※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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書けた
群像劇だから主人公はいないんだけど、強いて言うならウェイバー君。
やっぱり彼が一番成長すると思う。
でもま、セイバー組とランサー組が一番主人公してると思うけどね。


03

 

 聖杯戦争。何百年掛けても完成しない儀式だと、眉唾ものの絵空事だと、笑われた、聖杯戦争。何人もの魔術師が参加したが、未だ、聖杯は一度も顕現していない。それが、不名誉な噂に、拍車を掛けていた。

 しかし、聖杯戦争を始めた御三家は、まだ諦めていなかった。

 アインツベルンが、マキリが、そして遠坂も、誰一人として諦めてはいなかった。絵空事ではない、聖杯は、確かに創れるのだと。

 

「参りましたね…」

「ええ、困ったことです…」

 

 それが、その覚悟が、今、風前の灯火だった。

 遠坂(とおさか)時臣(ときおみ)の覚悟が、揺れていた。信念を踏み躙られ、守るべき街が脅かされ、弟子の不始末が、彼の心を痛めた。そう、全ては、聖杯戦争が原因だった。

 

「ライダーだけではない、キャスターもだ。おかしい、なにかがおかしい。反英霊がなぜこうも」

「今回の聖杯戦争、一波乱では、済みそうにもありませんな」

 

 事前の準備は全て万端だった。監督役である言峰(ことみね)璃正(りせい)との確約、その息子である言峰(ことみね)綺礼(きれい)の協力、そして聖遺物。勝利は、約束されたも同然だったのに。

 今回の聖杯戦争、遠坂は、キャスターを召喚した。それは、本来の目的から外れた、想定していない事態だった。そればかりではない、呼び出されたのは、なんと反英霊。それも、遠坂時臣と言峰綺礼、二人が呼んだキャスターとライダーが、共に反英霊だったのだ。共に悪、共に混沌、世に正邪があるならば、これらが邪であろうというもの。それが、遠坂時臣の呼んだキャスターと、言峰綺礼の呼んだライダーだった。

 

「申し訳ありません。私がもっと、注意していれば…」

 

 父璃正の後ろに立つ言峰綺礼が、遠坂時臣に謝る。当然だろう、今回、問題を起こしたのは、彼のサーヴァントなのだから。

 

「いや、君はよくやってくれているよ、綺礼」

 

 しかし、そこは遠坂時臣。叩くような真似はせず、むしろ褒める事で、綺礼を嗜める。

 遠坂時臣は、続けて言った。

 

「だが、こんなことは、これきりにしたい。ライダーを見張るんだ。手綱を握れ。あれは、自由にさせてはならない」

「承知しております。このようなことは二度と、させません」

「ああ、よろしく頼むよ」

 

 遠坂時臣の言葉に、言峰綺礼は深く頭を下げて、応えた。

 二人は疲れているようだ。言峰綺礼は、注意深く、父と師の様子を窺って判断する。

 

「どうやら、お疲れのご様子。私は下がった方がよいでしょうか」

「…あ、ああ、すまないね。ふふ、弟子に心配されるほど顔に出るなんて、私も、もう…歳かな…」

 

 言峰綺礼は、なにか、急いでいる様子だった。この場に居る二人は、気を引き締め、更なる警戒に当たろうとしているのだと、言峰綺礼を信頼した。

 それが、間違いだったと、気付いてはいない。

 

「ライダー、今の話を聞いていたな?」

「ああ。困ったね」

 

 応接室を出て、言峰教会の表に出て、周りに誰もいない事を確認した言峰綺礼。ライダーを実体化させた彼は、そのまま、夜の雑木林を歩き始めた。

 3分ほど歩いた頃。突然、言峰綺礼は振り返り、まじまじと自分のサーヴァントの姿を見た。

 正に魔女、ラクドスの血魔女。まるで水着姿の様な、胸と腰周りだけを隠す服。赤い手甲、金属製のブーツ。唯一女らしいと言える赤いリボンは、悪魔を模した兜に結ばれていて、なんともアンバランスだった。

 

「…なんだい急に。そんなに見つめられても、別に、嬉しくもなんともないよ」

 

 無言でライダーを見定め続ける言峰綺礼。その表情は無だ、何も映らない、無感情だ。

 そこでようやく、言峰綺礼が口を開いた。

 

「ライダー、あの夢魔に、食事は必要か?」

「は? …そりゃあ、必要に決まってるじゃないか。食うもの食わなきゃ、力が出ないよ」

「ようは、魂食いと同じだな?」

「そうだよ。食べれば食べるほど魔力が増すし、強くなる」

 

 ライダーがそこまで答えて、言峰綺礼が考え事を始めた。そしてまた、会話が途切れる。

 そこで、今ようやく、ライダーは理解した。ライダーは嫌らしい笑みを溢し、言峰綺礼(マスター)の言葉を待った。血魔女としての才能が、言峰綺礼の本質を、ライダーに教えたのだ。だから、ここは黙っている。これは、言峰綺礼に自分から言わせて、初めて意味があるのだと、ライダーは知っているから。

 

「よし。では、次の餌を探しに行こうか。もちろん、私が、お前を監視する。解体作業も、餌やりもな」

「クククククッ、クハッ、カハッ」

「なにがおかしい」

「い~やっ、なんでも?」

「…フン」

 

 イクサヴァ(ライダー)の血が滾った。言峰綺礼(コイツ)をラクドス教団に引き込めと、彼女の血が囁いたのだ。

 『血と堕落があれば、世の中は素晴らしい』、教祖ラクドスは、そう説いた。『放火、流血、愉悦』、ラクドスの導き石には、そう刻まれている。そして、ラクドスの血魔女は、それを広め、実行させる。

 この日、この夜、新たな愉悦の種が、自らを自覚した。育ててやらねばならない。イクサヴァに、新たな目標が生まれた。それは、この地に、ラクドス教団の教えを広めること。それがどれだけ楽しい事なのか、イクサヴァは知っていた。

 

 

――――――

 

 

 ウェイバー・ベルベットは不機嫌だった。それは目論みが外れた事に起因する。

 暗殺者(アサシン)、それは対人、対マスター戦を得意とするクラスである。だが同時に、サーヴァント同士の戦いは不得手という性能の低さから、最弱とも呼ばれた。それでも、ウェイバーはそれを喜んだ。なにも、真っ向から勝負を仕掛けるだけが、戦いではないのだから。策を用いて、上手を破る。アサシンには、それが可能だから。

 しかし、ウェイバー・ベルベットは不機嫌だった。何故か。それは、アサシンのクラスである自分のサーヴァントが、自分より遥かに優れた魔術師だったからだ。

 

「キャスターでもないのにさ、なんでだよ…」

「仕方あるまい。確かに私は優れた暗殺者だが、同時に、優れた魔術師でもあった。それだけだ」

 

 暗殺だけが取り得のアサシン、そう考えていたウェイバーは、実に浅はかだった。

 むしろこのアサシンは、魔術を巧みに操り、影から影へと移り渡る、実動派なキャスターだった。

 

「まあいい、前向きに行こう。つまりオマエは、魔術を使って立ち回れる、便利なアサシンって事だ。よし、いいじゃないか」

 

 頬を叩いて一喝入れ、ウェイバーは自分を嗜め、考えを改める。確かにウェイバーの言う通り、これほど優れたアサシンは少ないだろう。

 それを踏まえた上で、二人は作戦会議を始めた。

 

「なぁ、アサシン」

「なんだ」

「お前の宝具が知りたい。基礎ステータスは見れるけど、宝具の欄が見れないんだ、なにかステータスを隠蔽する宝具なのか?」

 

 ごく当然の質問だった。味方の戦力も把握せずに戦場に行くなど、言語道断だ、あまりに無謀すぎる。この聖杯戦争において、ウェイバーにとってのアサシンとは、まさに切り札であり、そして右腕も同然の、命綱なのだから。そのアサシンの性能を全て把握した上で、ようやく作戦が立てられるというもの。だから、この質問は避けて通れないものだった。

 だが、ここで、アサシンが言葉に詰まる。

 

「…なんだよ、言えないのか」

「いや、言っていいものかどうか、判断に迷っただけだ」

「いいから教えてくれよ。第一、お前の宝具が分からないんじゃ、いつ頼りにしていいかも分からないだろ」

「そうだな…」

 

 しかし、アサシンの言も理解できる。全てのサーヴァントもそうだが、暗殺者にとって、宝具とは自分の奥の手だ。できることなら、明かしたくはないのだろう。

 それでも、マスターとサーヴァントの協力、そして連携は必要不可欠だ。それ無くして勝てる程、聖杯戦争は甘くない。

 アサシンも頭の回る男だ。ここは、素直に話すだろう。

 

「実は、変装スキルに、これから見せる宝具の効果を、上乗せしている」

「変装スキルが? そんなものでステータスまで隠蔽できるのかよ」

「まぁ待て、今から見せる」

 

 アサシンは、注意しても聞こえないようなとても小さな声で呪文を呟き、空気を手繰るような仕草をして、手繰り集めた空気を割るように、手を下ろした。すると、とたんにアサシンの纏っていた空気が一変した。

 そして、ウェイバーの目に、アサシンの宝具が公開された。

 

―――――――――――――

 『暗号呪文(Cipher Spell)』

ランク:D~A 種別:魔術宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

 

 特殊な呪文で構成される魔術であり、宝具。

 各暗号呪文は魔術行使によってまず一度効果を発揮し、その後、一定の条件下で再度、誘発する。

 暗号呪文には様々な種類があるが、その全てが、宝具としての性質を持つ。

―――――――――――――

 

「これだけ?」

「これだけだ、今はな」

「…もうひとつあるんだろ?」

「あるとも」

「………」

 

 手札を明かさないということ、それは、その札が最も重要だという事を意味する。

 未熟者のウェイバーにも、それくらいは、理解できた。できてはいた、それでも、不満は不満だった。

 

「なんかムカつくなぁ」

「まあそう言うな。時が来たら、必ず教えてやる。私が持てる、最後の切り札だ。もったいぶるつもりはないが、これが私の生命線なんだ、理解してくれ」

「………、わかったよ。いつかは話してくれるんだな?」

「ああ、約束しよう」

 

 二人の作戦会議は、夜遅くまで続いた。それもそのはず、ウェイバー・ベルベットは、魔術師としても、そしてマスターとしても、どうしようもなく未熟者なのだから。闇に生き、魔術に身を浸し、策謀の渦中に居たアサシンが、彼を先導してやらねばならない。そのために、生き残るために、アサシンはあらゆる事を教える。

 覚悟。精神。技術。それら全てが揃って、ようやくスタートラインなのだ。ウェイバーは、まだ、その中のひとつも手にしてはいない。

 これは苦しい戦いになる。アサシンは、そう予感した。そしてそれは、確信に近かった。

 

 

 

 




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