※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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お久しぶりですみなさん、お元気だったでしょうか?
これから面接に行ってくるので、まあ、ひとつのくぎりという事で、投稿しておきます。
今回は三話連続投稿です。ではどーぞ


22

 

 

 現在の冬木市を混乱と恐怖に陥れている原因、それは聖杯戦争に他ならない。生き残った参加者の全員が、それを理解していた。

 未だ学生の身分にある若き魔術師、ウェイバー・ベルベット。彼は凡人であり、凡夫である。内に秘めた才能の中には、輝かしい光を放つものがあるのかもしれないが。それは未だ開花しておらず、片鱗すら見せていない。十代に過ぎず、学生であり、生まれは下に見られて当然な家柄、特別人格者とも呼べない人柄、冷静沈着でもない若気の精神、才覚を魅せるわけでもない腕前、さして豊富でもない知識量、ウェイバー・ベルベットは自身の弱さを理解していた。

 故に、ゆえにウェイバーは泣く。これは己の未熟が招いた結果。己の弱さが原因となった罪。―彼を知る心優しい者であれば、「お前はなにも悪くない」と言うであろう状況だったが。それでも、ウェイバーは自分を責めずにはいられなかった。全ては己の傲慢と過ちの結果、これは己の罪であると認識していた。憎い、自分が憎い、弱さが憎い。もっと自分に力があれば、こんな悲劇は未然に食い止められたろうに。―それは思っても仕方の無い事であり、詮無き事である。ウェイバーの感情は当然だが、それを向ける先は間違っている。もっとも、若き青年の凡俗な価値観で構成された精神であれば、それもまた当然の事であるが。

 

「畜生…! 馬鹿にしやがって…馬鹿にしやがって! 畜生ッ…」

 

 テレビを点ければそのニュースが報道されており、その事件は新聞の一面を賑わわせていた。突如として冬木市を襲った『連続大量殺人』。それが、ウェイバーの罪の重さだった。

 人が死んだ。大勢死んだ。皆殺された。それは、ウェイバー1人の罪ではない。しかし、ウェイバーは自分を責めずにはいられなかった。なぜなら、これ(・・)を引き起こさせたのは他でもない、ウェイバー・ベルベットが召喚し、ウェイバー・ベルベットが呼び寄せた者、暗殺者(アサシン)のサーヴァント、ラザーヴの行動だから。

 『制御できない力を使ってはならない』。魔術師であるなら、誰もが自然と覚える言葉。ウェイバーもそれを学んでいたはずだった。しかし、彼はそれを裏切った。目先の欲に駆られ、感情と興奮に身を任せた結果の事。先の見えない未熟さが生んだ、これは己の罪であると認識している。

 

「畜生ッ…畜生ッ…。うう…ううぅぅ……」

 

 ウェイバーは泣いた。夜通し泣いた。泣いたところで何が解決する訳でもないと、本人にも分かってはいた。しかし、どうにも辛くて、どうにも苦しくて、どうしようもなく悲しかったのだ。やがて泣き疲れ、縮こまる様に、身を抱いて眠った。怖かった。恐ろしかった。罪の先にあるのは罰だ。それが降り掛かること、因果応報が怖かった。泣き腫らした目元を赤くし、ウェイバーは泥の様に眠った。

 

 アサシンはその様を見ていた。しかし、止めるつもりはないようだった。

 

「泣け、泣いて苦しめ、ウェイバー。その苦しみは心を締め付けるだろう…、最後には壊してしまうだろう…」

 

 蔑みか、怨み辛みかという言葉の羅列であるが、その声色は優しかった。

 

「…だが、決して諦めるな。壊れる寸前で立ち止まるのだ。さすれば、心が壊れずに済んだなら、そこには罅(ヒビ)が生じている」

 

 酷く暴力的で、陰惨で、無茶な心遣いであったが。アサシンの言葉の根底には、確かに思いやりが存在した。

 

「ヒビの合間から漏れ出すは人の心、…人間性だ。その全てが溶けて流れ出た時、お前は人(ヒト)を凌駕する存在となる」

 

 それは呪詛と同等であった。これは戒めであり、呪いであり、そして儀式だ。超人的精神に至るための、必要過程の一種である。

 

「"あきらめ"が人を殺す。あきらめを拒絶した時、人間は、人道を踏破する権利人となるのだ」

 

 疲れ果てたウェイバーの脳はそれを記憶しない。だが、脳の記憶領域というものは些細な情報であっても必ず保存してしまう。彼の脳はそれを意識しない。だが、記憶として残らずとも、記録としては残り続ける。ゆえに呪詛。これは呪いのひとつだ。

 眠るウェイバーは身動(みじろ)ぎをして、僅かに呻(うめ)いた。

 それを見て、アサシンは消えるように姿を消した。

 

 

―――――

 

 

 アーチャーとキャスターを倒した夜から2日が過ぎた。だが、情勢は悪くなる一方だった。セイバーの傷は完全に癒え、マスターである衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)のポテンシャルも最高値にある。ランサーは未だ戦場に立てる程ではないが、実体化が可能なくらいには回復していた。そしてそのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは完全に復活している。不安要素は残るが、戦えなくはない。だが問題なのは、城の外で起こっている事だ。

 

「挑発…だな」

「安い挑発だ、乗ってやる必要はない」

 

 それがなんであろうと、目的の為なら感情をも殺せる衛宮切嗣。元より、一般人の犠牲者なぞ気にも留めないロード・エルメロイ。二人のマスターは冷静に現状を把握し、それが見え透いた挑発であるとし、無視を決め込む。しかし、そのサーヴァント達が黙っていなかった。

 

「何を言うのですかあなたはッ!! 大勢の無辜の市民が殺されているのですよ!? 貴方には心というものが無いのですか!?」

 

 声を大にしてこれに抗議したのが、他でもないランサーだった。人類の守護者としての在り方をまっとうしていたアヴァシンからすれば、これは到底、見過ごせるものではないのだろう。そしてもう一人、静かな怒りに燃える男が居た。セイバーである。

 

「放火。殺人。爆破。…挑発にしても、ここまでやる必要があるのか? これは示威行為と言うより、遊び半分だろう」

 

 受け取った資料を見て、セイバーが言った。過酷な戦場を体験し、残虐非道の限りを尽くす敵を見てきている。セイバーの目には、敵の思惑が見えているようだった。ゆえに、セイバーは怒りに燃えている。その力強い眼差しで睨まれると、流石のマスター達も視線を逸らさざる得なかった。しかし、セイバーも一角の戦士。これに乗せられて易々(やすやす)と表に出れば、それは相手の思う壺だと理解している。そのため、怒りこそ見せるが、その決定に異を唱えようとはしなかった。

 

「セイバー…、貴方の意見を伺いたい」

 

 未だ回復しきっていないため、戦場に出る事が叶わない。それが苦痛で仕方がないのだろう、ランサーはどこか縋(すが)るような目をさせて聞いた。しかし、返事は無い。セイバーは黙って、首を小さく横に振るだけだった。

 ランサーとしても、その判断は理解できていた。この一連の惨殺事件は、ランサーの重傷を知っているからこその挑発に違いない。事実、今のランサーはまともに戦えない状態だ。実体化がせいぜいで、宝具の使用なぞはとうぶん先の話。ゆえに、敵としてはそこを突きたいのだろう。ランサーがどれだけ強力なサーヴァントであるか、それが解っているからこそ。こうも早い段階でこういった挑発を行なう以上、敵陣には誘き出したセイバーを狩る手段が存在するハズ。であるなら、これは乗れない話だ。

 

「ッ…!!」

「天使殿、今は抑えられるがよいでしょう。義憤に震えるは私とて同じ。しかし、ここで動けば皆が死ぬのです」

「解っています…、わかっていますとも…。でも…! くっ…」

 

 震える拳を握り締め、ランサーは唇を噛んだ。どうにもならないのだから、今は耐えるしかない。だが、それが辛い。ランサーは悲しみで涙を流し、屈辱に歯噛みした。

 その様を見て、セイバーは静かに目を閉じる。

 

「もうよい、下がれランサー。彼等を助けたいと思うなら、まずはさっさと傷を癒す事だ。お前さえ戦線に復帰できれば、現状は打破できるのだからな」

「……ええ、貴方の言う通りです、ケイネス。……私は先に休ませていただきますね」

 

 その言葉はランサーの無力を嗜めるものではなかった。アヴァシンとて人を見てきた存在、その無愛想な思いやりを感じ取り、素直に従った。

 そしてランサーが霊体へと変わろうとしたとき、セイバーが声を掛けた。

 

「天使殿、余計なお世話と思われるかもしれませんが、ひとつだけ言っておきます。あまり自分を責めなさるな。貴女のせいではない」

 

 その励ましを受け取り、ランサーは心からの微笑みで返した。そして軽く会釈をし、その実体を消した。

 部屋に残る4人の間に、どうしようもなく重たい沈黙が漂う。現在の最高戦力、ジョー・カディーン《セイバー》。そのマスター、衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)。切嗣の右腕、久宇(ひさう)舞弥(まいや)。そして時計塔のロード、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。これだけ優れた人材が揃いながら、現状を変える手段がひとつとして出てこない。原因はたったひとつ、アサシンだ。

 

「切嗣…、お前にも分かっているハズだ。どのような作戦にも、戦術にも、必ずリスクが存在すると」

「…当然だ。そのための作戦会議。可能な限りリスクを抑え、確実性を上げるのが目的だ」

「・・・・・、解っているならいい、余計な事を聞いてしまったな」

 

 恐らくはアサシン。ライダーとそのマスターをそそのかし、この一連の事件を引き起こさせた張本人。その存在が行動を躊躇わせる。

 ここで、4人はまったく同じ事を考えていた。この挑発には意味がある。奴等には、出てきたセイバーを狩る手段が存在する。もしくは、その裏を掻く手段が存在する。ならば、こちらがそれを上回る手段を用意しない限り、闇雲に突っ込むようなまねはできない。ランサーを欠いた現状の戦力では、攻勢にも防衛にも不安が残る。

 当初こそ、セイバー陣営とランサー陣営の組み合わせは最強鉄壁のものと思われていた。だが、実際は違った。たった一人の敵、アサシンの存在が全てを狂わせた。アーチャーとキャスターの、篭城陣との戦い。あの時も、アサシンの介入があったからこそ戦いが長引き、アサシンの攻撃があったからこそランサーが倒された。「今回はそうならない」と、いったい誰がそんなことを言えるだろうか。

 

 溜息を吐く者。ティーカップを手に取る者。タバコの火を消す者。何気無く足を組み変える者。ただ時間だけが浪費されていく中、4人は少しだけイラついていた。そんんな時、唐突に、セイバーが声を上げた。

 

「『方法が無い訳ではない』、そんな事を考えている顔だな、ランサーのマスターよ」

 

 その言葉を聞いて、久宇舞弥は疑うように顔を上げた。衛宮切嗣は一切の感情を見せない表情で振り向き、ケイネスの方を見た。一方で、ケイネスは無言を貫いた。…が、セイバーの力強い追及の視線を浴びせられ続けると、やがて口を開いた。

 

「…フン。お前達も同じ事を考えていたんじゃないか? 宝具を使えば(・・・・・・)、もしかすると、覆せるかもしれんと」

 

 それは抜き身の一言だった。ゆえに、空気が変わった。衛宮切嗣と久宇舞弥、二人の瞳から色が抜けていき、代わりに殺意の黒が入る。

 それは重大な言及だった。ケイネスはこう言ったのだ、『ランサーが2つの宝具を持っているように、お前達のセイバーも、宝具を隠しているんじゃないか? それが最大宝具なんだろう? それを使えば、奴等の企みを覆せるんじゃないか? 我々は同盟関係なんだ。隠し事はやめて、教えてくれないか?』…と。ランサーは現在、宝具を使えない状態にある。ならば、宝具の話を持ち出したのなら、それはセイバーの事を差している。そして、セイバーの聖剣一本では現状打破は不可能だ。それはつまり、"セイバーに第二の宝具があるかどうか"という話だった。

 そして、ケイネスの目論見は見事的中した。二人から向けられる刺すような殺気、それが答えだ。『それを知ってしまったのなら、いくら同盟関係でも、お前を殺さざるを得ないんだぞ』と、そういう警告じみた殺気だった。ということはつまり、セイバーは第二の宝具を隠し持っていると言っているようなもの。ケイネスは駆け引きにて、それを成功させたのだった。

 

「やめろ、二人とも。…ランサーのマスターの言う通りだ。手段を選んでいられるような状況ではないぞ」

 

 だが、セイバーはそれを素直に肯定した。そして制止の言葉を掛けられ、二人は殺気を消した。

 しかし、衛宮切嗣は言った。

 

「セイバー…、それはできない相談だ。"見せていいものじゃない"。使うなら、…それこそ最後の最後だ」

「…今がその時では?」

「どこがだ?」

 

 平行線だった。セイバーには自信があるが、衛宮切嗣には無い。それが原因。そしてその様子を見て、ケイネスはかすかに頬を歪ませた。

 

「私ではライダーとアサシンを倒せないと?」

「そうは言っていない(・・・・・・・・・)。だが、可能性は半々(はんはん)だろう?」

「五割もあるなら十分だと思うが…、それでもまだ不満か」

「不満だね。最低ラインが八割(80%)越えだ。本音を言うなら、九割(90%)以上なければGOサインは出せないね」

「…ハァ」

 

 無茶を言っていることは衛宮切嗣本人にも解っているハズ。それは真っ当な意見ではあるが、無茶もいいところなのだ。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトという魔術師に情報を渡したくない。アサシンというサーヴァントにこれ以上の情報を渡したくない。ライダーというサーヴァントを捕り逃したくない。セイバーとしてもそれは理解できる。だが、全部を通せる策があるかと言われると、そういう訳にもいかないのだ。どこかひとつだけでも、妥協しなくてはならない。妥協点と言えば、ケイネスかライダーだろうか。しかし、それが難しい。ライダーだけは確実に、何があっても討ち取れるとしても。アサシンまで一度に片付けられるかとなると、これが難しい。ライダーに隠し玉らしき物は無いと考えられるが、アサシンがどうか判らない。ライダーを身代わりにしてまんまと逃げられてしまったりしては大損だ。それが、衛宮切嗣の懸念だった。

 そこに、セイバーが一言入れた。

 

「…フム。では、こういうのはどうだ? 不本意だが、"切嗣が好みそうな言葉"を選んで言ってやる。"どうせ(・・・)、ランサーは死に体だぞ(・・・・・・・・・・)?"」

「・・・・・・」

「"それに、お前の手にはまだ、令呪がみっつも残っている(・・・・・・・・・・・・)"。…どうだ、やる気が出たか?」

 

 こうまで言われては、流石の衛宮切嗣も、嫌とは言えなかった。

 

 

―――――

 

 

 冬の夜空に、煙が上がる。轟々(ごうごう)と音を立てて、炎が上がる。

 

「綺麗だ…」

「いいよなぁ…、とってもロマンティックで…」

 

 それはまるで、街に火を放ち、バルコニーからステンドグラスでそれを眺めた、あの男のように。

 冬の夜の、二人だけの、ロマンティックなデート。暴れ狂う火達磨の人間、叫喚、嘆き、そして苦痛。そのすべてが、二人だけのムードだった。

 乾燥した空気は炎を盛らせ、火の飛沫が長く伸びる。数え切れない火花が、冷たい風に乗って、星空へと昇るように舞う。それは二人の目に、とても幻想的な美しさとして映る。そして熱。熱い熱気が、背徳的な快感をさらに加熱させる。

 遠くから消防車のサイレンが聞こえてくると、ライダーは言峰(ことみね)綺礼(きれい)の腕を掴んで言った。

 

「もう一軒、行く?」

「いま同じことを言おうとしていたんだ」

「フフ…」

 

 快い返事を聞いて、ライダーは嬉しそうに微笑んだ。そして腕を組み、二人はまるでカップルのように歩き出した。

 二人はとてもお似合い(・・・・)だった。世の中には『同族嫌悪』という言葉があるが、この二人の場合は当て嵌まらなかった。二人は同類であるが、とても意気投合であった。同好の士でもある。己の本質を見抜いたうえ、それを良しと言ってくれた、そんな理解者を得て、言峰綺礼は彼女が好きになった。似通った性質であったし、趣味が合うし、なによりも弟子だから、イクサヴァ(ライダー)は彼が好きになっていた。一緒に遊んだ拷問では、共に笑顔を溢して、時間を忘れるほどに楽しんだ。お粗末な場所だったが、二人きりで食べた焼肉はとても美味しかった。言峰綺礼は、焼肉の新しい味を教えてくれたライダーに感謝していたし、イクサヴァは、自分が焼いた人肉を本当に、おいしそうに食べてくれるマスターの笑顔が嬉しかった。

 この三日、二人は毎晩のようにデートを楽しんだ。見知らぬ他人の家に上がり込み、幸せな家庭をブチ壊すという遊びには、股が濡れる(・・・・・)ほどの愉悦を感じていた。拘束した親の前で、子供をゆっくりと切り刻んだり。または逆に、子供の前で親を嬲(なぶ)ったり。一人だけ残しておき、適当な場所に縛り付けて、目の前で油を撒いてみたり。路上に連れ出してから解体し、肉と腸(はらわた)で電柱を飾ってアートにしたり。そして毎回のデートを締めくくるのは、家ひとつを丸々使った、盛大な火遊びだった。

 そして今夜もまた、熱に浮かれたように、二人は火遊びに夢中になる。

 

 

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