へと出ると、室内灯の明かりが漏れているのを確認し、そちらへ向かって走った。
事前の情報提供で、
明かりが漏れているのは、ドアが破壊されているからだった。そして、そのドアの向こうから新鮮な血の臭いが漂っていた。
「切嗣っ!!」
部屋に駆け入り中の様子を見ると、セイバーは安堵に息を吐いた。そこに居たのは五体満足の
「無事だな!? ならばすぐにここを離れるぞ!」
「セイバー…」
詰め寄ったセイバーが声を掛けるが、衛宮切嗣は心ここにあらずといった様子だった。無理もない。敵地のド真ん中に単独で潜入し、いつどこから攻撃を受けるかもわからない状況で居たのだ。神経が磨り減るのも仕方がない、極度の精神疲労は当然だ。
衛宮切嗣は有能な暗殺者だと聞いているが、セイバーとしてもその放心は理解できていた。セイバーは戦場に生きた男、戦火の真っ只中で生き延びた男。同じく単独潜入を試みた戦友がいたし、散り散りになった後で幸運なことに合流できた仲間もいた。そういった過去の幻視か、セイバーの目に今の衛宮切嗣が過去の仲間と重なる。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。すぐにでもこの場を離れなければ。
「理由は分からんが、アーチャーが蘇った。今後、アサシンがどう動くのかも予想できん。すぐに合流せねばならん。切嗣、いけるな?」
「あ、ああ」
「しっかりしろ! 呆けている暇は無いぞ!」
セイバーが渇を入れると、衛宮切嗣も少しは理性を取り戻したようだった。
「さあ、いくぞ」
そう言うと、右手に握っていた剣を消し、セイバーは怪我をした少女を抱え上げた。呆気に取られる衛宮切嗣の方は見ずに、セイバーはその足で廊下に出る。特に何も言わず、何も見せず、黙って人の命を救おうとする。これはセイバーの根底にこびり付いた性質なのだろう。人々を助けるために、世界を取り戻すために戦った男。ジョー・カディーンは、真に英雄と呼ばれる男だった。
その背中を見て、衛宮切嗣は言葉を失った。いつもの衛宮切嗣からは想像もできない呆然とした表情だ。しかし、すぐにその顔にも力が戻る。衛宮切嗣は半身下げて後ろを見、遠坂時臣の死体を一瞥すると、廊下へと出た。
衛宮切嗣が廊下に出た時にはもう、セイバーは階段に足を掛けようとしていた。邸内にはまだ取り残された人が居る。待ってほしいと、衛宮切嗣は静止の声を掛けた。
「この先にもう一人居る! 地下にも女の子が居るらしい!」
「そういうことは先に言え。…まとめて連れ出すぞ」
それ以上は何も言わず、セイバーは救助を手伝った。教会が襲われ、監督役が死亡しているのだ。最早、安全な場所なぞどこにもない。家主は死んだ、残っているのは女性ばかり。それも、年端もいかぬ少女が二人もだ。これを助けねば、後がどうなるやら。
今夜の戦いはもう終わったのだ、これ以上は誰も傷つかなくていい。少なくとも、今夜だけは。
―――――
目が覚めた瞬間、全身に激痛が響いた。だが、声は上げなかった。そんなみっともない声を出しては、品格を疑われるからだ。貴族としての生き方がこびり付いた、これがケイネス・エルメロイ・アーチボルトという男だった。
室内灯は消えており、カーテンが閉められているが、窓の外が暗いのを見れば深夜であると判った。首を回して見てみれば、左手の椅子には服を着たままの格好で寝ている
どうにも動けないが、今はしょうがない。しかし、安心したのも事実。ケイネスは安堵の溜息を吐いた。が…
「…まだ起きちゃダメよ」
ケイネスに起こすつもりはなかったのだが、夜の静寂の中では溜息すら大きな音だったらしい。驚いて左を見るが、しかし許嫁は起きていなかった。
「寝言か…」
首を痛めそうな姿勢のまま、ソラウ・ヌザァレ・ソフィアリは静かな寝息を立てていた。疲れているのだろう、今は寝かせておいてやるのが優しさだ。
そう思いつつ、ケイネスは自分の体をあらためる。着ていた服は脱がされており、今は薄手の寝間着だけ。薬用の貼り物以外は変わった物もない。体内にも損傷らしい損傷はない。魔術回路がオーバーヒートしたためか、全身に炎症らしい症状が見られるが。だが、それ以外には今後の行動に支障を出すようなものはない。この程度、治療魔術を受けさえすれば、一晩も掛からずに戦線復帰が可能となる。問題なのは、別のものだ。
『ランサー、返事をしろ。…無事か?』
ケイネスはパスを通じて、自分のサーヴァントへと声を掛ける。…だが、返事は無かった。パスが繋がっているのを確認している。である以上、ランサーの現界は未だ保たれている筈だ。しかし、返事は無い。重傷も重傷、あと少し判断が遅れていれば消滅していた、そんな状態だったのだ。どれだけ寝ていたのかは分からないが、ランサーも未だ回復していないのだろう。
ケイネスも極度の疲労に苛まれている。偶然目が覚めただけで、まだ数時間しか経っていないのだろう。ここがどこかもわからないが、今は安全らしい。ならば、今は寝た方がいい。今は
ゆっくりと目を閉じ、炎症にも似た症状で火照った体を恨めしく思いながら、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは静かに眠った。
第二夜しゅーりょー
書き溜め放出もしゅーりょー
それじゃーねー
また機会があったら投稿するからねー