Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
お腹が減っているとき、つまり空腹を強く感じているとき、人間は孤独になる。それを癒す方法はただひとつ、食事だけだ。人間の三大欲求と強く結びつく食事、それは古来から延々と研究されてきている。原始的な生活をしているのでない限り、現代社会に生きる者であるなら誰しも、料理の歴史に触れる事は多いだろう。千年以上もの時間を掛けて研究―開発されてきた様々な料理。一口食べればその偉大さを身を持って実感することとなる。しかしながら、単純な調理法こそが至高とする考えがあるのも事実。ここ日本における刺身などが一例だ。火を通すわけでもなく、塩や香辛料すら使わず、ただ切り分けただけの生の魚。だが、それが実に美味だ。
焼肉なども同じで、こちらも単純な調理法だが実に美味い。肉を切り分け、塩や
「こんなにうまい焼肉は初めてだ!!」
ここ冬木にも一人、焼肉の素晴らしさに目を見開いて感動する人間が居た。ある意味では当然かもしれない。つい先程まで、その肉は生きていたのだから。魚でも牛でも馬でも、肉は捌きたてに限るという。絞めたばかりの肉を使った焼肉、それはさぞ美味しいことだろう。
「だから言っただろ! これがほん…っとーにウマイんだって」
「まずは殴って肉を柔らかくする…か。考えられているものだな」
二人は本当に美味しそうに食べている。だが、この焼肉には論理的な問題があった。道徳的にも間違っているし、そもそも人間としてやってはいけない事でもある。なぜなら、二人が食べている肉は人間の肉なのだから。カニバリズム、つまり人食いだ。
人肉を食べるという歴史はある。一例として、中国には食事に桃だけを与えた少女を食べる、という話があるそうだ。ひたすらに桃だけを食べさせられると、少女はやがて全身から桃と同じ香りを放つようになる。体液や肉にも桃の香りや風味が染み付き、その肉は絶品となるのだとか。本当にそんな事があったのかは定かではないが、噂のひとつにしても妙な真実味がある話だ。事実、食べさせる物を限定する事で、家畜の肉の質が変わるというのはある。草食動物の肉は臭みが少ないだとか、そういった話だ。一部の川魚にも同じようなことが言える。
しかしながら、人間は雑食である。本当に穀物や野菜しか食べないという
それでも、二人は本当に美味しそうに食べていた。人目に付かないよう誘拐して拘束、人気の無い場所で監禁。何度も殴打して肉をほぐし、仕上げに強姦している。素材の仕込みに掛けた苦労があれば、食べる喜びも一塩といったところか。そんな非道徳的な食事に悦楽を見出した男、それが
「ところで聞きたいんだが…。最後の強姦に意味はあったのか? 逆に臭みが出そうにも思えるのだが」
「ああ、あれな。あれは無理矢理にでも絶頂させる事に意味があるんだ。絶頂すれば脳内麻薬が出るだろ? それが味になるんだ」
「なるほどな。うむ、そう言われると余計においしく思えてくる…」
物騒な会話を続けながら、二人は背徳的な食事を楽しむ。
バーベキューなら野外、もしくは庭で食べるのが一般的だろう。だが、二人は人気の無い、人の寄り付かない場所で焼肉をしている。その理由は、マスターである言峰綺礼が、帰る家を失ったからだ。言峰綺礼は自宅で父親殺しをして、死体はそのまま置き去りにしている。聖杯戦争という特異な状況であるため、警察が動くようなことはない。それでも家に帰る訳にはいかない。言峰の家は聖堂教会に属する一家である。既に、本部の方にも連絡が通っている事だろう。監督役を失ったとはいえ、派遣された連絡員や処理班は独自に動いているだろう。監督役が殺されたという異常事態。それを引き起こしたのが言峰綺礼なのだから、追われる身になるのは当然といえる。
「おっと…。お客さんだ」
追われる身であるならば、他者の気配には敏感になるというもの。ライダーは即座に立ち上がり、強い霊体の気配の方へと体を向けた。言峰綺礼もまた、立ち上がって構えた。隠しもせず、潜めもせず、堂々と近づいてくるサーヴァントの気配。セイバーの様に凛々しく熱い闘気ではない、ランサーの様な神々しい聖なる波動でもない、気配を垂れ流しているのならアサシンでもないだろう。それはとても重苦しい気配、重圧感を伴う死の気配だった。
二人の前にゆっくりとその姿を現したのは、見るもおぞましいゴルゴンだった。禿げ上がった頭には頭髪の代わりに生える黒い触手、目蓋は黒塗りで、白く濁った眼球がおぞましく、背中にある黒く大きな翼はカラスのようで不気味だった。人類の敵であることは一見して理解できる。死という概念の体現者であるかのような、恐ろしいサーヴァントだった。
「お食事中すまないねえ、ちょいと話がしたいんだけど…構わないかい?」
―――――
冬木郊外にある大きな森。人里離れたそこに、これまた大きな城が存在する。アインツベルン城と呼ばれている事からもわかるように、冬木の聖杯戦争を始めた御三家が一角、アインツベルンが建てたものである。書類での登録上は別荘地という事になっているが、その実態は強固な要塞である。
そんなアインツベルン城の一室で、一人の男が涙を流していた。今聖杯戦争にて召喚されたサーヴァントが一角、セイバーである。
「黙っていてごめんなさい…」
謝るアイリスフィール、静かに泣くセイバー。そして、そんな二人に背を向けて、一人窓の外を眺める
「あの子は…君の娘はどうなる…」
「大丈夫よ、きっと大丈夫…。私が役目を果たせば、あの子が犠牲になる事もない」
「そうではないッ!! ……大声を出してすまない。だが、愛する母を失った子供の悲しみは…、誰が癒すというのだ…?」
「それは…」
それは、この聖杯戦争の根底に関わる問題だった。アイリスフィールが話したのはこの聖杯戦争によって作られる物、すなわち万能の願望器、聖杯そのものについてであった。そもそも聖杯とは何か、伝承の通りであるなら、それはイエス・キリストが使った杯の事であろう。そんな物は作れない、元々ある―あった物なのだから。それを作るという事は、それは聖杯に似せた何かだということ。アインツベルンがそれ専用に作った特別仕様のホムンクルス、その内部に収められた器。召喚されたサーヴァントの霊体を取り込み、それ自体が持つ膨大な魔力と魂を、聖杯戦争の終了まで保存するための物。つまり、それがアイリスフィール・フォン・アインツベルンであるという。
一度聞けば分かってしまうほど、問題だらけだ。サーヴァントの魂、つまり英霊の
セイバーは泣いた。目的のためなら手段を選んではいけない、セイバーは戦場の中でそれを学んだ。しかし、愛する我が子の未来を守るためとはいえ、母親がその命を差し出さなければならないという理不尽を前にしては、いくらセイバーといえども、涙を流さずにはいられなかった。なんという理不尽、なんという不条理。世界の惨酷さを目の当たりにして、セイバーは無念に涙した。
ジョー・カディーンの古い記憶にも、同じような体験が存在する。ファイレクシアの侵略軍から逃れるため、遊牧民のように移動を繰り返す毎日。そんなある日のこと、見張りの一人が、どこかから逃げてきた数人の子供を保護した。その子供達の証言によれば、ファイレクシア軍の奇襲によって、自分達の集落が襲われたのだという。その時、大人達は身を
どんな世界でも、どの次元でも、どんな生き物でも、子を守る親は強い。ここ地球においてもそれは変わらない。娘を守ろうとするアイリスフィールの意志は堅い。その表情に悲観の色は無く、眼の奥には希望の光さえ見える。では、夫の方はどうか。セイバー今一度、その真意を確かめるべく、衛宮切嗣に問うた。
「切嗣、お前はそれでいいのか? 妻の命を犠牲にしてでも…、本当にそれが成されると信じているんだな!?」
「……ああ」
衛宮切嗣の言葉には葛藤があった。先の戦い、遠坂邸での一戦に置いて、その人間性を捨ててでも目的を果たした衛宮切嗣。だが、今は違う。あの無色の殺意は、極度の緊張状態と切迫した状況が生んだ、特異な精神状態だった。落ち着いた今、冷静になった今では、衛宮切嗣の人間性も元に戻っている。故に苦しむ。真の意味での世界平和、その大儀の前には一人の女性の命なぞ軽んじられて当然かもしれない。だが、その女性というのが自身が愛する妻であるなら…。
「私は切嗣に着いて行く、そう決めたの。なにがあっても、切嗣とイリヤのために、全力を尽くすと決めた。それは今でも変わってないわ」
アイリスフィールの決意の表明。その言葉を聞いてしまっては、セイバーもそれ以上、追及しようとはしなかった。
そして最後に一言、衛宮切嗣はこう言った。
「僕はやるよ、やってみせるさ。今は迷ってなんていられない、…そうだろう?」
衛宮切嗣が眺める窓の外は暗い。昼も過ぎた時間帯だというのに、重たい雨雲が光を遮っていた。まるで、セイバーと衛宮切嗣の心情を表すかのように。外は雨、冬の冷たい雨が降り続いている。まるで、セイバーと衛宮切嗣の悲哀を代弁するかのように。
―――――
「…そういうことか」
借り部屋の一室で、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは小さく呟いた。ケイネスはアインツベルン陣営の会話を盗聴していたのだ。これまでにも何度か見せた魔術礼装、流動する水銀の塊、ケイネスが最も信頼を置く最強の礼装、『
「古い思想に
ケイネスはアインツベルン陣営の会話を盗聴することで、聖杯戦争の実態を知り、アインツベルンの思惑を知った。聖杯戦争とは、聖杯の模造品を作り上げるための、大掛かりな魔術儀式であったのだ。ケイネスは時計塔で講師という職を持つ。それゆえに、様々な分野の魔術に関する豊富な知識を持つ。そんな天才的な頭脳と豊富な知識と深い洞察力が、聖杯戦争の仕組みをケイネスに教えた。
「実に興味深い話だよ、ソラウ。奴らはな、サーヴァントの魂を利用して根源に辿り着こうというのだ。中々ユニークな発想だと思わないか?」
「過程と結果が結びつかないわ。…説明してくれる?」
「いいとも」
そして、ケイネスは上機嫌で話し始めた。
「なにせ英霊の分体だ、英霊の座に帰るためには、世界の壁を抉じ開けねばならん。…だが、それが一度に、7体分ものサーヴァントが、同時に世界の壁を越えようとしたら?」
「世界に…穴が空く…」
「大きな穴だ、1人くらいなら楽に通れるだろうな、それが根源への道というわけだ。サーヴァントは契約したマスターが居なければ現界できんとはいえ、それ自体が膨大な魔力の塊だ。その魔力を使って、世界に空けた穴を固定するのだろう」
「じゃあ…願望器っていうのは…嘘? 参加者を集めるために、御三家が流したデマだというの?」
「まるっきり嘘という訳でもない。今言ったように、サーヴァントの魂には付属する膨大な魔力がある。そして、それが7体分だ。それだけの魔力があれば、条理や法則を少し捻じ曲げるくらいできるだろう。その魔力で及ぶ範囲なら、現実改変も可能だろうさ。ゆえに願望器。俗な願いなら簡単に叶ってしまう。全部が嘘ではないのさ、ただ…全能でも万能でないだけで」
「なるほど…ね。そして、その7体分の魂を蓄えておくための物が聖杯…という訳ね」
「そういうことだ。ユニークだろう? 7人の魔術師全員で口裏合わせでもしておけば、何度でも奇跡が起こせるぞ。これはおもしろいな」
そう言って、ケイネスは
既にバーサーカー、キャスター、アーチャーの3体が倒れている。聖杯完成は間近だ。アーチャーは復活したかもしれないと言われていたが、それは間違いだったと分かっている。アインツベルン陣営の会話がその証拠。ケイネスが盗聴した話によれば、アインツベルンの用意したホムンクルスには、サーヴァントの魂を取り込んだかどうかが判るらしい。そして、確かに3体分のサーヴァントの魂がホムンクルスの中にあると言うのだ。つまり、アーチャーは確実に死んでいた。ならばあれはアーチャー本体ではない。恐らくは、あれ以降姿を見せなかったアサシンであろう。あれだけ完璧に擬態できるとなれば、宝具の能力によるものだと推測できる。これで両陣営は、最大の敵、アサシンの実態解明に一歩近づいたという訳だ。
ケイネスは思考する。あそこまで完全に近い擬態ともなれば、弊害はあるはず。今のアサシンは恐らく、『気配遮断スキル』は元より、アサシンとして持っていたスキルや宝具も使えなくなっていることだろう。そうでなければ意味がない。闇討ち不意打ちの危険が無くなったとあれば、問題の半分近くは解決する。こちらはランサーとセイバーを抱えた、間違いなく最強の、鉄壁の布陣だ。古参、アインツベルン。そのアインツベルンが雇ったという、『魔術師殺し』の異名を持つ殺し屋。そしてロード・エルメロイ。最強の組み合わせである事は疑いようもない。魔術師の裏を掻く事に長けた魔術師殺し、今聖杯戦争に参加する魔術師の中で最高の実力を持つロード、負ける筈が無いのだ。
「問題なのはランサーだけだな。流石に傷が深い、今しばらくは治療に専念するしかないか…」
未だ実体化を行なう事もできない状態のランサー、それだけが問題であった。しかしそれさえ解決すれば、後はどうとでもなる。
最後にセイバーとランサーだけが残っても、負ける筈が無いと考えている。残る強敵を考えれば、あのアインツベルンといえども、ランサーとケイネスの助力は欲しいだろう。ゆえに、今はケイネスを殺す事ができない。そして、ケイネスとランサーが完全に回復したならば、あとはただの掃討戦となる。
ケイネスは独り、込み上げる笑いを押し殺した。
綺礼のキャラが原作より酷い…
それもこれも、イクサヴァって奴のせいなんだ
なんだって!? それは本当かい!?