Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
群像劇だから主人公はいないんだけど、強いて言うならウェイバー君。
やっぱり彼が一番成長すると思う。
でもま、セイバー組とランサー組が一番主人公してると思うけどね。
聖杯戦争。何百年掛けても完成しない儀式だと、眉唾ものの絵空事だと、笑われた、聖杯戦争。何人もの魔術師が参加したが、未だ、聖杯は一度も顕現していない。それが、不名誉な噂に、拍車を掛けていた。
しかし、聖杯戦争を始めた御三家は、まだ諦めていなかった。
アインツベルンが、マキリが、そして遠坂も、誰一人として諦めてはいなかった。絵空事ではない、聖杯は、確かに創れるのだと。
「参りましたね…」
「ええ、困ったことです…」
それが、その覚悟が、今、風前の灯火だった。
「ライダーだけではない、キャスターもだ。おかしい、なにかがおかしい。反英霊がなぜこうも」
「今回の聖杯戦争、一波乱では、済みそうにもありませんな」
事前の準備は全て万端だった。監督役である
今回の聖杯戦争、遠坂は、キャスターを召喚した。それは、本来の目的から外れた、想定していない事態だった。そればかりではない、呼び出されたのは、なんと反英霊。それも、遠坂時臣と言峰綺礼、二人が呼んだキャスターとライダーが、共に反英霊だったのだ。共に悪、共に混沌、世に正邪があるならば、これらが邪であろうというもの。それが、遠坂時臣の呼んだキャスターと、言峰綺礼の呼んだライダーだった。
「申し訳ありません。私がもっと、注意していれば…」
父璃正の後ろに立つ言峰綺礼が、遠坂時臣に謝る。当然だろう、今回、問題を起こしたのは、彼のサーヴァントなのだから。
「いや、君はよくやってくれているよ、綺礼」
しかし、そこは遠坂時臣。叩くような真似はせず、むしろ褒める事で、綺礼を嗜める。
遠坂時臣は、続けて言った。
「だが、こんなことは、これきりにしたい。ライダーを見張るんだ。手綱を握れ。あれは、自由にさせてはならない」
「承知しております。このようなことは二度と、させません」
「ああ、よろしく頼むよ」
遠坂時臣の言葉に、言峰綺礼は深く頭を下げて、応えた。
二人は疲れているようだ。言峰綺礼は、注意深く、父と師の様子を窺って判断する。
「どうやら、お疲れのご様子。私は下がった方がよいでしょうか」
「…あ、ああ、すまないね。ふふ、弟子に心配されるほど顔に出るなんて、私も、もう…歳かな…」
言峰綺礼は、なにか、急いでいる様子だった。この場に居る二人は、気を引き締め、更なる警戒に当たろうとしているのだと、言峰綺礼を信頼した。
それが、間違いだったと、気付いてはいない。
「ライダー、今の話を聞いていたな?」
「ああ。困ったね」
応接室を出て、言峰教会の表に出て、周りに誰もいない事を確認した言峰綺礼。ライダーを実体化させた彼は、そのまま、夜の雑木林を歩き始めた。
3分ほど歩いた頃。突然、言峰綺礼は振り返り、まじまじと自分のサーヴァントの姿を見た。
正に魔女、ラクドスの血魔女。まるで水着姿の様な、胸と腰周りだけを隠す服。赤い手甲、金属製のブーツ。唯一女らしいと言える赤いリボンは、悪魔を模した兜に結ばれていて、なんともアンバランスだった。
「…なんだい急に。そんなに見つめられても、別に、嬉しくもなんともないよ」
無言でライダーを見定め続ける言峰綺礼。その表情は無だ、何も映らない、無感情だ。
そこでようやく、言峰綺礼が口を開いた。
「ライダー、あの夢魔に、食事は必要か?」
「は? …そりゃあ、必要に決まってるじゃないか。食うもの食わなきゃ、力が出ないよ」
「ようは、魂食いと同じだな?」
「そうだよ。食べれば食べるほど魔力が増すし、強くなる」
ライダーがそこまで答えて、言峰綺礼が考え事を始めた。そしてまた、会話が途切れる。
そこで、今ようやく、ライダーは理解した。ライダーは嫌らしい笑みを溢し、
「よし。では、次の餌を探しに行こうか。もちろん、私が、お前を監視する。解体作業も、餌やりもな」
「クククククッ、クハッ、カハッ」
「なにがおかしい」
「い~やっ、なんでも?」
「…フン」
『血と堕落があれば、世の中は素晴らしい』、教祖ラクドスは、そう説いた。『放火、流血、愉悦』、ラクドスの導き石には、そう刻まれている。そして、ラクドスの血魔女は、それを広め、実行させる。
この日、この夜、新たな愉悦の種が、自らを自覚した。育ててやらねばならない。イクサヴァに、新たな目標が生まれた。それは、この地に、ラクドス教団の教えを広めること。それがどれだけ楽しい事なのか、イクサヴァは知っていた。
――――――
ウェイバー・ベルベットは不機嫌だった。それは目論みが外れた事に起因する。
しかし、ウェイバー・ベルベットは不機嫌だった。何故か。それは、アサシンのクラスである自分のサーヴァントが、自分より遥かに優れた魔術師だったからだ。
「キャスターでもないのにさ、なんでだよ…」
「仕方あるまい。確かに私は優れた暗殺者だが、同時に、優れた魔術師でもあった。それだけだ」
暗殺だけが取り得のアサシン、そう考えていたウェイバーは、実に浅はかだった。
むしろこのアサシンは、魔術を巧みに操り、影から影へと移り渡る、実動派なキャスターだった。
「まあいい、前向きに行こう。つまりオマエは、魔術を使って立ち回れる、便利なアサシンって事だ。よし、いいじゃないか」
頬を叩いて一喝入れ、ウェイバーは自分を嗜め、考えを改める。確かにウェイバーの言う通り、これほど優れたアサシンは少ないだろう。
それを踏まえた上で、二人は作戦会議を始めた。
「なぁ、アサシン」
「なんだ」
「お前の宝具が知りたい。基礎ステータスは見れるけど、宝具の欄が見れないんだ、なにかステータスを隠蔽する宝具なのか?」
ごく当然の質問だった。味方の戦力も把握せずに戦場に行くなど、言語道断だ、あまりに無謀すぎる。この聖杯戦争において、ウェイバーにとってのアサシンとは、まさに切り札であり、そして右腕も同然の、命綱なのだから。そのアサシンの性能を全て把握した上で、ようやく作戦が立てられるというもの。だから、この質問は避けて通れないものだった。
だが、ここで、アサシンが言葉に詰まる。
「…なんだよ、言えないのか」
「いや、言っていいものかどうか、判断に迷っただけだ」
「いいから教えてくれよ。第一、お前の宝具が分からないんじゃ、いつ頼りにしていいかも分からないだろ」
「そうだな…」
しかし、アサシンの言も理解できる。全てのサーヴァントもそうだが、暗殺者にとって、宝具とは自分の奥の手だ。できることなら、明かしたくはないのだろう。
それでも、マスターとサーヴァントの協力、そして連携は必要不可欠だ。それ無くして勝てる程、聖杯戦争は甘くない。
アサシンも頭の回る男だ。ここは、素直に話すだろう。
「実は、変装スキルに、これから見せる宝具の効果を、上乗せしている」
「変装スキルが? そんなものでステータスまで隠蔽できるのかよ」
「まぁ待て、今から見せる」
アサシンは、注意しても聞こえないようなとても小さな声で呪文を呟き、空気を手繰るような仕草をして、手繰り集めた空気を割るように、手を下ろした。すると、とたんにアサシンの纏っていた空気が一変した。
そして、ウェイバーの目に、アサシンの宝具が公開された。
―――――――――――――
『暗号呪文(Cipher Spell)』
ランク:D~A 種別:魔術宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
特殊な呪文で構成される魔術であり、宝具。
各暗号呪文は魔術行使によってまず一度効果を発揮し、その後、一定の条件下で再度、誘発する。
暗号呪文には様々な種類があるが、その全てが、宝具としての性質を持つ。
―――――――――――――
「これだけ?」
「これだけだ、今はな」
「…もうひとつあるんだろ?」
「あるとも」
「………」
手札を明かさないということ、それは、その札が最も重要だという事を意味する。
未熟者のウェイバーにも、それくらいは、理解できた。できてはいた、それでも、不満は不満だった。
「なんかムカつくなぁ」
「まあそう言うな。時が来たら、必ず教えてやる。私が持てる、最後の切り札だ。もったいぶるつもりはないが、これが私の生命線なんだ、理解してくれ」
「………、わかったよ。いつかは話してくれるんだな?」
「ああ、約束しよう」
二人の作戦会議は、夜遅くまで続いた。それもそのはず、ウェイバー・ベルベットは、魔術師としても、そしてマスターとしても、どうしようもなく未熟者なのだから。闇に生き、魔術に身を浸し、策謀の渦中に居たアサシンが、彼を先導してやらねばならない。そのために、生き残るために、アサシンはあらゆる事を教える。
覚悟。精神。技術。それら全てが揃って、ようやくスタートラインなのだ。ウェイバーは、まだ、その中のひとつも手にしてはいない。
これは苦しい戦いになる。アサシンは、そう予感した。そしてそれは、確信に近かった。
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